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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-2 波乱と激闘のギルド検定試験
21/71

ep:21 激闘の決着と戦士の誇り

「うらぁぁぁぁぁっ! 消し飛びやがれ!!」


 真っ赤なハルバードが、ジークの魔力によって巨大に膨れ上がってゆく。

 その姿に、フェイントや小細工など一切ない。

 全力の一撃で叩き潰す決意を雄弁に語っている。


「これが俺様本気のーーーーーーーー『ギガント・アックス』だああああああっ!!!」


 向かってくる絶対的な一撃に向かい、ノーティスは白輝(びゃっき)の魔力で巨大化させた白刃の太刀を振り下ろした。


「大いなる光で全てを斬り裂く! 『エクス・ギル・スラーーーーーーッシュ』!!!」


 二人の必殺技がドガアンッ!! と、凄まじい轟音を立てて激突し、赤白い輝きが周囲を眩しく照らす。

 その輝きの中で、ジークとノーティスは激しい鍔迫り合いを始めた。


「おらぁあああああっ……!!」

「うおぉおおおおおっ……!!」


 互いに全力でせめぎ合う中、ノーティスはジークを精悍な眼差しで見据えている。


「ジーク……キミの戦士としての力と気概は素晴らしい。けど……より大切なのは、戦いの向こうに何を見ているかだ」

「んだとっ……!」

「あぁそうさ、ジーク。この戦いの向こうに、キミは何を見ている」

「ハンッ、んなもんは……ありゃしねぇ! 俺は戦いたいから戦ってんだよ!」


 ジークはそこから一瞬考えた顔を浮かべ、ノーティスをキッと睨んだ。


「いや、それだけじゃねぇ。俺はな……レイを奪られる訳にゃいかねぇんだよっ!!」


 ジークはより力を(たぎ)らせハルバードを押してゆく。


「レイは俺の女神なんだああああっ!!」

「くっ……!」


 ジークの力にググッ……! と押されながらも、ノーティスは瞳にキッと力を込めた。


「ジーク、だったら分かるハズだろ……俺もこの戦い、決して負ける訳にはいかないんだ! ハァァアアアアッ!!」


 白輝(びゃっき)の魔力クリスタルの煌めきが、より白く大きく輝いていく。


「ルミを助ける為に今こそ最高潮に輝け!! 俺の魔力クリスタルよーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


 その輝きがジークの輝きを凌駕し、ギガント・アックスの威力を完全に押し返した。

 巨大な白刃の太刀が、ジークを白く照らしながら襲い掛かる。


「ちっ……ちっくしょおおおおおおおおおおっ!!!」


 ジークはその衝撃で大きく上空へ吹き飛ばされ、背中からドシャッ!! と、地面に叩きつけられた。


「ぐはあっ!!」


 砕けた鎧の欠片が散らばる中、ジークはそのまま大の字になって星空を見上げた。


「くっそ……! あ~~~~ぁ、ったく完敗だぜ。戦士としても、男としてもよ……」


 そんなジークをノーティスはハアッ……! ハアッ……! と、息を切らして見つめている。

 勝ったとはいえ、レイとの激闘の後にさらに全力を出し尽くしたからだ。

 しかし、ノーティスにはゆっくりしている時間はなく、きしむ身体でジークの側に行き見下ろした。

 友を見つめるような眼差しで。


「ジーク、いい戦いだった。キミが、何の為に戦ったのか伝わってきたよ」

「ヘンッ……まっ、それは俺も一緒だぜ」


 仰向けのまま軽く口角を上げたジークの側でノーティスは(ひざまず)と、スッと手を伸ばした。


「けど、約束通り血清は渡してもらう。もう時間が無い」

「あぁ、これの事かい」


 ジークが首から下げていた青い小瓶を受けとったノーティスは、蓋を開くとハッと目を見開いた。


「これは……!」


 便の中に入っていたのは血清ではなく、小さな鍵だったからだ。


「ジーク、これはどういう……」


 ノーティスがそこまで言ってまさか! と、いう顔を浮かべるとジークは軽く笑みを浮かべた。


「そういう事よ。そいつは嬢ちゃんにかけてる手錠の鍵。毒なんてハナから打っちゃいねぇのさ」

「じゃあなんで?」

「ハンッ、決まってんだろ。お前さんに全力を出させる為よ」

「ジーク、キミって奴は……!」


 ジークを見つめながら、ノーティスは思わず軽く呆れながら微笑んだ。

 どこまでも戦いが好きだというのが伝わってきたから。


「まっ、演出の為に軽い睡眠薬は打ったけど、それが効く前に終わっちまった……やっぱ小細工とか、らしくねぇ事はするもんじゃねぇな。ハハッ……」

「フッ、けどジーク。キミの想いと技には、小細工は一つも無かったよ」

「へへっ、たりめーだろ。戦士はいつだって真っ向勝負よ」


 軽く笑みを浮かべ目を閉じたジークにコクンと頷くと、ノーティスはルミの所へ行き縄と手錠と口の布をサッと外した。


「ルミ、大丈夫か」

「ノ、ノーティスさまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


 ルミは大声を上げて抱きつき、ギュッと目閉じノーティスの胸の中で泣いている。

 突然誘拐され、目の前であんな戦いを見せられたのだから無理もない。

 その涙が胸を濡らす中、エレナがタタッと駆け寄ってきた。


「お姉ちゃんっ!」

「エレナ……!」


 涙の乾かぬ瞳で見つめると、今度はエレナがルミに抱きつき涙を(ほとばし)らせた。


「うわ~~~~~~~~~~~ん、お姉ちゃん、今までごめんなさいっ!!」

「いいのよエレナ。私はエレナのお姉ちゃんなんだから」

「ううっ……お姉ちゃん、大好き……!」


 ノーティスはその光景を優しく見つめている。

 エレナから聞かされていたからだ。

 ジークの部下が、ルミとエレナをさらいにきた時の事を。


『エレナを連れて行く事は許しませんっ! さらうなら、私一人にしなさい!!』


 ルミは自らの身を張ってエレナを守ったのだ。

 今までエレナから、散々な事をされてきたにも関わらず。 


───戦いに勝つのは力だけど、人の気持を救うのはやっぱりそうだよな……!


