格好良さに磨きが掛かるよ
「うーん……視えないなぁ」
「今解らなくても良いし、右目が治るまでお楽しみかな。ありがとね」
「帰ったらじっくり視させてね。よしっ、じゃあ宝箱開けようか」
「うんっ」
黒い宝箱……素材は解析してみると金製。木製、鉄製、銀製、その次のランクが金製だから、これは期待出来そうだ。
いざっ、オープンっ!
「「赤っ!」」
先ず目に飛び込んできたのは、血のように深い赤の鎧。
解析すると、深紅の鎧としか視えない。本当の名前は視えないか。感じる力が凄い事は解るけれど……
「イシュラ、着てみて」
「えっ、今? 呪われてないよね? デカくない?」
「着たら自動でサイズが変わると思うよ。絶対似合うから着てっ! お願いっ!」
「わかった。ほえー、高そうな鎧だねー」
真っ赤な軽鎧で、胴を守る部分と手甲、腰を守る部分と脚甲があり、胸元に深紅の宝石が豪華な感じでザ・炎の騎士みたいで格好良い。
少し手間取ったけれど、割りと簡単に着られた……
「おぉ……」
「ど、どう? 変、だよね?」
「格好良い……」
「えっ?」
「めっちゃ格好良いっ! 炎の国の王子様だよこれ超イケメンおぉすげぇ!」
「……ぅ、うん、ありがと」
「なんか言ってみて言ってみて! お前を迎えに来たとかなんとかっ!」
「……ルクナ、迎えに来たよ」
「きゃーー!」
「……」
えー格好良い格好良い。
真ん中で分けた赤い長髪に昔の傷を隠す黒い眼帯、鷹のように射貫く眼と対照的に慈愛の笑み、それに煌びやかな深紅の鎧……王子やぁ、絵本に出てくる王子様やぁ……写真撮ろう……パシャリ。
「ぬふふ、イシュラ……格好良いよぉ……」
「あ、うん、可愛いが嬉しいかな?」
「可愛いなんて格好良いに埋もれて地下深くにあるよこれもう格好良いなぁ。セイランとか見たら鼻血出しちゃうよもう」
「まぁ、褒め言葉として、受け取る……ん?」
イシュラが胸元の深紅の宝石に手を当てると、鎧が赤く光って……ペンダントに変わった……精霊装具だな。
ペンダントに変わったって事は、鎧の主に認められた訳か。
「やったねーっ! 鎧に認められたからイシュラの鎧だよっ!」
「いやいやいや……あっ、うん……わかった。なんかこの子、私の助けになりたいって」
「ふふっ、長く一緒に居たら顕現するかもね。次見よっか」
「うん、ありがとね」
イシュラが魔物を倒したんだからイシュラ優先だよ。
詳しい話は後でするとして、お次は……赤い宝石が柄に嵌まった赤い剣。
鎧と同じく深紅の剣……という名前しか視えない。深紅の鎧とは兄弟か家族か何かかね。
「イシュラ、持ってみて」
「うん……わっ、凄い。うん、うん、よろしくね」
深紅の剣が赤く光り、赤い腕輪に変わった。
こうして見ると、赤い宝石のペンダントに赤い宝石の腕輪……美人を引き立てるね。
鎧と剣に変わると王子感満載になる……いやぁ素敵。
次行こう次っ!
次は赤い本っ!
