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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編

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95/363

身体が臭くないか気になるよ

 

 ♀×♀×♀×♀×♀


 ……

 ……ん?


 なんだ、これは……目の前に広がる人の軍勢。

 敵、なのか? 私……? 私一人で、戦う……?

 人の軍でも一人で勝てるかもって、思った事があったっけ……でも、何かおかしい。

 私は私のようで、私じゃない。

 私のようなこの人は、誰だろう……


「あーあ……私を想って泣いてくれるのならば、私が生きていた意味があるってもんだ……ははっ、未練ってもんは本当に邪魔だねぇ」


 古びた本をめくり、魔法陣が描かれたページに魔力を通すと、赤い魔法陣が飛び出し宙に浮かんだ。違うページを開きまた魔力を通すと、もう一つ黒い魔法陣が宙に浮かんだ。


「来るぞー! 防御結界を張れー!」「魔力を切らすなー!」「たかだか一人だ! 終わったら総攻撃だ!」


 畏れている。

 私のようなこの人に、大勢の人間が。

 軍に属する兵隊をも畏れさせている。

 その畏れを吸収するように、魔法陣が、肥大していく。


「煉獄の門開くは朱鬼の民、地の底から這い上がり、生ある者を喰らい尽くせ。生ある者よ、怨むなら、弱い己を怨め……禁術合成・煉獄王ヴァルヒート」


 上空に巨大な扉が出現。血のような赤、禍々しい霧を纏った、この世の物とは思えない扉。その扉が、ギリギリと軋みながらゆっくりと開いていく。


「うっ…撃てぇぇぇ! 開けさせるなぁぁぁ!」「なんて、魔力だ……」「応援を呼べ! 今すぐだ!」


 ──グオオォォォオオオオ!

 なんだよこれ……なんて魔法だ。今までこんなに強力な魔法は見たことが無い。

 扉から這い出るように出てきた深紅の腕が、埃を払うように振るわれると……深紅の炎が辺り一面を覆い、人間達をなぎ払っていった。

 これが、戦争……?

 いや、一方的な虐殺にしか……


「あー……魔力がごっそり減った。背伸びし過ぎたか……げほっ、げほっ……ふふっ、私も、長くは無い、か」


 血の混じった咳をしながら、煉獄王が這い出てくるのを眺めていると、深紅の腕が遥か向こうから飛来した氷の柱に貫かれた。

 敵の魔法か、煉獄王の腕を貫くなんて凄い魔力だ。


「あーら禁術士さん、相変わらず独りぼっちで寂しそうねぇー」

 この場には不釣り合いの、日傘を差したお嬢様が笑いながら降り立った。兵士達と魔力の質が違う……この魔力は、少し、懐かしい……少女が後ろに向けて手を振ると、兵士達が後退していく。


「ははっ、あんたみたいな孤独よりはましだよ。ウォーエル・レド・ノースギア」

「孤高と仰って戴けません? ほらご覧なさい、わたくしが来て兵士達はあんなにも喜んでいるわ」


「やっと来たかの間違いじゃなくて? お前が来たって事は、ノースギアは後が無いって事だよね?」

「ふふふっ、それはないわ。わたくしは貴女の素晴らしい魔法をもっと見たいから来たの。わたくしの氷を受けてもまだこの魔法は生きている……ねぇ、まだまだこんなものじゃないでしょ?」


「まぁね、煉獄王ヴァルヒートは氷属性があまり効かない」


 突き刺さっていた氷の柱が溶けながらバキバキと崩れていく。

 自分の魔法が崩されても、ウォーエルと呼んだ少女は笑みを崩さなかった。


「あらあら、困ったわ。でも、素敵ねぇ……あなた、わたくしの所に来ない? あなたなら直ぐに階級を駆け上がるわ」

「差別階級を駆け上がるなんてごめんだね。知っているよ、レドじゃないと扱いが違うって」


「普通なら、よ。わたくしの所なら国民が平伏すわ。孤独のあなたにとって悪い話じゃあないと思うわよ?」

「……私の寿命はあと数年だ。残念だが好きな事をやらせてもらう」


「ふーん。その寿命を、伸ばせるとしたら?」

「……ははっ、そんな事、出来る筈がない」


「出来るわ。わたくしの力は特別なの。見なさいこの若々しい身体……わたくし、今年で五十になるのよ?」

「……」


 心が、揺れている。

 この人は、もっと生きたいと願っている。

 好きな人と、例え離れていても、少しでも長く、同じ時間に居たいと……そんな方法があるのなら、もし本当なら、どんな事だってしたいって……

 迷いが、伝わってくる。こんな口車で簡単に迷うほど、この人は生きたいって伝わってくる……


「望むのなら、これを持って城に来なさい」

「……」


 ウォーエルが白い花の描かれた紋章を手渡してきた。敵なのに、こんなに近くに来て……それ程までに、この人が欲しい……そんな欲求が感じられる瞳。吸い込まれるような、不思議な感覚……


「わたくしは、貴女を歓迎するわ。じゃあいつでも待っているわね。ライズ・エリスタ」

「待っ……はぁ……逃げられたか」


 ウォーエルが消え、話している間に兵士達も撤退していた。一人残され、ウォーエルに渡された紋章を眺めながら、煉獄王の扉を閉じた。

 ライズ・エリスタ……? この人の名前……エリスタ。


「私は、何をしているんだろう……ノースギアと戦う理由なんて無いのに。ノースギア、か……」


 ライズは、ノースギアに行くのかな?

 エリスタ一族なのかな?

 なんか、凄く気になる。



 ♀×♀×♀×♀×♀



 ……

 ……

「……ん、夢……か。イシュラ、起きている?」

「ん? おはよう、私も今起きたよ」


「どう? そろそろやる?」

「そうだね。もう怖くないよ」


 私達は、不死竜の尻尾を枕にして寝るくらいの度胸が付いた。もうイシュラの顔に恐れは無い。龍の肉の影響もあるだろうけれど、頼もしい限りだよ。


「じゃあ、お互いに最大火力で攻めるよ」

「うん、一撃で終わらす」


 早いとこ、不死竜を倒してお風呂に入りたい。

 まともなご飯も食べたいよ。

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