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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-2 波乱と激闘のギルド検定試験
18/71

ep:18 ノーティスの暴力と真の美しさ

「ノ、ノーティス様、一体今なんと?」


 ルミは、思わず聞き返してしまった。

 けれど、ノーティスはニヤリと邪悪な笑みを浮かべてレイを見下ろしている。


「ああん? 雑魚に雑魚って言って何が悪いんだよ」

「ノーティス様っ! 一体どうされたんです?! ノーティス様は、決してそんな事を言うお方ではないハズっ!!」


 ルミはすごく哀しそうな顔で、バッとノーティスに身を乗り出した。

 ノーティスからあり得ない言葉が出てきたからだ。

 無論、それだけではない。

 まるで、人を蹂躙(じゅうりん)する事に悦びを感じるような邪悪に満ちたオーラが、ノーティスの全身から立ち昇っているからだ。

 ルミが悲壮な顔をするのも無理はない。

 けれど、ノーティスはそんなルミを無視して、レイの肩をドガッ! と、軽く蹴り飛ばす。


「きゃあっ!」

「ノーティス様!!」


 ルミは腕をガシッと掴んで止めたが、ノーティスはウザったそうにそれを振り払い顔をしかめた。


「ウザッてぇんだよ!」

「ノーティス様……!」


 悲壮な顔を浮かべるルミの側で、ノーティスはレイを見下ろしている。


「ルミ、お前も見てただろう。コイツはエミリオ(あのカス)と一緒に俺の事をさんざバカにしてきたんだよ! しかも、試験にかこつけて殺そうとしてきやがったんだ」

「た、確かにそうですが……でも、もう勝負はついてるハズです!」

「ハンッ、だからだろうが。バカかテメェは」

「えっ?」


 ルミが泣きそうな顔で横から見上げると、ノーティスはレイを見下ろしたまま、ニタアっと卑劣な笑みを浮かべた。


「勝者は何をしてもいいんだよ。()()()()もそう言ってたろ。まっ、もちろんこんないい女、簡単には殺さねぇ」


 ノーティスは下卑た笑みをニタニタ浮かべながら、レイの体を舐め回すように見ている。


「ここでひん剥いて、グチャグチャに犯してやるよ。俺が飽きるまでな。クックックッ……」


 あまりにも残虐非道な言葉と、それを裏付ける悪魔のようなオーラと眼差し。

 それに晒されているレイは片手で肩を押さえたまま、あまりの恐怖にブルッと身を震わせた。

 強気なレイでも、このノーティスを前には震える事しか出来ない。


「ううっ……イ、イヤっ……こ、こないで、お願い……!」


 レイは瞳に涙を(にじ)ませ怯えているが、ノーティスはむしろより嬉しそうに下卑た笑みを浮かべている。


「あ~~~~たまんねぇなぁ。強気な女が懇願するザマは、マジでそそるぜ」


 ニタニタしながらレイの顔を覗き込むノーティスの背に、ルミは涙を(ほとばし)らせながら身を乗り出した。


「ノーティス様っ! おやめください!! こんなのまったくノーティス様らしくありません!!」


 けれど、ノーティスは振り向かず表情も変えない。


「うっせぇなぁ、黙って見てろ! コイツは俺より弱ぇんだから、俺の好きにしていいんだよ」

「そんな……! そんなの間違ってるって仰ってたじゃないですか!」

「考えを変えたんだよ。俺の力でコイツを犯して、弱ぇ奴は全部俺の奴隷にしてやる。レイ、感謝しろよ。テメェは俺の(かて)になれるんだからよ……!」


 ニヤリと嗤いノーティスはレイに、ぬ~~っと手を伸ばしてゆく。

 しかしその時、ガシンッ! と、いう鈍い音が静かに響き、ノーティスは唇の血を(ぬぐ)いジロっと睨んだ。

 ノーティスを殴りつけ、フゥー! フゥー! と、息を切らし睨みつけているエミリオの事を。


「テメェ、どういうつもりだ……」


 静かに問いかけたノーティスの前に、エミリオは両手を広げバッと立ちふさがった。

 その瞳は恐怖を宿しながらも、それ以上の怒りに燃えている。


「姉さんは俺が守るっ! お前なんかには触れさせない!」

「はあっ? エミリオてめぇ雑魚の分際で、なーーにイキってんだよ。レイにすら遥かに及ばねぇ雑魚のクセに、俺に勝てると思ってんのか? ああっ?」


 ノーティスにメンチを切られたエミリオは、思わずブルッと震えてしまった。

 自分とはあまりにも大きな実力差がある事を、肌で感じたからだ。

 瞬殺されるのは目に見えていて、恐怖に体がガタガタと震えてしまう。

 けれど、エミリオは退かない。

 それを凌駕する怒りと決意を持って立ち向かう。


「か、勝てるかどうかじゃないっ! 僕は、姉さんを守るんだっ!」


 そう言い放ったエミリオを、ノーティスは面倒くさそうに見つめた。


「はぁっ……無理に決まってんだろ。大人しくどいてろよ」

「嫌だっ! 僕は守る! 姉さんを……愛してるから!」


 勇気を振り絞って立ち向かうエミリオ。

 レイはその背中を見上げながら涙を浮かべている。

 それはさっきのように恐怖からくる涙ではない。

 エミリオの心から溢れ出ている強い愛に、心を打たれているのだ。


「ううっ……エミリオ!」


 その涙を背に感じたまま、エミリオは額の魔力クリスタルを輝かせてカロット色(オレンジ系)の光を剣に込めてゆく。


「愛する姉さんは決して殺させない! 喰らえノーティス! 高速の五連撃『スカーレット・テュエラ』!!!」


 振り抜いた剣からカロット色の五連撃が放たれた。

 しかし、ノーティスにはまったく通用しない。

 エミリオの技など、ノーティスには児戯に等しいからだ。

 むしろ、エミリオはカウンターを喰らい思いっきり吹き飛ばされてしまった。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 エミリオは真正面から地面にズシャッ!! と、叩きつけられながらもググッと顔を起こし、額からツーっと血を流したままレイに片手を伸ばしている。


