ep:54 蘇る伝説の王宮魔導士
「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
メティアは涙を迸らせ、片手を伸ばしてレイとジークに向って駆け出した。
だが無常にも、ダークネス・メテオはレイとジークを完全覆い尽くそうとしている。
「なによこれっ!」
「ちっくしょう!!」
もう間に合わない。
レイとジークがやられてしまう。
誰もがそう思った時、声が響いてきた。
「させないわよっ! 『パーメガス・クリスタル・アーーミナーーーーーーーーーーーーーー』!!!」
ピンクサファイアにプラチナ色の混じった大きな防御壁が、ダークネス・メテオを完全に防いでいたのだ。
その二つは激突して周囲を大きく煌めかせている。
彼女がより力を強めると共に、ダークネス・メテオはググッと押し返されていった。
「ハァァアアアアアアッ!! こんな技……放っちゃダメでしょクルフォス!! 消し飛びなさーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!」
その咆哮と共にダークネス・メテオはバシュンッ!! と、大きく消し飛んだ。
大きな闇のエネルギーが周囲に弾け飛んだが、その防御壁のお陰でその衝撃波も問題ない。
クルフォスはその女を震えながら見つめている。
「お、お前はっ……!」
また、クリザリッドも震えを禁じ得ない。
「なぜ今ここにっ……!」
それ以外の皆も同様だ。
メティア以外は皆、あまりの事に固まってしまった。
「うっそだろ……お、お久しぶりです!」
「アナタ、どうしてここに……!」
ジークとレイは彼女を見つめながら、驚きと嬉しさに震えている。
また、ロウは少し離れた場所から彼女に向かい深々とお辞儀をした。
「またお会い出来て、光栄です……!」
みんなが様々な顔をしている中、メティアは不思議そうに彼女を見つめている。
会ったのはこれが初めてだが、彼女からとてつもなく強大な魔力と、深く大きな愛のオーラが伝わってくるのだ。
「あの、アナタは……?!」
謎めいた顔で静かに問いかけると、彼女は凄く嬉しそうにニコーーーッと笑みを浮かべて、メティアを抱きしめた。
「アナタ可愛いーーーーーーーーーーーーーーっ♪」
「えっ、ええええっ?!」
「ノーティスから聞いてたけど、こーーーんな可愛い子だったなんて♪ あ~~~~もう大好きっ♪」
「あ、あのちょ、ちょっと、なんですか急に……!」
急に抱きつかれたメティアは、顔を真っ赤に火照らせている。
以前、ルミと入ったお風呂でもそうだったが、可愛い女の子や綺麗な女性から抱きつかれると、どうしていいか分からないのだ。
その横でノーティスはアルカナートを見据えたまま、軽く呆れたようなため息を吐いた。
「ハァッ……そうやってすぐに抱きついたら、相手は照れちゃうだろ」
「えっ? 別にいいじゃーーーーん。だって、この子可愛いんだもんっ♪」
「ったく、本当に見た目も性格も変わらないな……セイラは」
「アハッ♪ これでも美容には気を使ってるからね」
「まったく……孤児院をやりながら、本当に凄いよセイラは。ただ……」
そこで黙ると、セイラはノーティスの視線の先を見て少し神妙な顔を浮かべた。
アルカナートが悪鬼のような眼差しでこちらを見据えているからだ。
セイラも、こんなアルカナートは見た事が無い。
「ねぇノーティス、どういう事? なんでアルカナートはあんな恐い顔してるの」
ノーティスは、そこから端的に事情を説明した。
ここに至るまでの事と、アルカナートにかけられてる禁呪の事までを。
それを聞き終えたセイラは、フウッ……と、軽くため息を吐くと表情を変えた。
明るく愛に溢れているのは変わらないが、ただの優しい元気なお姉さんではなく、王宮魔導士としての凛とした顔になっている。
「まったくもう……アルカナート、悪いけど少しの間そこでジッとしててね」
セイラは魔導の杖をアルカナートにサッと向けた。
ピンクサファイヤとプラチナの混じった色の魔力がアルカナートの周りを一瞬にして覆う。
「ハァァアアアアア!! 『クリスタル・フィラキーーーーーーーーーーーーーーー』!!!」
その光がピカッと輝くと同時に、アルカナートを完全に覆い尽くす、ピンクサファイヤ色のドーム型防御壁が作り出された。
これは本来、戦場で負傷した兵士を敵の攻撃から守る為の防御壁だ。
けれど逆に使えば閉じ込める事も出来る。
セイラの魔力なら、その堅牢さは最硬度を誇るのは言うまでもない。
それを作り出したセイラの事を、メティアは尊敬と憧れの眼差しで見つめている。
「すごいねセイラさんっ! こんな使い方も出来るなんて、ボク思いもつかなかったよ」
「アハッ♪ 回復魔法使いだからって、攻撃出来ない事もないのよっ♪ 今度色々教えてあげるねっ」
「わあっ♪ ありがとうセイラさんっ!」
「いーのいーの。メティアは可愛いし大歓迎よっ♪ ただ……」
セイラは、アルカナートを閉じ込めてる防御壁をサッと見つめた。
今の所、まだ破られそうな気配はないが油断は出来ない。
「まあでも、アルカナートならすぐに出てきちゃうと思うけど、時間は稼げるわ。ねぇ、クリザリッド♪」
「セイラ……! お前は姿を消したハズ。あそこにいる……人殺しと共に!」
クリザリッドの怨念のこもった眼差しが、まるで熱を持っているようにセイラに伝わってくる。
それをジッと見つめると、セイラは一瞬瞳を閉じ軽く斜め下を向き、ハァッ……と、哀しくため息を零した。
「クリザリッド、アナタって昔からそうよね」
「なんだと?」
訝しむ顔を浮かべたクリザリッドを、セイラは凛とした瞳で見つめた。
