ep:61 届かない想いとクリザリッドの夢幻魔法
「ナターシャ、俺はお前を……!」
アルカナートは心の中で、ナターシャとあまりにも切ない邂逅をしている。
だが、現実世界ではノーティスの飛翔地点は限界を迎えていた。
このままでは上昇による摩擦熱で、二人とも完全に燃え尽きてしまうのは必至だ。
しかし、ここまでしてもアルカナートが目覚める気配はない。
それがノーティスの胸をグッと締め付ける。
「くっ、師匠……! どうしても、目醒めてはくれないんですかっ……!!」
それでもノーティスは諦めない。
最高飛翔地点まで到達すると、上下をクルッと逆さに入れ替えた。
アルカナートを背中から抱きしめ渦を巻いたまま、ノーティスは下へ急降下を始めてゆく。
この技は元々、その回転と共に相手を頭から地面に叩きつける大技だ。
───師匠……もし全魔力を注いでもアナタが目醒めなければ、その時は……俺と一緒に死にましょう……!
ノーティスは心でそう誓い全力で急降下してゆく。
「オォォォォォッ……! 師匠……目を醒ましてください。俺達白輝の魔力クリスタルは、みんなの希望……そして、アナタ自身が俺達の希望なんですっ!!」
ノーティスの切なる叫びが、アルカナートを貫く。
その瞬間、アルカナートはノーティスの腕を引き離し空中でサッと離れた。
激流が渦を巻いているにも関わらず抜け出すとは、流石アルカナートだと言う他ない。
そしてクルッと体を回転させると、ノーティスの事をギロッと睨んだ。
「なっ?!」
ノーティスは、それに驚き大きく目を見開いた。
最後の技までアルカナートには通用しなかったからだ。
全魔力と命を賭けた必死の想い。
またこれはノーティスだけでなく、皆の想いでもある。
それが届かなかった事が、ノーティスには悔しくて仕方がない。
───ごめんみんな……! 俺は、師匠を目醒めさせられなかった……!!
胸が張り裂けそうな想いを噛みしめるノーティスを、アルカナートはドガッ! と、片足で蹴り飛ばし床に着地した。
「フンッ……」
ノーティスはアルカナートの蹴りを何とかガードしたが、横に大きく吹き飛ばされ壁にドンッ! と、背中を強く打ちつけてしまった。
「うわあっ!」
背中を強く打ちつけた壁が壊れ、破片がパラパラと床に落ちてゆく。
「くっ、ううっ……!」
ノーティスは両膝をつき、ハアッ……! ハアッ……! と、息を切らし顔をしかめてアルカナートを見つめている。
大技と魔力を最大限に使った上、アルカナートの蹴りを喰らったのだから無理もない。
ボロボロになったノーティスの姿を、みんな悲壮な顔を浮かべ見つめている。
普通であれば立ち上がる事すら困難な状態だ。
けれど、ノーティスはググッと立ち上がった。
苦しく顔をしかめながらも、決して諦めない。
みんなの想いをその背に背負っているからだ。
「ハァッ……ハァッ……し、師匠っ……!」
ノーティスが苦しそうに見つめる中、アルカナートはザッ……ザッ……という足音と共に近づいてくる。
その光景を見たセイラは、ノーティスに悲壮な顔をバッと振り向けた。
「ノーティスーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
教皇の間に、セイラの叫びが悲しみを乗せて響く。
その隙をクルフォスは見逃さない。
一瞬セイラの手が緩んだ隙をつき魔力を爆発させ、エターナル・エクスキューションをバシュンッ!! と、かき消した。
「ハァァアアアアッ!!」
「しまった!」
セイラは再びクルフォスの方を振り向いたが、もう遅い。
拘束をから解き放たれたクルフォスは、クリザリッドの方へザッと片手を向けた。
そして、セイラから吸収した魔力を放ったのだ。
「オォォォォッ……!!」
これは攻撃ではなく回復させる為の魔力放出。
この魔力を受け、瀕死状態だったクリザリッドの傷は一瞬で回復してしまった。
先程アネーシャ達から受けた傷も元通りだ。
「うっ……クルフォス様。ありがとうございます!」
「クククッ……中々便利な物だ。ホーリー・アークの力か……クククッ、ハーッハッハッハッ!!」
下卑た嗤い声が響く中、セイラは悔しさに顔をしかめてクルフォスを睨んでいる。
「くっ、なんて事に……」
また、復活したクリザリッドは邪悪な笑みを浮かべると一瞬の隙を突き、目の前にいるアネーシャに人差し指をスッと向けた。
その指先が一瞬で闇の光でギラリと煌めく。
「喰らえアネーシャ! 『エファルディス・コーディネーーーーーーーーーーーーーション』!!!」
クリザリッドの指先から放たれた一筋の闇の閃光が、アネーシャの額をシュンッ! と、一瞬で貫いた。
「うっ……!!」
クリザリッドの技にかかったアネーシャは、立ったまま目を見開いて固まっている。
そして、バタッと前に倒れて瞳を閉じた。
まるで、レイと戦った時のノーティスのように。
その光景を見て昔の記憶がフラッシュバックしたレイは、驚愕に大きく目を見開いて震えている。
「な、なんでアナタがあの技をっ……?!」
「クククッ……レイ、お前の専売特許だとでも思っていたのか?」
「えっ、まさか……」
「そうだ。これは元々俺が編み出した技だ。それに、俺はキサマのようなヘマはしない」
「ど、どういう事よっ?!」
動揺するレイを、クリザリッドは薄ら笑いを浮かべて見つめた。
全身から邪悪なオーラを立ち昇らせている。
「キサマはかつて破られただろう。光の勇者エデン・ノーティスに」
「なっ……!」
あの時の憧憬が、レイの中にありありと甦る。
『今ルミに言った通り、強すぎたんだ。レイ、キミの作り出した悪夢は……!』
『なんですって?!』
『レイ、まだ分からないのか。言うわけないんだよ、あんな事を、みんなが俺にっ……! 俺は侮辱されてもいい。けど、俺の大切な人を侮辱するのは許さないっ!!』
レイがその事を思い出す中、クリザリッドはほくそ笑んでいた。
アネーシャが邪魔で仕方なかったのだ。
戦力はもちろんの事、悲壮な決意を持って戦う事でノーティス達の士気が確実に上がっていたからだ。
「メデュム・アネーシャ。奴もエデン・ノーティス同様、意志の強き者。悪夢であれば必ず打ち破る。だからこそ、醒めぬ方をかけたのだ」
「そ、それは……」
「悪夢ではない。決して醒めようとは思えぬ夢だ。何人もな。クククッ……ハハハッ……アーッハッハッハッ!!」
クリザリッドの勝ち誇った邪悪な嗤い声が、教皇の間に渦を巻くように響き渡る。
レイ達にはそれがまるで、アネーシャを送るレクイエムのように感じてしまった。
◆◆◆
その頃、アネーシャは夢の中の世界にいた。
クリザリッドが告げた通り悪夢ではなく、決して醒めたくならない夢の世界に……
今日ので、残りラスト10話を切りました
前作と同じ部分もありますが、基本オリジナル
最高の形で終わらせますので、応援よろしくお願いします
m(_ _)m