「ね、姉さんっ……!」

「エミリオ!」


 レイはエミリオに駆け寄りたいが、ダメージで体が動かない。

 そんな二人をチラッと見つめると、ノーティスはエミリの背中をガシガシと踏みつけ始めた。


「おいおい、さんざんイキっといてなんだこのザマは!」

「ぐはあっ!」

「美しくねぇなあ、おいっ!」


 ノーティスはエミリオが血反吐を吐くのを、楽しそうに踏みつけ続けている。


「クククッ……ハハハ……アーッハッハッハッ!!」


 それを見かねたルミは再びノーティスに駆け寄り、ギュッと顔をしかめて後ろから抱きついた。

 もうこれ以上エミリオに傷ついてほしくなかったし、何よりも、ノーティスにもうこんな事をしてほしくないからだ。


「ノーティス様っ! もうやめてください!! お願いします!!」

「うるせぇルミ! すっこんでろ!」

「きゃあっ! ノーティス様……ううっ……!」


 バッと振り払われ涙を浮かべてるルミ。

 それをよそに、ノーティスはエミリオの髪をグシャッと片手で掴み吊るし上げた。

 エミリオの顔は涙と血でボロボロになっている。

 ノーティスは、そんなエミリオを吊るし上げたままニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。


「ダッセェなエミリオ。お前、マジで醜いぜ」

「うっ……! あぁっ……! ぼ、僕は姉さんを……ま、も、る……んだ」


 傷と涙でボロボロのエミリオを、ノーティスはウザったそうに見つめている。


「ケッ、くだらねぇ。ムダなんだよ。いくら力を(たぎ)らそうが想いがあろうが、この世界は魔力クリスタルの力が全てだ」

「ううっ……」

「だからよ、テメェみてぇな雑魚がいくら頑張ろうと意味はねぇ。そのクソみたいなクリスタルじゃ、俺の魔力クリスタルには……ぜってぇ敵わねぇんだからよ!!」


 ノーティスはそう言い放つなり、エミリオをレイにドサッと放り捨ててキツく睨んだ。


「なにが姉を守るだ! なにがクロスフォード家だ! 力のねぇ奴は……世界の片隅で震えて暮らしてるのがお似合いだ!!」


 あまりにも残酷なノーティスからの言葉。

 しかし、レイとエミリオはそれが聞こえていないかのように、抱き合いながら互いを見つめ合っている。


「エミリオ、しっかりして!」

「ね、姉さん……ごめん……なさい。僕、姉さんを、守ることが……出来なかった……!」

「エミリオいいの! いいのよ! もう喋らないで!」


 レイが必死に呼びかける中、エミリオの瞳から涙が横に流れる。


「そ、それに僕、醜いよね……こんなボロボロの姿になって……姉さんを大好きなのに、守ることもできなくて……ごめんなさい……!」

「う、ううっ……!」


 レイの瞳に涙がブワッと溢れ、それがエミリオの顔にポトポトと零れ落ちてゆく。

 

「エミリオ……アナタは醜くなんてないわっ!」

「ね、姉さん……」

「だってアナタ、勝てないと分かってても私の為に戦ってくれたじゃない!」

