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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-5 宿命のライバル! 銀色の勇者シド
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ep:36 王宮魔導士達の快進撃

「ウ、ウソだ……ノーティス達(アイツら)があんなに強いなんて、信じられないヨ!!」


 『レオナルド・アッシュ』は、ノーティス達の快進撃を目の当たりにして目を見開き震えている。

 背にいるパーティー達も一緒だ。

 震える悔しさと共に後悔していた。

 自分達がノーティスにしてきた、あまりにも愚行を思い返しながら。


「あぁ……なんて事してきてきたんダ」


 今、ノーティス達が戦っているのは、宿敵国トゥーラ・レヴォルトの軍隊だ。

 しかし、アッシュ達は敵国側ではない。

 ノーティス達と同じスマート・ミレニアム側。

 ただ、本国ではなく第三都市『ホラム』の戦士。

 トゥーラ・レヴォルトがホラムに攻め入ってきたので、ノーティス達に援軍に来てもらっていたのだ。

 けれど、来てもらったにも関わらず、アッシュ達は今までノーティス達をずっとバカにしていた。

 ホラムは魔力クリスタルの力を科学と併合させているので、科学を使わず魔力クリスタルと己の力のみで戦うノーティス達を格下に思っていたからだ。


『アハッ♪ 申し訳ないけど、キミ達みたいな汗くさい人間に助けてもらおうなんて、ボクはこれっぽっちも思ってないヨ』

『そーそー、戦いはスマートでなきゃよ。皇帝様も、なんでこんな奴らに援軍を頼んだろうな』

『キャハハッ♪ ほーんとそう。努力なんてしなくても、科学を使えば強さなんて、かーーーんたんに手に入っちゃうのに♪』

『自分の力を修行で高めるなんて、効率が極めて悪いです……』


 しかし、トゥーラ・レヴォルトの圧倒的力を前にアッシュ達は大苦戦。

 それを見かね助けに入ったノーティス達の快進撃を目の当たりにし、アッシュ達は圧倒的な力の差に震えているのだ。

 己の過ちと共に。


「ボク達は所詮、借り物の力に浸ってただけだったのサ……あぁ、ボクはバカだったなぁ……」

「くそっ! んだよアイツら! あれが修行の力だってのかよ……アイツらの方が、よっぽどスマートじゃねぇかっ……!!」

「な、なんであんな強いのよ! 私達と違って魔力クリスタルの力を科学利用してないクセに……!! ううっ……なんて惨めなの……!」

「わ、私達が、間違っていたんですよ……本当の強さは、効率だけじゃなかったんです。きっと……」


 彼らが悔恨の涙を流す中、快進撃は止まらない。

 ノティスが無双するのを筆頭に、みんな額の魔力クリスタルの力を全開にさせて戦っている。


「うらうらあっ! 俺は細けえ事が大ぇっ嫌えなんだよ! 消し飛べやあっ!! 『ギカント・アックス』!!!」


 剛腕により振り下ろされたジークの真っ赤なハルバードが、多くの敵兵達を爆風と共にドガアアアアンッ!! と、大きく吹き飛ばす。


「うおっ!」

「ぐわっ!」

「ぐわあああああっ!」


 他の敵兵達がそれを恐怖と共に見つめる中、彼らの周りに華美な香りが漂ってきた。


「な、なんだこの薫りは……」

「これは……」

「なんだか意識が……」


 急速に意識を朦朧(もうろう)とさせてゆく彼らの周りに、ひらひらと舞い散ってくる。

 クリスタルで作られた、青い薔薇の花びらが。

 それを妖しい瞳で見つめているのはレイだ。


「フフッ♪ これは、アナタ達を送る薔薇の葬列……」


 スラッと両手を上に掲げたレイの魔力クリスタルから、アクアマリンの光が(ほとばし)る。


「逝きなさいっ、悪夢の世界へ!! 『エファルディス・コーディネーション』!!!」


 その光に当てられた敵兵達は、その場にバタバタバタッ……と、倒れていった。

 まるで、突然糸が切れたように。

 その光景を見ていたアンリは、嬉しそうにニパッと笑った。


「ニャハハッ♪ さっすがレイじゃの。私も負けてられんニャーーー♪」


 クニャッと体をくねらせ魔導の杖を掲げたアンリは、魔力クリスタルからフューシャピンクの輝きを溢れ出させてゆく。


「キラッキラの魔法陣ニャーーー♪」


 アンリの魔導の杖から放たれた光が、敵兵達の頭上から10メートル程上に、巨大なフューシャピンク色の魔法陣を創り出した。

