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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys:6 最終決戦! 教皇の間で激突する光と闇
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ep:65 覚醒めたアネーシャとクリザリッドの怒り

「クックックッ……メデュム・アネーシャはもう二度と覚醒めぬ。アルカナートと同様にな……ハーッハッハッハッ!!」


 残酷さに満ちたクリザリッドの嗤い声が、教皇の間に響き渡っている。

 それに皆が怒りを(たぎ)らす中、クリザリッドはノーティスをジロッと見下ろした。


「エデン・ノーティス。お前もこの女と同様、哀れな奴よ」

「クリザリッド……!」

「師に想いは届かず、友になりたかったシドを斬ったのだからな」

「くっ……!」


 ノーティスは悔しさにギリッと歯を食いしばり、クリザリッドを睨み上げている。

 邪悪な敵であるクリザリッドに、自分だけではなくアネーシャとシドをバカにされたからだ。

 その心を見透かしたまま、クリザリッドはニタァっと邪悪な笑みを浮かべた。


「死ぬ前に教えてやる」

「なにっ?!」

「お前が戦ったアルベルト・シド。奴の国が、こちらに戦いを仕向けるように仕込んだのは俺だ」

「なんだと?!」


 目を見開いたノーティスを、クリザリッドは悪魔の愉悦ような顔で見下ろしている。


「奴はアルベルト・サガの息子。生きててもらっちゃ困るからな。だから裏から手を回し、奴が出るように仕向けたのさ。奴がより強くなる前にエデン・ノーティス、キサマに殺してもらう為にな」

「なっ?!」


 ノーティスの脳裏に、シドとの激闘が鮮明な蘇る。

 互いに想いを乗せた刃を交え、命をかけて戦った。

 その中で互いを理解し友になろうとしたが、運命がそれを許さない。

 そしてノーティスは悲しみの中でシドを斬り、アネーシャの心を引き裂いた。

 だが、もしクリザリッドがけしかけなければ悲劇は起こらなかったのだ。

 クリザリッドがした事は、ノーティスとシドの運命を弄んだ事に他ならない。

 その事実がノーティスの心を抉る。


───くっ、シド……俺達は……!!


 激しい怒りと悔しさに震えるノーティス。

 それを、クリザリッドはさらに侮辱してくる。


「あの戦いは深淵から見ていたぞ。そうとは知らず、お前が奴と涙を流しながら戦い、最後奴が……涙を流して死んでゆく様をな! クククッ……ハハハッ……ハーッハッハッハッ!!」

「キサマっ……!!」


 ノーティスは全身ボロボロであるにも関わらず、ググッと立ち上がった。

 あまりにも膨れ上がる怒りが、体の痛みを遥かに凌駕したのだ。

 だが、クリザリッドは尚も嘲笑う。


「お前は敵に対し、共に友になりたいとも言っていたな。敵が友……片腹痛いわ! 愚か者めが! クククッ……敵が友とは……ハーッハッハッハッ!!」


 その嗤い声が耳を貫いた瞬間、ノーティスはブチ切れた。


「ク……クリザリッドォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 怒声を上げ、燃え滾る怒りと共に跳びかかろうとした。  

