アルセイア様、これ以上直視したら瞳が汚れます
明けましておめでとうございます(゜ω゜)
「アルセイア様、本日の予定は孤児院へ行った後、明日の準備を致しましょう」
「えぇ、わかったわ。早く行きたいわね」
明日、ファイアロッドの大迷宮へと向かう。ルナードが居るファイアロッド……先に行ってしまおうかと何回思ったか。
「はい。最新式の魔導馬車なら一週間で到着するようですよ」
「へぇ、一週間……でも、ルナードの方が速いのよね?」
「エリスタから走って三時間で王都に着くなんて異常ですよ。なんでも身体強化を力を入れるタイミングだけ使うそうです」
「へぇー……ん? その話知らないわ。秘密にしていたわね?」
「えっ、言いましたよ? なっ、なんですか?」
「他に言っていない事、ある?」
リリがにっこりと微笑んだ。
これは、隠し事があるな……リリに近付き、顔を隠している前髪を耳に掛け、至近距離で見詰めてみると、徐々に顔が赤くなってきた。
あーっ、ドキドキした事隠しているなー。
「あ、の、近いです……」
「吐きなさい。何を隠しているの?」
「ぇっと、離れて、戴けませんか……」
「嫌。リリは自分の気持ちさえ隠すじゃない」
腰に手を回して、逃げられないように抱き締めると、目を逸らすように下を向こうとしたので、おでこをくっ付けると鼻が触れ合った。
顔が熱い……それに胸から伝わるリリの鼓動が速くなって、なんか凄く可愛いなぁ……
「ぁっ、ぅっ、だめ、です」
「言ってくれないの?」
「言い、ます……言います、から、離れて、下さい」
「えー、リリ可愛いから離したくない」
「ぅ……ぁの……せ、せめて顔は、離して、下さい」
「あっ、嫌だった?」
「ドキドキし過ぎて、無理です」
「……? あっ」
可愛い過ぎてキスしちゃうところだった。
それは流石にだめだよね。リリから離れて一礼すると、リリが鼓動を抑えるように深呼吸して、少し睨まれた。
「ふぅ、ふぅ、ア、アルセイア様はもう少し気を付けて下さいっ! この前もマコに抱き付いたのをミルエルナ様に見られて大変だったんですからっ!」
「あぁ……あれね、マコが食器を落としちゃって……見ていられなくて、つい……」
メイド見習いのマコちゃんが私の前で緊張しちゃって、食器を割ってあたふたして割れた食器を触って手を切って、先ずは私に謝ろうと食器の上に膝を付いて膝が血だらけになって……見ていられなくて、私も泣いて抱き締めてしまった。
それを見た六歳になる妹のミルエルナがヘソ曲げちゃって、マコ嫌いって駄々こねて大変だった。
「まぁ、マコは嬉しそうでしたよ? アルセイア様が自分の為に泣いてくれたって。でも、でもだめです。アルセイア様もケガしちゃったじゃないですか。傷痕が残らなかったから良いものを……」
「もしかしてリリ……妬いている?」
「なっ……妬いていませんっ! 真面目に聞いて下さいっ!」
「ふふふっ、嬉しいなぁ。リリ可愛い」
「っ、早く行きますよっ! あと十分で出発ですからねっ!」
「もう準備は出来ているわよ。じゃあ後十分……膝枕してあげるっ」
「そそそれは絶対だめですっ! 断固拒否しますっ!」
リリは、前より明るくなった。
それが凄く嬉しくて、立場を忘れて踏み込んでしまう。本当に、親友になれているのかな……なんて、不安になってしまうけれど、リリもなんだかんだで楽しそう。
「あらあら、王女様に逆らうの?」
「逆らいます。膝枕なんて、私がしてあげたい……ごほんっ、とにかくだめです」
「へぇー、ふーん、してあげたい……かぁ。ちょっと相談があるのだけれど、隣に座ってくれる?」
「相談? なんでしょうか」
ソファに座り、隣に座ってもらったところで……隙ありっ! リリの太ももに頭を乗せて、下からリリを見上げると、少しぽかんとした後に顔が引きつっていた。
