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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編

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優しい魔法

 


『グギ……ガ……ダークネス……レイン』


 シャインエリアが掻き消え、天井に黒い霞が発生。

 黒い雨が降りだした。

 これは……いきなり上位魔法かよ。


「私が防御するからイシュラは構わず攻撃! アンチダークシールド!」

「わかっ、たっ、ぐっ……手応えなっ、効いて、るの?」


「完全魔力体だからね! あいつの魔力が切れるか何処にあるか解らない核を壊したら死ぬから!」

「魔力って、えー全然減ってないじゃんっ!」


「えっ魔力量解るの?」

「えっ? なんとなく……ルクナ、私魔力切れそう」


 ちょっと手が離せない。

 魔石は回収しているからイシュラに魔石の魔力を流すだけなのだけれど、この黒い雨が終わらないと難しい。

 仕方がない、ちょっと無理するか。


「オートマジック」

 この魔法は、身体に負担があるから止められているけれど、こういう時に使うものだよね。

 ダブルマジックは、威力を減らさずに魔法自動展開出来る。でも気を抜くとゴリゴリ魔力が減る。

 アンチダークシールドを自動展開しながら、集めた魔石をイシュラに流していく。


『ギギ……シャドウ……ブレイド』

「嘘っダブルマジック!? イシュラっ!」


 床から黒い剣が飛び出し、イシュラに突き刺さる寸前で突き飛ばした。


「えっ、ルク……ナ」

 変わりに、私に刺さっただけだ。

 痛いだけ、これなら。


「絶対、大丈夫……痛いだけ」

「ルクナぁっ!」

 もう一本お腹に刺さったけれど、意識が飛ばなきゃなんとかなる。

 魔法合成が使えたら、状況は変わるけれど……まぁ大丈夫でしょ。


「あぁ気にしないで。馴れているから」

「私が足手まといだから……ごめんね……ごめんね……ぐすっ、ぐすっ」


「いや、大丈夫だから……」


 本当に大丈夫なのですよ。まだ動けないけれど、ほらっ血止まった。止まったから泣かないで。


「ぐすっ、私が……仇を取るから……」

「イシュラ……? ちょっ、私生きているよっ!」


 ふらりと立ち上がり、魔法陣の魔物に近付いて……いや危ないから駄目。

 ちょっ……まずいっ!

 黒い雨に当たると身体が浸食されるっ!

 あぁくそ、魔法陣が黒く光った……


『ジ…シャドウ……ブレイド』

「避けてぇぇぇ!」


 黒い魔法陣へ向かうイシュラの足下から黒い剣が飛び出し……イシュラに、、刺さらなかった。

 えっ、避けた……でも、なんだこの違和感。


「……邪魔、しないで。ファイアランス」


 ファイアランスを天井奥に向けて放ち、手の平を閉じる動作をしたら炎が四方に拡散。

 黒い霞が四散し、雨が消え去った。

 魔法の起点が、解るのか……?


『シャドウ……ブレイド』

 黒い剣が飛び出し、イシュラはまた、避けた。

「私が、やらなきゃ、怖くない、怖くない」


 イシュラが黒い魔法陣に到達した。

 近付いても、無駄な筈なのに、どうしてだろう。駆け寄るのも忘れて見入ってしまっていた。

『シ……ネ……』

 黒い剣をふらりとまた避けて、黒い魔法陣に刻まれた魔法文字を眺め……

「あった……」

 拳に光を纏わせ……

 ──バリィン!

