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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編

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二人なら、怖くない

ちょっと開いてすみません。繁忙期だったので仕事優先でした。月に550時間働くと奴隷の気持ちが解りますね(゜ω゜)

 

 イシュラがワームちゃんを見て、完全に畏縮してしまった。

 動ける、かな……イシュラが動けないと不利だけれど……


「イシュラ、離れて見ていて」

「怖い……怖いよ……あれ、は、何?」


「二層のボスだよ。殺さないと、喰われるから」

「さっきと、全然違う……」


 ワームちゃんが私達を囲むように回り、徐々に距離を詰めている……

 予想より動きが速い……魔法合成している間に喰われそう。

 イシュラの安全優先にしないと……そうだっ!


「イシュラっ! 私がワームちゃんを引き付けるからその隙に帰還石使ってっ!」

「えっ、でも」


「外で待っていてっ! アクアランス!」


 水の槍を形成してワームちゃんの腹を狙う……当たったけれど効果は無い。

 水が弱点じゃないの? えーまさか魔法防御力高いタイプかよ……

 ワームちゃんが私に向かってきた。直情型で助かったよ。


『キシャッキシャッキシャッ!』


 砂漠を泳ぐようにうねりながら口を広げ……うわぁ見ちゃった。

 円形の口から無数の牙が乱雑に生えてどうやって咀嚼しているかわからない程にきしょい。

 これに食べられるのは嫌だなぁ……ゴリゴリブシュブシュだよ。

 よしっ、地上は不利だ。

 氷の階段を駆け上がり、大きくジャンプ。

 ワームちゃんが氷の階段を噛み砕いた所を狙って、赤い魔法陣と黒い魔法陣を重ねた。


「炎鬼のような力強さ、邪鬼のような陰湿さ、苦しみもがけ、魔法合成・炎邪の槍!」


 ぶよぶよの皮膚を貫く一点集中!

 黒く燃える槍がワームちゃんの頭に突き刺さり、粘りけのある炎で燃焼していく。

 よしよし良い感じに苦しんでいる。


 帰還石は魔物と離れたら使える筈だけれど……えぇっ!?


「ファイアランスっ!」

 ボフッとワームちゃんにイシュラの炎が当たり、燃焼が激しく……って何してんの!?


「イシュラっ! 早く逃げてっ!」

「私は……逃げない。あいつらと同じなんて嫌だ……ルクナを置いて逃げるくらいならっ! 喰われた方が良いっ!」


 ……なんだよ、震えちゃってさ。

 ……恐くて泣いている癖にさ。

 ……馬鹿だよ。


「イシュラ……っ!」

『キシャーッ!』

「ぅっ……ファイア、ランス」


 ワームちゃんがもがきながらイシュラの方へ向かっていく。

 イシュラは追撃の炎を撃ち込んでいるけれどそんなんじゃ駄目だっ!

 あーもう格好良いなぁ!

 身体強化マックスで駆け抜け、ワームちゃんを追い越す。

 最初からこうすれば良かった。


「イシュラァ! 掴まってー!」

「はやっ……きゃっ!」


 抱きしめるように掴まえ、抱っこの態勢にしてから距離を取るように全力ダッシュっ!

 チラッと後ろを振り返ると、すぐ後ろにきしょい牙……ひえぇ! 砂地だから足を取られるのにワームちゃんが速い事速い事……


「イシュラっ、ファイアウォール重ね掛けしてっ!」

「うっ、うんっ! ファイアウォール!」


 ボフッボフッ……と炎の壁に突っ込んでも勢いは変わらない。

 とりあえず逃げながら考えよう……


「あのさ……ありがと。凄く、嬉しかった」

「ああいや……結局、足手まといでごめんね」


「ううん。イシュラのお蔭で冷静になれた。私がしっかりしなきゃってね」

「ルクナはしっかりし過ぎだよ。こんな時に言うもんじゃないけど、もっと甘えてね」


「へへっ、終わったらよろしく。じゃあ、怖いけれど我慢してねっ。氷のお立ち台っ!」


 目の前に氷の柱を展開……砂漠じゃきついけれど、どうせ壊されるしなんとかなるっ!

 ぴょんぴょんと目の前に氷の柱を作り続けて飛び乗っていく。

 ワームちゃんは氷の柱を噛み砕きながら追ってくる……執着が凄いねぇ。


「あっ、結構離れてくっ! 逃げ切れる?」

「匂いを覚えられたから、逃げてもまた来たら襲われるかな。折角だから倒してみるよっと」


 ワームちゃんが噛み砕くタイミングで氷の柱を剣の形に変化。

 刺さ……らないっ!


 今度は鋭いトゲの形にっ!

 刺さ……らねぇっ!


 お次は噛み砕いたタイミングで上から鋭い氷柱を落とすっ!

 刺さ……った?

