ep:50 立ちふさがる銀色の剣士と金色の剣士
「さあ、どうするクルフォス……!!」
ノーティスは女神の記憶を片手に乗せたまま、クルフォスを精悍な瞳で見据えている。
その姿を見つめていたロウ達も、勢いよくザッと立ち上がった。
この機を逃す訳にはいかないからだ。
みんな瞳に光を宿し、クルフォスを強く見据えている。
「教皇、アナタの漆黒の陰謀はここで終わりにすべきだ……!」
「そうよ。全てが明らかになった今、それを認めないのは美しくないわ……!」
「ニャハハハッ♪ その通りニャ。クルフォスよ、全てを認めるのじゃ」
「それがいいぜ。スッキリしてんのが一番だ」
「ボクも、そう思う。ちゃんと罪を償う為にも、共生の道を選ぶべきだよ……!」
クルフォスはもう、完全に言い逃れ出来ない。
仮面の奥で恐れに目を見開いたまま、ジリジリと後ろに退がってゆく。
もちろん、クルフォスは悪とはいえ教皇。
その魔力は絶大だ。
しかし、ノーティス達全員となるとさすがに分が悪い。
だがその時、教皇の横からザッと二人の剣士が現れた。
二人共長身で、全身から絶大な魔力を立ち昇らせていやる。
その二人の剣士が現れると、クルフォスは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「おおっ! お前達!」
「クルフォス様、ここは我々にお任せを」
「フンッ……」
二人の剣士はそれぞれ銀色の鎧と金色の鎧を纏っていて、胸に漆黒の輝きを持つ『ダーク・クリスタル』を埋め込んでいる。
ただ、見た目の系統は違う。
クルフォスに声をかけた銀色の剣士の方は、闇の王宮魔導士『メタニア・クリザリッド』といい、ウェーブがかった金髪のミディアムヘアから、澄んだ深海のような瞳を湛えている。
その姿は邪悪でありながら神々しい、まるで邪神のようだ。
しかしノーティス達は、もう一人の金色の剣士の方を見て驚愕に目を見開いていた。
「う、うそだっ……!」
「そんな、ありえない……!」
「うそよ……こんなのっ……」
「ニャハァ、何があったのじゃ……!」
「おい、うそだろ……うそだって言ってくれよ」
皆が目を見開き震えながら見つめている金色の剣士。
彼はスタイリッシュな体型を金色の鎧に包み、漆黒の艶のあるサラサラの長髪から射貫くような眼光を放っている。
その金色の剣士を皆が驚愕しながら見つめる中で、唯一メティアだけが謎めいた顔で皆を見つめていた。
「み、みんな、一体どうしたの?」
不安げに見つめているメティアに、皆金色の剣士の方を向いたまま答えていく。
「メティア、お主も知っておろう。スマート・ミレニアム史上最強の勇者をニャ……」
「えっ?」
「ある日突然剣を置いて僕達の前から姿を消した……」
「ちくしょう……! あれは、間違いなく俺達を育ててくれた……」
「私に運命の人を教えてくれた、アルカナートよっ……!」
「そ、それじゃまさかっ……!」
メティアはノーティスをサッと見つめた。
ノーティスは金色の剣士を見つめたまま、額からツーっと冷や汗を流している。
今対峙している剣士が、どれだけ強いかを身を持って知っているからだ。
「あぁ、そうだよメティア。あの金色の剣士は、みんなにとっての先生であり……俺の師匠だ!」
「そ、そんなっ! でも、なんでノーティスのお師匠様がクルフォスを守ってるの……!」
驚き謎めいた顔で、メティアはアルカナートをスッと見つめた。
メティアは世代的にもそうだが、ノーティスと出会い王宮魔導士になったので、アルカナートと直接面識はない。
ただ、時折ノーティスから聞いてはいた。
アルカナートは、いつもぶっきらぼうで酒が好きで不愛想だが、誰よりも真の強さと優しさを兼ね備えている至高の男だと。
けれど、今クルフォスの側にいるアルカナートは、それとは全然違う。
───あれがノーティスのお師匠様? 確かに物凄く強い魔力と力は感じるけど、なんか、悪魔みたいなオーラが混じってる……まさかっ?!
