資格の無い者が謎肉を食べた末路、か
しばらくぐにぐにした通路を進んでいくと、床から伸びる細長い楕円形の物体が現れた。高さは私くらいで、つんつんするとびょんびょんと揺れる。
「喉ちんこみたいだね」
「そうだね、これの方が謎肉より柔らかそうじゃない?」
「確かに……折角だし食べてみよう」
出来るだけ食べないと決めていたけれど、違う部位だと気になってしまうお年頃。
あぁ私は欲望に負けてしまういけない子……
という事で喉ちんこの先っぽをスパッと斬ったら、中に何か欠片が入っていた。
石というか、金属……?
解析してみると、龍鋼石って出た。
龍鋼石、龍鋼石とな……なんだろ? 一応取っておこう。
それよりも喉ちんこを食べてみたい欲求の方が上だ。
火で炙って一口。
……ふむ、龍の肉よりは柔らかい。脂が多いから胃がもたれそうな感じ。
イシュラにもあげてみる。
「うん、不味いね。柔らかい以外に良いとこ無い感じが良いね」
「でしょ? 脂のせいで飲み込めないのよ」
くっちゃくっちゃ……ごくん。
不味いな。
まぁ龍の肉にはかわりないけれど、食べ過ぎなきゃ大丈夫でしょ。多分。
「あっ、また喉ちんこあったね」
「もういらないかな」
「でも先っぽ斬ったら龍鋼石ってのが出てくるから、一応回収しておくね」
「名前からして高そうな石だね。おとぎ話に出てくる竜殺剣の材料とかだったりして」
「あぁ竜殺剣ね、悪い竜を倒す為に作った剣だっけ」
「そうそう……あれ? 誰か居る?」
通路の奥の膜を斬り開いた先に、人影があった。
私よりも大柄な、筋肉モリモリで、肌には黄色い鱗……ビリビリに破けた服を着て、鬼種のオーガに見えるし、トロルにも見える。
まだ、私達には気が付いていない。イシュラにシーっと静かにしてもらって、いつでも狙えるように魔法陣をセット。
『ァギ、ル、ヂ、ボザ』
喋った。
一定値の知能がある魔物は厄介だから、頭を狙って……石を細長く形成。回転させて貫通力を増して……
「ストーンランス」
『グギャッ!』
一気にぶち抜く。
見事に石の槍が頭に突き刺さり、ゆっくりと倒れ込んだ。
「……倒したの?」
「うん、魔力は消えたからね。解析したいから行こ」
倒れた人型魔物に近付き、解析ポーズ。
……ん?
んー?
ガーランド・ザザン……?
魔物の種類じゃなくて、個体名?
個体名の付く魔物は強いイメージだけれど、なんか違和感しかない。
「なんか、本で見たリザードマンに似てるね」
「んー……そうそう、リザードマンだよー」
リザードマンは人型のトカゲで、鱗に覆われた皮膚、長い尻尾に手の指と足の指は四本。顔付きもトカゲだ。
でも、この個体は指が五本に尻尾は無く、顔付きが人に近い。皮膚も鱗だけれど、リザードマンとは違う鱗……身に付けている物も解析した結果、一つの結論に至った。
元々人間……
そうとしか考えられない。
恐らく、私達と一緒で龍の肉を食べたのだろう。
イシュラには言わない方が良いかな、殺しているから気に病みそうだし。
『イギュ、ラギ、ム』
「あっ、また居た。今度は私が仕留めても良い?」
「あっ、う、うん……」
「ルクナみたいに細長くして、回転させて……よしっ、ファイアランスっ!」
炎の槍が回転しながら謎肉人間に突き刺さり、焦がしていく。
『グギャ! イギャ! シ……』
「やったぁっ! なんかさっきより上手く出来る様になったよっ!」
「いやぁ凄いね。流石は龍肉効果……」
上達が異常だ。
感覚が鋭くなっているのか魔力形成速度が段違い。
燃焼速度なんて倍以上だ。
天才に加えて龍の肉で素質を底上げしている……イシュラ、国際真偽官になる前に英雄になっていそうな予感。
「……他の魔法もやってみたい」
「良いよ。次は光の魔法にしようか」
イシュラの適性は光、闇、風、炎……後は封印された魔眼の属性。炎の他に光と闇なら教えられる。
適性が無くても魔法は覚えられるけれど、本気で頑張って下位程度だからね。
イシュラと手を繋いで、先ずはライトの魔法をイシュラの魔力で放つ。
「へー光の魔法はこんな感じなんだ」
「出来そう?」
「火より難しいね。ライトっ」
ポンッと少し歪な光の玉が現れ、ポトッと落ちた。出せるだけ凄いよ。
「魔力操作次第で色々形は変えられるから、練習してみて。こんな感じに」
ライトを剣の形に変え、目の前を斬るように素振りをしてみると、三日月型の光の斬撃が前方に飛び壁に衝突。壁に見事な斬り跡が出来た。
