ep:41 ノーティスに届かないレイの叫び
「フフッ♪ 邪魔しないでもらえる? 私これから、愛しいノーティスとデートなの」
アンリがアルゴルに達に、アンリシスターズをぶつける少し前……
レイは片手で髪をセクシーにかき上げながら、自信に満ちた華美な瞳でキースを見つめていた。
そんなレイの前に、キースは無粋な顔で立ちふさがっている。
「俺はシドの参謀キースだ。女、お前をこれ以上先へは進ません」
「あら、女の子の話聞かないんじゃモテないわよ。いくらイケメンでもっ♪」
「……くだらん」
キースはそう言うやいなや、斜め下に広げた両手の平の中に、白い闘気で出来たエネルギー弾をバチバチッ……!! と、滾らせた。
「魔性の罪……その身を持って知るがいいっ!」
両手の平から放たれたエネルギー弾が、捻じれの軌道を描きながらレイに連続で襲いかかる。
だが、レイはサッと両手の平を前に向けて魔力シールドを作り出した。
キースの連続弾はズドドドドッ!! と、襲いかかるがレイのシールドは砕けない。
「悪いけど、私ガードが固い女なの♪」
レイはシールドを解き妖しく微笑んだ。
けれど、キースは怯まずより力を滾らせてゆく。
諦める気配はまるでない。
「ならば、より強い力で砕くまで!」
「フフッ♪ まったく。アナタ、駆け引きってのを知らないのね」
レイはニヤッと笑みを浮かべたが、キースはそれを無視し、掲げた両手の上にゴゴゴゴゴッ……! と、強大なエネルギー白いを作り出してゆく。
そのエネルギーを感じたレイは、再びサッと両手の平を前に出して魔力シールドを張った。
───なんなのよ、この馬鹿デカいエネルギーは……!
敢えて余裕の笑みを浮かべてはいるが、冷や汗がレイの額をツーっと流れる。
キースはそんなレイを見据えながら、巨大なエネルギーを振り放った。
「消し飛ぶがいい! 魔性の女よっ!! 『ドラゴン・フォーーーーーース』!!!」
キースから放たれた白いドラゴンのようなエネルギーが、レイにグワッと牙を剥いて襲いかかる。
「くっ!!」
魔力シールドにドラゴン・フォースが凄まじい勢いで、ズガアアアアアンッ!! と、激突した。
白い光を輝かせながら食い破るかの如く強烈に、レイの魔力シールドをドガガガガカッ!! と、激しく押し続けている。
「ううっ……な、なんて威力なの! ま、まさか私が……」
レイがギリッと歯を食いしばる中、魔力シールドにビキピキピキッ……と、ヒビが入ってゆく。
それを捉えたキースは、ドラゴン・フォースの威力をより滾らす。
「これで……終わりだあっ!!」
キースの咆哮と共に魔力シールドはパリンッ!! と、砕け散った。
ドラゴン・フォースの威力がレイに直撃する。
「きゃああああああっ!!」
レイは上空に大きく吹き飛ばされると、真正面からドシャッ! と、地面に叩きつけられた。
「う、ううっ……」
這いつくばったまま苦しそうに顔を上げるが、レイの全身は傷だらけでセクシーな魔導服もボロボロだ。
額からツーっと流れる血が顔を伝い、地面にポトポトと零れてゆく。
その姿をキースはウザったそうに見据えた。
「フン、まだ死にきれぬようだな……」
キースは据えた瞳で向かってくる。
レイはそれを苦しそうに睨みながらググッ……と、立ち上がった。
いくらキースが強くても、ここで負ける訳にはいかない。
片手で肩を押さえたまま、顔をしかめてキースを睨みつけた。
「ハアッ……ハアッ……私は、ノーティスのとこに行くの! そこをどきなさいっ……!!」
「女、ムダと言っている」
「ムダなんかじゃないわ!」
レイはボロボロだの姿だが、その瞳の輝きは決して衰えていない。
愛するノーティスを必ず救うという、決意が宿っているからだ。
キースはそんなレイの事を、哀れむ眼差しでジッと見つめている。
「……あの勇者は、シドには決して勝てぬ」
「そんな事ある訳ないでしょ! ノーティスは……」
「分かっているハズだ!」
「なっ! なんなのよっ……!」
言葉を断ち切られたレイが一瞬たじろぐと、キースは哀れみと蔑みの混じった溜め息を吐いた。
「見るがいい……奴の姿を!」
「ノーティス……!」
レイは思わず泣きそうになってしまった。
ノーティスが、あまりにも辛そうだからだ。
シドの強さに押されているからではない。
真実に心をえぐられ、どうしていいのか分からない顔で戦っているからだ。
「奴は何とか立ち上がったが、あの状態ではもはや時間の問題」
「くっ……!」
「今助けに入った所で、死体が一つ増えるだけだ」
「そんな……イヤよそんなの!!」
悲しみで泣き出しそうなまま、レイはノーティスの方向へ身を乗り出した。
「ノーティーーーーーーーーーーーース!!!」
レイの悲痛な叫びが戦場に響く。
それ聞いたシドは、身も心もボロボロのノーティスをジッと見下ろした。
「ノーティス、聞こえたか」
「ハアッ……! ハアッ……! 聞こえたさシド。レイが俺を呼ぶ叫びが……!」
息を切らしながら答えたノーティスを、シドは哀れむ眼差しで見据えている。
「ならば分かるなノーティス、不幸にしているんだ。お前が奴らを」
「くっ!」
もちろん、ノーティスは分かっている。
シドの言った通り、自分の弱さがみんなに迷惑をかけて危機に陥らせてしまっている事を。
───けど、真実を知ってしまった今、俺は分からない。何の為に、シドと戦わなければいけないんだっ……!
