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精霊結び  作者: ガジガジ
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第1話 急襲

 少し、前傾姿勢を取りながら斜面を登る。

 湿った地面を、荷を背負いながら歩き続けるのは容易ではない。

 

 「少し、歩くスピードを上げましょう、スミス。

このままだと、野営する場所を探さなくてはいけないし、食料もあと2日分。帰りに少し余裕がないと大変よ。」


 後ろから、ひそひそとした声で話しかけられる。

 既に、2昼夜、山道を歩き続けているのに疲労を少しも感じさせない。

 仕方がないとはいえ、肉体的な強度の差を実感してしまう。


 「これだけ時間が経っていると、魔力の痕跡をたどるのは骨が折れるんだ。瘴気が中々濃いし、これ以上魔力を注ぐと、持たないよ。今、追跡の術式を組めるのは俺だけなんだから。そっちの鼻はどうなんだよ、ミリー。」


 「うーん、さっぱり。私が接触できたわけではないし、村に残っていた量の、毛や血だと流石に厳しいかな。他の魔獣の臭いがまざっていて、ここから辿っていくのは大変。」


 「なら、早めに帰るのはあきらめてくれ。丁寧に追っていくしかない」


 不満げな様子のミリーに適当に返しながら、

オオマブナの幹で見つけた獲物の魔力痕を探査術式で調べながら答える。

 標的は傷を回復術式で使って癒すことが出来るのか、この山の中で回復術式を使っていた形跡が見られる。

俺は魔力的な残滓と、樹に絡みついた体毛、そして糞などをもとに標的を追跡していた。


一般に魔力、というのはその他の液体と同じように、何もしなければ濃い方から薄い方に拡散する性質がある。

蒸留酒に果実の汁を垂らしておくと、うまい酒が出来るように、一度使った魔力というのは、その場に残り空気中の瘴気と混ざり合うのだ。

空気中に魔力が少ない場所で、サンプルを見つけることが出来れば、比較的簡単な術式で、何時間前にそこで魔力を使ったのかが分かるのだ。


この方法を応用すると、常に魔力を垂れ流している魔獣程度は、移動する方角まで予想することが出来る。


「ミリー、良かったな、大分近づいて来ているみたいだ。1時間以内には、この場所に奴がいたよ。回復術式の頻度から考えるに、移動速度も落ちている。探魔術式に切り替えて、いよいよ狩りの時間だ。」


「そう、なら私も準備しないとね。」

 

 そうミリーが答えた後、わずかな金属音と衣擦れの音がした。

 きっと、彼女の獲物である鉈と、背負っている背嚢の位置を調整したのだろう。


 「今から、探魔術式を3度打つ、ミリーは後方の確認を頼む」

 

 俺は、ベルトから杖を外し、体の前に両手で構えた。

 心臓を起点として巡回させ、練り上げていた魔力を杖に流しこむ。


 すると、その瞬間、人種(ヒューマン)の腕の長さ程度の二重円が杖の前に表れ、古代文字が2つの円の間を一瞬で走った。

 魔法陣(サークル)が蒼白い光を放っていたのは、わずかな間だけだが、確かに力の波動が周囲に走ったのが確認できた。


 「11時の方向、2キラ先、反応が見られる。左の斜面を下った先の川の上流だな。

ミリーそっちはどうだ。」

 

 この周囲の魔獣の分布と、俺が今まで辿っていた魔力痕から考えて間違ってはいないだろう。

 思っていたよりも近いところにいて驚いたぐらいだ。


 「ミリー、どうした返事くらいしたらどうだ。」


 彼女の方を振り返ると、姿勢を低くし、大きな耳を立てていた。

 

 「スミス、5時の方向斜面の上、600メト、子供が4人いるかも。ただ、何となく探査術式(アクティブソナー)の感覚と合わないわ。」


「そんなわけないだろう、ここは瘴気レベルが、3つ目イエローだぞ。子供4人でうろつけるわけがない。」

「でも、確実にあそこにいるはず。私の耳と鼻に誓ってだ。」

 

すると、突然心臓が撫でられたかのような感覚が走る。


「ミリー、下がれ!!」


そう、俺は叫んだ後、

自身の右手にはめていた指輪の1つに思い切り魔力を込める。


その直後、3つの火球が目の前で弾けた。


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