ep:59 セイラの愛とノーティスの問いかけ
「ハアアアアアアアアッ……! 最高の美しさに焼かれなさい!! 『ディケオ・フレアニクスーーーーーーーーーーーーーーーーーー』!!!」
「うらああああああああっ! 消し飛びやがれクリザリッド!! 『アルティメット・クリーシス・アックスーーーーーーーーーーーーー』!!!」
クリザリッドに、レイの灼熱の不死鳥がアクアマリンの輝きを放ちながら飛び向かい、同時にジークの巨大化した真っ赤なハルバードが振り下ろされる。
「ぐうっ! 舐めるな小僧ども!! 『ダークネス・ヴァロンディーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』!!!」
勢いよく振り抜かれた大剣から放たれたダークネス・ヴァロンディが、レイとジークの必殺技技と激突し、周囲を激しく煌めかす。
「くっ……! これでも互角なんて、さすがねっ……!!」
「けど、負ける訳にはいかねーーーんだよっ!! うらあああああっ!!」
レイとジークは魔力を必死に滾らせ必殺技を放っている。
だが、その凄まじいエネルギーでもクリザリッドは押しきれない。
闇の力を全開にさせて二人の力を押し返してゆく。
「……キサマらとは物が違うのだ! 力も魔力も……背負ってきている物もな!! オオオオオオオオッ!!!」
だがそんな中、アネーシャがダッと大きく飛び上がりクリザリッドに向かい剣を振りかぶった。
「人の背負ってる物の価値を、勝手に決めないでよっ!」
「くっ、アネーシャ……! キサマっ!」
サッと見上げたクリザリッド。
それを宙から見下ろすアネーシャの全身から、鮮やかな桜色の闘気が一気に立ち昇ってゆく。
「ハアアアアアアアアッ!! 人の背負ってる想いの重さを知りなさい!! 『桜花一閃ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』」
アネーシャは桜色の輝きを纏った剣を振り下ろした。
クリザリッドの顔を、鮮やかな桜色の光が照らす。
レイの不死鳥とジークのハルバードを受け止めてるクリザリッドに、もはや防ぐすべは無い。
僅かに身体を捻ったものの、アネーシャの桜花一閃により肩から斜め下にズシャアアアアアアアッ!!! と、斬り裂かれた。
それと同時に、レイのディケオ・フレアニクスとジークのアルティメット・クリーシス・アックスの威力も直撃し、クリザリッドは大きく吹き飛んだ。
「ぐわああああああああああああああっ!!」
それを見たクルフォスは思わず身を乗り出した。
「ぬうっ、クリザリッド!!」
闇の王宮魔道士であり、アルカナートに匹敵する実力を持つクリザリッドが吹き飛ばされたからだ。
さすがのクルフォスにも激しい動揺が走る。
だが、セイラはその一瞬の隙を突き魔導の杖からクルフォスに向かい魔力を滾らせた。
「クルフォス! その厄介な鎧、破壊させてもらうわよっ! 喰らいなさいっ!! 『エターナル・エクスキューショーーーーーーーーーーーーーーーーン』!!!」
セイラの魔導の杖から、ピンクサファイヤとプラチナの入り混じった光の魔力が、まるで洪水のようにクルフォスに真正面から注がれてゆく。
「ぬうっ! こ、これはまさか!!」
この技は相手を吹き飛ばしたりする技ではない。
ただ、聖魔力であるホーリィ・アークの力で相手に無限に魔力を注ぎ込んでいく技だ。
その魔力は相手を渦巻いて閉じ込め、決して逃さない。
「そうよ。この技は本来大勢を一気に回復させる超回復魔法。でもクルフォス、何でもそうだけど無限に注がれたらどうなると思う?」
「くっ、おのれセイラっ……!!」
「アハッ♪ せーーーーかい。限界超えたら壊れちゃうから。いくらアナタの着てるダーク・シュラウドが相手の魔力を吸収しちゃうとしてもね」
セイラは凛とした眼差しで技を放ち続けているが、クルフォスはニヤリと嗤った。
「クククッ……確かにその通りだが、出来るのかセイラ。お前に」
クルフォスには分かってるのだ。
いくらホーリィ・アークの力が強大でも、悪魔王から授かったこのダーク・シュラウドはダーククリスタルその物で出来ている魔の鎧。
その限界値を超えるほどの魔力を放つのは、セイラの命さえ危険に晒す事をだ。
現にセイラは、徐々にだが苦しそうな顔を浮かべてきている。
「べっつにいいし……私の命ぐらい……!」
「フンッ……セイラよ、強がりはよせ。この技は確かに凄まじい。伝説の王宮魔導士なだけはある。だが、もうそろそろ限界だろう。クックックッ……!」
