ep:38 激突するノーティスの輝きとシドの闘気
「ぐっ……!」
ガキインッ!! と、いう音と共にシドの剣を受けたノーティスは思わずギリッと顔をしかめた。
───つ、強いっ! なんて鋭く重たい剣なんだ……!
その強さを肌で感じる中、シドは鍔迫り合いをしながら剣をググッ……! と、ノーティスに向かい押込んできている。
孤高の狼のような鋭い瞳で、ノーティスを強く見据えながら。
「俺は貴様らを、絶対に許さんっ……!」
「シド、一体なぜ……!」
「……ォォオオオオオオッ!!」
シドは決して答えない。
鍔迫り合いしていた剣により力を込め、思いっきり振り抜いた。
まるで、ノーティスをそのまま叩き斬るような勢いだ。
「うっ……!」
ノーティスは何とかそれに耐えた。
が、ただでは済まない。
ギリィィィィィンッ!! と、いう金属音と火花と共に後ろにザザザァァァッ! と、足を滑らせた。
───くっ、この強さは王宮魔導士のみんなと同じレベル! あるいは……!
シドの力にノーティスは驚愕を隠せない。
けれど瞳にキッと力を込めて、サッと突きの形に構えた。
体から白輝の魔力が立ち昇ってゆく。
「俺も負ける訳にはいかない! 貫けっ! 『エッジ・スラッシュ』!!!」
ノーティスは剣を突きの形にしたまま一筋の白い閃光と化し、シドに向かい凄まじい速さで突き進む。
「おおおおおっ!」
「なっ?!」
シドは驚愕し目を見開らきながらも何とか素早く身体を捻ったが、ノーティスの剣先が左肩をズサッ! と、打ち抜いた。
オリハルコンで出来ているシドの左肩の鎧がガシャッ! と、吹き飛び宙を舞う。
「ぐあっ!」
あまりの衝撃にシドは体を大きくよろめかせ、顔を苦しそうにしかめた。
けれど、ノーティスは追撃の手を緩めない。
ダッ! と、空中に大きく飛び上がり大きく剣を振りかぶった。
その剣先が太陽に照らされキラリと光る。
「オオオオオオオッ! 雷光のように敵を討て! 『シェル・スラーーーーーーーーーッシュ』!!!」
ノーティスはシドを見据えながら、両手で剣を勢いよく振り下ろした。
雷光のような光をバチバチバチッ! と、纏った白刃の剣がシドに迫る。
「くっ!」
シドは左肩を痛めながらも諦めない。
ノーティスを睨み上げて技を振り放った。
受けきるのは無理だと判断したからだ。
「させるかっ! ケトゥス三乃牙『天斬空牙』!!!」
シドが斜め上に振り抜いた剣から放たれた、銀色の大きな斬撃がノーティスを迎え撃つ。
だがノーティスはそれに怯む事無く、それを思いっきり押し返してゆく。
「ハアアアアアアアアッ!!」
「ぐっ、ノーティス貴様っ……!!」
ギリッと顔をしかめ歯を食いしばり耐えるシドと、それを雷光のような眩しい光の剣でズガガガガッ!! と、押していくノーティス。
銀色の光と雷光のような光が激しくぶつかり合い、周囲を大きく照らす。
その光景を見ているジーク達は、自身も戦いの最中であるにも関わらず、目を大きく見開いて二人を見つめている。
「おいおい、なんでぇありゃあよ。とんでもねぇ戦いだぜ!」
「ニャッハーーーー♪ あのシドという少年、とてつもない強さを秘めとるようじゃの」
「そうね。でも、ノーティスが負ける訳ないわ♪」
「そうだよねレイ。ノーティス……頑張れーーーーーーーーーーーーーっ!!」
メティアの可愛い声援が響いた時、ノーティスはより剣に力を込めた。
「オオオオオオオッ! シド、俺は負けないっ!!」
「ぐうっ!」
ノーティスの白くバチバチと滾る光が、より大きく膨れ上がってゆく。
そして、ズガガガガンッ!!! と、いう轟音を立てシドの技を叩き伏せた。
強烈な衝撃波により、シドは大きく弾け飛ぶ。
「ぐわあああっ!!」
シドは周りで見守っていた兵士達の中にドシャアッ! と、吹き飛んだ。
その姿を、ノーティスはハアッ……! ハアッ……! と、息を切らしながら強く見据えている。
何とかシドを倒したものの、シドの強さには圧倒されたからだ。
また、ここまで全力を振り絞った事はなかった為、ノーティスは全身汗だくだ。
「シド、キミは強い……! それに、その闘気からは決して邪悪さを感じない。なのになぜだ?! なんでキミ程の男が、悪魔の手先になってる国の為に戦うんだ!」
ノーティスは哀しく謎めいた顔を浮かべている。
シドはそれを強く睨みながら体をググッ……! と、起こし立ち上がった。
