ep:51 ロウの采配と最強コンビ
「うわあああああっ!」
ノーティスは思いっきり吹き飛ばされてしまった。
金色の鎧を纏い白輝の魔力クリスタルを輝かせている、アルカナートの高速剣によって。
それでもノーティスはググッと立ち上り、苦しそうな顔で見つめている。
まるで、悪鬼のような眼差しで自分を見据えてくるアルカナートを。
「くっ、師匠……! 俺はこんな形でアナタと……」
そこまで言った時、アルカナートは再びノーティスに襲い掛かってきた。
スマート・ミレニアム史上最強の剣が、凄まじい勢いでノーティスに向けて放たれる。
ノーティスはそれを何とか剣で受け止めたが、ズザアァァァァァッ……!! と、大きく後ろに退りぞかされてしまった。
「くうっ……! さすが師匠。なんて重い剣なんだ! 昔よりもさらに強くなってる……!」
そう零したノーティスは、頭を軽く左右に振り剣を構えて想いを巡らす。
───違うっ……! あれは修行だったからだ。恐らくこれが師匠の本来の強さなんだ……!
クルフォスの術にかかっている今、アルカナートの剣には一切の躊躇いが無い。
相手がたとえ大切な弟子であってもだ。
その事を改めて認識したノーティスに、ロウが横からサッと告げてきた。
慧眼な瞳に宿す光が揺らめく。
「ノーティス、闇雲に戦ってもダメだ。今ハッキリと思い出した」
「ロウ?」
「時間が無いから端的に言う。カギとなるのは《同種魔力共振》だ」
「ど、同種魔力共振?」
「そうだ。あの術は相手の意識を封じている。だが、同じ種類で同じ量の魔力を相手の魔力クリスタルに注ぎ込めば、心の中で意識自体は戻る」
「て、事は……!」
ハッと目を見開いたノーティスの側で、ロウはコクンと軽く頷いた。
「そう。キミが、先生と同じだけの魔力を注ぎ込めばいい。後は、先生が心の中の人を……」
「くっ、やはりそれは……師匠がやらなければいけないのか?」
「あぁ……心の中で先生の意識は目覚めるが、完全に目を醒ますにはそれしかない」
「くっ……! ロウ、それなら師匠はきっと目覚めないよ。師匠は優しいから。特に、愛した人には……」
悔しそうに顔を斜め下にうつむけたノーティスを、ロウは静かに見つめている。
確かに、ノーティスの言う通りである事を知ってるからだ。
けれど、ロウは諦めない。
「でもノーティス、分かっているハズだ。先生はいつも最高の選択をする事を……!」
「ロウっ……!」
ノーティスはサッと顔を上げてロウを見つめると、アルカナートに精悍な顔を向けた。
心に灯った決意は揺るがない。
「ありがとう……! 俺は信じるよ。師匠が必ず目を醒ます事を。その為に俺は……必ず師匠の位まで魔力を高めてみせる!」
「頼んだぞノーティス。僕達の分まで……!」
コクンと頷いたノーティスを見ると、ロウは魔導の杖を片手で高く掲げた。
エメラルドグリーンの輝きを煌めいてゆく。
「みんな! 先生はノーティスに任せる! 後は、僕とアンリとメティアでクルフォスを! ジークとレイはクリザリッドを頼むっ!」
「へいよ、任しときなロウ!」
「フフッ♪ 私の美しさで倒してみせるわ」
皆、力強い笑みを浮かべてそれぞれの相手に構えを取った。
そして、額の魔力クリスタルを最大限に輝かせてゆく。
もう、出し惜しみをしている余裕など欠片も無い。
その光景を玉座の横から目の当たりにしたクルフォスは、ロウ達を見下ろしニヤリと嘲笑った。
「ロウよ、天才魔導軍師であるお前らしくもない采配だな」
「なんだと……!」
「ノーティスは決してアルカナートには勝てん。また、クリザリッドもアルカナートに匹敵する力を持つ」
「くっ……!」
「そして、お前達三人では、余には決して勝てぬクックックッ……」
嘲笑ってくるクルフォスに向かい、ロウは魔導の杖をビュッと振り向けた。
ロウの瞳がキラリと光る。
「クルフォス、貴方こそ何も分かっていない!」
「なんだと……」
「レイとジークは最高のコンビ。二人が噛み合った時の力は絶大だ!」
「……何を言うかと思えば」
「それに、ノーティスなら必ず先生の目を醒ましてくれる。そうなればクルフォス……貴方に勝ち目はないっ!」
「クククッ……そんな事を出来る訳がないだろう。奇跡でも起こさん限りな。ハーッハッハッハッ!」
クルフォスは、漆黒のオーラを立ち昇らせながら大きな声で嘲笑っている。
そんな事は不可能だからだ。
