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初恋と想い出と勘違い  作者: 瀬野凜花


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34 違和感 ~1~ ルイスside

 いよいよ合宿も終わりに差し掛かった、自由行動の日。部屋に戻ると、椅子にもたれてくつろいでいたアレンがずいっと封筒を差し出した。


「ん。ルイス宛ての手紙」


「なに?」


 素直に受け取って封筒を見る。封筒には、女性らしい柔らかい字で「ルイス様へ」と書かれていた。


「部屋に入ったら落ちてたんだよ。ドアの隙間から差し込まれたんじゃないか?」


 アレンはにやりと笑った。


「告白だよ、きっと。開けてみろよ、絶対に時間とか場所とかを指定したお呼び出しだよ。賭けようか?」


「いや、賭けなくていいよ」


 正直に言うと、今までにこういった経験は何度かある。僕も同じ考えだから賭けは不成立だ。


 封筒を開けて手紙を開く。断るのも疲れるんだけどな。僕にはフィーしかいないのに。

 その瞬間、僕は目に飛び込んだ文字に目を見開いた。


『ルイス様へ


 ルイス様、いいえ、ルー。今まで黙っていて申し訳ありません。

 私が、フィーです。

 この手紙を見たらすぐに庭園に来ていただけませんか?

 ずっと待っています。


 フィオナ・ラスタ』


 息が止まった。僕が「フィー」という女性のことが好きだということは噂になっているので、知っている者は多い。ルーもルイスの愛称としては一般的だ。

 だが、僕がフィーを現在さがしている状況にあることは知らないはずだ。フィーを除いては。


 フィオナ嬢が、フィーなのだろうか。いや、そうに違いない。そうでなければ、「黙っていて申し訳ない」という言葉が出るはずがない。


 僕の心は歓喜に包まれた。


 ようやく、ようやくだ!


「おい、やけに嬉しそうだな。好きなやつからのラブレターか? フィー嬢、だったか」


 僕はアレンに満面の笑みを向けた。


「そうみたいだ! どうしよう、嬉しすぎる」


「うおっ、おれ、そんな表情初めて見たんだけど」


 アレンが少し引いているけれど、今の僕には気にならない。


「僕、今から庭園に行ってくるよ。フィーが待ってるんだ」


「ん、僕? 私じゃなくて? ま、とにかく良かったな。フィー嬢とはずっと会えてなかったんだろ? ほら、早く会いに行けよ」


 高揚しすぎて一人称がくだけてしまっていたみたいだ。アレンに背中を押されて、庭園へとまっすぐに向かった。




 庭園に着くと、フィオナ嬢が空を見上げて待っていた。空は少し赤らみはじめている。


「待たせてしまったよね。ごめん」


 声をかけると、フィオナ嬢はぱあっと顔を輝かせ、駆け寄ってきた。


「お呼び出しに応じていただき、ありがとうございます。ルイス様」


 ようやくフィーに会えたのだ。そう思いながらも、疑念が口をついて出た。


「あの手紙に書かれていたことは本当なのか」


 こんなことを聞いて、いいえと言われたらどうするんだ。


「本当です」


 力強い肯定の言葉に、ほっと息をついた。


「君が、フィーなのか?」


 手紙ではそう言っていたが、最後にもう一度本人の口で肯定してほしい。


「私は長い間、この学園で再会できるのを心待ちにしていた人がいた」


 フィオナ嬢は黙って聞いている。


「私はその子のことをフィーと呼んでいた。フィーと学園で会えたら嬉しいと思っていたことは、フィー以外の誰にも話したことはない。フィーという女の子と知り合ったときのことも、1人の使用人にしか話していない。なぜ、知っている」


 フィオナ嬢は目をパチパチとした。


「なぜって……。手紙にも書いたでしょう。私がそのフィーだからですよ。もっと早く言えばよかったのに、ずっと黙っていてごめんなさい。ルー」


 本人の口からその言葉を引き出せて、期待が確信に変わる。もう一度。もう一度、聞きたい。


「それは、本当か? 本当に、君がフィーなのか?」


「もちろんです」


 さらなる肯定に、僕の確信は深まる。


 深まった、はずだった。


 しかし、なぜか納得できなかった。今まで過ごしてきた中でフィオナ嬢に抱いていた違和感が心の中で存在を主張するのだ。


 ちょっとした性格の違い、顔立ちの雰囲気の違い、そして何より。


 僕に向けられている瞳の色が。


「どうして急に言う気になったんだ?」


 違和感は拭えないままに、フィオナ嬢がフィーだということを肯定する事実の方が多くて、僕は自分を納得させた。


「それは……。なかなか、言い出すタイミングがなかったんです」


 それもそうか。2人で話せる機会はそうそうなかったからな。


「ごめん。とにかく、また会えて嬉しいよ」


 フィーにまた会えたのだと、ようやく心の底から喜びが湧き上がってきたその時。


 何気なくフィオナ嬢の足元に目を向けた僕は、そこから目が離せなくなった。


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