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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys:6 最終決戦! 教皇の間で激突する光と闇
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ep:55 運命の対峙

「セイラよ、何かと思えばこんな小娘を連れてくるとはな。クククッ……」


 クリザリッドは、軽く体を震わせながら失笑を漏らしている。

 セイラの醸し出す凛とした雰囲気とは裏腹に、出てきたのは戦闘力などまるで感じないルミだったからだ。

 けれど、当のルミはそんな事は気にしていない。

 ノーティスの所へ駆け寄りると、軽く息を切らしながら微笑んだ。


「よかったノーティス様……ご無事だったんですね♪」

「あぁ、お陰様で……って、だからルミ、ダメだって! ここにいたら!」


 ノーティスは困惑しながらルミを見つめている。

 ここにいるのが、どれだけ危険なのかを分かっているからだ。

 けれど、ルミは動じない。

 むしろ、スッと胸を張ってノーティスを見つめた。


「それは、危険だからですか?」

「そうだよ!」

「じゃあ、ノーティス様にとってはここは危険じゃないんですか?」

「えっ?」


 ルミから軽く詰め寄られたノーティスは、ちょっと気まずそうな顔をしてしまった。

 なんか嫌な予感がするからだ。

 でも、嘘は言えない。


「……そりゃ危険だよ」

「ですよね。なのに、ノーティス様はよくて私はダメなんですか?」

「いや、それは……」

「どうなんです!」


 そこまで言われたノーティスは、もうルミの言う事を認めざる得ない。


「……ダ、ダメじゃ……ないな」

「ですよねっ♪」


 ルミはニコッと微笑んだ。

 逆にノーティスは、参ったなという顔をして片手で軽く頭を掻いている。

 完全にルミにしてやられたからだ。

 それを見ていたジークは、吹き出すように笑いだした。


「ガッハッハッハッ! ノーティス、お前さん完全にやられたな。こりゃ結婚したら、嬢ちゃんの尻に敷かれるな」

「あぁジーク、それについては的中率100%だと思う……」


 ノーティスは仕方がないという感じで、優しくため息を(こぼ)した。

 もちろんルミを危険には晒したくないが、こう言われてしまってはどうしようもない。

 その側で、ルミは顔を真っ赤に火照らせている。


「けっ、結婚っ?! そ、そんなつもりじゃ……!」


 そんなつもりじゃないどころか、周りからしたらそうなる未来しか見えない。

 レイもそれを感じて、半ば諦めたように微笑んだ。


「フフッ♪ ルミ、アナタにならノーティスの事任せられそうね」

「レ、レイ様っ……!」


 ルミは思わずうるっときてしまった。

 レイがノーティスを想っている事を、前々からよく知っているからだ。

 もし、自分が逆の立場だったとしたら自信がない。

 今のレイのように、ちゃんと相手の目を見て言うなんて無理だろう。


───レイ様は、やっぱり素晴らしい女性です……!