「ハアッ……ハアッ……それはノーティス、こちらのセリフだ。貴様こそそれだけの力を持ちながら、なぜスマート・ミレニアムなんかの為に戦う!」
二人の相容れない眼差しが切なく交叉する中、一人の男がシドの後から肩にポンと片手を置いた。
「シド、落ち着くんだ。どうせコイツらに言ってもムダだ」
「キースっ……!」
ハッと振り向いたシドを、キースは不敵な眼差しで見つめている。
シュッとした体形のシドと違い、ガッシリとした体形の上から魔導服を身に纏った長身の男だ。
ウェーブががった黒い長髪から、端正な顔を覗かせている。
キースはシドの昔からの親友でもあり軍隊の参謀。
これまでシドと共に、幾つもの死線を越えてきた。
そんなキースは、ノーティスをチラッと一瞥すると、小馬鹿にするように鼻で笑った。
「言った所でコイツらは信じないし、信じようともしない。今までだってずっとそうだったろ」
「あぁ、そうだったなキース……」
一瞬スッと瞳を閉じてシドは思い返す。
これまで自分が味わってきた仕打ちと、トゥーラ・レヴォルトが味わされてきた凄惨な歴史を。
その切なる想いがシドの全身から強く気高い銀色の闘気をゴゴゴゴゴッ……! と、再び立ち昇らせてゆく。
この姿から、ノーティスは目を離せない。
「くっ、シド。キミはまだ……!」
ノーティスは咄嗟に、両手で剣をジャキッと真正面に構えた。
いや、構えさせられたといった方が正しい。
大きく立ち昇るシドの強く気高い銀色の闘気を前に、思わず構えるしかなかったからだ。
シドはそれを強い眼差しで見据えたまま、サッと抜刀術の構えを取った。
「ノーティス……俺達が貴様らに踏みにじられてきた痛みと怒り、この技で思い知るがいい!」
全身から立ち昇る気高い銀色の闘気が、より膨れ上がってゆく。
また、その闘気に怒りのマグマのような赤いオーラが入り混じる。
「ハアアアアアアアアッ!! ティターン一乃太刀『流星火斬』!!!」
シドは抜刀術の構えから素早く振り抜いた。
まるで血に染まったかのように、シドの剣は真っ赤に燃えている。
その剣から飛び向かう数多の隕石のような斬撃。
それを向けられたノーティスは、あまりの凄まじさに目をギッと見開いた。
「これはまるで隕石の雨! これを喰らう訳にはいかないっ!」
ノーティスは真正面に構えていた剣の光を、より大きく輝かせてゆく。
そして大きく振り下ろして、シドに向かい必殺技を放った。
「キミの斬撃は数多の流星で迎え撃つ! 煌めけ!! 『バーン・メテオロンフォーーーーーーース』!!!」
シドの真っ赤に燃える隕石のように降り注ぐ斬撃と、ノーティスの煌めく流星のような斬撃。
その二つが中間でドガガガガガガガガンッ!!! と、激しくぶつかり合い、周囲に凄まじい光と衝撃波を広げた。
皆がそれを目を細めて見つめる中、ノーティスとシドは互いにギリッと歯を食いしばり、全力で技を押し合っている。
「シド……キミは、なぜそこまで切ない怒りを滾らすんだ……!」
「言わずと知れた事。ノーティス、貴様らが何も見えていない、いや……見ようとしないからだっ!」
その叫びと共にシドの力がより強くなり、ノーティスの流星をググッと押してゆく。
ノーティスを真っ赤な光で照らしながら。
「おおおおおおおおおっ!」
「くっ、シド……一体俺に、俺達に何が見えていないっていうんだ!」
「フンッ……ノーティス、貴様こそ何の為にそこまで戦う……この偽りの光にまみれた国が、そこまで大切なのか」
「シド……この国は師匠が守って造ってくれた国だ……それを悪くいう事は、決して許さないっ!」
グッと力を込めたノーティスは、再びシドの真っ赤な光を押し返してゆく。
「オオオオオオッ……!!」
「ハアアアアアッ……!!」
二人のぶつかり合うエネルギーは限界まで膨れ上がると、バシュンッッ!!! と、大きく弾け消し飛んだ。
凄まじい衝撃波が周囲に広がり、大きな砂塵が巻き上がった。
それが晴れてくる中、ノーティスとシドはハアッ……ハアッ……と、息を切らしながら互いの事を強く見据えている。
「シド、俺は必ず守ってみせる。この国とみんなの事を……!」
それを聞いたシドはスッと瞳を閉じると、軽く口角を上げ身体を震わせ始めた。
「クククッ……ハハハッ……ハーッハッハッハッ!」
血の混じった砂塵が立ち込める戦場に、シドの謎めいた笑い声が響いている。
ノーティスに迫る不吉な事を示すかのように……




