ep:58 五大魔王達の野望と策略
「別にここで死ぬ気なんて、ぜーんぜんないから♪ でも、せっかくだから聞いてあげる」
セイラは気丈なフリはしているものの、ヒリヒリとした緊張を走らせている。
これからとてつもなくマズい話を聞かされる事を、充分に分かっているからだ。
そんなセイラを、クルフォスは闇に染まった瞳でジッと見下ろしている。
「ならば教えてやろう……」
そして語り出した。
魔力クリスタルの深淵を……
無限の魔力を持つ神聖樹ユグドラシルの下で、昔はみんなが仲良く平和に暮らしていた。
しかし『五大悪魔王』達がユグドラシルを奪った事により、世界は一変してしまう。
その内容もやり方も、あまりに酷かった。
悪魔王達はユグドラシルを奪う為に、その絶大な魔力で民を虐殺したのではない。
国を裏から支配し、民同士にそれをさせたのだ。
悪魔の呪いが国中に蔓延し魔力クリスタルをつけなければ、その呪いに感染して悪魔になるという偽の情報を国中に広める方法によって……!
そこまで聞いたセイラは目を大きく見開いた。
「ウソでしょ……じゃあ、私達スマート・ミレニアムの人間がずっと真実だと思ってた『感染神話』は……!」
「壮大な作り話だ。お前達が信じていた歴史は全て嘘に過ぎん」
クルフォスはそこからさらに告げる。
「悪魔と戦ったとされている五英傑こそ、偉大なる五大悪魔王様なのだからな!」
「そ、そんなっ……!」
あまりの衝撃に固まっているセイラを見据えたまま、クルフォスは話を続けてゆく。
まず悪魔王達は、その絶大な魔力で国に結界を張った。
人々がそれまで見えていた精霊達を、悪魔のような姿に見せてしまう邪悪な結界だ。
そこで王は大々的に宣言した。
『悪魔アーロスが放った悪魔の呪いにより、このままだと皆悪魔になってしまう! 感染を防ぐ為にはアーロスと戦いし五英傑の作った、魔力クリスタルを装着するしかない!』
悪魔の呪いの感染に恐れおののいていた人々は、我先にと魔力クリスタルを額に嵌めこんでいった。
それが悪魔王達の野望を叶える為の、巧妙な罠だとも知らずに……
もちろん、多くの人々はそれを知らずに歓喜していた。
悪魔になった精霊達の姿が見えなくなったからだ。
ただ、この事に疑問を持ち真相を見抜く者達もいた。
『この魔力クリスタルはおかしい……何か重大な事が隠されている……!』
彼らは魔力クリスタルの装着を拒否し、対抗する勢力を作っていったのだ。
それにより、精神異常者や陰謀論者だというレッテルを貼られて大多数の民達からは迫害されてゆく。
さらにそれはただの陰口にとどまらず、彼らは命すら奪わられていった。
魔力クリスタルを装着した大多数の、善良な市民達によって……
『魔力クリスタルを埋め込まない奴らは、呪の感染を広める悪魔の手先だ!』
『皆が感染防止をしようとしてるのに、アイツらは協力しようとしない人でなしだ!』
『国が国民に嘘を言う訳がないだろ!』
あんな奴らは……殺せーーーーーーーー!!!
