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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-2 波乱と激闘のギルド検定試験
17/71

ep:17 レイの切ない記憶とノーティスの光

「ごめんなルミ、心配かけちゃって」


 ノーティスが優しく見つめる胸の中で、ルミは嬉し涙を(こぼ)しながら抱きついている。


「ううんっ、いいんです! ノーティス様がご無事なら!!」

「ルミ、ありがとう」

「ううっ……ノーティス様……よかった。本当によかったです!」


 この光景を目の当たりにしたレイは、あまりの驚きにエミリオの隣で目を大きく見開いた。

 こんな事は、今まで一度たりとて無かったからだ。


「ど、どうして……アナタは私の技に、完全にかかっていたハズよ!」

「そうだよ! お前は姉さんの技にかかって廃人になったハズだろ!」


 エミリオも目を見開き驚いた。

 王宮魔道士であるレイの技が破られるなんて信じられないし、また信じたくもないからだ。

 そんな中、ルミはノーティスに抱きついたまま涙の乾かぬ瞳で見上げている。


「でも確かに、どうやって目覚める事が出来たんですか?」

「フッ、あまりにも悪夢が強すぎたからさ」

「えっ?」


 ルミが謎めいた顔を浮かべると、レイがノーティスをキッと睨みつけてきた。


「どういう事よっ!」

「今ルミに言った通り、強すぎたんだ。レイ、キミの作り出した悪夢は……!」

「なんですって?!」


 レイにはノーティスが何を言っているのかが、全く分からない。

 技が弱かったならまだしも、強すぎるから破られたなんて理解不能だ。

 不可解な事を告げられたレイの苛立ちが募る。

 そんなレイをノーティスは強く見つめ、体を小刻みに震わせてゆく。


「レイ、まだ分からないのか。言うわけないんだよ、あんな事を、みんなが俺にっ……!」


 ノーティスはレイを強く見据えたまま、抜刀術の構えを取った。


「俺は侮辱されてもいい。けど、俺の大切な人を侮辱するのは許さないっ!!」


 レイを見据えるノーティスの瞳は、激しい怒りに燃えている。

 大切な皆にあんな事を言わせるなんて、最低の侮辱に他ならないからだ。

 しかし、レイにはその気持ちは届かない。

 むしろ、より怒りに燃えてノーティスを睨んでいる。


「元浄化対象のくせに……元無色の魔力クリスタルのくせに、美しくないわ……こんなの美しくないっ!!」

「レイ……」

「弱者はずっと弱者でいいの! 私達強者に楯突く事も、そんな澄んだ瞳をする事も許さない!!」


 レイはスラっとした長い足を交叉させ両腕を上に伸ばすと、その中に燃え盛る不死鳥を作り出した。

 不死鳥はその炎の中にアクアマリンの輝きを秘め、神々しく光り輝いている。


「私の不死鳥は避ける事も防ぐ事も不可能よ。これでもう完全に消し去ってあげる! アナタの瞳を絶望の色に染め上げてね……!!」


 そう言い放つと、レイは絶対的自信に満ちた笑みを浮かべた。

 神々しい不死鳥からは凄まじい魔力が溢れ出し、その場をビリビリと震わせている。

 まさに王宮魔導士であるレイに相応しい、最強の必殺技だ。

 けれどノーティスは一切怯む事無く、抜刀術の構えを取ったままレイをキリッと見据えている。 


「レイ、それは無理だ」

「なんですって……!」

「俺の心には大切な人達の光が宿っている。キミがいくら強くても、そんな歪んだ醜い心じゃ消せやしないぜ……俺の光は!」

「私が醜いですって?! 許さない……絶対に!!」

 

 レイは激しい怒りにギリッと歯を食いしばったが、同時にハッと目を見開いた。

 また、エミリオも同じく驚愕に目を見開いている。

 ノーティスの額にある魔力クリスタルが、白く大きく煌めき始めたからだ。


「えっ……それは……!」

「な、なんだよあの光は!」


 驚愕するレイとエミリオとは逆に、ルミは力強い笑みを浮かべノーティスを見つめている。


───ノーティス様、ついにお使いになられるのですね……! 本当の(ちから)を!!


 皆の視線が一斉に集まる中、ノーティスはレイを真っすぐ見据えたままアルカナートに誓う。


───師匠……アナタから授けてもらったこの光、今こそ使わせていただきます!


 アルカナートに誓いを立てると同時に、ノーティスの心の中に巡る。

 あの日、人の温かさを教えてくれた少女やクロエ、自分を育ててくれたアルカナートとセイラ。

 そして、今自分を誰よりも想ってくれているルミの事がありありと。


「ハァァァァァァッ……! 光のクリスタルの名の下に、煌めけ!! 俺のクリスタルよ!!!」


 その咆哮と共にノーティスの魔力クリスタルから、白く大いなる光が放たれた。

 勇者の光である『白輝(びゃっき)』の光が、神の衣のようにノーティスの体を覆ってゆく。

 その光の正体が何なのかが、レイはすぐに分かった。


「ウソっ……! そ、その光は()()()の……」


 けれど、レイは首を横に軽く振った。

 完全にそうだと分かっていても、レイの歪んだ美意識がそれを認めないからだ。


「あるわけないわ……こんな落ちこぼれが、私の愛する()()()と同じ光を放つなんてありえない! いえ……決してあってはいけないのっ!! そんなの美しくない!!」


 そう言い放ったレイを見つめているノーティスは、瞳に一瞬哀れむような色を浮かべた。


「レイ、キミは何も分かっていない。愛も悲しみも、そして美しさも……本物は目には見えないんだ!」


 その刹那レイの脳裏に蘇る。

 レイの心の奥に閉まってある、大切な切なく甘い記憶が……

 

