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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編

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最優先は、命……

 

 イシュラの言う通り、シャフェルの身体は少しずつ崩れている。砂時計のように、細かい粒子が落ちているから直ぐには崩れそうにはないけれど、耐え抜けば勝ちだというのはありがたい。

 骨が折れたくらいじゃ、私の心は折れないよ。


『愉快なり、霊異の術か』

「はぁ、はぁ……よし、イシュラ! 最優先は命!」

「もちろん! 生き延びるのは得意!」


 私を心配させまいと痩せ我慢してさ、本当は息をするのも辛い筈なのに。それでも逃げない、私の為に。

 だからこそ、守りたいって思える。


「魔法合成・氷鋼水剣」

 私の短剣に青、黄、白銀の魔法陣を重ね、身長を越える剣を作成。近接攻撃で引き付け、少しでも時間を稼ぐ。

 シャフェルは、私の誘いに乗るように拳に白いオーラを纏い……ニヤリと笑った。竜の笑顔は、獰猛で豪快で弱者を怯えさせるには充分の威圧。


『楽しませてもらおう。我の一撃を耐えた者は人間で言うところの二十年振りだ……竜陣の型・陸』

「ははは……嘘だろ」


 両腕を腰だめに構えた型……

 竜が、武術を使う?

 さっきの一撃の時、薄々感じていたけれど力任せの一撃ではなかった。

 それでも、立ち向かうしかない!

 氷鋼水剣の切先を向け、駆ける。

 狙うは攻撃範囲の内側。


『土流散撃』

 拳に岩が纏わり、真下に叩き付けた。

 岩が砕け散る破裂音と同時に鋭い破片が襲ってきた。

 これくらいなら叩き斬れる。剣を振るい大きな破片を斬り飛ばした瞬間……

 上から大きな拳が墜ちてきた。

 避けきれないっ!


「秘剣・臨壊剛撃っ!」

 ギャリッ! 鋼のような拳に力任せの一撃を放ち、反動で横に脱出。直ぐに拳が衝突し、床にめり込んだ。

 この隙に懐へ……シャフェルが口を開け、はぁっ! 光の魔法陣っ!?


『ドラグ・フォトンブレス』

「うっそ!」


 懐に入ろうとしたところでシャフェルが真下に光のブレスを放った。

 視界が白く染まり、どの方向に回避するかで運命が変わる……

 ええいっ! 迷っていられない! 一直線だっ!


『大した勇気だ。卿竜烈脚』

 迫る白い壁のような足を受けるのは悪手。

 水のように逆らわず、飲み込まれるように流れに身を任せ……

「……水鏡止礼」

 蹴りの勢いを利用し、すれ違い様に斬り付けた。

 このまま股下に到達。

 よしっ、懐に入れば時間を稼げる!


『竜陣の型・海』

 ──ゾクリ……と、背筋に冷水を掛けられたような感覚に襲われた。

 最大級の警戒を本能が訴えている。

 なんだ、この警戒は……シャフェルじゃない。

 上を見上げる……シャフェルの更に上……龍の、心臓。


 ──らえ──を──

 頭に言葉が……何を、言っている。


「──避けてぇぇぇえ!」

『海流掌握』

「えっ……」

 拳が、目の前に……防御が精一杯……っ!

 なんだ、拳に……呑み込まれた。

 重い水に捕まったようで身動きが取れない。

 いけないっ!

 身体が宙を舞う感覚……このまま私を拘束して叩き付ける気だっ!

 拘束力は強いけれどなんとか……するっ!

『終わりか? 海流武圧』

 全身に氷の魔力を張り巡らせ……一気に、解放!

 ──バキッ!

 私の周囲……拳を凍らせ、シャフェルが凍った拳を叩き付けた。

「げほっ! ブレイズボム!」

 爆発の推進力でなんとか一緒に潰されずに済んだけれど、体力が……


『ククッ、泥流地帯』

 なん、だ。床が泥沼のように沈んで脚が取られる。

 まずいっ! 真下から氷柱を突き上げるように出して床の沼から脱出……シャフェルはまだ身体が下を向いている。攻撃するなら今っ!


「一点集中! 秘剣・天誅衝!」

 魔力の刃を細く鋭く形成。最大出力で放った。

 一瞬で到達する一撃必殺の刃。傷の一つでも付けられたら生存率は上がる筈!


『カカカッ……見事。竜陣の型・空』

 シャフェルの左腕がギュルンと高速反応。天誅衝を掌で弾き、右腕が私に向けられ……拳から放たれた魔力の塊が迫る!

 なんつー速さだよっ!

 避けきれず魔力の塊が直撃。

 骨が軋み、天井に衝突して身体がめり込み貼り付けられた。

 一気に肺の空気が吐き出され、視界が歪む。

 ちょっと待て、強過ぎる。


「か、はっ……オート……マジック……」


 脳が揺さぶられて具合が悪い。

 ぶれる視界の中で、シャフェルが笑いながら私を見据え、両手を広げて私に向けていた。砕けた筈の拳はもう再生してんのか……

 魔力が収束していく。白く輝くエネルギーが球体になり、雷のようにバチバチと魔力が弾けていた。

 直撃したら、確実に死ぬ。


「──ルクナァァ! フォトン・ブラスト!」

 イシュラ、駄目だ。命優先って言ったじゃないか。

 自分の命を守るんだ。君の魔法は、優しい君の魔法は、光が強い。

 だから、聖竜のシャフェルには効かないんだ。

 シャフェルの身体が炎に包まれたけれど、私を狙うエネルギーは衰えを知らない。

 早く、動かないと。

 なんでも良い、動けるならなんでも良い。

 魔力の事なんて考えない。

 手当たり次第、魔法を発動……

 動け、動けよ!

 っ! シャフェルの尻尾が、イシュラの方を向いて……


『眼に見える真実なぞ、友を想う心の前では無意味という事か』

「イシュラァァァァ! 逃げてぇぇええ!」

「──っ! あ……が……」


 あ……あぁ……シャフェルの尻尾から放たれた魔力の塊が、イシュラの胸を貫いた。

 イシュラの放った炎が、溶けるように消えていく。

 駄目だ、駄目だよ。

 そんなの駄目だ!


『クカカッ! 愉しかったぞ強き者よ! ドラグ・フォトリラニティ』

「ぁぁぁぁぁああ! 絶対! 死なせない! 私が! 私が守る! 魔法合成! 合成! 合成! 合成合成合成!」


 絶対、死なせない。

 二人で生き残れるのなら……身体が壊れるくらい、安いもんだ。


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