 ノーティスがそんな想いで二人を見つめている中、レイはジークを女王様のように上から見下ろしていた。

 

「ジーク、いつまで寝てるのよ。アナタならもう立てるでしょ」

「へっ……まっそーだけどよ、何か起きる気になれねぇんだ……」

「まったく、人一倍タフなくせに何言ってんのよ」

「そーなんだけど、ちっとな……」


 ガラにもなくジークは寂し気な顔をしている。

 また、目もどことなくうつろだ。

 ノーティスから喰らったダメージもそうだが、それ以上に心のダメージが大きい。


「レイ……俺はよ、前から言ってる通りお前さんに惚れてんだよ」

「フフッ♪ 知ってるわよ。何度も聞いてるし」

「けどよ、そんなお前さんの前で俺は負けちまった……全力でやったのによ。ケッ、情けねぇ」


 そんなジークを上から静かに見下ろしているレイは、フッと軽くため息を吐いた。


「ホント、情けないわね」

「チッ、分かってら。ほっとけ」

「負けた事がじゃないわ」

「あん?」

「そんな風に思ってるアナタ情けないの。さっきノーティス(あの子)に言われて、思い出さない? アルカナート(あの人の)事を……!」

「……!」


 ジークはレイから言われて、思い出していた。

 アルカナートに修行をつけてもらっていた、在りし日の憧憬を。


『ジーク、お前の強さへの執念は見事だ』

『とーぜんすよ先生。戦士が弱くて負けてちゃ、話しになんないっすから』

『……確かにその通りだ。しかし、それなら負けた奴は戦士ではないのか』

『えっ? いや、そりゃあ……う~~ん……でも、俺は負けたくねぇっす!』

『フンッ……まぁ、今はそれでいい。ただ、いつかお前にも分かるハズだ。戦士の誇りがな』

『戦士の誇り……っすか?』

『戦いの向こうに何を見るか。それを忘れなければ、いつか分かる。それがジーク、お前が真の戦士になる時だ』


 それを思い返したジークの瞳に、ハッと光が宿った。


アルカナート(せんせいっ)……!」

 

 それを見たレイは嬉しそうに微笑んだ。


「フフッ♪ ジーク、アナタも思い出したでしょ。アルカナート(あのひと)の事を」

「ああ……!」

「私もそうよ。ノーティス(あの子)と戦って、真の美しさの意味を知ったわ」

「ったく、とんでもねぇのが来たもんだぜ。ハハッ」


 一瞬目を閉じたジークにレイはスッと片手を差し出した。

 美しい髪がレイの頬を軽く伝い(こぼ)れ落ちる。


「じゃあ、もうノーティス(あの子)合格でいいわよね」

「ハンッ、たりめーだろ。アイツが合格じゃなきゃ誰も合格なんてしねぇよ」

「フフッ♪ そうね」


 そう言って微笑んだレイの手を取り立ち上がると、ジークはノーティスの事を見つめた。

 ノーティスは軽く視線を落とし何かを考えている。

 ジークはそれを見て軽く謎めいた顔を浮かべた。


「おいノーティス、話がある。ちょっとこっちに来い」

「ジーク……」


 側に来たノーティスをジークは見下ろした。


「合格だ」

「えっ?」

「えっ、じゃねぇ。合格だ」

「じゃあ……」

「そう、これでお前さんも晴れて冒険者の仲間入りって訳だ! おめでとさん!」


 ジークがニカッと笑みを浮かべる中、ルミとエレナも目を輝かせている。


「ノーティス様、おめでとうございます!」

「さっすがノーティス! おめでとーーーーーーっ♪」


 また、ジークの側でレイもノーティスを華美な瞳で見つめた。


「フフッ♪ それに、合格だけじゃないわ。一週間後、正式に『勇者』として教皇様から任命してもらうから。アナタが加われば、きっとあの国トゥーラ・レヴォルトを倒す事が出来るようになるから」


 レイのその言葉に、ルミとエレナはさらに驚いた。

 こんな事は異例中の異例だからだ。

 通常、ギルド検定試験に合格するとFランクからスタートし、その後、様々なクエスト攻略やランクアップの試験に合格していかなければならないからだ。

 ちなみにBランクでようやく王宮の正規兵。

 勇者は最低Aランクからだ。

 なので、最初から勇者でというのは通常ではあり得ない好待遇。


「ノーティス様、本当に凄いですよっ!!」

「ちょ、ちょっと……マジで凄すぎなんだけど!!」


 ルミもエレナも、まるで自分の事以上に興奮している。

 しかしそんな中、ノーティスはレイとジークを見つめギュッと拳を握りしめた。


「いや、この合格……俺に受け取る資格はないっ!」

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