メティアがハッとした瞬間、クリザリッドはニヤリと笑いザッと前に出た。
「クククッ……俺は闇の王宮魔導士『メタニア・クリザリッド』だ。まあ、もう一人は紹介するまでもないだろう……」
クリザリッドは絶大な魔力を立ち昇らせながら、闇を宿す瞳でノーティス達を見下ろしている。
その魔力はアルカナートに匹敵するレベルだ。
ノーティス達は、そんなクリザリッドをギリッと睨みつけた。
心から滾る怒りが抑えられない。
「クリザリッド! キサマ、師匠に何をしたっ!!」
「そう、答えるんだクリザリッド。先生に何をしたんだ……!」
「私の大切なアルカナートに何したのよっ!!」
「そうだぜテメェ! ぜってぇ許さねぇからなっ!」
皆が怒りを滾らす中、アンリはハッと気づいて目を見開いた。
「ニャニャッ……! クリザリッド、お主洗脳したのか。そのダーク・クリスタルで!」
「ほう、さすがはアンリ。この状況でそれを考えるとはな。だが惜しかったな」
「ニャンだと?」
「洗脳したのは俺ではない。偉大なる教皇クルフォス様だ」
「ニャッ?! クルフォスが……!」
アンリと同様ノーティス達も謎めく顔をする中、クリザリッドはアルカナートが闇に堕ちた日の事を語ってゆく。
ずっとサガの事件を追っていたアルカナートは、ある日ついに真相を掴み教皇の間へ乗り込んだ。
真犯人と、それを指示した黒幕がいるからに他ならない。
アルカナートは教皇の間のドアを蹴破り、ドカドカと歩きながら黒幕であるクルフォスに詰め寄った。
『クルフォス……闇に堕ちたテメェは、俺の光で叩きってやる!』
だがそこに、唯一アルカナートに匹敵する力を持つクリザリッドが現れたのだ。
『教皇様のご指示通り殺しただけだ。奴は我が国にとって危険だったからな』
『ざけんなよクリザリッド……だったらなぜ俺の名前を語った!』
『言わずと知れた事。キサマを、悩み苦しめる為だ。なぁ……人殺しが!』
『ちっ、ナターシャの件か……!』
『そうだ。お前は愛する女を殺した』
『違うっ! お前は誤解してるんだ! ナターシャは……』
『黙れっ!! アルカナート……俺はナターシャを愛していた。だが、ナターシャが愛していたのはお前だった……なのに、なのに、お前は殺した! あの日、俺の目の前で!』
『だから聞け、クリザリッド!』
『問答無用! キサマとはここで決着をつけてやる!』
その咆哮と共に、クルフォス目の前で激闘が始まった。
アルカナートの白輝の光と、クリザリッドの漆黒の光が、強大な魔力と剣によって激突する。
教皇の間が激しい音と光で満ち溢れ、技の威力が全体を震わす。
その戦いは、王の間を激しく煌めかせ震わせながら続いたが決着は着かなかった。
『ハアッ……! ハアッ……! クリザリッド、やるじゃねぇか。クルフォスと同様、闇に堕ちたくせによ……!』
『ハアッ……! ハアッ……! 当然だアルカナート。俺は、キサマを葬る為に闇に堕ちたのだからな……!』
アルカナートはクリザリッドを、クリザリッドはアルカナートを、互いに全神経を集中させて睨み合っている。
その隙をついて、クルフォスはアルカナートに放ったのだ。
教皇のみが使える伝説の魔法『ソウル・フィラキス』を。
これは相手の意識を封じ、かけた者の命令に完全に従わせる事が出来る禁呪魔法。
心の中にいる大切な人を、自分の心の中で殺さない限り解けない悪魔の技。
「故に、お前達がどんなに叫ぼうとアルカナートは目覚める事はない」
クリザリッドはノーティス達を見てニヤリと邪悪な笑みを浮かべると、アルカナートを横目でチラッと見て身体を軽く震わす。
「クククッ……まあ奴の事は殺したかったが、今や死んだも同然。クルフォス様の命に従う操り人形に等しいのだからな」
それを聞き怒りが限りなく膨れ上がってゆくノーティス達は、力強く戦闘態勢の構えを取った。
「クリザリッド、クルフォス、お前達だけは絶対許さないっ!」
「先生の心を弄び嘲笑うその罪、万死に値するっ……!」
「美しさの欠片もないアナタ達は、私が必ず断罪してみせるわ!」
「テメェらブッた斬って、先生の目醒ましてやるよ!」
「必ずアルカナートを救ってみせるニャ……!」
「ボクも許せない……人の心を弄ぶアナタ達を!」
ノーティス達は、それぞれの魔力クリスタルから輝きを溢れさせ全身に纏ってゆく。
クルフォスとクリザリッドを必ず倒し、アルカナートを救う決意と共に……!