 ルミはレイの心の強さと美しさをヒシヒシと感じている。

 そんなルミの事を、メティアが横からスッと覗き込んできた。

 メティアは嬉しそうに笑みを浮かべている。


「ルミさん、ノーティスと結婚するの?」

「メ、メティアさんまでなにをっ」

「あははっ♪ だって顔にそー書いてあるし。それに……結婚式にはボクも呼んでね」

「メティアさん……!」


 ルミは、またうるっときてしまった。

 メティアもノーティスを好きな事を、ルミは知っているからだ。

 そんなルミを、メティアは祝福するように見つめている。


「ボクがスピーチしてあげるから。ノーティスの事を大好きなボクからって♪」

「もうっ! そ、そんなスピーチ困りますよっ」

「アハハッ。ほら、やっぱりする気じゃん♪」

「あっ……!」


 ルミは顔を火照らせて片手を口に当てた。

 やってしまった感が溢れている。

 それをアンリとロウも一瞬微笑ましく見つめたが、すぐにクルフォスに向き直った。

 今は戦いの最中。

 いくら微笑ましい光景でも、油断したら命取りだ。

 その気持ちを代弁するかのように、セイラは凛とした眼差しでクルフォスとクリザリッドを見つめた。


「ルミちゃんから教えてもらったのよ。マジックポータルでね♪」

「そうか……なるほどな。それでわざわざ余に殺されに来たという訳か。大した度胸だ」

「クククッ……セイラよ。大人しく孤児院だけしていれば、静かに過ごせたものを」


 二人ともセイラを嘲笑っている。

 けれど、セイラは気にしない。

 真っ正面から二人を見つめたまま、軽くおどけた顔を浮かべた。


「あ~~あ二人とも、街で騒ぎになってるのに、何も知らないようね」

「なんだと?!」

「どういう事だ」

「まっ、こんな事あったんだから知らなくても当然だけど」


 セイラの言葉に謎めいた顔を浮かべているのは二人だけではない。

 ノーティス達も、何の事なのか全く分からない。


「セイラ、どういう事だ。街で騒ぎ?」


 謎めいた顔を浮かべているノーティスを、セイラは凛とした眼差しで見つめた。


「助っ人はルミちゃんじゃないの」


 その瞳が告げている。

 今から凄く大事な事を告げてくる事を。


「彼女に話はしてあるけど、もしかしたら酷い言葉をぶつけられるかもしれないわ。場合によっては、斬り……いえ、きっとそれはないわ。ちゃんと話したから」

「どういう事だ? まったく分からないよセイラ」


 セイラが何を言いたいのか、本当に分からない。

 けれどノーティスの胸を、言いようのない不安が襲ってくる。

 心が最大級の警戒音を発しているようだ。

 ノーティスの顔が不安に顔が曇る。

 すると、ルミもノーティスに真剣な眼差しを向けてきた。

 セイラと同じ事を伝えようとしているのが、一目で分かる。


「ノーティス様。私がセイラ様に無理を言ってここに来させてもらったのも、それが理由です」

「ルミ、どういう事だ? セイラと一緒で、何言ってるのか全く分からないよ……!」


 ノーティスは軽く苛立ち、片手で頭をクシャッと掻いた。

 言いようのない不安が募る。

 その隣で、セイラは再びクルフォスとクリザリッドの方へ振り向いた。


「彼女は乗り込んできたのよ。たった一人で、このスマート・ミレニアムに……!」

「なんだと?」

「その小娘がか?」

「違うわよ」

「ならば、誰だと申すのだ」

「そうだセイラ。さっさと言え。その命知らずな者の名を!」


 セイラは二人からだけでなく、みんなからの眼差しも一身に受けている。

 その中で一瞬瞳を閉じると、凛とした瞳に光を宿した。


「『メデュム・アネーシャ』よ……!」


 聞いた事の無い名前に、ルミ以外の皆は謎めいた顔を浮かべている。

 だがその中で、ノーティスだけは少し考えてからハッと目を見開いた。

 

「まさかっ……!」


 あまりの衝撃に胸が一気にドキドキと波打つ。

 とてつもない不安が襲ってくるのだ。

 それを背中で感じたセイラは、一瞬スッと流し目を向けてコクンと頷いた。

 そして、再び前を見つめて話をしていく。


「彼女は……復讐の為に乗り込んできたの」


 復讐という言葉に、クリザリッドとクルフォスは一瞬眉をひそめた。


「復讐だと?」

「トゥーラ・レヴォルトの者か?」

「そうよ。もちろん、本当は軍隊で攻め込むのが一番効率がいいに決まってる。でも、彼女は敢えてそうしなかったの。なぜだか分かる?」


 クルフォスもクリザリッドも、その問いの答えが分からず黙っている。

 確かに国への復讐ならば、軍隊を引き連れた方が遥かに効率的だからだ。

 むしろ単身で攻め込んでくるなど、自殺行為に等しい。

 けれど、そんな二人と違いノーティスはすぐに理由を悟った。


「そういう事か……!」


 ノーティスはセイラの隣にザッと歩み出た。

 その瞳には哀しい光が宿っている。

 アネーシャの正体を、もう分かっているのだ。


「自分の復讐に、人を巻き込みたくなかったから……」

「さっすが私のノーティス♪ 大正解よ」


 嬉しそうに微笑んだセイラを、クルフォスとクリザリッドは一笑に付した。


「愚かな……」

「くだらん……」

「そうでしょうね。自分の野望の為なら、人の事なんて何とも思わないアナタ達からしたら」


 セイラの皮肉めいた言葉に、クリザリッドもクルフォスも邪険な顔を浮かべている。


「フンッ……」

「そんな事、分かりたくもない」


 だがその直後、二人はハッと悟った。

 ここに来る者の正体を。


「いや待てセイラ、という事は!」

「まさか……!」

「そうよ」


 セイラは二ッと力強い笑みを浮かべると、サッと入口の方へ振り向いた。


「出てきて!」


 その声が響くと同時に、教皇の間の入口からスッと入ってきた。

 桜色の鎧を身に(まと)い、艶のある長い黒髪から凛とした瞳を覗かせる美少女剣士『メデュム・アネーシャ』が!


 アネーシャはサッと周りを見渡すと、ノーティスを見つめた。

 そのまま、カツン……! カツン……! と、静かに足音を立てて近寄ってゆく。

 心臓をバクバクさせているノーティスを、凛とした瞳で見つめたままゆっくりとだ。

 そしてノーティスの目の前まで近づくと、真っ直ぐ見つめた。


「アナタね、エデン・ノーティスは」

「あぁ、そうだ……」

「ずっと会いたかったわ。私の愛する、シドを殺したアナタに……!」

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