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ブレイキング・クリスタル ─光と闇の呪宝戦記─  作者: ジュン・ガリアーノ
cys-2 波乱と激闘のギルド検定試験
15/71

ep:15 レイの歪んだ美意識

─『防御力測定試験』会場敷地内─


「フフッ♪ 素敵なダブルデートでしょ。アナタの為に、特別に貸し切りにしてあげたの」

「そうか。でも悪いけど、雰囲気作りはまるでダメだな」

「あらそう。でも安心して。とっても()()()デートにしてあげるわ♪」


 不敵な微笑みを浮かべたレイを、ノーティスは真正面から見つめた。

 互いを見据える眼差しがぶつかり合う。

 本来ここには数名の試験官である魔導師がいて、数名同時に防御力の測定を行うのがセオリー。

 けれど、今この敷地内にはノーティスとレイだけが対峙し、ルミとエミリオがそれぞれの側についている状態だ。


「ノーティス様っ!」

「姉さん!」


 もちろん、二人とも少し離れた場所から応援している。

 近くは危険すぎるから。

 そんな中、レイはノーティスを軽く嘲るように見下ろした。


「ホント、美しくないわね」

「……どういう意味だ」

「アナタには相応しくないって事。その澄んだ瞳も、可愛らしい執事さんも」

「そうか……けど瞳はどうしようもないし、相応しいかどうかはキミじゃなくてルミが決める事だ」

「ふ~~ん、ホント生意気ね」


 レイはノーティスを見据えたまま、片手で髪を額の上からサラッとかき上げた。

 絹のように艶のあるブランドの長い髪が、ファサァっと揺れる。

 

「まずは、その生意気な口を封じてあげるわ」


 ニヤッと妖しい笑みを浮かべると体を軽く捻り、片手をスッと上に伸ばした。

 レイの魔力クリスタルが、アクアマリンの輝きを煌めかせてゆく。


「フフッ♪ 私からのプレゼントよ」


 艶っぽい声と共に、その片手から強力な凍気が溢れ出してきた。


「くっ、これは……!」


 周囲が凍気によりピキピキピキッ……! と、凍りついてゆくのを、ノーティスは焦りを浮かべながらササッと見渡している。


「凍りついて死になさい……! 『フリージング・ダストーーーーーー』!!」


 レイの掲げた片手の平から、猛吹雪のような凄まじい凍気がノーティス目掛け襲い掛かった。


「う、うわあっ……!!」

「ノーティス様っ!!」


 ルミが悲壮な顔をで叫びを上げる中、ノーティスの体はビキビキビキッ……!! と、凍り付いてゆく。

 そして、あっという間に全身凍り付いてしまった。

 ノーティスは驚きに目と口を開いたままの状態で、ピキィィィィン……! と、完全に凍結している。


「いやぁっ!! ノーティス様っ!!!」


 ルミはダダッと駆け寄り揺さぶるが、ノーティスは凍ったままだ。

 それを見て、レイはニヤッと笑みを浮かべた。

 また、エミリオは興奮しながらしながら見つめている。


「さすが姉さんっ! あのノーティスを一瞬で凍り付かせるなんて!」

「エミリオ、当然でしょ。クロスフォード家の者なら、これが当たり前なの」

「は、はいっ! 姉さん!」


 エミリオがビシッと襟を正す側で、レイは軽くため息を(こぼ)した。 

 正直、少し拍子抜けだったからだ。


───ハァッ……筆記試験満点で測定器を破壊しからどんな男かと思ったけど、やっぱり元浄化対象なんてこんなものね……


 そう思っていたが、レイは突然ハッと目を見開いた。

 ノーティスを覆っている氷が、ピシピシピシッ……! と、音を立ててヒビ割れてゆく音が聞こえてきたからだ。


「ウソっ……!」


 それは、エミリオとルミも同じだった。


「えっ……!」

「ノーティス様……!?」


 そんな皆が見ている中で音と亀裂はドンドン大きくなり、バリンッ!! と、弾け飛んだ。

 割れた氷の破片が周囲に飛び散る。

 それを一番近くで受けたルミは、咄嗟に片腕を上げてガードした。


「きゃっ!」


 そして、そっと腕を下ろすと、体から氷の破片がパラパラと落ちているノーティスの姿が目に映った。


「……ノ、ノーティス様っ!」

「ルミ、大丈夫か?」

「は、はいっ! でも、どうやって?!」

「凍らされる直前に闘気を溜めておいて、それを一気に爆発させたんだ。氷の魔法を破る時の基本さ」

「はあ~~~そうなんですね。さすがですっ!」


 二人がそう言って話す光景を、レイはエミリオと共に軽く顔をしかめている。


「くっ……! やるじゃない」

「姉さんっ……!」


 エミリオが横から見つめる中、レイは考えていた。


───元浄化対象? 元無色の魔力クリスタル? ありえないわ。あの凍気を完全に跳ね返すには、さっき私が放った以上の魔力をもってしない限り不可能なんだから……!