どうしようもないやるせなさと共に、ノーティスは剣の柄をギュッと強く握りしめた。
あまりにも悔しくて、全身がブルブルと震える。
「俺は……」
全身を震わすノーティスを見据えていたシドは、片手で剣先をジャキッと後ろに向けて構えた。
「ノーティス、もう終わりにしてやる」
「ぐっ……!」
その光景を見たレイはノーティスの方へ向かおうとしたが、キースはそれを許さない。
「諦めろ」
「イヤよっ! どいてっ!!」
「女……まだ分からぬか。ならば……!」
キースはギリッ顔をしかめると、両手の平に白いエネルギー弾を作り出してレイに向かって連発した。
白いエネルギー弾が、絡み合うように渦を巻きながら連続でレイに襲い掛かる。
「きゃあっ!」
「ああっ!」
「いやぁっ!」
レイはよりボロボロの姿にされてしまった。
魔導服のいたる所が裂け、そこから覗かせる白い肌からは血がボタボタと流れ落ちている。
「あっ……あぁっ……ううっ……」
「どうだ。キサマ自身もうズタズタ……助けに行く気など失せたろう」
あまりのダメージを喰らい言葉も出ないレイを、キーズは冷酷に見下ろした。
風に吹かれ、ウェーブがかった長髪が揺れる。
「そもそも、お前があんな男を助ける必要などない」
「な……なによ……」
「分かっているだろう。あの男はお前に惚れてなどいないのだからな……!」
キースは哀れむ瞳でレイを見つめた。
「もし奴がお前に本気で惚れてるなら、さっきの声で力を取り戻したハズだ」
「ううっ……そ、それは……」
黙り込むレイを見つめながら、キースは告げてゆく。
「お前は美しい。だが、魔性故に得られぬのだ。本当欲しい男からの愛だけはな。哀しい物だ……王宮魔道士の女よ」
キースは両手を再び掲げ、ドラゴン・フォースの構えを取って見下ろした。
両手の間には白く強大なエネルギーがバチバチバチッ……!! と、音を立ててレイを白く照らしている。
「ここまで戦ったせめてもの情け。最大の技で葬ってやる。報われぬお前の愛と共になっ……!」
その光景を見たジークは、フェンリルの鋭く巨大な牙をハルバードで受け止めたままギリッと歯を食いしばった。
「あの野郎、ざけやがって……!! レーーーーーーーーーーーーーーーーーーイっ!!!」
けれど、レイは黙って軽くうつむいたままだ。
また、アンリも魔導の杖をグッと握りしめた。
───マズいニャ。こうしちゃおれんの!
レイのピンチを目の当たりにした二人は、同時に瞳をギラリと光らせた。
「ぅぉぉおおおおおっ! どけや獣がぁっ!!」
ジークは剛腕にグググッ! と、より力を込め、魔力クリスタルの光を纏ったハルバードを巨大化させてゆく。
また、アンリは魔導の杖から放った反重力でアルゴルをドンッ! と、突き飛ばすと、アンリシスターズのジョーカーの子に指令を出した。
「『ナイトメアキャット』を発動させるニャ!」
「りょーーかーーーーーーーーいっ♪」
ジョーカーの女の子はサッと拳を上げ、アンリシスターズのメンバー達からエネルギーを集めてゆく。
そして、フューシャピンク色の巨大なネコを作り出した。
「ニャーーーーゴーーーーーーーーーーーーーーッ♪」
光り輝くナイトメアキャットは、嬉しそうな顔で伸びをしている。
「さぁーナイトメアキャットよ、アルゴル達を一気に片付けるニャ♪ いっけーーーーーーーーーー!!」
アンリは魔導の杖をサッと前に振った。
またその時、ジークもフェンリルをドガッ! と、吹っ飛ばしハルバードを振り被る。
巨大なハルバードから放たれる輝きが、フェンリルを激しく照らしてゆく。
「レイを助けるのを邪魔すんじゃねえっ!! 『クリーシス・アックスーーーーーーーー』!!!」
アンリとジークは同時に、自分の敵を討ち倒した。
アルゴル達はナイトメアキャットの攻撃に吹き飛ばされ、フェンリルは斬り裂かれて倒れている。
二人はそれを確認すると、レイを助けに行く為すぐに駆け出した。
「レーーーーーーーーーーーーーイっ!!!」
「レイよ、今行くニャ!!」
だが、二人はピタッと足を止めた。
「お、おいレイ、お前さん……!」
「ニニャ、にゃんと!」
ジークとアンリは足を止めたまま、驚愕して見つめている。
ボロボロで瀕死のハズのレイから立ち昇る、華美で強大な魔力を。
もちろん、キースも驚愕して目を見開いている。
目の前で起きている事が信じられないのだ。
「バ、バカなっ! キサマのどこにそんな力が……!」
キースの額からツーっと汗が流れた時、レイはスッと顔を上げ華美な瞳で見つめた。
「キース、アナタは何も分かってないわ……!」




