表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-5 宿命のライバル! 銀色の勇者シド
44/71

ep:44 心を斬る二つの真実

「どういう事だシド!」


 ノーティスはあまりの衝撃に、目を見開きシドを見つめている。

 今言われた言葉が信じられないからだ。


「師匠が、キミのお父さんを惨殺……?!」

「あぁ、そうだ。お前の師イデア・アルカナートは、俺の父さんを卑怯な手で惨殺したっ!!」


 シドはノーティスをキッと睨みつけると、瞳にジワッと涙を(にじ)ませた。

 込み上げる怒りと悲しみで身体は震えている。

 だがノーティスは、それでも認めない。

 アルカナートが卑劣な事をしないのは、誰よりもよく分かっているからだ。


「そ、そんなバカなっ! 師匠は絶対そんな事はしない!」


 ノーティスは大きく身を乗り出した。

 けれど、シドも決して譲らず身を乗り出す。


「したんだ!! かつてトゥーラ・レヴォルト最強の勇者と言われた俺の父さんを……!!」

「最強の勇者……ハッ、まさかっ?!」


 この話を聞いてノーティスは思い出した。

 修業時代に一度だけ聞かせてもらった、アルカナートの忘れられない戦いの事を。


「シド! キミのお父さんはあの『アルベルト・サガ』か?!」

 

 その名前を聞いた瞬間、シドはピクッと眉をひそめた。


「知っているのか。俺の父さんの事を……!」

「ああ、知ってるよシド。昔、師匠から聞かせてもらった事があるんだ。キミのお父さんであるサガは、誇り高き最高の戦士だったと……!」

「ふざけるな! 奴は、くっ……奴は、そんな父さんを汚い手で惨殺したんだぞ!」

「違うっ!」


 ノーティスはそこから語り始めた。

 アルカナートから聞いたサガとの戦いの事を……


 まだ幼かった頃のシドを連れ家族で桜を見に来ていた時、サガはスマート・ミレニアム軍に出くわしてしまった。

 スマート・ミレニアム軍の部隊が、その場へ視察に来ていたのだ。

 視察の目的は、その頃まだ建設中だった第三都市ホラム。

 ただ、ここは元々トゥーラ・レヴォルトの領地だった為に、サガは勝手な建設に激怒した。

 それに、ここに『クリスタルタワー(そんな物)』を建てれば、より環境が破壊されていくのは明白だったからだ。

 しかし、部隊の長である『ドロス』はサガを嘲笑った。


『それがどうした。新たなエネルギーの前に、そんな事はどうでもいい。下らん蛮族め』


 ドロスはサガの訴えを吐き捨てた。

 さらにそれだけではなく、部下達に命令してサガを妻子共に殺そうとしてきたのだ。

 もちろんサガは、それに激しく応戦。

 シド達を逃がし、一人でドロス達の部下と戦った。

 その力は凄まじく、部隊の半数をなぎ倒していったのだ。


『お前達には決して負けぬ!』


 この話を、なぜノーティスが知っているのか疑問に思うかもしれない。

 けれど、それには理由がある。

 なんと、サガは偶然そこに来たアルカナートに出会ってしまったのだ。

 もちろん、アルカナートはサガを一目見て最高の戦士だと見抜き、互いに戦士の誇りを持って正々堂々と戦った。

 また、母親の手を振りきりサガの下へ駆け戻ったシドも、二人の激闘を目の当たりにする事になる。

 しかしそんな中で、ドロスは違った。


『忌々しいアルカナートめ、この機にまとめて罠にかけて葬ってくれるわ!』


 薄汚い心で策謀を巡らすと、ドロスは現場に駆け戻ってきていた幼いシドに目をつけた。

 シドを拐って魔法で眠らすと、人質に捕り醜くほくそ笑んだ。


『これ以上動けばお前のガキを殺す! ヒーッヒッヒッヒッ』


 その光景を見てサガが動きを止めた瞬間、ドロスは禁呪『ベルセルク』を放ちサガを狂戦士へと変えた。

 さらに罠を発動させ、二人をそのまま灼熱の炎のドームの中に閉じ込めたのだ。

 ただ、当時まだ見習いではあったが巨大な魔力を持つロウによって炎のドームは破られ、アルカナートはドロスを反逆者として成敗した。

 もちろん、サガとは再び戦場で会う約束をしてその場を去ったのだ。

 ノーティスがここまでを話すと、シドは全身をより怒りに震わせた。


「確かにその結末を俺は知らなかった……けど、アルカナートは俺の父さんを惨殺したんだ!!」


 今度はシドが語り始める。

 その先にあったのは、あまりに悲惨な出来事だった。

 サガはアルカナートと別れた後、シドを背負って国境まで辿り着いた。

 だが、シドが目を覚まし背から降りた時、そこに男が現れたのだ。

 男は闇夜の中、魔導服の下から強大な魔力を滾らせサガに襲いかかってきた。

 その男と対決しながら、サガは思う。


───この強さはアルカナートに匹敵する……!