 敵兵達はこれが何か分からず、不安で謎めいた顔をしながら上を見つめている。


「な、なんだこの魔法陣は?」

「す、すごく綺麗だ……」

「いや、だけどなんか……」


 様々なつぶやきが溢れる中、上空の魔法陣はブワンッ……ブワンッ……と、不気味に点滅し始めた。

 敵兵達の心に恐怖と不安が広がっていく。

 アンリはそれを見ながら、ニッと笑みを浮かべた。

 いつもの快活な明るい笑顔ではなく、瞳を妖しく光らす王宮魔道士としての顔で。


「悪いがこれは戦いじゃからの……全員ぺったんこにしてやるニャ! いくぞぃ……『ハローーーーデス・グラビティーーーーーーーーー』!!!」


 アンリがサッと魔導の杖を振り下ろすと同時に、兵士達はその場にドシャ! と、前のめりに倒れた。

 魔法陣からとてつもない重力が、一気にのしかかってきたからだ。


「ぐわぁあああっ!!」

「ぁぁああああっ!!」

「うぐっ……がはあっ!!」


 兵士達はその場で一瞬にして押しつぶされ、巨大な血溜まりを作っていった。

 しかしその血溜まりが、バチャッ! バチャッ! と、はねてゆく。

 魔法陣が魔力なら、逆に物理的力で踏み潰してやると言わんばかりの巨人の足によって。


「グオオオオオオオンッ!!」


 これは敵国トゥーラ・レヴォルトが召喚した、伝説の巨人。

 身の丈は30メートルはあり、ゴツゴツした筋肉質な体から軽装備的な鎧を(まと)っている。

 瞳は青く耳は尖り、裂けた口元から覗かせる鋭い歯はギロチンが並んでいるようだ。

 ジーク達は少し離れた場所から、訝しむ顔でその巨人を見上げている。


「ったく、何食えばあんなデカくなんだよ」

「第一、なんで魔力クリスタルつけてないのに、あんなの呼び出せるのよっ……!」

「ふう〜〜〜あ奴らは魔力とは違う()()()を使うからのぉ……」


 そう(こぼ)す中、巨人はズシンッ!! ズシンッ!! と、向かってくる。

 そして、巨大な岩を両手で掴み持ち上げると、ホラムの城に向かってブンッ!! と、投げつけた。

 巨大な岩石が、ゴーーーーーーーーーーーーーッ!! と、音を立て宙を突き進む。

 それを見たジーク達は驚愕して目を見開いていたが、ノーティスだけは笑みを浮かべていた。

 分かっているからだ。


「フッ……慌てる事はないさ」


 その言葉を裏付けるかのように、可愛く元気な声が聞こえてくる。


「させないよっ! ノーティス達は守るんだ!! 『パーメガス・クリスタルアーミナーーーー』っ!!!」


 メティアの声が戦場に響くと同時に、ホラムの城は巨大なクリスタルの障壁に包まれた。

 もちろん、巨大な岩石はそれにより砕け散り、ホラムの城にはかすり傷一つ付いていない。

 これを目の当たりにしたトゥーラ・レヴォルトの敵兵達はもちろん、アッシュ達は口をあんぐり開けて目を皿にしている。


「レ、レベルが違うヨ……」

「俺、なにしてたんだ……」

「あ、あんな速さで……」

「大きさも強度も、桁違いです……」


 そんな中、ロウは慧眼な眼差しに精悍な光を宿し、城のテラスから巨人を見据えている。

 エメラルドグリーン色の大きな魔法弓をギリリッ……と、引きながら。


「闇から現れし不浄なる巨人よ……これ以上進撃する事は許さない……!」


 ロウは全身からエメラルドグリーンの輝きを、より強く(ほとばし)らせてゆく。


「この光は全てを貫く!! 『コズミック・メテオアローーーーーー』っ!!!」


 エメラルドグリーンの光を(まと)う大きな矢が渦巻きながら突き進み、巨人の胸をズバッ!! と、貫いた。


『グオオオオオオオッ!!』


 咆哮を上げ大きくのけぞった巨人。

 その胸に空いた大きな穴から、向こう側の景色が見えている。

 だが巨人はのけぞった身体をゆらりと前に戻すと、胸に穴が空いたままの状態で再びズシンッ……!! ズシンッ……!! と、歩き始めた。

 トゥーラ・レヴォルトの兵士達と足音を立てながら。


「フム……心の臓を貫いても動けるのか。その生命力は是非とも研究したいが……」


 ロウは、学術的興味でジッと巨人を見据えている。

 感心はしているものの、恐怖は感じていない。

 白い光を(まと)った勇者が、巨人に駆け向かっているからだ。


───ノーティス、後はキミに頼んだ。


 白輝(びゃっき)の光を全身に(まと)ったノーティスは、巨人の身体をタタッと素早く駆け上がり方を蹴り上がると、剣を両手で大きく振りかぶった。

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