二人がクリザリッドと倒す事も、ましてやアルカナートの目を醒まさせる事など決して出来ない。
でも、ロウは諦めない。
「クルフォス……僕達は今まで魔力クリスタルを輝かせ、どんな困難をも乗り越えてきた」
「残念だが、それも今日で終わりだ」
「いや、終わらないさ。僕達にはこれまで幾度となく奇跡を起こしてきた、光の勇者エデン・ノーティスがいる」
「フンッ……その光も今日消える」
「消させはしない! 彼は僕達の希望の光だから……!」
ロウが魔導の杖からエメラルドグリーン色の魔力を放つと、アンリとメティアもそれに続く。
「その通りニャ! あ奴が光を消す時は、元々なりたかった学者になる時じゃからの」
「そうだよねアンリ。ボクもノーティスからそれを聞いた事があるよ」
「ニャハハッ♪ お主も知っておったか。ならば、奴を学者にする為にも……」
「うん! ボク達だってやるしかないよ!」
アンリ達の話が耳に入ってきたノーティスは一瞬嬉しそうに微笑むと、アルカナートを見据えてジャキッと剣に力を込めた。
「師匠……必ずアナタの目を醒ましてみせます。俺のかけがえのない仲間達を守る為にも……!」
アルカナートはそれを無言のまま、悪鬼のような眼差しで見据えている。
だが、ノーティスの瞳の光は揺るがない。
「全力でいきます……師匠っ!!」
ノーティスは剣を斜め上に振りかぶり、真っすぐ跳び向かった。
白輝の魔力クリスタルが、大きく光り輝やいてゆく。
それをチラッと見たジークとレイは、再びクリザリッドの方へ向き直った。
「レイ、俺らもやるしかねぇぜ……!」
「あら、当然でしょジーク。今までヤル気なかったの?」
「んなワケねーだろ」
「そっ♪ ならいいわ。それに、私とコンビ組んでるんだから、いつもよりやってくれるわよね」
「と、とーぜんだろっ! いつもの百倍はやったらあっ!!」
「フフッ♪ 頼りにしてるわ。帰ったら、デートしてあげる♪」
「マ、マジかよレイっ!」
メチャメチャ嬉しい顔を振り向けたジークを、レイはキッと睨んだ。
喜ばすだけではなく、しっかり締めるのもレイらしい。
「よそ見しないでっ!」
「す、すまねぇ」
サッとクリザリッドに向き直ったジークの側で、レイも真っすぐ前を見つめた。
セクシーなブロンドヘアが静かに靡いている。
「だから、絶対に死んじゃダメよ。デートのキャンセルは許さないから……♪」
「お、おおっ。うっしゃ……やったらあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ハルバードを持つ両手を震わせながら、気合い充分な咆哮を上げたジーク。
それを前に、クリザリッドはフウッ……と、呆れたようなため息を吐いた。
「ジーク、レイ。敵を前にそのような話をするとは、王宮魔導士として恥を知れ」
「ああん? んだよ、うっせーな。俺はこれが一番ヤル気が出んだよ!」
「フフッ♪ クリザリッド、もしかしてアナタ妬いてるの?」
「フンッ……礼儀の話だ。それに、妬いてなどいない。お前達を哀れんでいるだけだ」
その言葉にレイとジークが軽く謎めいた顔を浮かべる中、クリザリッドは漆黒の艶を帯びる大剣の剣先を片手でスッと上に掲げた。
その剣の先にバチバチバチッ……!! と、闇の雷のようなエネルギーが滾ってゆく。
禍々しくも神々しく巨大な力は、まさにクリザリッドその物のようだ。
「この力の前に、オマエ達が生き延びる可能性は無い……!」
その力を前に、レイとジークも必殺技の体勢を取り魔力クリスタルを輝かせいく。
「ハァァァァアアッ! 美の女神アフロディーテの名の下に、究極に煌めきなさい! 私の魔力クリスタル!!」
「うおおおおおおっ! 戦神を超えて高まりやがれっ! 俺の魔力クリスタルーーーーーーーーーーーーーっ!!」
レイのアクアマリン色の輝きと、ジークの赤いロッソ色の輝きが激しく煌めく。
まるで、二人の命そのものの輝きのようだ。
クリザリッドの闇にも、決して引けをとってはいない。
そんな二人をクリザリッドは漆黒の瞳で見据えたまま、必殺技を繰り出してゆく。
「残念だが、お前達のデートは中止だ。この漆黒の雷光によって永遠にな! 喰らうがいい!! 『ダークネス・ヴァロンディーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』!!!」




