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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys:6 最終決戦! 教皇の間で激突する光と闇
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ep:52 絶望を告げる漆黒の鎧

「デートの中止はさせないわ! 雷ごと凍り付かせてあげる!! 『アブソリュート・ミューーーーーーーーーデン』!!!」


 レイから絶対零度の凍気を持った魔力が放たれた。

 その凍てつく魔力が、クリザリッドの漆黒の雷光と激突して周囲を青黒く煌めかす。

 それと同時に、ジークも巨大化させた真っ赤なハルバードを思いっきり振り抜いた。


「雷なんて、跳ね返しちまえば晴れにならあっ!! 『アルティメット・ギガントアックスーーーーーーーーーーーーー!!!」


 ジークの技が周囲をより大きく煌めかせ、凄まじい衝撃波を周囲に巻き起こしてゆく。

 そのさなか、ロウはエメラルドグリーン色の魔力を最大限に輝かせ、クルフォスを見据え大きな魔法弓をギリギリを引いていた。

 クルフォスの動きは、メティアが結界を張り、アンリが超重力魔法『ハロー・デスグラビティ』で封じている。

 クルフォスは完全に動けない。

 それを見据えるロウの慧眼な瞳が、キラリと鋭く光る。

 

「クルフォス、これが僕達の力だ……!」

「ぐぐっ……! お、おのれキサマら、こしゃくな真似をっ!」


 動きを封じられているクルフォスは、ギリッと顔をしかめた。

 普通の者であれば、とっくに潰れていておかしくない。

 これに耐えているのは、流石は教皇といった所だ。

 それを見据えているアンリはニヤリと笑う。


「ペッタンコにならんとは、さすがクルフォスよの……じゃが、力は緩めんニャッ!」


 また、メティアは力を振り絞りながらクルフォスを見据えている。

 ここが正念場だと分かっているのだ。


「ボクもこの結界は守ってみせる! みんなに被害がいかないように……!」


 そんなアンリとメティアの真ん中で、ロウはキッと瞳に力を込めた。


「僕達の輝きでクルフォス……貴方を討つ! その身に受けるがいい! 正義の矢を!! 『コズミック・メテオアローーーーーーーーーーーーーーーーーー』!!!」


 エメラルドグリーン色の光を輝かせた大きな矢が、渦を巻きながらクルフォスに突き進む。

 ぶつかる直前にアンリは超重力の魔法を解き、それによりロウの放った矢がクルフォスに直撃した。

 眩いエメラルドグリーン色の光が周囲をカッ!! と、明るく煌めかす。

 だが、その矢は貫く事無くクルフォスの身体でドガアアアアアアンッ!! と、爆音を立てて爆ぜた。

 教皇の兜型の仮面が吹き飛んで床に落ち、カラカンカラン……と、床に転がる。


「どういう事だ?」

「ニャニャッ? ダメージは与えとるようじゃが……」

「……えっ、アレは?!」


 メティアが驚くと同時に、ロウとアンリも目を丸く見開いた。

 爆風がサァァァッ……と、晴れゆく中から現れた、漆黒に輝いているクルフォスの姿を目の当たりにしたからだ。


「なっ?! それはまさかっ!」

「ぬうぅっ、あんな物着てちゃ効かんハズだニャ……!」

「間違いないよ、アレは……!」


 ロウ達が驚愕に目を見開く前で、クルフォスはニッと自信に満ちた笑みを浮かべた。


「だからムダだと言っただろう。お前達の輝きなど通じぬ……! ダーク・クリスタルで作られた漆黒の鎧『ダーク・シュラウド』を(まと)った余にはな!」


 クルフォスが(まと)っている鎧ダーク・シュラウド。

 これがどれだけ脅威になるのかを、ロウ達は充分過ぎるほど分かっている。

 もちろん、ロウ達も魔力クリスタルから溢れ出る光を身に(まと)い、それは力を増幅させるだけはなく、大きな防御力を持つ鎧代わりにもなっている。

 だが、クルフォスのダーク・シュラウドはその比ではない。

 鎧全てがダーク・クリスタルで出来ているのだ。


「ロウ、アンリ、メティア。もう分かっただろう。余の魔力を限りなく強大にさせる鎧、このダーク・シュラウドの前では……お前達など無力に等しいのだ!」

「くっ……! 本当に存在したとは」

「ニャッハァ……まっ、あ奴が悪魔と契約した証のような物じゃの」