 殴り付けた。ガラスが割れる音が響き、魔法陣がボロボロと崩れていく。


「すげぇ……」

 凄いよ、凄すぎる。

 魔法体の魔物は核を一点集中で壊さないと一撃で倒せない。それを簡単にやってのけた……


「……私は……足手まといだ……私が居たから、ルクナが……くっ……」

「イシュラっ!」


 魔物を倒した後、膝を付きそのまま倒れてしまった。

 駆け寄って、イシュラの状態を確認……魔力の乱れが危険だ。

 魔力を逃がすように放出すると、落ち着いたみたい。

 ったく、無茶して……でも、私の為に無茶してくれたんだよなぁ……

 あっ、ゆっくり目が開いた。


「……ルクナ、ごめんね」

「なんで謝るのさ。凄いじゃんっ」


「私が居たから……ルクナがケガした。私が居なかったら……ルクナは余裕で勝てた」

「そんな事無いって。私は核の場所なんて解らないから力押しだったよ? だから沢山褒める。イシュラは凄いんだからっ」


 凄いんだから、沢山褒めるよ。

 よーしよーし。膝枕をして、赤い髪を撫でると恥ずかしそうに目を閉じた。


「私の目、どうなってる?」

「閉じてちゃ解らないよ?」


「なんか、怖くて……」

「じゃあ見せたくなるまで私はイシュラを撫で撫でするね」


「えー意地悪」

「へへっ……痛っ」


 そういえば回復していなかったな。イシュラがバッと起きて私のお腹の傷を見て、申し訳無さそうな顔をして手を当てた。


「痛いの痛いの、飛んでけ」

 覚えたての禁術を使うと、お腹がじんわりと温かい。痛みが徐々に無くなって、なんか……母に褒められた時みたいな、爺ちゃんに頭を撫でられた時みたいな、温かい気持ちになった。

 自然と、涙が出てくる。

 なんて、優しい魔法なんだ。寂しいのに、寂しくない。荒んだ心が、痛くない……これ、心の傷も、痛くなくなる。


「……ありがと、ありがと」

「ご、ごめん、痛かった?」


「いや、なんか、この魔法、凄いね。魔法書見せて……ふふっ、この魔法が使える者の条件って、心が壊れる程の痛みを経験した者だって」

「あー、なんか複雑。でも傷は塞がらないね……回復魔法教えて?」


「良いよ。一応それぞれの属性には回復魔法があってね、環境や状況で使い分けた方が良いんだ」

「へぇー。てっきり回復って水と光だけだと思ってた」


「他の属性って難しいからね。その分特殊効果もあったりするんだ。炎なら力上昇とか、土なら攻撃軽減とか」

「私が使えるのは、炎と、光と、闇?」


 光魔法の回復は熟練したら毒も一緒に回復してくれるし、回復と言っても奥が深い。

 そして闇の回復魔法は特に難しい。混乱や幻覚など精神攻撃の回復が主だから。

 まぁイシュラならすぐ覚えられるだろうけれど。


「ファイアヒール……こんな感じ?」

「流石だねー。魔法陣が使えたら魔法合成も出来ると思うよ?」


「魔法陣かぁ……勉強しなきゃ」


 魔法文字で構成された陣を頭に思い浮かべないと出来ないから、センスだけでは難しいのよね。

 私は魔法陣習得のせいで何回も死にかけ……いや考えるのはよそう。


「少し休憩したら、あれ開けてみよっか」

「黒い宝箱だから良いの入ってる?」


「多分ねー。でもその前に……」

 視線の先には魔物が居た場所にある黒い宝箱。

 多分良いランクだと思うけれど、先にイシュラの眼を視たい。

 という事で、イシュラの目に向かって指で窓を作って解析開始。

 じー……

 じー……


「……近くない?」

「魔眼のランクが高いせいか、よく視えないのよ。じっとしていてね」


 じー……

 至近距離で左眼を見つめる……

 鼻息が唇に掛かるくらい近いけれど、よく視えないなぁ……


「……恥ずかしいんだけど」

「もう少しで、視えそう……」


「……ルクナの眼、綺麗な青だね」

「ありがと。私のチャームポイントさ」


「……可愛いなぁ」

「えっ、いきなりどうしたのさ」


「いやぁやっぱりさぁ……こんな可愛い子を振った奴が許せないというか、なんかモヤモヤするというか……」

「……仕方がないんだ。相手は私よりもずっと身分が上なんだから」


 身分が上だから、弱小貴族と一緒になんて居られない。

 変な噂は将来に関わる。国民からの反発だってある。

 だから仕方がないんだ。


「……どんな男なの?」

「あぁ、えっと、男じゃなくて……その……」


「女?」

「まぁ、うん、そう」


 女子に振られたって言っていなかったせいか、イシュラが一瞬停止したな。

 そりゃ普通に告白したら振られるよね。

 といっても私は男の格好だったからあれだが……


「クルルの時に?」

「そう、だね」


「なおさらでしょ。へぇ……なるほど」


 なんか、怖いよイシュラさん。

 えっ、もしかして私に魔眼発動していないよね?

 何か解ったような眼をしているよっ。

 イシュラって度胸あるからお偉いさんだろうと物申したりしそう……だからもし遭遇しても何もしないでねっ。



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