二人の眼差しが時を超えて交叉する。
セイラとクリザリッドは、元々は同じパーティーのメンバーだった。
アルカナートが勇者として率いる、スマート・ミレニアム史上最強のパーティー。
このパーティーは破竹の快進撃を続けていた。
今のスマート・ミレニアムがあるのは、このパーティーのお陰と言っても過言ではない。
しかし、とある事件を境にアルカナートが剣を置き、そこで解散になったのだ。
「クリザリッド……あの日に何があったのかを、アルカナートから聞いてないでしょ」
「フンッ……当然だ。話を聞く必要などない。奴は、俺の目の前で惨殺したんだからな……愛するナターシャの事をっ!」
クリザリッドは、怒りと悲しみをセイラにぶつけてきた。
ナターシャの事を、心から愛していたからだ。
もちろん、セイラもそれを知っている。
それ故にクリザリッドの事が、哀れでならない。
「……じゃあ覚えてるわよね。あの日、そこに私もいた事を」
「……当然だ」
「ナターシャは自分から殺されたの! アルカナートを反逆者にしない為に!」
セイラは間髪入れずに告げた。
丁寧に話そうとすると、クリザリッドはすぐに話を断ち切ってくる事を知っているからだ。
「なんだと?!!」
「ナターシャがスパイだった事は知ってるでしょ。家族の無念を晴らす為に」
「も、もちろんだ……! ナターシャは、あの日クルフォス様に斬りかかり、逃走したんだからな。だからアルカナートが斬ったんだろう!」
「そこが違うの! ナターシャは自ら刺されにいったのよ!」
「バ、バカなっ……!」
セイラはそこから話してゆく。
クリザリッドが愛したナターシャの真実を。
ナターシャは元々スパイだった。
また、その組織に体よく利用されて挙句の果てに殺されそうになってしまったのだ。
それをアルカナートが救った。
ただ、自分を救ったとあってはアルカナートが反逆者になってしまう。
なので、ナターシャは自らアルカナートの剣で自分の胸を貫いたのだ。
セイラは、それの一部始終を知っていた。
アルカナートと行動を共にしていたからだ。
けれど、クリザリッドは違う。
最後の場面にだけ出くわしたせいで、大きな誤解をしていたのだ。
「クリザリッド、これが真実よ。私が嘘言わないのは知ってるわよね。ずっと同じパーティーだったんだから」
「うぐっ……! な、ならば俺はっ……!」
「だから昔から言ってたでしょ。人の話はちゃんと聞いてって……」
「くっ……!!」
クリザリッドは軽くうつむき、歯をギリッと食いしばったまま震えている。
心で完全に分かっているからだ。
確かにセイラが嘘をつかない事も、それ故に今の話が真実であるまでをも。
だが、認める訳にはいかない。
これを認めてしまえば、あの日から今までの自分の全てを否定する事になるからだ。
「ふざけるなよ……セイラ……」
「クリザリッド……!」
顔を軽くうつむかせ震えているクリザリッドを、セイラは哀しい眼差しで見つめている。
セイラも分かっているからだ。
あの日から、あまりにも時間が経ち過ぎた。
「やっぱり受け入れられないか……でも、受け入れなきゃダメだよ。そうしなきゃクリザリッド、アナタずっと不幸なままなんだから……!」
そう告げてきたセイラの事を、クリザリッドはバッと顔を上げ睨みつけた。
「黙れっセイラ! たとえそれが真実だったとしても、俺には不要だ!」
「なんでよっ?!」
切ない顔で身を乗り出したセイラに、クリザリッドは片手で剣をビュッと振り向けた。
瞳は憎しみの炎に燃えている。
「俺はアルカナートを憎んで生きてきた! そして今俺はクルフォス様の側近であり、キサマらを葬る闇の王宮魔道士だ!」
「ダメだよクリザリッド! そんなの間違ってるからっ!」
セイラは心からの想いをぶつける。
だが、クリザリッドは聞き入れない。
「それにセイラ、お前だけでは役不足だ。俺とクルフォス様。それに、もうすぐその壁を破って出てくるアルカナートを前にしてはな……!」
今クリザリッドが告げてきた事は、実はノーティス達も感じていた。
確かに伝説の王宮魔導士であるセイラが加わった事により、戦力は大幅にアップした。
また、メティアと二人なら闇の攻撃は防ぐ事が出来る。
ただ、決定的な攻撃力が足りないのだ。
アルカナートが壁を打ち破って出てくるのは時間の問題。
そうすれば、ノーティスはアルカナートしか戦えない。
なので、みんな思っている。
せめてもう一人、ノーティスに匹敵する力を持つ強力な戦士がいればと。
それを分かっているクルフォスは、クリザリッドを見つめニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「そうだ。その通りだクリザリッド! 決定的な力が無い限り、我らを倒す事など不可能なのだ! クックックッ……!」
けれど、セイラは動じない。
凛とした瞳でクルフォスを見つめている。
「悪いけど、喜ぶのはまだ早いわ」
「なんだと?」
「そもそも、私がなんで今日ここに来れたと思ってるの」
「どういう意味だ?!」
クルフォスが謎めいた顔を浮かべた時、入口からタタッとルミが入ってきた。
「ノーティス様っ! ご無事ですかっ?!」
「ルミっ? なんでここに?! 危ないから下がっててくれ!」
その光景を目の当たりにした皆は、キョトンとした顔でルミを見つめている。
だが、クルフォスは噴き出すように笑い出した。
「ハハハハハッ! 誰が来るかと思えば、キサマはエデン・ノーティスの執事ではないか」
ここからより完全オリジナル展開になりますので、まだの方は是非ブクマお願いします!




