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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-2 波乱と激闘のギルド検定試験
19/71

ep:19 闇への疑惑と誘拐されたルミ

「ニャハハハッ♪ ノーティス、よ~~~~頑張ったの」

「フム、なかなかいい伝え方だったと思うよ。極端な例ではあるけど、参考になった」


 お店に戻ったノーティスを、アンリとロウは誇らしげに見つめている。

 水晶玉を通じて、さっきの戦いを見ていたからだ。

 ただ、ルミはブスッと頬をふくらませている。

 口を尖らせたまま、かなり不機嫌な様子だ。


「そーですね。ノーティス様が、あんなはしたないのもよ〜〜〜〜く、分かりましたので」

「ルミ、だから違うって」

「違いませんっ! あの後レイ様から……キスされてたじゃないですかっ!」


 ルミはプイッ! と、横を向いてふくれている。

 まあ無理もない。

 しかもあの戦いが終わった後、ノーティスはレイから交際を申し込まれたのだ。

 ノーティスが自分の運命の相手だと、レイに確信されたから。

 もちろんノーティスは断ったのだが、レイから仮予約だと言われ不意にキスされてしまっていた。


「でも、あれは不可抗力で……!」

「なーーにが不可抗力ですかっ。ノーティス様であれば避けれたハズです」

「いやまぁ……それは、そうだけどさ〜〜」


 ノーティスがバツ悪そうに軽く横を向くと、ルミはバッと前を向いた。


「そーですよねっ! それをしなかったという事は、ノーティス様は確信犯という事です!」


 ビシッと指をさしたルミは、まるで犯人を名指しした時の名探偵のようだ。


「もはや言い逃れは出来ませんっ!」

「は、はい……でも、俺からはしてないし、情状酌量の余地はあるだろ……」


 頼むよという顔をしているノーティスを、ルミは顎に軽く片手を添えて唸っている。


「う~~ん……」

「カレッタを奢るからさ……」

「ば、買収ですかっ! 罪が重くなりますよっ!」

「いや、どちらかといえば、あま~~~くなるんじゃないか?」

「ぬぬぬっ……私の大好きなお菓子を出すとはズルいです」

「頼むっ! カレッタ……と、新作のマカロン!」

「うわぁ~~~そう、きましたか……!」


 それを見ていたアンリはノーティスに顔をスッと近づけると、ルミをチラッと横目で見つめ、いたずらっ子のように微笑んだ。


「私もキスしてしまおうかニャ♪」

「ア、アンリ様っ! なにを仰ってるんですか」

「ニャハッ♪ いや、カレッタとマカロン出されて迷ってるようじゃから、いっそ罪を重くして確定させてやろうと思っての」

「そ、そんな! それは困りますっ」


 顔を赤くして戸惑うルミに、アンリはニヤッと流し目を向けた。


「じゃ~~~どうするニャ?」

「分かりました……カレッタとマカロンの刑で、手を打ちましょう」

「さすがルミ。それが賢明だニャ♪」

「う~~~アンリ様こそじゃないですか」


 アンリのお陰で何とか収まった光景を前に、ノーティスはホッと胸を撫で下ろしている。


───よかった……ルミが不機嫌になると大変だし。


 ノーティスがそう思っていると、アンリが席からスッと立ち上がってニコッと笑みを浮かべた。


「じゃ~~そろそろ行くとするかの♪」

「フム、だいぶ長居してしまったしな」


 それを合図に、ルミもノーティスを見つめ微笑んだ。


「じゃあノーティス様、私達も行きましょう♪」

「あぁ、そうするか」


 ノーティス達は会計を済ませ店を出ると、そこで別れる事になった。


「ノーティス、本当に今日はよく頑張ったニャ♪」

「いえ、お陰様です」

「フム、後は一週間後の実技試験だけか」

「そうですね。全力で、頑張ります!」

「ニャハハハッ♪ 応援してるニャ」