「アハッ……心配してくれるんだ……でも、アナタの鎧を破壊できれば、それでいいの。別に死んだって……」
「愚かな……命を捨てて何になる」
クルフォスはそう告げ蔑んできたが、セイラの気持ちは変わらない。
セイラは苦しそうに顔をしかめながらも、ニッと笑みを浮かべた。
「決まってるじゃない……みんなの為よ……!」
「なんだと」
「ロウもレイもジークもアンリも、それにメティアちゃんだって……みんな可愛い私の後輩なの。若き王宮魔導士のみんなは私の誇り! 命に代えても守り抜くんだからっ!!」
その言葉と姿に、側にいるロウもアンリも涙が止まらない。
「ぐうっ、セイラさんっ!」
「ううううっ……! セイラお主……!」
ロウとアンリが涙して見つめる中、セイラは心で想っている。
愛しいノーティスの事を。
───後は頼んだわよ……! アナタはみんなの希望の王宮魔導士。光の勇者なんだから! 愛してるわよ、ノーティス。
セイラが全力で魔力を滾らせている時、ノーティスも全力で魔力を滾らせていた。
アルカナートを目醒めさせる為に、アルカナートとガッツリ両手を組み、腕をブルブルと震わせている。
また、その魔力は遂に限界を超え、アルカナートの領域まで達しつつあった。
もう既に、ゴールド・クリスタルを発動させているからだ。
「くうっ……! ゴ、ゴールド・クリスタルでもまだ完全には届かないのかっ……! でも、諦める訳にはいかない! うおおおおおおおおおおおっ……!!」
けれど、もう少し。
後、もう少しでアルカナートの魔力に届く。
だがそこまでいった時、アルカナートはノーティスと手を組み合ったまま、凄まじい速さの蹴りを繰り出した。
アルカナートのつま先が溝落ちに強烈に食い込み、重く鈍い痛みがノーティスを襲う。
「ぐあっっ!!」
思わず手を離し吹き飛ばされたノーティス。
それをよそに、アルカナートは防御壁の天井を見上げて剣を構えた。
そのまま剣に白輝の魔力を込めてゆく。
「フンッ……! 『アクティ・フォース』!」
アルカナートから放たれた必殺技が、メティアが作り出した防御壁の天井をバラバラに砕いた。
ノーティスはそれを苦しそうに見つめている。
だが、ここで逃してしまったら、もうアルカナートを元に戻す機会は無いからだ。
「絶対に……諦めないっ!!」
みぞおちから走る激痛に耐え、アルカナートにダッと跳びかかりると、ノーティスは背中から両手でガシッと羽交い締めした。
両脇の下から腕を通して動きを完全に封じている。
しかし、このままでは振りほどかれるのは必死。
なのでノーティスは、アルカナートを羽交い締めしたまま、白輝の光を爆発させるかの如く輝かせてゆく。
「師匠、必ず目醒めさせます! 俺の命に代えても!!」
ゴールドクリスタルの魔力が大きな光の柱になり、教皇の間の天井をドンッ!! と、突き破り高く立ち昇った。
それはまるで、天空へ続く道のように神々しい。
「うおおおおっ! 限界を超えて煌めけ俺のクリスタルよ!! 師匠の闇を斬り裂く奇跡を起こせっ!! 『クラウディア・フォースクラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ』!!!」
ノーティスはアルカナートを連れて空高く舞い上がった。
流石のアルカナートも、この技からは逃れられない。
技が起こす衝撃波とノーティスの全力で滾らすゴールド……いや、ゴールドにプラチナの入り混じった強大な魔力に覆われているからだ。
そのままノーティスは心から溢れ出す想いと共に、アルカナートに語りかけてゆく。
「くっ、覚えてますか師匠……あの日、初めて出会った日の事を……!」
アルカナートは黙ったままだ。
けれど、それに構わずノーティスは話を続けてゆく。
「あの日……師匠に救ってもらって、俺は救われました。だから俺、勇者として責務を全うした後は、同じように苦しんでる人達を救っていきたいんです……人は、苦しい時に誰にどう出会うかで人生が変わると思うから……!」
こう話している間も、上空へ突き上がる事による摩擦熱で体が焼けそうだ。
それでもノーティスは諦めない。
「それに、そのナターシャっていう大切な……死に別れちゃった女は、きっと……師匠に想いを託したんじゃないですか?! 答えて下さい……師匠っ!」
その時、アルカナートの心の中で語りかけてきた。
かつてアルカナートが心から愛し、今、アルカナートの意識を封じる鍵となっている死に別れた女……ナターシャが!