 が、動かない。

 跳びかかろうとした瞬間に、足首をガシッと掴まれたからだ。

 なので、ハッと振り返った。

 またその光景を見たクリザリッドは、あまりの驚愕に目を丸くした。

 信じられないという顔をして、額からツーっと汗を流している。


「ま、まさか……!」


 その時、皆の瞳に映った。

 さっきまでうつぶせのまま微動だにしなかったアネーシャが、ググッと立ち上がってゆく姿が。

 今さっき足首を掴まれたノーティスでさえ、この事が信じられない。


「ア、アネーシャっ?!」

「ノーティス、ここは退がってて……」


 アネーシャはノーティスの足を離すと完全に立ち上がり、クリザリッドをキッと睨みつけた。

 凛とした瞳に、とてつもない怒りが宿っている。


「この外道は、私がもう一度斬り裂くわ……!!」


 その姿に皆驚いているが、一番驚いて動揺を隠せないのはクリザリッドだ。


「あ、ありえぬっ……! メデュム・アネーシャよ。あの夢の世界からどうやって醒める事が出来た……!」


 クリザリッドは己の力に絶対的な自信を持っている。

 それ故に、アネーシャが目醒めた事が信じられなかったのだ。


「あの夢はキサマが一番行きたかった世界のハズ。人は苦しみには耐えられても、幸せや快楽には絶対に(あがら)えないハズだっ……! それがなぜっ?!」


 叫ぶように声を震わすレクリザリッドに、アネーシャは凛とした眼差しを向けた。

 その瞳が、目覚めたのは偶然ではない事を物語っている。


「クリザリッド、アナタの技は確かに凄かったわ。それに、技自体には感謝もしてる。想いを伝える事が出来たから」

「くっ、なのになぜだっ……!」


 クリザリッドはあまりの不可解さに、アネーシャを見つめたまま軽く後ずさりした。

 なぜ自分の技が破られたのか、全く理解出来ない。

 得体の知れない力に恐怖が募る。

 アネーシャはそれを見据えたまま、二ッと力強く笑みを浮かべた。


「クリザリッド、決まってるじゃない。私の愛は現実を変える為にあるからよ。夢の中じゃないと幸せになれない……そんな世界、決して来させはしないわ!!」


 アネーシャの凛とした瞳の光が強く光る。

 それとは対照的に、クリザリッドは瞳に黒い炎のような怒りを(たぎ)らせた。


「なんだとっ! おのれ……許さん……メデュム・アネーシャ、キサマだけは許さんっ!」

「許せないのはこっちよ、クリザリッド……!」

「黙れアネーシャ! 俺は……」


 クリザリッドの怒りは、理不尽極まりないように見える。

 しかしクリザリッドには、どうしてもアネーシャを許せない理由があるのだ。

 それは今までクリザリッド自身が、何度も躊躇(ためら)ってきたからに他ならない。

 自分自身にこの技をかけ、愛するナターシャに会いたいと何度も思ったのだ。

 だが、クリザリッドはしなかった。

 そんな事をすれば、二度と目覚めなくなる事が分かっていたからだ。


「選べなかったのだ……俺は、それを選べなかった! だがキサマは、会った上で別れを告げてきた……だから俺は、キサマを決して許す訳にはいかぬっ!!」


 クリザリッドは片手で剣先を天に向けて掲げた。

 その先に集約させている強大な闇のエネルギーが、まるで黒い暴風のように皆に流れてゆく。

 アネーシャとノーティス達は片腕を顔の前に置き、顔をしかめて防いだ。


「くっ! さっきよりも遥かに強くなってるわ……!」

「これがホーリー・アークで蘇った、クリザリッドの真の力か……!」

「なんなのよっ……闇の力のクセに美しいわ……!」

「くそったれ、ここまできたのによっ……!」

「ニャッハァ……なんという魔力じゃ……!」

「まるで、全てを覆い尽くすようだ……!」

「ボクのホーリー・アークで、何とかみんなを……!」

「待ちなさいクリザリッド! こんなの……悲しいだけだよっ!」


 クリザリッドの創り出す闇と、ノーティス達の創り出す光は真逆だ。

 けれど両者の根底には、哀しみが流れている。

 そして、この両者が激突するのは避けられない。

 互いに一歩も退けない想いで対峙しているからだ。

 激闘の後には、どちらかが消えねばならぬ宿命。

 その光景を、ルミは瞳に涙を浮かべて見つめている。


「ううううっ……! このままじゃみんなが、ノーティス様がっ……!!」


 その時、ルミの脳内に直接声が響いてきた。


───目醒めさない……! アステリア・ルミ……光の勇者と共に世界の鍵を握る『光の巫女・クナーティア』よ……!

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