ep:31 メティアの加護を知るイクタス達
「おいメティア! テメェしょーこりもなく、なんでまだギルドに来てんだよっ!」
メティアに怒鳴りつけているのは、あのイクタスだ。
パーティーのメンバー達も一緒にいる。
ただこの前会った時と違い、イクタス達はどことなく精彩を欠いているようにメティアは感じた。
表情も冴えないし、服も何だかよれている。
「イクタス、みんな……どうしたの? なんかすごく……」
「うるせぇっ!」
イクタスはメティアの言葉を遮り怒鳴りつけた。
メティアに会った事もそうだが、それ以上に今まったく上手くいってないからだ。
あの日メティアを追放してから、イクタス率いる『暴虐の牙』のダンジョン攻略率は目に見えて急降下していた。
その日々の忌々しい光景が、イクタスとパーティー達の脳裏に蘇る。
『なんでっ?! 私の全然攻撃魔法全然効かないんだけど!』
『うぬっ、体が重いっ……!』
『もうっ、なんでこんなに罠にかかるのよっ! 最悪なんだけど!』
『うるせぇっ! テメェらこんなダンジョンにもたついてんじゃねぇよ! こんな奴ら、今まで楽勝だったろうが!』
『だったらイクタスがやってよ!』
『主はワシらのリーダーじゃろう……!』
『そうよ! 私達が手抜いてるみたいな言い方しないでよっ! マジでウザいんだけどっ!』
『なんだとテメェら……! ふざけんなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』
もちろんギルドからの評価もガタ下がりで、周りのパーティーからも『暴落の牙』と陰口を言われ始める始末。
その原因をイクタス達は薄々感じていた。
と、いうよりも嫌でも感じてしまう。
こんなに急落し始めたのは、メティアが抜けてからだから。
けれど、この事実を皆認めたくないし、一番認めたくないのはイクタスだった。
───認めねぇ……俺は認めねぇぞ! メティアのお陰だったなんてよ!!
そう思っている時に偶然出会ってしまったのだ。
ノーティスがロウ達を連れて来る間、ギルドで待っていたメティアに。
イクタス達は溜まっているうっぷんをぶつけるかの如く、メティアをイラっとした目で睨みつけた。
「メティア、まだ分かんねぇようだな。ここはよ、お前みたいな役立たずがいていい場所じゃねぇんだ!」
「そーそー♪ 邪魔だから早く消えてくんない」
「主を見てると虫唾がはしるわ!」
「ホント、こーゆー女ってマジ見てるだけでムカつくんだけど……!」
けれどメティアは怯まない。
───ノーティスとルミさんが教えてくれたんだ……! ボクの本当の居場所を……!
メティアは凛とした眼差しで、イクタス達に真正面から向きあっている。
「イクタス……みんながどんなに言ってきても、ボクは諦めないよ!」
「んだと?」
「ボクは、昔からの夢を叶えるって決めたんだ」
「夢だぁ?」
「そうだよ。ボクは『特級ヒーラー』になって、傷ついてる人達を一人でも多く救っていくんだ!」
そう言い放ったメティアを、イクタス達は思いっきり嘲りながら指を指した。
「キャハハハハハッ! なにコイツ! バッカじゃーーーーーーーーん?」
「うむ、呆れたな。主の様な産廃のようなゴミカスが特級ヒーラーなどとは、片腹痛いわ」
「ホントそう。あのさぁ、特級ヒーラーって何か分かってる? 王宮魔導士の事よ?」
「ったく、その通りだ! テメェみてぇなカスになれる訳ねーーーーだろ! ヒャハハハハハッ!」
けれどメティアは怯まず、凛とした光をより煌めかせてゆく。
「ボクは夢を決して捨てない! 必ず叶えてみせる!」
その言葉と瞳美の光に当てられたイクタス達は、ウザったそうにギリッと醜く顔をしかめた。
ムカついて仕方ないのだ。
上手くいってないのに、自分達よりも遥かに下だと思っているメティアが希望の光でキラキラ輝いている事が。
その歪んだ憎しみがイクタス達を突き動かし、全員でメティアをボコしに襲い掛かった。
「やっちまえーーーーーーーーーーっ!!!」
が、その瞬間、イクタス達はバッと跳び退いた。
メティアの後ろからノーティス達が現れたからだ。
「メティア、待たせてごめんな」
そう告げたノーティスの横にはルミの他に、ロウとアンリがいる。
ジークは昨日飲み過ぎで寝てて連絡が取れず、レイはバカンス中だ。
なんでも、いい女にはこういう時間が必要だとの事。
ただ、イクタス達に分からせるにはノーティス達だけで充分だった。
「フム、何だか騒がしいな」
「ニャッハー♪ 元気が有り余っとるようじゃニャ」
ノーティスは有名とはいえまだ最近だが、ロウとアンリの事は冒険者なら誰でも知っているからだ。
そんな皆を前に、イクタスは目をかっぴらいてブルブルと震えている。
「そ、そんな……! なんでアナタ達がここに」
もちろん、それは他の奴らも同じだ。
そんなイクタス達の前に、ノーティスはザッと近寄った。
澄んだ瞳に、静かな怒りを宿して見据ている。
「それはこっちのセリフだ。俺達の仲間になるメティアに、今さら何の用だ」
「な、仲間っ?」
「そうだ。メティアは……」
ノーティスはそこからイクタス達に話していった。
メティアがいかに優秀なヒーラーであり、その気になれば今すぐにでも王宮魔導士になれるレベルである事を。
これは昨夜ルミと一緒に風呂上がりに聞いた事だ。
元々ノーティスは、自分達と一緒に戦えるレベルの特級ヒーラーを探していた。
ただ、その基準を満たす者はそうそういなくて困っていた所に、ルミがメティアからお風呂で聞いた話を聞いて教えてくれたのだ。
メティアが、とんでもなく優秀なヒーラーだという事を。
「もちろん、魔力と使える種類はロウとアンリに確認済だ」
「なっ?! マ、マジかよっ……!」
イクタス達が青ざめた顔で震える中、ロウとアンリは嬉しそうにしている。
「フム、先ほど測定したが驚愕という言葉で足りるかどうか……まぁ、天才なのは間違いない」
「ニャハハッ♪ こ奴なら、即戦力間違いなしニャ」
イクタスはこの話を聞いた瞬間、メティアに向かいバッと土下座した。
「頼むメティア! 戻ってきてくれっ!!」




