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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys:6 最終決戦! 教皇の間で激突する光と闇
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ep:61 届かない想いとクリザリッドの夢幻魔法

「ナターシャ、俺はお前を……!」

 

 アルカナートは心の中で、ナターシャとあまりにも切ない邂逅(かいこう)をしている。

 だが、現実世界ではノーティスの飛翔地点は限界を迎えていた。

 このままでは上昇による摩擦熱で、二人とも完全に燃え尽きてしまうのは必至だ。

 しかし、ここまでしてもアルカナートが目覚める気配はない。

 それがノーティスの胸をグッと締め付ける。


「くっ、師匠……! どうしても、目醒めてはくれないんですかっ……!!」


 それでもノーティスは諦めない。

 最高飛翔地点まで到達すると、上下をクルッと逆さに入れ替えた。

 アルカナートを背中から抱きしめ渦を巻いたまま、ノーティスは下へ急降下を始めてゆく。

 この技は元々、その回転と共に相手を頭から地面に叩きつける大技だ。


───師匠……もし全魔力を注いでもアナタが目醒めなければ、その時は……俺と一緒に死にましょう……!

 

 ノーティスは心でそう誓い全力で急降下してゆく。


「オォォォォォッ……! 師匠……目を醒ましてください。俺達白輝(びゃっき)の魔力クリスタルは、みんなの希望……そして、アナタ自身が俺達の希望なんですっ!!」


 ノーティスの切なる叫びが、アルカナートを貫く。

 その瞬間、アルカナートはノーティスの腕を引き離し空中でサッと離れた。

 激流が渦を巻いているにも関わらず抜け出すとは、流石アルカナートだと言う他ない。

 そしてクルッと体を回転させると、ノーティスの事をギロッと睨んだ。


「なっ?!」


 ノーティスは、それに驚き大きく目を見開いた。

 最後の技までアルカナートには通用しなかったからだ。

 全魔力と命を賭けた必死の想い。

 またこれはノーティスだけでなく、皆の想いでもある。

 それが届かなかった事が、ノーティスには悔しくて仕方がない。


───ごめんみんな……! 俺は、師匠を目醒めさせられなかった……!!


 胸が張り裂けそうな想いを噛みしめるノーティスを、アルカナートはドガッ! と、片足で蹴り飛ばし床に着地した。


「フンッ……」


 ノーティスはアルカナートの蹴りを何とかガードしたが、横に大きく吹き飛ばされ壁にドンッ! と、背中を強く打ちつけてしまった。


「うわあっ!」


 背中を強く打ちつけた壁が壊れ、破片がパラパラと床に落ちてゆく。


「くっ、ううっ……!」


 ノーティスは両膝をつき、ハアッ……! ハアッ……! と、息を切らし顔をしかめてアルカナートを見つめている。

 大技と魔力を最大限に使った上、アルカナートの蹴りを喰らったのだから無理もない。

 ボロボロになったノーティスの姿を、みんな悲壮な顔を浮かべ見つめている。

 普通であれば立ち上がる事すら困難な状態だ。

 けれど、ノーティスはググッと立ち上がった。

 苦しく顔をしかめながらも、決して諦めない。

 みんなの想いをその背に背負っているからだ。


「ハァッ……ハァッ……し、師匠っ……!」


 ノーティスが苦しそうに見つめる中、アルカナートはザッ……ザッ……という足音と共に近づいてくる。

 その光景を見たセイラは、ノーティスに悲壮な顔をバッと振り向けた。


「ノーティスーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 教皇の間に、セイラの叫びが悲しみを乗せて響く。

 その隙をクルフォスは見逃さない。

 一瞬セイラの手が緩んだ隙をつき魔力を爆発させ、エターナル・エクスキューションをバシュンッ!! と、かき消した。


「ハァァアアアアッ!!」

「しまった!」


 セイラは再びクルフォスの方を振り向いたが、もう遅い。

 拘束をから解き放たれたクルフォスは、クリザリッドの方へザッと片手を向けた。

 そして、セイラから吸収した魔力を放ったのだ。


「オォォォォッ……!!」


 これは攻撃ではなく回復させる為の魔力放出。

 この魔力を受け、瀕死状態だったクリザリッドの傷は一瞬で回復してしまった。

 先程アネーシャ達から受けた傷も元通りだ。


「うっ……クルフォス様。ありがとうございます!」

「クククッ……中々便利な物だ。ホーリー・アークの力か……クククッ、ハーッハッハッハッ!!」


 下卑た嗤い声が響く中、セイラは悔しさに顔をしかめてクルフォスを睨んでいる。


「くっ、なんて事に……」


 また、復活したクリザリッドは邪悪な笑みを浮かべると一瞬の隙を突き、目の前にいるアネーシャに人差し指をスッと向けた。

 その指先が一瞬で闇の光でギラリと煌めく。


「喰らえアネーシャ! 『エファルディス・コーディネーーーーーーーーーーーーーション』!!!」


 クリザリッドの指先から放たれた一筋の闇の閃光が、アネーシャの額をシュンッ! と、一瞬で貫いた。


「うっ……!!」


 クリザリッドの技にかかったアネーシャは、立ったまま目を見開いて固まっている。

 そして、バタッと前に倒れて瞳を閉じた。

 まるで、レイと戦った時のノーティスのように。

 その光景を見て昔の記憶がフラッシュバックしたレイは、驚愕に大きく目を見開いて震えている。


「な、なんでアナタがあの技をっ……?!」

「クククッ……レイ、お前の専売特許だとでも思っていたのか?」

「えっ、まさか……」

「そうだ。これは元々俺が編み出した技だ。それに、俺はキサマのようなヘマはしない」

「ど、どういう事よっ?!」


 動揺するレイを、クリザリッドは薄ら笑いを浮かべて見つめた。

 全身から邪悪なオーラを立ち昇らせている。


「キサマはかつて破られただろう。光の勇者エデン・ノーティスに」

「なっ……!」


 あの時の憧憬が、レイの中にありありと甦る。


『今ルミに言った通り、強すぎたんだ。レイ、キミの作り出した悪夢は……!』

『なんですって?!』

『レイ、まだ分からないのか。言うわけないんだよ、あんな事を、みんなが俺にっ……! 俺は侮辱されてもいい。けど、俺の大切な人を侮辱するのは許さないっ!!』


 レイがその事を思い出す中、クリザリッドはほくそ笑んでいた。

 アネーシャが邪魔で仕方なかったのだ。

 戦力はもちろんの事、悲壮な決意を持って戦う事でノーティス達の士気が確実に上がっていたからだ。


「メデュム・アネーシャ。奴もエデン・ノーティス同様、意志の強き者。悪夢であれば必ず打ち破る。だからこそ、醒めぬ方をかけたのだ」

「そ、それは……」

「悪夢ではない。決して醒めようとは思えぬ夢だ。何人もな。クククッ……ハハハッ……アーッハッハッハッ!!」


 クリザリッドの勝ち誇った邪悪な嗤い声が、教皇の間に渦を巻くように響き渡る。

 レイ達にはそれがまるで、アネーシャを送るレクイエムのように感じてしまった。


◆◆◆


 その頃、アネーシャは夢の中の世界にいた。

 クリザリッドが告げた通り悪夢ではなく、決して醒めたくならない夢の世界に……

今日ので、残りラスト10話を切りました

前作と同じ部分もありますが、基本オリジナル

最高の形で終わらせますので、応援よろしくお願いします

m(_ _)m

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