もちろん、真実を見抜く彼らもただ殺されるのを良しとせず、レジスタンスを作って戦った。
ただ悪魔王達の狙い通り、民同士で殺し合うようになってしまったのだ。
いや、多数派による虐殺だ。
それまで皆、平和に暮らしていたにも関わらず……
魔力クリスタルの真実を見抜いた少数派の人達は、殺される事を恐れ国外へ逃亡。
また国に残った人達は、真実と平和の奪還の為に戦ってゆく。
「まさかそれが、トゥーラ・レヴォルトの末裔?!」
「その通りだ」
「でも、それじゃアーロスは何者なの? 悪魔王じゃないの?!」
「奴も悪魔王の一人だった。ただ、裏切ったのだ。一人の女『メデュム・ソフィア』に惚れてな!」
『メデュム……まさかっ?!』
セイラがアネーシャをチラッと見つめると、クルフォスは忌々しくギリッと歯を食いしばった。
全身を軽く震わせている。
「そう。奴の先祖に当たる女であり、レジスタンスのリーダーとして戦った女だ……!」
「そんなっ!」
セイラは思わず飛び上がりそうになってしまった。
さすがのセイラでも、この話は衝撃的過ぎたのだ。
英雄と信じてきた五英傑が実は悪魔王であった事と、アーロスがソフィアに惚れて共に戦った事に驚愕を隠せない。
なのでセイラは、思わずノーティスの事をチラッと見つめた。
───確かに、こんな事知ったらショックよね……
けれどセイラは、今の話を真実だと認めているからこそ一つ納得がいかない。
「クルフォス! なんでそこまで知ってて、悪に加担してるのよ! おかしいじゃないっ!」
セイラの言う事は最もだが、クルフォスの表情は変わらない。
むしろ、哀れむような眼差しを向けている。
「お前達には分からぬだろうな……あのお方達の素晴らしい理想の前では、そんな事はどうでもいいのだ」
「何言ってるのよクルフォス! 平和に暮らしてた人達を分断させて殺し合わせて何が理想よ!!」
その怒りと共に、セイラは魔導の杖をクルフォスにビュッと振り向けた。
「どんな理想か知らないけど、私はそんなの絶対に認めないからっ!!」
セイラの額の魔力クリスタルが輝き、ピンクサファイアとプラチナの入り混じった魔力が、全身から大きく立ち昇ってゆく。
クルフォスをここで必ず止める決意を胸に。
その頃メティアは、ノーティスとアルカナートの激しい戦いを凄く緊張しながら見つめていた。
───どうしよう……こんな激しく動いてる中でアレをやるなんて……!
メティアは思わず、小さな拳をギュッと握りしめた。
閉じ込めなければいけないからだ。
『クリスタル・フィラキー』で二人の事を。
ノーティスからセイラを通じて頼まれてるからだ。
アルカナートの魔力クリスタルに、直接魔力を送り込む為に閉じ込めてくれと。
───でも、あんな早く動いてたら……
ノーティスもアルカナートも、お互い最強の勇者同士。
もちろんアルカナートの方が上とはいえ、二人の激闘は凄まじい。
セイラのように一瞬で作れなければ、二人同時に閉じこめる事は不可能だ。
───でも、やるしかないよね……! ノーティスだって全力でやってるんだもん。ボクだって全力で成功させてみせる!
瞳に決意を宿し、メティアは二人に向かってバッと両手を向けた。
額の魔力クリスタルから、黄色とプラチナの混じった魔力を煌めかせてゆく。
そして、スッと瞳を閉じた。
───目で追っても捉えられない。感じるんだ……二人の魔力を……!
メティアは体は強くないが魔力は超一流。
だからこそ見えてくる。
魔力を捉える事によって、二人の次の動きが。
───もう少し……もう少し……今だっ!!
メティアはカッと目を見開いた。
「光よ二人を包み込めっ! 『クリスタル・フィラキーーーーーーーーーーーーーー』!!!」
両手の平から放たれた黄白色の魔力が、ノーティスとアルカナートを頭上から照らしてゆく。
そして、黄白色に輝くドーム状の魔力壁を一瞬にして作り出した。
「ハアッ……! ハアッ…! 出来たっ!!」
メティアは嬉しそうな顔で息を切らしている。
セイラはその姿を見たセイラは、片手で半分のハートマークを作ってニコッと笑った。
「メティアちゃーーーーん♪」
「セイラさん……♪」
軽く息を切らしながらセイラを見つめて微笑んだ。
そしてポーズの意味が分かると、ちょっと照れながら片手で半分のハートマークを作った。
「セイラさんのお陰ですっ……♪」
「アハッ♪ メティアちゃん最高よっ♪」
二人が見つめ合う中、ノーティスはアルカナートの両肩を真正面からガシッと掴んだ。
───ありがとうメティア! キミの想い、決してムダにはしないっ……!
ノーティスはその誓いと共に、額の魔力クリスタルから白輝の光を強く大きく煌めかせてゆく。
「うおおおおおおおっ! 師匠の目を醒す為に、今こそ師匠の位まで煌めけ!! 俺のクリスタルよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」




