表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/363

夢の続き

 

 白い視界の中で、身体が無になっている感覚……

 私は、死んだのか……? いや、生き残れたから、目の前の光景は夢か。


 大きな屋敷の前で、騎士達に囲まれている光景……屋敷から出てきた銀髪の少女に見覚えがあった。

 ウォーエル・レド・ノースギア……メイド服に似たドレスを着た少女……でも五十歳になるって言っていたっけ。青い瞳がとても綺麗で、母の瞳に似ていた。


「やぁウォーエル、しばらく世話になるよ」

「あら、本当に来てくれたのね。歓迎するわ、ライズ。凄く嬉しいわっ」


「別に……本当に寿命を伸ばせるのか、確かめに来ただけ」

「ふふふ、寿命の話は本当よ。昔からこの美しさを保ちたくて、エルフの研究をしていてね……その過程で秘術を得たの」


「エルフ……か。エルメルンには、手を出していない?」

「エルメルンなんて手を出す訳無いじゃない。エルフの英雄、大魔導士ライズが黙っていないもの。偶然にも貴女と同じ名前ねぇ……ライズ・エリスタさん?」


「どうせ調べたくせに。ウォーエル、こいつら帰してくれ」

「殺したって構わないのに、優しいわね。あなた達、ライズ・エリスタはわたくしの大事な大事なお客様なの。そう周知しなさい」


 怪訝な表情の騎士達をウォーエルが帰し、屋敷の中に案内された。屋敷の中にはエルフのメイドが並び、皆一様に礼をしていた。エルフ達は人形のように綺麗で、作り物みたいだった。


「気になる? 全員正規の手続きで買ったのよ」

「……奴隷」


 奴隷、か。一生こき使われるか、使い捨てられるかの未来しか無いイメージだけれど、奴隷が普通に売られている状況にライズの心が揺れていた。


「身の回りの世話をするのに一人付けるわ。誰が良い?」

「別に、一人で良いさ」


「そうもいかないわ。わたくしなりのおもてなしだもの……そうだ、最近買った子が居るの。その子にしましょう。十八番、いらっしゃい」

「は、はい……よろしく、お願いします」

「……少しの間、よろしく」


「あら、そのまま貰って良いのよ? というかもう貴女の物だから好きにしても良いし、名前でも付けて可愛がってあげなさい。昼も夜もね」

「……ずれてるって、言われないか?」

 

 ずれているのは、ライズもだよね。いきなり敵地で世話になるよと気軽に言えるなんてさ。

 話してみると、ウォーエルは変わっているけれど気さくな人だ。少し印象が変わって、安心した気持ちが伝わってきた。

 ウォーエルは夜会の準備があるからと、十八番と呼ばれたエルフに屋敷の案内を頼み、自室に入っていった。


「そ、それでは案内しますっ。ご主人様っ」

「ご主人様はやめてよ。ライズって呼んで」


「失礼しましたっ、ライズ様っ」

「まぁ、良いか。よろしく……エルシィ」


「エルシィ……?」

「君の名前。流石に十八番って呼べないからさ……元々の名前があるならそれで良いよ」


「い、いえ……元の名前なんて……ありません。あの、名前は一人前にならないと戴けませんっ。私には勿体ないかと……」

「別に良いじゃない。じゃあさ、一人前になれたら私のエルメルンでの名字をあげる。それで良い?」


 ……エルフの少女に名前をあげたところで、場面が変わった。恐らく屋敷の中の部屋で、エルフの少女……エルシィに魔法を教えていた。

 私がイシュラにやったみたいに、エルシィの魔力を使って魔法を使い、感覚を教えていた。

 エルシィの雰囲気が柔らかいから、世話になると言ってから何日か経っているのかな?


「あの……ライズ様は、エルフの国の英雄とお聞きしましたが……」

「あぁ……旅をしている時に、たまたまエルメルンに帝国が攻めてきてね、加勢したんだ。そしたら王族に気に入られちゃって……気付いたら家とか貰っちゃって大魔導士なんて呼ばれてさ、大変だったよ」


「そう、だったのですね。実は私……故郷がエルメルンの田舎で、大魔導士様の噂は聞いていました。まさか、こうしてお会い出来るなんて……それにこんなに素敵な……あっいえ、で、でもどうして、エルメルンを出られたのですか?」

「私、虫嫌いなんだよね」


 虫……エルメルンでの高級食材が虫らしい。

 私も虫を食べなければいけないのなら食べるけれど、進んでは食べない。

 それにしても、エルシィはエルリンちゃんにそっくりだよなぁ。

 もしかしたらエルリンちゃんの親戚だったりして。

 エルシィに魔法を教えていると、部屋の扉が開いた。


「ねぇライズ、ちょっと来て欲しいの。東の街に帝国が攻めてきたわ」

「自慢の軍がいるでしょ」


「貴女が来たら一発よ。殺戮魔導士とか絶望の魔法使いとか、帝国ではそれはそれはもう恐怖の対象なの。ノースギアに貴女が居るとわかれば攻めて来ないわ」

「……私がノースギアに居るから、方向を変えてエルメルンに攻めてきたらどうする?」


「それは無いわ。最近帝国とエルメルンは友好条約を結んだの」

「……冗談だろ? あり得ない」


「本当よ。帝国はエルフの秘術が欲しくて、エルメルンは帝国の最新技術が欲しかった……のは建前で、帝国は貴女が欲しかったのよねぇ……」


 帝国とエルメルンの友好条約……それってもしかして歴史の勉強に出てきた条約かな?

