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ep:25 クロエの涙とノーティスの一閃

「オオオオオオオオッ!!」


 ノーティスはグッと力を込めると、フェクターの拳を横にドオォォォン! と、叩き落とした。

 砂塵が舞い上がる中、フェクターは真っ赤な瞳でノーティスを警戒しながら見下ろしている。

 そんなフェクターをノーティスは見上げ、二ッと軽く笑みを浮かべた。


「もうすぐ救ってあげるから」


 フェクターに対しノーティスは一切の恐れはない。

 けれど、周りの皆はあまりの出来事に目をかっぴらいてその光景を見つめている。

 特にバルガスは、自分の目で見たのに信じられないという顔をした。


「な、な、なんだアイツはっ!!! ま、まさ王宮魔導士か?! いや、でもあんな奴見た事ないぞ……」


 バルガスは気が気で仕方ない。

 万が一自分より上だった場合、逆らう事が出来ないからだ。

 また騎士達は別の意味で、ノーティスから目が離せない。

 ノーティスからフェクターを凌ぐ圧倒的な強さが、ビリビリと伝わってくるからだ。  

 ただそんな中、クロエは強さよりもノーティスの存在その物に目を大きく見開いていた。


「ア、アナタはっ!」


 クールなクロエの瞳に思わず涙が浮かぶ。

 ずっと、ずっと会いたかったから。


「ノーティス……!!」


 涙が頬を伝うクロエを、ノーティスもハッと目を見開いて見下ろした。


「キミは確かあの時の……クロエ隊長? だよな」

「アハッ……♪ よく覚えてたわね。でも今は、総指揮官よ」

「そ、総指揮官?! 凄いじゃないかクロエ!」


 嬉しそうに顔をほころばすノーティスを、クロエは凛とした眼差しで見つめ微笑んだ。


「アナタのお陰よ♪」

「お、俺の?」

「そうよ。アナタがあの日命を賭けて立ちむかった勇気をもらって、私、ここまで来たの」

「あの日……そうだったのか」


 ノーティスは思い出していた。

 あの日少女を助ける為に教会に向かい、そこでフェクターと出会いクロエと一緒に戦った事を。


「でも、俺こそあの日キミに勇気をもらった。だから、今度は俺がキミを守る……!」

「ノーティス……!」


 思わず顔を少し火照らすと、クロエの腕の中でメイが涙をボロボロ(こぼ)しながら見上げてきた。


「うええええええええんっ! こわいよ~~~~~~!!」

「もう大丈夫よ。大丈夫だから」


 クロエがあやす姿に胸を痛めながらノーティスが見下ろしていると、ロバートが謎めいた顔で軽く震えながら話しかけてきた。


「あ、あの俺は衛兵の隊長してるロバートってもんだけど、アナタは一体……!」

「ん? あぁ、俺は……」


 ノーティスは少し斜め上を向いて考えてから、ニコッと微笑んだ。


「剣士見習いだよ」

「け、剣士見習いっ?!」


 ロバートは思わず目を丸くした。


「いやいや、いくらなんでも冗談でしょ。こんなん剣士見習いに出来る芸当じゃないし」

「まあ、そう言われても実際そうだし……」


 そう答えながら、ノーティスはササッと周りを見渡した。

 そうして何があったかのおおよそを把握すると、スッとしゃがみメイを優しく見つめた。


「俺はエデン・ノーティス。キミの名前は?」

「メイ……」

「そうかメイ。違ったら悪いんだけど、あのフェクターは……キミの大切な人じゃないか?」

「う、うんっ! そーだよ! わたしの……おとうさんなのっ!」

「なるほどね。やはりそうか……」


 全てを悟ったノーティスは込み上げてくる怒りをグッと飲み込み、涙に濡れてるメイを見つめたままニコッと微笑んだ。


「メイ、約束するよ。キミのお父さんは必ず俺が元に戻してみせる」

「ほんとうっ?! おとうさんを、もとにもどしてくれるのっ?!」

「ああ、約束だ」


 ノーティスはメイと指切りするとスッと立ち上がり、フェクターを再び見上げた。

 

「フェクター、今キミを救い必ず戻す。メイの下へ……!」


 誓いと共に見上げるノーティスを、フェクターは熱い吐息を吐きながら見下ろしている。

 また、前進から放たれる魔力も凄まじい。

 それをジッと見据えると、ノーティスは剣先を片手でサッと上に掲げた。


「悪いけど、これ以上被害が広がらないように、まずは大人しくしててもらうよ……! 『ライトニング・コルビス』!!」


 ノーティスは剣先から白い光の玉を放つと、フェクターの頭上でピカッ! と、弾けさせそこから出現させた光の檻でガシャン! と、閉じ込めた。


「グガアアアアアアアアアッ!!」


 閉じ込められたフェクターは咆哮を上げているが、光の檻から出る事は出来ない。


「ごめんなフェクター。師匠ならここまでしなくて出来るんだろうけど、俺はまだ未熟だからさ」


 剣を突きの形に構え、ノーティスはグッと腰を落としてフェクターを見据えた。

 フェクターの魔力クリスタルに狙いを定めた剣先がキラリと光る。


「キミがすべき事は破壊や殺戮なんかじゃない……その手で、メイを抱きしめることだっ!!」


 ノーティスは凄まじい速さで、一筋の閃光のようにフェクターに突き進む。


「悪夢から今こそ目覚めろ!! 『エッジ・スラッシュ』!!!」


 あまりの速さに皆が目と口を開けて見つめる中、光る剣先がフェクターの魔力クリスタルに、ガシッ! と、突き立てられた。

 まるで、あの日アルカナートが行ったのと同じように。


───よしっ! 額には刺さってない……!