「すごーい! 格好良いねっ! 光の剣とか勇者みたい!」
なにこれ知らん。
素振りしただけだぞ……
なんでこんな……あっ、私も龍の肉を食べたからか。
強くなった自覚はあるから、色々試してみるかぁ。
「あぁ私勇者の末裔だから」
「えっ! 本当に?」
「いや嘘、適当に言った」
「えー、信じちゃったじゃん」
「勇者じゃないけれどね、英雄の孫だよ。あっ、今度は違う魔物だからこれで斬ってみるね」
今度は身長を越える骨の蛇、アンデット系統も居るのか。アンデット系統は炎や光に弱いから好都合って事で光の剣を振って斬撃を飛ばしてみる。
……ぬるっと簡単に斬れた。なんか変な感じだな……骨の中心部にあった魔石を取り、イシュラに魔石の魔力を与えていく。
なんかイシュラが強くなっていくの楽しいから、ついつい尽くしちゃうなぁ。
「本で読んだけどさ、アンデットが出る迷宮って高難易度って本当?」
「そうだねー。基本的には上位迷宮以上だよ」
「うわぁ、ボスとか居るの?」
「普通なら居るけれど、砂龍自体がボスだったら大変だよねー」
「あんなの勝てるわけないしょ……」
「まぁ迷宮核を取ってしまえば砂龍も元に戻りそうだけれど」
龍は個体差があるけれど、あんなに大きい筈がない。
きっと迷宮核で巨大化している。
そう推測を立てながら、謎肉人間や骨の魔物、腐った魔物などを倒し、膜を斬り割いて進んでいくと……
──ドクンッ! ドクンッ!
と、鼓動が響く場所に出た。
広いエリアに巨大な竜のアンデットが中心で寝ている。
上を見ると天井には大きな黄色い宝石が輝き、鼓動を響かせていた。
心臓……かな。迷宮核は……なんかへばり付いている物体がそうかも。
「……なんかあれ、格が違うね」
「解析……うへぇ……ちょっと強いね。ドラゴンゾンビの最上位種だ。それに個体名もある」
「勝て、そう?」
「三回くらい瀕死になれば、チャンスくらいはある」
「勝てないって事ね。どうするの?」
「まだ他に道はあるから、迂回するよ。流石に強すぎる」
個体差はあれど、普通のドラゴンゾンビは生前の能力半分くらいで力任せに敵に向かうタイプ。
それよりも上位のドラゴンゾンビは生前の能力そのままに力任せに敵に向かうタイプ。
更に上位になると、生前よりも強く、傷も自動回復して魔法も使ってくる。
私がまともに戦えるのはここくらい。
「うん、帰り道探そう。震えが止まらない」
「……帰り道が見つかったら挑戦はするよ」
更に更に、今回のタイプはその上だ。
魔法はもちろん特殊能力や固有魔法を使いこなすアンデットの王とも言える存在。
死を超越した強き竜、解析で出た名前は不死竜シャフェル。
「ばかなの? 死ぬでしょ」
「いやだってさぁ、色々考えたんだよね。もしかしたら砂龍が私達を食べたのって、助けて欲しいからかなぁって」
「助けて? なんで?」
「意図せずに迷宮核を飲み込んで巨大化したとか嫌じゃない?」
「うーん……まぁ、そういう考えもわかるけど」
「なんか、そんな感じがするんだ。それに、ここは爺ちゃんが攻略出来なかった迷宮なんだ」
爺ちゃんなら、ここの迷宮核は持ち帰っていた筈。ここにまだあるって事は、攻略出来なかったって事だ。
「……それならさ、出来るだけで良いから、私をもっと強くして。観ているだけは嫌」
「……良いの?」
「良いよ。なんか力が漲るっていうか、やれそうな気もするし」
「頼りにするからね。先ずは一周してみよっか」
多分この先良い肉が……いやいや良いお宝とかあるかもだし。
うーん……実は出口の予想は付いているんだよなぁ。
最初の場所は口の部分、喉ちんこゾーンは喉の部分と仮定して、肺部分っぽい所はスルーして、このドラゴンゾンビが居る所が心臓部分。
だからもっと奥に行けば出られる筈なのよ。
女子として、その出口しか無い事にショックを受けているのだよ。
「……お化けとかいないよね?」
「いやさっき居たじゃん。骨のやつ」
「幽霊とかの話だよ」
「幽霊? あぁ、たまに居るよ」
「えっ、どんなのどんなの?」
「迷宮の幽霊って大概が未練を残しているから、依頼とか多いよ」
「えっ、依頼? 凄くない? じゃあルクナって幽霊怖くないの?」
「うん、一番怖いのは人間だからね」
「まぁ……確かに」
クラスメイトよりも、幽霊さんと話した事の方が多いなぁ。
あっそうだ。
出口の場所は敢えて言おうっ、尻穴が出口だ!




