ep:57 輝くノーティスとアネーシャの哀しみ
「オオオオオオッ!!」
ノーティスは勇ましく、アルカナートと真正面から討ち合っている。
決して負けていない。
精悍な眼差しでアルカナートと打ち合いながら、サッと必殺技の構えを取った。
魔力クリスタルが、より大きく光り輝いてゆく。
「夜空を駆ける流星よ! 今こそ彗星となり……師匠を貫け!! 『バーン・コミュテクスフォーーーーーーーーーーーース』!!!」
凄まじい数多の輝く斬撃が、流星の軌道を描きながらアルカナートに飛びかかる。
だが、当然アルカナートには通用しない。
同じ技でノーティスを破ってくるからだ。
しかしノーティスは、先程までとは違って動じはしない。
完全に競り負けてる訳ではないからだ。
アルカナートに技を破られてもそれをサッと躱し、素早く反撃に転じている。
「ハァァァァアアッ!! 師匠!! かつてアナタが俺を救ってくれた技で、今度は俺が師匠を救います!! 『エッジ・スラッーーーーーーーーーーーーシュ』!!!」
一筋の閃光と化したノーティスは、同じく一筋の閃光と化したアルカナートとガキィィィン!!! と、交叉した。
ノーティスの肩からビシュッ! と、鮮血が噴き出す。
「ぐっ!!」
だが、アルカナートも肩から血を流した。
「フンッ……」
アルカナートに与えた傷は、ノーティスが受けたそれよりは軽い。
しかしノーティスの力は、さっきまでより確実にアルカナートに迫っている。
その光景を目の当たりにしたクルフォスは、驚きと共に顔をしかめた。
───くっ、なぜだ? 先ほどよりもエデン・ノーティスの力が遥かに増している……!
クルフォスが不思議がるのも無理はない。
ノーティスとアルカナートの力の差は、本来あまりにも大きい事を知っているからだ。
しかし、その差が縮まった理由はハッキリしている。
もう、ノーティスに迷いが無いからだ。
「師匠っ! 俺は必ずアナタの位まで魔力を高めてみせます!」
今までノーティスは、無意識の内に力をセーブしていた。
自分の敬愛する師匠アルカナートに対し、全力を出す事を躊躇っていたからだ。
けれど今は違う。
ノーティスの心は、アネーシャと出会った事により覚悟が決まっている。
───アネーシャ。キミはシドの仇を討つ為にたった一人で乗り込んできた。なのに、俺を殺さず戦ってくれている……! 俺もやるぞ全力で! たとえこの手で師匠を殺める事になっても……!
断固たる決意と共に、ノーティスはアルカナートと激しく討ち合っている。
その側で、アネーシャはレイとジークと横に並び、クリザリッドと向き合っていた。
「レイ、ジーク。この男は強い。でも、三人で一気にかかれば勝機は充分あるわ」
「へっ、とーぜんだぜ。お前さんの強さは横からビリビリ伝わってくっからな」
「そうね……! でもアネーシャ、なんでアナタ今まで戦場に出なかったの?」
ジークもそれは疑問に思っていた。
アネーシャは凄く強い。
もしアネーシャが今まで戦場に出ていたならば、戦況も大きく変わっていたハズだ。
しかしその理由は、実にアネーシャらしい物だった。
「……シドの為よ」
「どーゆーこった?」
「一緒に戦えばよかったじゃない」
「そうね。でも……」
アネーシャは敢えて戦場に出なかった。
シドのプライドを傷つけたくなかったからだ。
元々、アネーシャには不思議な力があった。
それは先祖であるソフィアから受け継いだ物であり、努力して手に入る物ではない。
父親の仇を討つ為に必死で修行しているシドの前で、その力を見せる訳にはいかなかったのだ。
アネーシャはそれを二人に伝えると静かに、そして哀しく微笑んだ。
「……本当にバカよね。シドのプライドを守って命を守れなかったんだから……」
「アネーシャ、お前さん……」
「美しいけど、あまりに切ないわね……」
