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精霊結び  作者: ガジガジ
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第4話 攻勢

 杖を介し魔力が浸透し、魔法陣に入ってくる水を制御する。コントロール下に置いた水を川の中央で渦を巻くように動かし、少しずつ術式下に置いた水の量を増やしていく。

 魔力で一から物質を生成し、行使するのと比較して、既にある物質を利用して制御するのは後者の方が使用する魔力量が少ない傾向にある。

その点で炎系統の魔術は魔力が持つエネルギーを弾けさせるだけで行使する事が出来るので使い勝手が良いのだ。水系統は、池や湖のような静水を用いるのと、川や海の中のような流れのある水を用いて、行使するのとでは難易度が全く違う。


対岸の敵は動きを止め、俺と川の様子を観察している。

少しずつ岸から離れようとしているのを見て。


「俺たちは協会の依頼の途中だった。お前たちは何のために俺たちを攻撃した?」


と声を掛ける。


すると、横で見ていたミリーが水の際まで近づき、武器に魔力を通し始める。


「そんなことを聞いたってしょうがないでしょう。私たちの後ろを付けていたのは確かだし、攻撃を仕掛けてきたなら殺すだけよ。」


 いつでも向こう岸に襲い掛かれるよう構えたミリーの方へ、敵が意識を向けているのか、構えが変わりそちらに体を向けている。

 仮面が外れている方は、俺の方を一瞥せずミリーの方を見ていた。


 確かにさっきまでいいところが無かったし、女に抱えられて逃げていた。それでも、術式を明らかに行使しているにも関わらず、あまりの態度に悲しくなる。

 

 その様子を見て水流の向きを変えて、対岸の石の間に少しずつ水を浸透させていく。山の上流で砕かれていない石の上まで水が上がらないよう慎重に、その範囲を広げる。

 

 「私たちを追っていたんでしょ。早くこっちに渡ってくればいいじゃない。もう追ってくる気がないなら、もう引き返して欲しいんだけど。」

 

 すると、敵同士が顔を見合わせて、少し考える素振りを見せる。

 

 その瞬間に、浸透させていた水を急激に上にあげた。術式によって鎖の形に変形した水が、いくつも石の間から吹き上がり襲い掛かる。

 敵は即座に反応し、地中から出てきた鎖を、刀を使って切り飛ばしながら体を半身にしながら、素早く体を移動させている。

 

 俺の攻撃とタイミングを合わせて、飛び出したミリーが鉈を大きく振り上げ斬撃を仕掛けようとしていた。一瞬そちらに気を取られた隙を逃さず、2人の間に頭上まで伸ばした鎖を振り下ろす。

 衝撃でいくつかの石のかけらが飛び散っていた。よけるために横に転がった仮面を付けていない方に、残りの水を使って畳みかける。

 細かくステップを踏み、右へ左へと動いてこちらに的を絞らせない。

 頭と左腕を狙った攻撃を、上体を逸らして避け、こちらに向かって斬撃を一瞬の間に3つ飛ばしてくる。

 残していた水を壁のように引き上げて、壁を作り防ぐ。

 拡散した魔力が光り、それが消えるよりも前に、壁を作るのに使った水を更に動かして攻撃を仕掛ける。

 水の鎖を出して再度、胴に向けて3本鎖を伸ばすと同時に、足元の河原を、大量の水で陥没させる。伸ばした鎖は全て切り捨てられてしまったが、仮面がない敵の右足を地面に沈めることに成功する。

 顔を歪ませ、何とか抜け出そうともがき、足元に何度も刀を差し込んでいたので、一気に足を伝わせて水を上げて、体を包み込む。

 右足と左足、腰、胸、腕、そして首、最後に頭まで水で拘束する。動けば動くほどに、体中の酸素を消費し、動けなくなっていく。しまいには、口から気泡があふれ出し、動かなくなった。


 「動かなくなったか。」

 

 そう言って俺は、術式を解くと。立ち上がり、仮面の無い敵に近づく。

 落ちていた刀を、川の中へと放り投げ、外套から取り出した小刀で、血管を避けながらアキレス腱を切断した。

 その後、両手と口を革ひもで塞ぎ、周りを見渡す。

 

 少し離れたところで、激しく戦っているミリーの方へ駆け出した。

 


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