 そんな中、男は静かにサガへ告げてきた。

 自分はアルカナートだと。

 サガは信じられなかった。

 しかし、闇夜の中でフード下の顔は確認出来ない上に、声はとてもアルカナートに似ている。


『やはり、スマート・ミレニアムの勇者として、お前を放ってはおけぬ』


 男はそう告げるやいなや、陰に隠れていた部下達にシドを襲わせ人質に捕ると、抵抗出来ないサガを一斉に斬りつけた。

 サガはそれでも闘気を奮い立たせ、シドだけは何とか逃がす事に成功。

 だがその後、斬り刻まれた無惨な姿となって帰らぬ人となったのだ。


「これが真実だ。ノーティス、お前は師にも騙されているんだ!」

「そ、そんなっ……!」


 もちろん、これを行ったのはアルカナートではない。

 アルカナートに恨みを持つ者が、名を語り行った凶行だ。

 でも、シドは当然それを知らずに生きてきた。

 また、スマート・ミレニアムではアルカナートがサガを討った事になっていた。

 当然アルカナートは烈火の如く怒り真相を解明しようとしたが、真相は解明出来ないまま今に至る。

 もちろんノーティスは、ここまでは聞かされていない。

 聞かされたのは、サガと別れた所までだ。

 それ故に、心が一瞬暗雲に覆われる。


「師匠が、俺を……」


 ノーティスはググッ……! と、身体を震わせながら、アルカナートと過ごした日々に想いを巡らせている。

 そして、同時に思い出した。


───そうだ! 以前にセイラから……


 ノーティスは昔一度だけ、セイラからそれに関する聞かされていた。

 アルカナートは、とある事件を境に剣を置き、その後、今でも密かにサガを惨殺した犯人を捜していると言っていたのだ。

 そして、以前ルミとセイラに会いに行った時に聞かされた事をハッキリ思い出した。


『犯人のメドがついたらしいの……』

『えっ、セイラ。それって……』

『うん、あの件よ』


 またそれ以降、アルカナートは行方は不明になっている。

 ノーティスはその事を伝えると、シドは怒りに身を震わせた。


「う、嘘だ……!」

「本当なんだシド。あれから師匠の行方は不明だ。もしかしたら……」

「黙れっ!!」


 シドは剣を横にビュッと振り空を斬った。


「そんな話を信じてたまるかっ!」

「本当なんだよシド! それに、師匠はいつだって正々堂々と戦ってきた。幼い頃、俺をフェクターというモンスターから救ってくれた時も、ドラゴンと戦った時もそうだ。いつだって師匠は……」

「デタラメを言うなっ!!」


 怒声を上げノーティスの言葉を遮ったシドは、瞳に涙を(にじ)ませたまま身体を震わせている。

 シドは分かっているからだ。

 ノーティスが嘘を一切言わない男であるは勿論、語られた内容が真実である事も。

 けれど、それだからこそシドの気持はより締め付けられていく。


「だとしたら……だとしたら……俺は、今まで一体何の為にっ……!」

「シド……!」


 震えるシドをノーティスは哀しく見つめている。

 また、レイ達もそうだ。


「ううっ、なんなのよっ……こんな哀しい美しさ、耐えられないわよ……!」

「クソったれが……! ちくしょう。アイツら、バチバチやってた時よりずっと苦しそうじゃねぇか……!」

「ニャハァ……シドよ。ノーティスと同じく、真実を受け入れるのはあまりにも辛かろぅ……!」


 レイ達が心にグッとしたものを感じ見つめる中、ノーティスは立ち昇るオーラをスッと収めた。


「シド、もう戦うのは止めよう。ユグドラシルの件は俺が話す。スマート・ミレニアムの教皇に……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