「キミならきっと受かるよ」

「……はいっ!」


 そうして別れた後、ロウとアンリはノーティスとルミに見送られながら話をしていた。


「ロウよ、とんでもない弟子が来たもんじゃの♪」

「あぁ、彼が勇者として僕達と戦ってくれる事になれば……」

「そうじゃの。未だにケリのつかんあの国『トゥーラ・レヴォルト』とも決着がつくかもしれん」


 トゥーラ・レヴォルトはノーティス達の住む国『スマート・ミレニアム』と、昔から戦い続けてきている国だ。

 その国は誰も魔力クリスタルを装着していない。

 かつて、圧倒的武力と呪いの感染を武器に、世界を破滅寸前に追いやった悪魔王『アーロス』

 トゥーラ・レヴォルトはその悪魔に操られ、魔力クリスタルの装着を拒んでいるのだ。

 また、それだけでなく、彼らはスマート・ミレニアムの中核をなす神聖樹『ユグドラシル』を奪おうと、これまで何度も軍隊を差し向け攻撃を仕掛けてきている。

 

「しかし、あ奴らは魔力クリスタル自体を毛嫌いしとるクセに、なぜユグドラシルを欲しがるのかのぉ……」

「多分……彼らにとって、魔力以外に大切な何かがあるのかもしれない……」

「魔力以外に?」

「ああ、例えば……」


 ロウは少し考えた。

 いつも頭にあるこの答えを、言っていいものかどうか悩んだのだ。


───でも、アンリならもしかしたら……


 そう思ったロウは呟くように答える。


「元々は彼らの物だったから」


 ロウは、昔この答えを出した時に心の中で何度も否定しようとした。

 けれど、否定しようとすればする分だけ、そうとしか思えないのだ。

 ただ、これが本当だとしたら失言どころでは済まない。

 国の根幹を揺るがす事になるからだ。

 なので、ロウは今まで誰にも言った事が無かった。


───本来、確証も無しに言うのはあるまじき事だ。しかしアンリなら……いや、うかつだったか……?


 ロウは珍しくドキドキしながら歩いている。

 アンリはそんなロウの顔を、横からスッと覗き込んだ。


「この国随一の天才魔導軍師とは思えぬ発言じゃの」

「そうか……」


 ロウがそっと見ると、アンリは快活で慧眼な瞳に光を揺らめかせた。


「じゃがやはり、お主と私は()()()だったようじゃの♪」

「アンリ……!」

「ニャハハハッ♪ まっ、憶測の域を出んがの。それに、私らはどちらにせよ、この国の民を守らねばならんニャ」

「フム……そうだなアンリ。僕らがあの国と決着をつければいい話だ」

「そーゆー事ニャ♪」


 アンリとロウがそんな話をしてるとは全く想像してないノーティスとルミは、国の根幹とは程遠い事に直面していた。


「やっぱりノーティスは凄いよね~~~♪ もう大好きっ!」

「あぁ……ありがとう」

「だって、もうギルド中噂してるよっ! あのレイ様を倒した人がいるって!」


 向かいの席で興奮しているのは、あのエレナだ。

 さっきアンリとロウと別れた後、バッタリ出くわしたのだ。

 そして、三人でさっきとは違う喫茶店に行く事になった。

 ちなみに、カフェの名前は『アステール・ダスト』

 星座がコンセプトのお店で、ニケのパンケーキやペガサスの流星パフェ、ドラゴンの昇龍ガレットやキグナスのダイヤモンドシャーベット。

 また、アンドロメダのローリングピザやフェニックスの天翔ステーキと、メニューは様々だ。


「なんだこれ……どれもメッチャ美味いなっ!」

「そうですねノーティス様っ♪ 何か不思議な力が湧いてきます」

「アハッ♪ 二人とも……宇宙を感じたことはあるかなっ?!」

「へっ? 何言ってんだエレナ……」

「どゆこと……?」


 そんな店内でテーブルの向かい側に座っているエレナは、前以上に目からハートマークを送っている。

 もちろん、ノーティスは嬉しさは感じながらも軽く引いてるし、ルミはまたプンスカ中だ。


───もうっ、エレナったら本当に懲りないんだから……!


