アルセイア様、友達作りに前向きなのは良いのですが……
「ここがファイアロッドの大迷宮じゃ!」
「へぇー、おっきぃ」「私も来たのは初めてですね。学院長は何階層まで攻略したのですか?」
「確か……四層の途中で終わったから三層までは案内出来るぞえっ! あれ? 三層だっけ?」
あれから魔道馬車に揺られて一週間。色々あったけれどファイアロッドの大迷宮に到着した。
これは、街だ。
話には聞いていたけれど、凄い。迷宮一つで街が成り立っているという事か……それだけ大きな迷宮。超位迷宮の名は伊達じゃない、か。
屈強な男達の街かと思ったけれど、女性も多いし子供も多い。
学校もあるし役所もホテルも商店街もある。あまり王都から出た事はなかったから、本当に新鮮だ。
「流石に三層までは行く勇気がありませんが……リリ、凄いね」
「はい、ここまでの規模だとは思いませんでした。学院長、ルナード・エリスタ君がここにいると聞いているのですが……」
「んあ? ルナード? 来ているぞえ。途中までは分体が一緒だったんじゃが、分体が精霊に殺されてしもうての……あっ」
「どうしました?」
「おしっこしたいから降ろしての」
「あぁ見慣れた景色だったので忘れていました。宿まで我慢出来ますか?」
「漏らしたらよろしくの」
リリが魔導馬車の天井に貼り付けられた学院長を取り外し、抱っこをして外の景色を眺めていた。良いなぁ抱っこ……私も抱っこしたい。
でも隙を見て胸を触ってくるから天井に貼り付けになった訳で……
因みに成人女性には大人の姿で触ると得意げに話していた。
「意外に宿ってこんなに高級なのね」
「わざわざ王都の建築家が設計したみたいですね」
「はぁースッキリスッキリ」
他のクラスメイトが来るまで、二日くらいは自由な筈。学院長がいるからある程度まで進んでも良さそうだけれど、王宮騎士も付いて来ているんだよなぁ……事ある毎に進言してくるからうざ……いやいや彼らの仕事だから。
彼らの事は考えないようにしているけれど、彼らがいるから動きが制限されるから結局クラスメイトと一緒に行った方が良かったのかもしれない。いまさらか……
「早速迷宮に行きましょうか」
「アルセイア様、どうやら探索者ギルドのギルド長が話をしたいみたいです」
「あーあいつは無視でいいぞえ。事前連絡は無かったでの」
「んー、そうもいかないのですが……話が長そうですよね?」
「長いの。どうせ大した事言わんで書面で挨拶で良いから行くぞえ」
幼女が手を広げて抱っこーのポーズをして、リリが溜息混じりに抱っこをした。幼女は妖精族のせいなのかすごく軽い。キロというよりグラムの単位くらいの重さだからずっと抱っこ出来る……きっと幼女はそれを狙っているのだろうね。でも私も抱っこしたい……抱っこしたい。幼女はとても良い匂いだし、柔らかいし、癒される。
「リリ……」
「……少しだけですよ?」
「ありがとうっ」
「美少女達がわっちを取り合って……じゅるりじゃのっ」
「これがなければ完璧なのですがね……」
王宮騎士に迷宮へ行く旨を伝えると、やっぱり付いてきた。そりゃそうだけれど、なんかねぇ……アルセイア個人として来たいよほんと……
騎士に囲まれて迷宮へ行くとか目立つ目立つ……探索者達も下手に関わりたくないのか、道を空けてくれるから迷宮には直ぐに着いた。
「若い子も結構居るのね」
「確かに多い、ですね。同世代は男子が多いですが……一人女子が居ますね」
「本当だ、生き方なんて色々あるよねぇー、あっそうだ女子同士仲良くなれそうじゃない?」
「えっ、本気で言っています?」
「何よ、だめ?」
「女としての格の違いを全力で顔面に投げ付けられた感覚になるというか、いえ失礼しました。呼んでみましょうか」
嫌そうにしないでよ。ここで友達とか出来たら嬉しいし、居ても一週間くらいだからその間だけとかなら良いと思うし……リリが女子の方へ行き、女子がこっちをチラリと見て、顔が盛大に引き攣っていた。
