ep:22 合格と勇者の意味
「はっ? ノーティス、アナタ何を言ってるの?」
「おいおい、そーだぜ! 何だってんだ一体」
ノーティスの合格辞退の宣言に、レイとジークは困惑した顔を浮かべた。
もちろん、ルミとエレナもメチャメチャ驚いている。
「ノ、ノーティス様、何を仰ってるんですかっ?!」
「そーだよノーティス! 勇者だよ勇者! なんで断るの? もったいなーーーーーーい!」
そんな中、ジークはニヤッと笑みを浮かべた。
「まさかお前さん、勇者じゃなくていきなり教皇様じゃなきゃイヤだって事かい?」
「まさか、違うよジーク」
「だったら何でだよ。他にやりてぇ事でもあるのかい」
「いや……そうじゃない。合格が不釣り合いなだけさ」
「あん? なんだお前さん、俺を倒しといてそりゃねぇだろ」
ジークがそう言うと、レイもスッと前に出た。
かなりキツイ眼差しでノーティスを見つめている。
「そうよ。アナタが合格じゃないなら、私達だって王宮魔導士失格じゃない!」
「違うよレイ! そんな事は言ってない……」
「じゃあなんなのっ?!」
レイはまったく納得がいかず睨んでいるし、ジークも困った顔だ。
そんな二人にノーティスは悔しそうな顔を向けた。
「だって本当は俺、さっきジークに負けてたよ……!」
「えっ?」
「あっ?」
「だって、俺は冷静にならなきゃいけない時にそうなれなかったんだ。もしあの時レイが言ってくれなかったら、俺はきっと勝てなかった。だから……」
そこまで言った時、ジークは思いっきり笑い出した。
「ハーッハッハッハッ! ノーティス、お前さん真面目すぎだろ」
「いや、普通に考えれば……」
「違ぇっ!!」
「ジーク……」
謎めいた顔をしているノーティスを、ジークは精悍な眼差しで見つめている。
「いいだよノーティス。お前さんは別にズルをした訳でもねぇし、俺と真正面から戦った。それは間違いねぇだろ?」
「それは……そうだけど」
「だろ? で、お前さんは勝ったんだ。だったらいいんだよ。少しぐらい躓いたって」
「けどさジーク、勇者はそんなんじゃ……」
ノーティスがバッと身を乗り出すと、ジークも同じく身を乗り出した。
「うるせぇっ! けどもなんもねぇんだよ! いいじゃねぇか完璧じゃなくたって」
「えっ?」
「人はよ、不完全だからこそ色々出来んだよ。それによ、戦って傷ついて、それを乗り越えていくから勇者なんだろ。なぁ、違ぇかい?」
「ジーク……!」
ノーティスが瞳の光を揺らめかしジークを見つめる中、レイは軽くため息をついて微笑んだ。
「そうよノーティス。それをしていくのが勇者なんだから」
「レイ……!」
「なにより、アナタにはそれをしていける強さと美しさがあるわ。だって、アナタは誰よりもそれを磨いて生きてきたんだから」
ジークとレイが見つめる中、話に聞き入っていたルミとエレナもノーティスの前にサッと躍り出た。
「ノーティス様、ジーク様とレイ様の仰る通りです♪」
「ルミ……」
「そーそー。ノーティスは勇者が似合うよ♪ それに、ノーティスが勇者になれば私も鼻が高いし。ニヒヒヒッ♪」
「エレナ……」
「もうっ、エレナは何を言ってるのよっ」
「え~~~だって、そーゆーことじゃん♪」
「まったくもう……」
ルミが軽く頭を抱える中、ノーティスは軽く瞳を閉じ想いを巡らせてゆく。
───そうだよな。支えられたのは、別に今が初めてじゃない。ずっと前からそうだ……
ノーティスの脳裏に、これまでの日々がよぎる。
無色の魔力クリスタルと判明し浄化対象になってから、決して一人で生きてきた訳では無い。
あの日にハンカチをくれた少女やクロエ、自分を育ててくれたアルカナートやセイラ。
そして、いつも自分を応援してくれているルミとの日々は何物にも変えられない。
これらがあって今がある。
───もし俺がここで合格を受けずに辞退するなら、それは……!
ノーティスはスッと目を開き、決意に満ちた澄んだ瞳でみんなを見渡した。
「みんな、ありがとう……! 俺は勇者になって戦う! そしてみんなを守る為にあの国を倒し、必ず平和にしてみせる!!」
その決意を、みんな笑みを浮かべて見つめている。
また、煌めく星空もノーティスの決意を祝福しているようだ。
こうして波乱に満ちたギルド検定試験は、あまりも多くの出来事と共に終わった。
そして、一週間後の勇者就任式の日を迎えたのだが、ルミはノーティスを助手席に乗せたまま仰天の顔を浮かべていた。
「ええっ? ノーティス様、本気で仰ってるんですかっ?!」
「あぁ本気だ。ここで行かなきゃ勇者じゃない」
「し、しかしですね、今からあそこに向かってたら就任式に間に合いませんよっ!」
ルミは運転しながら血相を変えて叫んだが、ノーティスの表情は変わらない。
「ルミ、俺が名より実を取る性格なのは知ってるよな」
「で、ですが……!」
事の始めは、ノーティスがセイラに合格の挨拶に行くと言った所から始まった。
セイラとの食事会は確かに楽しかった。
アルカナートは不在だったものの、特にルミとセイラは意気投合。
酒を飲み、思いっきりへべれけになりながらノーティスの文句を言っていたぐらいだ。
『セイラ様~~~~ノーティス様はお強くて優しいですが、ほんっっっっっっっっとうに女の子にだらしないですよっ!』
『ええっ! ホントに?』
『そうなんです! レイ様からキスされてましたし、アンリ様からもされかけてました』
『まあっ!』
『それに、私の妹からもおもいっっっっっっっきりアプローチ受けてますし!』
『あらら♪ ルミちゃんみたいに可愛い子がいるのに~~~ノーティスったら、ホントいけない子ね♪』
『そーーーーですよ! ノーティス様のバカッ!! 女ったらし!!』
『そーーだ、そーーだ♪』
『あぁもう、勘弁してくれよ……』
ただ、そこまで酔ってもさすがはルミ。
ちゃんと就任式に間に合うように、出発時間や最短ルートは計算していた。
けれど、城に向かう途中に離れた場所で爆発が起こったのだ。
それを調べてみると、なんとただの爆発ではなく『フェクター』によるものだと判明。
ちなみにフェクターとは、昔ノーティスも遭遇した事がある魔力クリスタルの回路の暴走で発生してしまうモンスターの事だ。
また、こういった街の事件やトラブルは街の衛兵達が対応するのが決まりで、王宮魔導士や軍隊はトゥーラ・レヴォルトと戦うのが使命の為介入しない。
そういう規則だからだ。
けれど、ノーティスは放っておけない。
まだ正式に王宮魔導士になっていないからではなく、ノーティスはそういう性格なのだ。
それを誰よりもよく分かっているルミは、ハァッ……と、軽くため息を吐くと思いっきりハンドルを切った。
「……分かりました。行きましょうっ!」
そして、力強く微笑んだ。
───ノーティス様……私、アナタがそういうお人だから、大好きになっちゃったんですよ♪
次話から新章!
前に登場したキャラが成長して出てきたり、涙と感動のスカッとざまぁが炸裂します!
ここまで読んで面白ければ、★★★★★とブクマで応援よろしくお願いします( ^o^)/