 そう思っているルミの前にスッと影が差した。

 ん? と、思いチラッと見ると、そこには抜群のスタイルから華美なオーラを放っている女が目に映る。

 女は大きな茶色のサングラスをかけているが、ルミには一瞬で分かった。


「レ……」


 思わず立ち上がりそうになったルミに、レイはシーのポーズを取り軽く微笑んだ。


(せっかくお忍びの格好で来てるんだから。ねっ♪)

(は、はい。すいません……!)


 顔を火照らせ申し訳なさそうに上目遣いで焦る中、エレナはレイを見つめて目をキラキラさせている。


(あわわわわっ……! レ、レ、レイ様だ……!!!)


 ノーティスに敗れたとはいえ、レイはこの国のトップクラスの人気を誇る王宮魔導士。

 男からはもちろん、女の子達からの人気も絶大だ。

 特にエレナのようなミーハーな性格であれば、神に会ったようなもの。

 興奮せずにはいられない。

 そんなエレナをスッと覗き込み、レイは軽く微笑んだ。


(アナタ可愛いわね。磨けばもっと光るわよ。頑張って♪)

「は、はいっ!!!」


 思わず大きな声で叫んでしまったエレナに微笑むと、レイはノーティスの側に寄りサングラスをスッと下げて見つめた。

 レイの華美な瞳がキラリと光る。


「ノーティス、今から少し付き合いなさい」

「えっ?」

「いいから。早く」

「いや、でも……」


 ノーティスはルミをチラッと見つめた。

 ルミは突然の事に緊張しているが、行き先を告げずに行けばまた心配するのは目に見えてる。


「レイ、どこに行くんだ?」

「ギルド本部よ」

「本部? なぜ?」

「行きながら話すわ。早くして」

「……わかったよ」


 ノーティスはそう言って立ち上がるとルミに行先を告げ、ここで待ってるように伝えた。

 ルミは少し心配しながらも承諾し、エレナと二人で待つ事に決定。

 そして、レイと店を出てギル本部に向かう事になり、ノーティスはその途中で聞かされた。

 レイはノーティスに一刻も早く自分達の仲間になって欲しい。

 その為に、実技試験を免除させようとしている事と、ノーティスに危険な目に合ってほしくないという事をだ。


「私が言うのはおかしいのは分かってるけど、アイツは危険よ!」


 レイの言うアイツというのは、スマート・ミレニアム随一の剛腕を誇る王宮魔導士『アンディーノ・ジーク』の事だ。

 ジークは大の戦闘狂で、実技試験の際はノーティスに全力で挑みたいと意気込んでいる。

 また、ジークはレイに惚れてるのでノーティスの事が許せない。

 王宮魔道士の全力がどれだけの物かは、言うまでもないだろう。

 いくらノーティスが強くてもタダでは済まない。

 なのでレイは自分の強権を使い、実技試験無しで合格にさせようとしているのだ。

 実際、自分を倒してるのだから資格は充分だという理屈を持って、ギルド本部の人間を説き伏せようと考えている。


「だからお願い。私は、アナタの事が……」


 レイがそこまで言った時、エレナが血相を変えノーティスを呼びながら走ってきた。


「どうしたエレナ?!」


 エレナの表情から只ならぬ物を感じ問いかけると、エレナは泣きながら告げてきた。


「ううっ……お姉ちゃんが……お姉ちゃんが拐われたの!」

「な、なんだって?!」


 そこから話しを聞いたノーティスは、エレナとレイを連れ全力で駆け出した。

 ルミをさらったジークの待つ闘技場へ向かって。 

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