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ep:28 勇者就任式と新たなる始まり

「よかった〜〜! ルミのお陰で何とか間に合ったよ、ありがとう」


 ニコッと笑みを浮かべたノーティスの側で、ルミも嬉しそうに微笑んだ。


「とんでもございません。私はノーティス様の執事ですからっ♪」


 二人は今、教皇の間の扉を前にして緊張している。

 アンリの転送魔法で何とか間に合いはしたものの、全く気は抜けない。

 この先にはロウやアンリ達を始めとした王宮魔導士達や多くの兵士、そしてこの国の統治者である教皇がいるからだ。

 分厚い大きな扉の向こうから、二人に厳かな雰囲気が伝わってくる。


「フウッ……」


 ノーティスはルミから『ケサル』の魔法で、さっき汚れは落としてもらっていた。

 けれど、ちょっと緊張して額からツーっと冷や汗が流れてしまう。

 それを拭いたハンカチを、ノーティスはジッと見つめている。

 

───キミは今元気にしてるのかな? 名前も知らないままだけど、あの日キミに教えてもらった人の温かさを、俺はずっと覚えてるよ……!


 ルミはその姿をそっと見つめた。


「ノーティス様、そのハンカチずっと前から大切にしてますね♪」

「あぁ……これは前にルミにも話した、俺の宝物だから」

「ですよね♪ そーゆーの大切にしてるのって、何かいいです」

「フッ、まあ物の価値ってそういうもんだと思ってるからさ」


 ノーティスはそう言ってニコッと微笑んだ。


「じゃあ、行こうかルミ」

「えっ?」

「アンリ達も言ってくれたろ。今回は特別に一緒に入ってきていいって」

「た、確かにそうですが……!」


 ルミは顔を赤くして軽くうつむいている。


───な、なんかこれって結婚式みたいですっ……!


 ドキドキしながらチラッと見上げたルミ。

 その腰にノーティスは軽く片手を添えて微笑むと、コクンと頷き扉に片手を当てた。

 重い扉がゆっくりと開いてゆくと、ルミは思わず目を輝かせて大きく口を開いた。

 

「わあっ♪」

 

 教皇の間は天井が高く、いたる所に煌びやかな装飾が施されいる。

 白くピカピカに光る大理石の床の真ん中には赤い絨毯が敷かれていて、それにはスマート・ミレニアムのエンブレムが金の刺繍で施されているのだ。

 その脇を入口から鎧を纏った兵士、僧侶、貴族の順番に並び、中央に腰かけている教皇の一番近くにはロウ達を始めとした王宮魔導士達が綺麗に整列をしている。


「すごく綺麗……!」


 まるで、おとぎ話に出てくる王宮その物だ。

 その光景に目をキラキラさせているルミだが、ハッと気づいた。


───あっ、そういえば私どこにいたらいいんだろう……! あ~~~~もうっ、確認するの忘れてたっ!


 一気に困った顔を浮かべたルミ。

 それを見たアンリは、ニパッとした顔でカラカラと笑った。

 

「ニャハハハッ♪ ルミよ、お主はこっちじゃ」

「えっ?」


 キョトンとした顔を浮かべた瞬間ピンク色の魔法陣が下から現れ、ルミは一瞬でアンリの側にシュッと移動させられた。


「ア、アンリ様っ! ありがとうございます」

「気にするでない♪ ここから一緒に見ようてはニャいか。あ奴が、勇者になる瞬間をの」

「……はいっ♪」


 それを見て、ノーティスはフッと軽く微笑んだ。


───アンリ、ありがとう。お陰で緊張がほぐれたよ。


 心で礼を言うと赤い絨毯をゆっくりと歩き、教皇の前でスッと(ひざまず)くと軽く顔を伏せた。

 本来こういう事にはてんで疎いのだが、そこはルミがちゃんと教えてくれていたから問題無い。

 お陰でちゃんと様になっている。


───ルミにも本当に感謝だな。ありがとう。


 心で感謝しているノーティスを、教皇は荘厳な雰囲気を(まと)い見下ろした。

 頭上に煌びやかな装飾の施された、赤い兜型の仮面の奥から覗かせる厳かな瞳に光が宿る。


「そなたがエデン・ノーティスか」

「はいっ……!」

「面を上げよ」


 一瞬間を置き、ノーティスは教皇の事を澄んだ瞳でスッと見上げた。

 その瞳の光にあてられた教皇は、仮面の奥でハッと目を見開いている。


───バッ、バカな……! この瞳はまるで、スマート・ミレニアム史上最強の勇者だったアルカナート(やつ)と同じではないかっ……!