ジークとレイは切ない気持ちを感じている。
愛がある故の悲劇に他ならないからだ。
そんな二人の側で、アネーシャは少し嬉しそうに笑みを浮かべた。
「フフッ、けどアナタ達二人はそんな事なさそうね。うらやましいわ」
「へっ? お、俺達って……俺とレイの事かい」
「それ以外誰がいるのよ。アナタとレイの事よ」
そう告げられたジークは、嬉しそうに笑みを浮かべてレイをバッと見つめた。
「おいレイ、聞いたか! アネーシャはいい奴だ♪間違いない」
「ハァッ……ジーク、アナタ単純すぎよ」
レイは前を向いたまま、軽く呆れた顔を浮かべている。
けれど、内心悪い気はしてない。
ジークとの関係性は今言われた通りだし、レイは決して嫌いではないからだ。
自分をいつも一番大切にしてくれるジークの事を、レイも大切に想っている。
「まっ、でもそうね。アネーシャの言ってる事は間違ってないわ」
レイは嬉しそうに微笑んだ。
そして再びクリザリッドを華美な瞳で強く見据えて、必殺技の体勢を取った。
スラっとした肢体で両手を上に掲げ、額の魔力クリスタルからアクアマリンの輝きを大きく煌めかせてゆく。
「フフッ♪ 今度こそ燃やし尽くしてあげる!」
その隣でジークも、額の魔力クリスタルから赤いロッソ色の輝きを煌めかせ、両手で握っている真っ赤なハルバードによりグッと力を込めた。
「クリザリッド、今度こそブッた斬ってやんよ!」
そんな二人を横で感じながら、アネーシャは切なく微笑んだ。
そしてクリザリッドの方へ向き直り、心の中でシドに誓う。
───シド、私はアナタを守れなかった。でも、必ず叶えてみせる! アナタが本当に望んだ事を……!
アネーシャは心に誓いの光を輝かせた。
そんな中、セイラはロウとアンリ一緒にクルフォスと向き合っていた。
───メティアちゃん、ノーティスの事は任せたからね……!
セイラはさっきメティアに頼んでいた。
もちろんそれは、ノーティスから頼まれた事だ。
それはかなり重要な事だったので、メティアは最初セイラに両手の平を向け慌てて断った。
『ム、ムリですよセイラさんっ、そんなのいきなりやれって言われても……!』
『だーいじょうぶだって♪ メティアちゃんも私と一緒でホーリィ・アークに目醒めてるんだからっ♪』
『ううっ、でも、セイラさんみたいに上手く出来るかどうか……』
『ヘーキヘーキ♪ こーゆー所で経験値積むのが大事なんだし、メティアちゃんならきっと出来るわよ。ノーティスの事、大好きなんでしょ』
『は、はいっ……!』
『素直でよろしいっ! 頼んだわよっ♪』
『分かりました……やってみます!』
『ありがとうメティアちゃん。私は……クルフォスと決着をつけなきゃいけないから』
セイラはクルフォスの事を、凛とした眼差しで見つめている。
ここで決着をつけなければいけない。
その決意が、胸を切なく締めつける。
「クルフォス、昔とは全然違うね。それとも昔から騙してたの? 私達の事を……」
哀しい光に揺れるセイラの瞳。
それを、クルフォスは冷酷な眼差しで静かに見つめている。
「余は何も変わっておらぬ……お前達こそ知らぬのだ。あのお方達の素晴らしさをな……!」
「あのお方達?」
セイラは謎めいた顔を浮かべた。
また、ロウとアンリはクルフォスを見据えたままグッと力を込めている。
ノーティスが持ってきた『女神の記憶』から見せられた、あの事だと分かっているからだ。
クルフォスの冷酷な瞳がギラリと光る。
「そうだ。死ぬ前に教えてやる。エデン・ノーティスが女神の記憶を手に入れた以上、もはや隠していても意味は無いからな……!」
次話は、魔力クリスタルの秘密が明かされる超重要エピソード。
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