「へへへー、誰かに見られたら大変だね」
「はぁ……私をクビにする気ですか?」
「そんな事させないわ。でもさ、ちょっとだけ、頭を撫でて欲しいな」
「……分かりました」
リリの手がゆっくりと髪に触れ、恐る恐る撫でられるとくすぐったい。
「もっとしっかり撫でてよ。ん? どうしたの?」
「あぁいや、今……私がアルセイア様を独占していると思ったら嬉しくて」
「じゃあっ、ルセアって呼んでっ」
「ぅ……ル、ルセア様」
「様はいらないのっ。お願いっ」
「ル、ル、ルセア…………様。いきなりは難しいです。慣れてからで良いですか?」
いつか、立場なんか気にしない関係になれたら、どれだけ心強いか。
顔も声も性格も知らない人と結婚する未来に、耐えられるのかな。
リリに撫でてもらえる少しの時間は、メイドのノックで終わった。それでも、心の充電は出来たと思う。
馬車に乗って、孤児院までの慣れた道……わざわざ馬車に乗らなくても徒歩でも時間は変わらないのにね。
「今日は孤児院で何をするの?」
「定期訪問なので、院内を回って話をする……まぁいつもの感じです」
「いつも思うけれど、大人の事情を感じるわよねぇ。孤児院のみんなを利用しているというか……」
「それは言いっこなしですよ。はい、いつもの沿道への挨拶ですよ」
「はいはい、窓開けて」
「笑顔ですよ」
馬車の窓を開けて、沿道にいる都民に手を振る。
口角を上げて手を振るだけ……でもこれが私の役目だからやるけれどね。
孤児院に行きますよアピールを終え、孤児院に到着した。
「あら? カサンドラが居るわね」
「ブランコに座って溜息を吐く姿が非常に気持ち悪いですね。でも公爵家の者なので見掛けたら話し掛けないといけないのが腹立たしいです」
「……いやあの、聞こえていますよリリさん」
「アルセイア様より先に名前を呼ばないで戴けませんか? 無礼を越して呆れです」
「ははは……氷の侍女様は今日もお達者ですなぁ」
「その呼び方やめて戴けませんかね。アルセイア様、声は掛けましたので行きましょう」
「う、うん……何かあったの?」
「あぁ……まぁ……うん。あっ、えーっと……昨日とか、クルルに会った?」
カサンドラの哀愁が凄い。
ブランコに座って猫背で……いやいつもあんな感じか。
クルル……ルナードと何かあった、とか?
リリもクルルの名前を聞いて、私の後ろに下がって話を聞きますよというように静かになった。
全く……わかりやすいなぁ。
「いえ、会ってはいないけれど……クルルと、何かあった?」
「いやそれがさぁ……昨日あいつ凄い怒ってたんだ。でもなんで怒っているのかよくわかんなくて……」
「怒る? クルルが? カサンドラに怒っていたの?」
「俺っていうか、多分ここの子に怒ってて……俺も巻き添えになったというか……」
「……ごめんなさい状況が読めないわ。その子に話を聞いてみましょうか」
「いや、俺も聞いたけど全然怒ってた理由がわからねえ……詳しく知るのに女子達に話を聞けたらって思って今日来たんだけどさぁ……逃げられるんだ」
「相変わらず人望ありませんね」
リリ、追い討ちは可哀想だからやめなさい。
まぁ二人は元々仲が悪いから仕方がないか……喧嘩するほど仲が良いという言葉はこの二人に全く通用しないってくらい仲が悪い。
昔、カサンドラが覚えたての飛行魔法で私の部屋まで飛んで来て、丁度出くわしたリリが烈火のごとく怒り狂ってから二人は仲が悪い。
普通に考えて全てカサンドラが悪いのだけれど。
「じゃあ、女の子達に話を聞いてくるわ」
「悪いな……助かるよ」
「アルセイア様、早く行きましょう。これ以上直視してはいけません、早く行きましょう」
リリ、わかったから引っ張らないで。
もぅ……ルナードの事が気になって仕方がないのね。
ふふっ、わかりやすいなぁ。