「ううっ……でも、守れなかった。僕は……失格だよ。クロスフォード家の人間としても……姉さんの、弟としても……」


 涙を頬に伝わせるエミリオをレイはギュッ! と、力一杯抱きしめた。


「そんな事ないっ! エミリオ、全力で戦ったアナタは誰よりも美しいわ! クロスフォード家の……いえ、私の誇りよっ!!」

「ぐっ……ううっ! ね、姉さん……」


 涙をボロボロ零すエミリオをレイはそっと地面に寝かせてると、ググッ! と、歯を食いしばりながら立ち上がってゆく。

 そして、華美な瞳に凛とした愛の光を宿してノーティスを見つめ、エミリオを庇うようにバッと両手を横に広げた。


「ノーティス、私を犯すのも殺すのも好きにしたらいいわ! 私は、確かにアナタを蔑んだし殺そうとしたんだから。でも……」


 そう言い放った時、レイは魔力を振り絞り額の魔力クリスタルからアクアマリンの輝きを煌めかせた。

 レイの体はボロボロだが、その光は気高く輝いている。


「エミリオだけは絶対に殺させない! たとえどんなに凌辱されても、エミリオ(この子)だけは守ってみせるわ!! 私は……エミリオ(この子)の姉だから!!」


 ノーティスはレイのその言葉を真正面から受け止め、ジッと瞳を見つめた。

 二人の強い眼差しが交叉する。

 それを数瞬続けると、ノーティスは一瞬スッと瞳を閉じ再びレイを見つめた。

 いつものような、愛と力強さに満ちた澄んだ瞳で。


「レイ、それが真の美しさだ」

「えっ?」


 両手を横に広げたまま謎めいた顔を受けべるレイに、ノーティスは精悍な顔で微笑んだ。


「美しい見た目や魔力クリスタルの強い輝き、そして、勝利。そのどれもが美しい。けど、それは目に見える美しさだ」

「ハッ、ノーティス、まさかアナタ……!」


 目を見開いたレイを見つめたまま、ノーティスは静かに告げてゆく。


「そうさ、本当の美しさはそこじゃない。キミの為にボロボロになりながらも戦ったエミリオと、そのエミリオを守ろうとして立ち上がったレイ、今のキミの心だ……!」

「それを私に伝える為に、敢えてあんな事を……」


 コクンと頷くノーティスを前に、レイは心の全てで感じていた。


───なんか、まるでアルカナート(あのひと)に言われてるみたい……!


 レイが胸をトクンッと鳴らす中、エミリオは苦しそうに顔をしかめながらもニッと微笑んだ。


「ぼ、ぼくの完敗だな……」 

 

 ルミは両手を口に当てブワッと涙を浮かべている。

 ノーティスが心を鬼にして敢えて悪役を演じきった事と、それが演技だった事に安堵したからだ。


───ノーティス様、さすがです! それに、本当によかった……!

 

 ルミとエミリオが感嘆の声を漏らす中、レイはノーティスの前でスッと視線を落として優しく微笑んだ。


「そっか……これがアルカナート(あのひと)の言ってた事だったのね……!」


 その姿は華美なだけではなく、聖女のようなオーラに満ちていた。

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