「そうだね……でも、ボクは諦めない。きっとまだ勝てる方法があるハズだから……!」


 ロウとアンリが苦い顔をする中、メティアは凛とした眼差しでクルフォスを見つめている。

 クルフォスはそれが(しゃく)(さわ)った。

 圧倒的な力を見せつけているにも関わらず、メティアだけが恐れていないからだ。


「ほう……メティア、お前はまだ余に勝てると思っているのか」


 蔑んだ眼差しで見下ろしてくるクルフォスを、メティアは黙ったまま見つめている。

 クルフォスはそれが気に入らない。


「フンッ……まぁ、ロウやアンリと違って分からぬだけか。愚かな……それに、見るがいい。奴らの姿を」


 そう告げられメティア達がハッと横に振り向くと、その瞳に映った。

 ノーティスがアルカナートと鍔迫り合いをしながらググッと剣を押され、ジークとレイが傷ついた姿で苦しく顔をしかめながら、クリザリッドに向かい合っている姿が。


「ノーティス! ジーク! レイ!」

「くっ……ノーティス、まだ先生の目は醒ませないか……!」 

「にゃ~~~~ジークとレイ、あ奴ら二人でもクリザリッドは倒せんのか……!」


 アンリ達が悔しさと不安な表情でノーティス達を見つめる中、クルフォスは片手の中に闇の魔力をバチバチバチッ……!! と、(たぎ)らせてゆく。


「絶望を知った所で死ぬがいい……まずはキサマからだメティア!!」


 クルフォスはメティアに片手の平をバッと向け、闇の魔力を放った。

 強烈なエネルギー波がメティアに襲い掛かる。


「しまったっ!」


 ノーティスに気を取られてたメティアがハッと目を見開いた瞬間、アンリがサッと跳びかかり闇のエネルギー波を背中で受け止めた。


「にゃあああああっ!!」


 悲鳴を上げたアンリ。

 その身体を、メティアはそのまま真正面から受け止めた。


「アンリっ!!」

「アンリしっかりするんだ!!」


 必死で声をかけるメティアとロウの瞳に映る。

 魔導服の破れた部分から覗かせる、アンリの焼け焦げた背中が。


「ごめんアンリっ! ボクがよそ見してたせいでっ!」


 悲壮な顔で叫ぶメティアを、アンリは額から汗を流しながら見つめて力なく微笑んだ。


「ニャ……よいのじゃメティア……気にするでない。お主が無事ならそれでよい」

「アンリっ!」

「ニャハ……まぁ、同志と言えども、私の方が先輩だからの……守るのは当然ニャ……」

「ううっ……! アンリ待ってて今すぐ治すから!」


 メティアは両手をアンリの背中にかざし、全力で黄色い光を放ってゆく。

 最上級の回復魔法の光を。

 けれど、メティアは苦しく謎めいた顔を浮かべた。

 まったく治らないのだ。

 どんな傷も治す事の出来る、最上級の回復魔法を放っているにも関わらず。


「なんでっ? なんで治らないの!!」


 瞳に涙を(にじ)ませメティアが苛立つ中、ロウはハッと気付きクルフォスを見つめた。


「まさかっ……!」


 ロウに嫌な予感がよぎり胸がザワつく。

 もし思っている通りならアンリの傷は治らないのはもちろんの事、勝ち目が無いからだ。

 その嫌な予感を感じているのを見透かしたクルフォスは、一瞬軽く瞳を閉じた。


「クククッ……その通りだロウよ。闇の力で受けた傷は、回復魔法では治せぬ」


 アルカナートと戦いながらそれを耳にしたノーティスは、悔しさにグッと歯を食いしばった。


───くそっ! メティアでも治せないんじゃ、このままだとみんながマズい……!


 本当はすぐにでも加勢に行きたいが、今のノーティスにそれは無理だった。


───ダメだ……一瞬でも隙を見せたら()られる。


 並みの相手なら問題ない。

 けれど、今ノーティスが相手にしているのは、ダーク・シュラウドの事を除けばクルフォスよりも強い、史上最強の勇者イデア・アルカナート。

 一瞬の隙が命取りになる状況で、アルカナートに背を向けるのは自殺行為だ。


───どうしたらいい……いや違う! だからこそ俺が、一刻でも早く師匠の目を醒まさなきゃいけないんだ!


 ノーティスはギュッと剣を握りアルカナートに剣を構えたまま、白輝(びゃっき)の魔力クリスタルを(たぎ)らせた。


「師匠……必ず貴方を倒して、共振で目醒めさせます! 数多の流星よ、今こそ最高潮に煌めけ!! 『バーン・メテオロンフォーーーーーーーーーーーーーーーーース』!!!」

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