 ノーティスが手ごたえを感じスタッと地面に着地すると、皆が見てる前でフェクターの魔力クリスタルにピシピシピシッ……! と、ヒビが入って入ってゆく。

 そして、パリ――――ンッ!! と、粉々に砕け散った。


「グガアアアアアアアアアアアアアアッ……!!!」


 フェクターは断末魔でその場を振るわすと、同時にみるみるうちに小さくなり、元の姿に戻った。


「ふうっ……! なんとか成功できたな」


 ノーティスが片手で軽く汗を(ぬぐ)う中、メイは一目散に父親の下へ駆け寄った。


「おとうさんっ! おとうさんっ! おきてっ!」


 メイは涙を浮かべながら、父親の事を必死で揺さぶっている。

 すると父親は、ううっ……と、声を漏らしながらゆっくりと目を開いた。


「メイ……」

「おとうさんっ! わたしだよっ! メイだよっ!」

「ううっ……メイっ!」


 父親はメイを涙を(こぼ)しながら強く抱きしめている。

 ノーティスがその光景を見つめていると、ロバートが後ろから声をかけてきた。

 

「ありがとう!! 本当にありがとう!!」


 パーマかかった頭の下げてくるロバートに向かい、ノーティスは軽く両手を向けている。

 ロバートの真っすぐな心に、少し照れくさくなってしまうから。


「いや、こちらこそだよ。俺は最後に魔力クリスタルを壊しただけで、それまでロバート達が頑張ってくれたお陰だから」

「いや、そんな事はねぇ! アンタのお陰だ」


 真っすぐなロバートを見つめながらノーティスは軽くため息を吐くと、メイの方へチラッと視線を向けた。


「メイっ」

「おにいちゃんっ!」

「ちょっとおいで」


 メイを呼ぶとスッとしゃがみ、ニコッと微笑んだ。


「メイ、俺がちゃんと動けたのは、このおじちゃん達が頑張ってくれたお陰なんだよ」

「おじちゃんが?」

「そう。おじちゃんが頑張ってなかったら、俺は間に合わなかったろ?」

「うん、そーだね……」

「だろ? だからおじいちゃんにも、いっぱいありがとうしといてな」

「うんっ! わかったーーーーーー♪」


 メイはとびきり明るい笑顔で答えると、ロバートにタタッと駆け寄り抱きついた。


「おじちゃ~~~~~ん! ありがとっ♪」

「メイっ! こっちこそありがとよ……!」


 ロバートが嬉しそうにメイを抱きしめているのを見つめていると、ノーティスは背中に視線を感じて振り向いた。

 

「クロエ……!」

「ノーティス、ありがとう……!」

「いや、こちらこそ。キミにまた会えるとは思わなかった」

「フフッ、私もよ。あれから私色々あったけど、アナタの事を忘れた事はなかったわ」

「そ、そうか……!」


 ノーティスは少し頬を火照らせた。

 クロエが美人なだけでなく、その凛とした瞳に時を経てきた想いを感じたから。

 けれど、ノーティスはハッと表情を変えクロエの背を覗き込んだ。


「これは、フェクターにやられたのか?」

「……違うわ。これは……」


 そこから全てを聞いた時、ルミの乗った車がキキイッ! と、音を立てて到着した。

 かなり急な到着の仕方だったので、その場に軽く砂塵が舞う。


「ノーティス様っ! ご無事ですかっ? いきなり車から降りて走っていかれるから……」


 車から勢いよく下りてタタッと駆け寄ってきたルミは、そこまで言って一回言葉を止めた。

 ノーティスが凄く綺麗な女と話をしているのが、目に飛び込んできたからだ。


「あの、そのお綺麗なお方は……」


 実際はルミ自身がその超絶な可愛さにより、周りの男達から熱い視線を送られている。

 けれどルミの瞳には、ノーティスがクロエと楽しそうに話している光景しか映らないし感じない。

 恋する乙女はそういう物だ。


───もうっ、ノーティス様はまた……


 ルミは嫉妬でノーティスに詰め寄ろうとしたが、思わずビクッと引いてしまった。

 ノーティスの澄んだ瞳に、静かだが強い怒りの炎が宿っていたからだ。


「ノ、ノーティス様……?」


 思わず後ろから問いかけたルミに、ノーティスは背を向けたまま振り向かない。


「ルミ、すまない。就任式はキャンセルだ」

「えっ……で、でもっ」

「まだ、やる事が残ってる……!」


 ノーティスは背中から怒りのオーラを立ち昇らせながら、離れた場所から射貫くような眼差しで睨みつけた。


───バルガス。貴様だけは許さない……!!

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