 教皇は感嘆すると同時に、胸がざわめく。


───この男はもしや……! いや、だが逆にこれほどの男を勇者として認めぬ訳にはいかぬ。


 様々な思惑を渦ませながら、教皇はノーティスを仮面の奥からジッと見つめた。


「エデン・ノーティスよ。一つだけ問う。そなたにとって、勇者とは何だ?」


 教皇の荘厳な瞳が見つめてくる。

 もちろん、教皇だけではない。

 教皇の問いにノーティスが答えてくるのかを、みんな固唾(かたず)を飲んで見つめている。

 ノーティスはその中で(ひざまず)いたままではありながらも、精悍な澄んだ瞳と共に胸を張った。

 これまでの事を心に思い巡らせながら。


「教皇様もご存知の通り、自分は元無色の魔力クリスタルによる浄化対象でした……」


 それを知り訝しむ顔を浮かべる者達もいる中、ノーティスは話を続けてゆく。


「けれど、逃亡している時に心優しい少女に出会いました」


 ノーティスの脳裏に、あの日からの事が鮮明に浮かぶ。


「その少女から人の温かさを教えてもらい、師匠からは強さを。とある衛兵からは諦めない心を……そちらにいる王宮魔導士の方々からは聡明さや快活さと美しさと矜持、そして……」


 ノーティスはルミを一瞬スッと見つめた。


「至らない自分を、いつも笑顔で支えてくれている執事のルミによる愛に満ちた献身。そのどれが欠けても今の自分は……自分の心は出来ていません」

「ノーティス様っ……!!」


 ルミが口を両手で押さえ可愛い瞳から涙をブワッと溢れさす中、ノーティスは教皇を精悍な澄んだ眼差しで再び真っすぐ見つめた。

 全身から、今まで告げてきた事を裏付けるかの様なオーラを立ち昇っている。


「なので……この俺が勇者であるというのなら、勇者とは『皆への感謝と愛の光で絶望を超えてゆく者』です!」


 ノーティスの姿と言葉にルミ達はもちろん、最初訝しむ顔を浮かべていた者達も瞳に涙を浮かべている。

 決して言葉だけじゃない。

 その言葉にこめられているノーティスがこれまで歩んできた想いが、皆の心を光のように優しく照らすからだ。


「フム……満点という言葉では足りない解答だな」

「ニャハハハッ♪ まったくあ奴め、人を泣かせるのが上手いのぅ……ぐしゅっ!」

「フフッ♪ 最高に美しいわ。さすが、私の運命の人ね」

「ったく、あんにゃろう……! 次は負けねぇからな」


 皆が感激する中、ルミはアンリの側でより一層ボロボロ涙を流しながらノーティスを見つめている。

 涙が溢れて止まらない。


「ううっ……ノーティスさまぁ……愛していますっ!」


 その光景を目の当たりにした教皇は玉座からスッと立ち上がると、ノーティスの側に寄り見下ろした。

 全身から放たれている荘厳なオーラと共に。


「見事だ……エデン・ノーティス! では、ここで示すがいい。誓いの光を……!」

「はいっ、ここに……!」


 ノーティスはこれまでの全ての感謝と共に、額の魔力クリスタルを白輝(びゃっき)の光で輝かせた。

 大いなる光が教皇の間と皆の事を白く照らしてゆく。

 その光を受け止めた教皇は、片手をバッと大きく斜め前に掲げた。

 白い法衣がバサッと揺れる。


「我は認める! この瞬間よりこのエデン・ノーティスが、Sランク王宮魔導勇者である事を!!」




 こうして、無色の魔力クリスタルであり浄化対象だったノーティスは勇者にまで成り上がった。

 ただ、世の中とは皮肉なものだ。

 ノーティスが皆から割れんばかりの喝采を浴び向かい入れられる中、仲間達から追放されてる者がいるのだから。

 同じスマート・ミレニアムの、しかも、あのギルド検定試験会場の真隣で……!

次話から新章!

王道テンプレの追放ざまぁな部分もありますが、この物語はそんな安く終わりません!

ここまで読んで面白ければ、★★★★★とブクマで応援よろしくお願いします( ^o^)/

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