リリが無表情に私を睨んでいるように見える……
うん、まぁ、そっか。私王女だったよ。
ショートカットの可愛い女の子が走ってきてスライディングのように跪いた。
「あ、アァァアルせいアさまっ! わわわわたしミクと申しますっ! お招きいただきこここ光栄でござりまするっ!」
「急に呼んでしまって悪いわね。時間があるようならあなたに案内を頼もうかと思って。用事があるなら断って良いからね」
「勿体無いお言葉ですっ! 是非ともよろしくお願いいたしまするっ!」
「えへへ、ありがと」
……なに? 笑いかけたらシーンとなった。
リリの睨みが強くなった気がする。
ミクちゃんも硬直しちゃったし……
「アルセイア様、参りましょうか」
「う、うん」
「……はっ、ごっご案内いたしまするっ!」
笑いかけたのは、逆効果だったかな……
ミクちゃんが緊張からか顔が真っ赤だし。
騎士達邪魔だし……
「それではミクさん、ファイアロッドのお手本をお願いします」
「はっはいっ! このファイアロッドを魔物に向けて魔力を流しながらファイアと唱えますっ。ファイア!」
ファイアロッドから火球が飛び出し、離れた場所にいた草の塊に当たると勢い良く燃えた。
へぇ凄い、これがあれば簡単に魔物を倒せる。
だから同世代の子でも生きていける、か。
「こんな感じ? ファイアっ!」
「あっ流石でございまするっ! こんな大きな火球出せる方初めてです!」
「大げさねー、あっそうだ。この迷宮に来ているルナード・エリスタって男の子知らない?」
「ルナード……? あっ、領主様のご子息様ですよねっ。えーっと、会った事は無い、です」
「そっかぁ。あっ、クルルは知っている?」
「クルル……あっ、知ってます! お知り合いなんですね!」
「そうそう、もう一人……居なかった?」
「はいっ! イシュラともお知り合いなんですか!」
「私、イシュラは会ったことが無いのよ。どんな子?」
「んもぅ超イケメンですっ! 私なんか一目惚れしちゃいましたっ……ぁっ」
超イケメン? んん? リリと視線を交わすと、少し首を傾げた。イシュラは男の子だった? いやそれは違うか。男の子の格好をしていた、とか?
それも大事だけれど、ミクちゃん、一目惚れって?
「リリ、詳しく聞かないとね」
「はい、そうですね」
「えっ、あの、勘弁してください……」
「別にイシュラがここに居る訳じゃないから良いじゃないの」
「でっ、でも少ししか話していませんし……まだ二層に潜っているみたいで一度しか会えていません……」
「そうなの? 最後に会ったのは?」
「一週間前、です。何かあったんじゃないかって、入り口で待ってはいたんですが……」
一週間……一週間も潜っているの? 長くない?
どういう事だ、ルナードは、無事なの?
なんだろう、胸騒ぎがする。
帰還石はある筈なのに、帰らないとなると、二層を越えて三層、四層と進んでいるかも。
そうなったら、会えないじゃん!
実習が終わったら帰らなきゃいけないのに!
「ステラちゃん、どうしたら良いですか?」
「そう言われてもの。砂漠で大人数は嫌じゃから、騎士達置いて行くなら案内するぞえ」
「それなら、私とリリとミクちゃんとステラちゃんの四人で行きましょうっ!」
「姫様! なりません!」「そうです! 私達もお供します!」
あーやだ、騎士達が騒ぎ出しちゃった。
そりゃそうなのだけれど、別に良いでしょ。幼女の方が断然強いし。
ステラちゃんこと学院長は、宮廷魔法士が束になっても敵わない魔法の使い手。一度見せて貰ったら凄かった。
「おぬしら、わっちが居るから大丈夫じゃて。休暇だと思って宿で過ごすなり風俗行くなりして過ごしゃええじゃろ。なぁ」
風俗とか普通に言わないでよ。気まずいし……
しばらくの押し問答が続いたけれど、なんとか騎士達は折れてくれた。離れて監視……いや付いて来るらしい。
結局来るけれど、こうやって近くに居られるよりはましか……
はぁ、ルナードはどこにいるのよ。