 冷静に考えればその通りなのだが、レイは認めない。

 自分より遥かに劣る者がそれだけの魔力を放つなんて、プライドが許さないからだ。

 レイは目をキッと吊り上げノーティスを睨みつけた。


「ノーティス!」

「レイっ……!」

「今のがまぐれじゃないかどうか、もう一度試してあげるわ!」


 レイは曲げた片手の中に灼熱の炎を作り出し、それを手の平の中で球状に変えてゆく。

 それを見たノーティスは、ルミの前に背を向けてサッと躍り出た。


「ルミ、退がっているんだ! 近くにいたら危険だ!」

「わ、わかりました!」


 その光景を、レイは灼熱のエネルギー弾の放つ光に顔を照らされながら見つめている。


「フフッ♪ 守れると思うなんて大層な自信ね」

「自信があるかどうかじゃない。俺は大切な人を守りたいだけだ。レイ、キミだってそうだろう」

「なんですって?」

「エミリオを大切に想うからこそ……」


 ノーティスがそこまで言った時、レイは言葉を遮った。


「黙りなさいっ!」

「レイ……」

「もちろん、エミリオの為でもあるわ。けど、私は許せないの。アナタみたいな落ちこぼれが、私達に歯向かう力を持ってるなんて事が」

「どういう事だ。だったら……だったら力の弱い者は、ずっと虐げられてとでも言うのかっ!」


 バッと身を乗り出したノーティスを、レイは凍るような眼差しで見下ろした。


「そうよ。当たり前じゃない」

「なんだとっ……!」

「じゃあ尋くけど、魔力の低い人間や弱い人間に、一体なんの価値があるっていうの」

「価値だと……!」

「そうよ。私達ような力のある者が守ってるからこそ、彼らは存在出来るの」

「違う! それは違うぞレイっ!」


 ノーティスは怒りと共に叫んだが、レイの瞳の色は変わらない。

 凍るような眼差しのままだ。


「違わないわ。強さこそ正義であり、何より美しさなの! それは魔力クリスタルの輝きで決まるわ。だから……」


 レイは灼熱のエネルギー弾を手にしたまま、横に薙ぎ払うように振り抜いた。

 灼熱の炎が扇状にブワッ! と、広がりノーティスに襲いかかる。


「くっ……! オォォォォォッ……!!」


 ノーティスは迫りくる扇状の炎を凄まじい横薙ぎの剣で、スバッ!! と斬り裂いた。


「レイっ! 力が全てだなんて間違ってる!」

 

 炎が霧散してゆく中ノーティスの瞳に映る。

 レイが掲げた両手を上で交叉させ、妖しい笑みを浮かべている姿が。


「フフッ♪ 心で分からせてあげる。真の美しさと、アナタの本来あるべき姿を……!」

「なんだと?」

「アナタの全てを絶望に変えてあげるわ。美の女神アフロディーテの名の下に、華美に煌めきなさい! 私のクリスタル!!」


 レイの詠唱と同時に、魔力クリスタルがアクアマリンの色をより強大に輝かせてゆく。

 その強大な輝きを前に、ノーティスは思わず片腕上げガードしながら目を細めた。


「な、なんて凄まじく強大な魔力なんだ。これが、王宮魔導士の真の力……!」


 レイはそんなノーティスを見据えたままその輝きを全身に(まと)い、両手の中にあるアクアマリンの輝きをより大きく輝かせた。

 それと同時に、ノーティスの周りをクリスタルで造られた無数の青薔薇の花ビラがヒラヒラと覆い尽くす。


「こ、これは一体……! うっ、なんだ……目がかすむ……!」


 苦しそうに目を凝らすノーティス。

 それを後ろの方から見ていたルミは、もの凄く嫌な予感に思わず身を乗り出した。


「ノーティス様っ!!」


 けれど、そんなルミに構うことなくレイはノーティスに必殺技を放つ。


「喰らいなさいっ! 青薔薇の断罪を! 『エファルディス・コーディネーション』!!」


 ノーティスを囲み無数に舞い散る青薔薇の花ビラの中へ、アクアマリンの輝きが光の雨のようにサアアアアアッ……! と、降り注がれてゆく。


「う、う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!!!」


 苦しそうに叫び声を上げるノーティスに、ルミは悲壮な顔で片手を伸ばした。


「ノーティス様ーーーーーーーーーーーっ!!!」


 しかし、ルミの叫びも虚しくノーティスは堕とされた。

 レイの必殺技によって見せられる、覚める事の無い悪夢の世界へ……!

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