 幼い頃からレイは、その絶大な魔力に加えその美貌で周りを魅了してきた。

 もちろん、男からは性的な目でしか見られなかったが、それで苦労した事はない。


『全ての男は私にひざまずくの♪』


 事実レイにとっては、男なんて上手く利用すればいいだけだったし、女もレイの圧倒的美貌にひれ伏していた。

 それにより、レイはいつでもカーストの最上位だったからだ。

 その中で嫌でも作られていった。


 『美しさこそ正義であり力。使えない弱者に用はなく、全ての者は私にひれ伏すのが当然♪』


 と、いう価値観だ。

 ただ、そんなレイでも唯一思い通りにならない男がいた。

 誘拐犯から救い出してくれたその男は、レイがどんなに魅力的な姿を見せても常にぶっきらぼう。

 レイにまるで興味を示さない。

 けど、だからこそレイはその男に夢中になった。


『ねぇ、こっち見てよ♪』

『あっ? ムリ。今本読んでだ。見りゃ分かんだろ』

『もうっ、なんで?! みんなレイに夢中なのに!』

『ガキには興味ねぇんだよ』

『レイはもう大人よっ! それに誰よりも綺麗だもんっ!』

『……レイ、真の美しさは見えるものじゃない。()()()もんだ』

『はあっ? なによそれ。意味わかんない!』

『フンッ……レイ、それをお前に分からせてくれる奴が、お前の運命の相手だ』


 その憧憬を思い出したレイは、心から湧き上がる激情と共に体をブルブルと震わせている。


「なんで……なんでアナタなんか私の愛するアルカナート(あのひと)と同じ事を言うのよっ!!!」


 レイはより魔力を激しく滾らせた。

 もちろん、ノーティスも同じだ。

 二人から立ち昇る絶大な魔力が、周囲をより大きくビリビリッ……! と、震わせてゆく。

 それをルミとエミリオが片腕を上げ防御し目を細める中、レイはノーティスをキッ! と、睨みつけ両腕を振り下ろした。


「最華の炎と共に消え失せなさいっ! 『ディケオ・フレアニクス』!!!」


 レイから放たれた巨大な灼熱の不死鳥が、絶大な魔力と神々しい光を放ちながらノーティスに向かい襲い掛かる。

 大きさスピード、そして威力と共に避ける事も防御も不可能だ。

 しかし、ノーティスはそれを真っすぐ見据え、抜刀術の構えから剣を振り抜いた。


「天翔る数多の流星よ……全ての偽りと絶望を斬り裂け!! 『バーン・メテオロンフォース』!!!」

 

 全てを絶大な力で燃やし尽くそうとするレイの不死鳥と、それを輝く光で迎え撃つノーティスの流星群。

 互いの想いその物であるような二つの技は、空中でドガアンッ!!! と、激突した。

 両者の技のエネルギーが宙で激しく押し合い、そこから激しい衝撃波が広がってゆく。


「ハァァァァァッ……!!」

「オォォォォォッ……!!」


 全力で押し合う中、レイは腕を震わせながらノーティスに問いかける。


「ど、どうやって、ここまでの力をつけたのよ……! アナタは名門の出でもなんでもなく、元無色の魔力クリスタルで浄化対象だったのに……!」


 そう問いかけられたノーティスは、同じく震える腕にグッと力を込めた。


「どう生まれたかじゃない……どう生きてきかだ!」

「なんですって……!」

「それは、俺だけじゃ出来なかった。大切なみんなが支えてきてくれてるから……」

「くっ……」

「キミがいくら絶大な魔力と美貌を持っていても、みんながくれた輝きには及ばない!」

 

 ノーティスはより白輝(びゃっき)の輝きを煌めかせてゆく。


「この輝きは俺だけのものじゃない……! それを感じる事が、本当の強さだ!」

「ううっ……!」

「ウォォォォォォッ! レイに真の美しさを伝える為に、今こそ究極に輝け!! 俺のクリスタルよーーーーーーーーーーーーっ!!!」


 その咆哮と共にノーティスの流星群はレイの不死鳥をググッ……! と、押し返してゆきズシャァァッ!! と、斬り裂いた。

 斬り裂かれたレイの不死鳥はバシュン!!! と、大きな光を放ち、その光の衝撃波がレイを吹き飛ばす。


「きゃぁあああああああっ!!」


 その叫び声と共にレイは大きく吹き飛ばされ、背中をズシャァァ! と、地面に滑らせた。


「くっ……! そ、そんな……まさか私が……! ありえない……こんな奴にっ!」


 レイは美しい顔をギリッと悔しそうに歪めながら体を起こそうとするが、受けたダメージにより起き上がる事が出来ない。

 それでも上半身だけ何とか起こし、(ひざまず)いたまま苦しそうにノーティスを見つめた。

 また、セクシーな魔導服はボロボロに破け、そこから見える広い肌から血が流れている。

 ノーティスは、そんな満身創痍のレイを見つめたまま近づくと上からジッと見下ろした。


「レイ……」


 けれど、レイはノーティスを下から睨みつける。

 悔しくてたまらないからだ。


「なによこんなの………! 私は認めないわ!」


 ノーティスは澄んだ瞳でそれを見下ろしていたが、一瞬スッと目を閉じ見下ろした。

 ただ、その瞳は今までとは違う。

 まるで、悪魔に魅入られたような冷酷な眼差しに変わっている。


「そうか……だったらトドメを刺してやるよ。この雑魚が……!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポ良くスラスラ読めます〜 [気になる点] 特にないです〜 [一言] ファンタジー系はほぼ読んだ事がなかったのですが どんどん引き込まれて17まであっという間に読んでしまいました 次々読…
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