 ウォーエルの眼は、とても嬉しそうだった。帝国が欲しくて欲しくて堪らない大魔導士が、自分の元に居るという優越感を隠さない。

 ライズに寄り添い、頬に手を添えて顔に唇を近付けてきた。うーむ……近くで見ると、めちゃくちゃ可愛い。

 私だったらちゅーされるのを許してしまうよ。

 これで五十歳かぁ……

 可愛いのに色気がある……私の理想じゃん。

 近いなぁ……私の方がドキドキしちゃうよ。


「ウォーエルは、女が好きなの?」

「男でも女でも、美しいものが好きなの。貴女の魔法はとても美しい。だから、私は貴女が大好きなの」


「ふぅん。あいにく私には好きな人が居るからね」

「っ……」

「あら、あらあらそれは聞き捨てならないわねっ。教えなさい」


「ただの片想いだよ。それに、私の親戚と結婚するし……なに? ウォーエル、その笑顔怖いよ」

「じゃあっ、わたくしと結婚しないっ?」


「なんでさ」

 なんでさ。


 思わずライズとシンクロしたよ。

 ウォーエルと結婚する意味あるの?

 だって女同士だし、結婚なんて許されるの?

 だってウォーエル、めちゃくちゃモテるらしいし……


「だってぇ、ライズとの子供なら凄い子がデキそうじゃない? 楽しみじゃない? ねぇ、ねぇ、らいずぅ、結婚しましょー?」

「子供って……女同士じゃん」


「ふっふっふ、心配無用よっ! 聞いて驚きなさいっ! わたくしとエルフが共同で開発した秘術で女同士でも子供がデキるのっ!」

「なにそれ。ウォーエルって変な魔法ばかり研究するよね」


「あ、あのウォーエル様っ! 私もライズ様の子供が欲しいですっ! 私一人で育てますっ! どうかっ!」

「えっ……」

「あらあら、良いわね良いわね。エルフと大魔導士の子供だなんてワクワクするわっ。特別に許してあげる」


「ありがとうございますっ!」

「えっ、いや……私の意見は?」


 なんか、大変な事になっているな。

 自分だったら逃げ出すけれど、他人事だから楽しめるよね。


「もしかして、振られたからわたくしに会いに来たの?」

「……まぁ、そう思っても良いけど」


「こんなに良い女を振るなんて、どんな奴かしら? 確認しに行くから名前を言いなさい」

「やめてよ恥ずかしい」


「やめないわ。ふぅん、ミナカ・オレイドスかしら?」

「は? なんで……」


「貴女の事が知りたくて、つい……沢山調べたわ。わたくしの愛情深さを褒めて欲しいくらいよ」

「……あっ、精霊に聞いたなっ」


 ウォーエルって、なんか凄いな。

 愛というより興味や好奇心が勝っているけれど、ライズの事が凄い好きなのは分かる。

 好きな人の事は全て知りたい、全て知っておかないと気が済まない……なんかわかる気がする。


「わたくしが帰らせないわ。エルシィ安心なさい、ライズはちゃんと女が好きよ」

「はっ、はいっ! ありがとうございますっ!」

「もう恋なんてしないよ?」


「ところで、ヴァン王国で貴女が無名なのは何故?」

「みんな知らないからね。私が大魔導士と言っても信じないし、私の手柄は全部エリスタ本家の奴らの手柄だよ」


「それこそ不思議よ。わたくしは禁術士ライズ・エリスタが来たって聞いたからわざわざ戦場へ行ったのよ?」

「ヴァン王国は、歪なんだ。権力を持った者が言った事が全て。真実なんて、簡単にねじ曲げられるんだ。特に本家と分家の間柄だとね……」


 ウォーエルは、ひどく詰まらなさそうだった。ライズが称賛されない国に価値が無いというように、ヴァン王国に興味が無さそうに見える。

 意外だったのはエリスタにも、本家と分家があったという事。今と違って大きな家だったのかね?


 まぁ私の知るエリスタとは違う可能性もある。でも共通点が多いし……

 というかそもそもこれは私の夢だ。

 本当にあった話では無い可能性の方が高い。

 私はなんでこんな夢を見ているのかねぇ……まぁそれはそれで受け入れるか。


 ライズの話では、ライズは分家の生まれらしい。

 本家の方が力があるのは当然で、分家はただの本家を立てる為の駒のような存在……だから本家が何か悪い事をしたら、分家のせいにして切り捨てるらしい。


「わたくしなんて分家の末席だったけれど、実力でこの地位を勝ち取ったわよ」

「そりゃ羨ましい。ヴァン王国はどんなに実力があっても無駄さ。権力者って常識が通用しない、どこもそうだと思うけどね」


「確かに、そうね。馬鹿ばかりだもの。つまらない世界で威張っているのはどこもそうよねぇ……まぁその話は後でゆっくり聞きましょう。さぁっ、わたくしを連れて行きなさいっ」

「……さては、私に送ってもらうつもりだったな?」


「……てへっ」

「はぁ、掴まって」


 ウォーエルがライズの腕に抱き付き、エルシィも反対側に抱き付いた。

 そして、足元に魔法陣が発生し……

 ……えっ?

 ここは、外……?

 景色が、変わった。

 遠くに見える、帝国軍。

 青い旗が立ち並び、武器を持った兵士達が隊列を組んで行進していた。

 反対側から陣形を組んで待ち構える白い旗。ノースギアの軍か。

 転移魔法……


「さぁライズ、一緒に殺しましょう」

「嬉しそうだね。まぁ、良いけどさ。エルシィ、結界よろしく」

「はいっ! お任せ下さいっ!」


 ノースギア最強のレドであるウォーエルと、エルメルンの大魔導士ライズが組んだのか。

 正直、帝国軍が可哀想に思えるよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