炎と光の複合魔法フォトン・ブレイズ……超級魔法だ。
「はいイシュラ」
「私ばっかりじゃん」
「私は魔法合成あるからこれの再現は出来るのよ」
「そう? ありがと」
イシュラがどんどん強化されていく。
何かの因果みたいに、イシュラ専用かってくらいの装備と魔法だな……
次は、次もイシュラ用かな。
赤い靴……名前はそのまま赤い靴。炎の魔法を乗せると威力に比例してスピード上昇。すげえ靴だな。
もう一つは赤い仮面。
名前は赤の仮面……深紅の鎧に合っているね。効果は格好良さが上がる。
「全身赤だね」
「目立ち過ぎでしょ」
後はアクセサリー類かな。黒いのは闇属性上昇に赤いのは炎属性上昇……ってイシュラのばっかりじゃん。
魔物の注意を引ける笛とか小道具系は貰った。
お金が五百万くらいと宝石が多数……うん、かなり当たりの宝箱だよ。
「凄い収穫だねー。このままドラゴンゾンビに挑んでも良さそうじゃない?」
「いや出口見付けてからにしよ? もし勝てなくて逃げた時……追い掛けて来たら泣くもん」
「まぁ、そだね。ここを出て尻穴を目指せば出口だと思うよ」
「……なんか嫌な出口だね。出口から出たら私達ウンコって事?」
「ウンコだね。私達可愛いウンコじゃない?」
「ルクナは可愛いウンコだけどさ、私なんか赤いから血便だよ?」
……冗談のつもりだけれど、鎧着て出たら血便みたいだなぁなんて本気で思ってしまった。
「炎便でも良いねー……あれ? 隅っこに指輪がある……ぅわっ」
「どうしたの?」
「収納の指輪だ……これ買ったら何億もする」
「まじ……」
「これ凄いんだよー、魔力通して収納って念じてみて」
「へー、収納……おぉっ! 消えたっ!」
黒い宝箱がイシュラの収納の指輪に入った。
ふっふっふ、魔力を通してしまったな。
「じゃあ行こっか」
「ん? 凄いけどいらないや。何億もするなら売っちゃお?」
「売れないよ?」
「なんで? 買ったら何億もするんでしょ?」
「だって今、所有者登録したから……くっくっく」
「えっ、嘘っ、やだっ、こんな高価な物持ちたくないっ!」
「探索者なら一生食べていけるよ。なんたって収納の指輪の所有者なんだから」
「ルクナ……知ってたなこのぉっ」
「はっはっはー」
「くぅっ、このこのこの」
肩を捕まれてゆっさゆっさされても、私の胸は揺れないぜっ。
ちょっとそんな力で揺らさないでっ、加減してよ。
あっ、バランスが崩れて……
「あっ」
「きゃっ」
押し倒された体勢で、イシュラと至近距離で見詰め合った。
「「……」」
イシュラ、どいてよ。
喋ったらチューしちゃうくらい至近距離なんだからさ。
……あの、どうして両手で顔を抑えているのかしら?
顔を動かせないのよ。
離して。
「……どいて?」
「……いや」
「……収納の指輪、押し付けてごめんね」
「……私ばっかり、貰いすぎなの。もぅ、一生掛けても返しきれない」
「返さなくて良いよ。私はイシュラの目を治すってわがまま言っているんだから」
「全部っ! 私の為じゃん! なんで、なんでそんなに優しいのさ……私はルクナの為に何かしたいのにルクナは一人で何でも出来ちゃう……私は、どうしたら良いのさ……」
そんな事言われても……イシュラの目を治したいだけだし。
お宝なんて迷宮に潜れば見付かるし……そこは感覚の違いだと思う。生き方が違うから。
「一緒に居てくれる。それだけで楽しいんだよ。私にとってこの時間は、どんなお宝よりも何倍も価値があるんだ」
「そんなの……私にはわかんない」
「人の気持ちなんて、わからなくて当然さ。わからないからこそ、んっ……」
あの……喋らせてよ。
チューしていますよ?
……んー?
……まだチューしている。
まぁイシュラにも説明した友チューというヤツだから、スキンシップみたいなものだと思う。
思う、けれど、舌は入れないで。
舌入れたら本気チューじゃん。
だからしっかり歯でガード。
まだ見詰め合っているので、イシュラがムスッとした目をしたのが解る。
だからといってさ、耳をこしょこしょして歯のガードを緩めないでおくれよ。
やめてー。
きゃー。