『ギュォオオオオ!』

「凄いっ、効いてるよっ!」


 おぉ、刺さった刺さった。

 身体が伸びきった時に刺せば良いのね。

 のたうち回って動きが止まった今がチャンスか?

 はっはっは! もぅ私のターンさっ!

 イシュラを降ろし、白い魔法陣を正面に固定。更に赤と青の魔法陣を展開。


「よっしゃぁ決めるよっ! 赤と青、相反する力をもって天の空から舞い降りる。私は闇を照らす天の使い、私は闇を滅する天の刃、私が闇を……光に変える! 魔法合成・光炎爆流!」


 回転する魔法陣が重なり、視界が白く染まった。

 うん、逃げよう。

 イシュラを担いでダッシュ……

 砂漠でやるもんじゃねえな。


「──っ!」

「なにー? ごめん聞こえないー!」


 爆音でイシュラが耳を塞いで叫んでいる。

 ごめんよ、ワームちゃんを跡形も無く吹き飛ばしたくなっちゃったんだ。許しておくれ。

 他に探索者とか居たらどうしようとか思ったけれど、今更だよね。

 なんか私も頭がぐわんぐわんしているよ。


 ──ゴゴ……


「……あー、あー、まだ聞こえない……」

「あっ、ごめんね。ヒール」


「あー、あー、聞こえる……ルクナ、先に言ってよ」

「いやぁごめんごめん。半端な爆発系統だと死なないかなって思ってさぁ……」


「もぅ……でも凄いね……私も頑張れば出来る?」

「魔法合成は難しいけれど、体技と合わせればワームちゃんくらいなら大丈夫だと思うよ」


 まぁ一人なら余裕だけれど、誰かが居る時の立ち回りも勉強した方が良いか。

 

 ──ゴゴゴ……


「はぁ……なんか、こんな怖い魔物を見るとさぁ、世界って広いねぇ」

「まぁね。エリスタに居たら日常だけれど。とりあえず汗かいたし帰る?」


「そうだね。このワームちゃん? の、素材は良いの?」

「折角だし魔石くらい取っておくかな」


 現在視界には、ぐちゃぐちゃになったワームちゃんだったものがある。

 まぁグロくて臭い惨状だから、表現は控えめにしておくよ。

 だってワームちゃんが食べたであろう探索者だったものもあるし……ぐちゃぐちゃよ。

 探索者の遺品らしき剣を持っ……ギトギトしてんな。嫌だけれど、ワームちゃんのぶにぶにぐにぐに残骸を触るよりは良いか。

 魔力の多い所を探して…っとあった。頭くらいある黄色い魔石を持つと……んー?


「魔石大きいね。ルクナ、どうしたの?」

「……イシュラ、魔石に触ってみて」


「ん? うん……っ!」


 イシュラが魔石に触れた時に、私の魔力を通して魔石に馴染ませる。そこから魔石の魔力をイシュラに送ってみた。

 やっぱり……イシュラの魔力が上がって、壁を超えた感覚。迷宮核の魔力を取り込んだ時に似ている……効果は弱いけれど、重ねたら強くなれる?

 ……でもなんで、こんな事が出来るんだ?


「能力までは無さそうだけれど、身体能力は上がっていると思うんだ」

「確かに、なんか身体が軽いっ! 探索者が強い理由が解ったよっ」


「いや、多分これは私しか出来ない。だから秘密にしてね」

「へぇー、流石ルクナだねっ!」


 ワームちゃんが死んで安心したのか、イシュラがぴょんぴょん跳ねて喜んで……

 ──ゴゴゴゴ……

 ……

 ……

 ……ん? 地震?


「ねぇイシュラ、あの遠くにある砂丘……大きくなってない?」

「んー? そう言われれば、でもあっちも大きくなってるよ?」


「あっ、本当だ。あれ? 反対側も……」

「迷宮だから色々仕掛けがあるのかな?」


 見渡すと、円状に砂丘が盛り上がっていた。結構遠いから、環境の変化でもあるのか?

 まぁ、迷宮だし……迷宮だし……


「ねぇイシュラ、ふと思い付いた事を言って良い?」

「うん、良い事?」


「どちらかと言えば悪い事かな」

「じゃあ聞かない。聞かない聞かない」


「いやぁ、もしあの砂丘が魔物だったら凄いなぁって思っただけだからさぁ」

「言わないでよ。というか、あんなに大きな魔物が私達を囲むように居るなんてあり得ないしょ。何十体も居る事になるし」


「あっ、そういう考え方もあるよね」

「えっ、ルクナはどんな想像したの?」


「もしワームちゃんより遥かに大きなワームちゃんが、口を開けながら上がったらこんな感じかなぁって」

「……いやそれだと私達食べられる寸前じゃん。怖い事言わないでよ」


 まぁパッと思い浮かんだだけだし。

 怖がらせるつもりは無いのよ。

 じゃあ疲れたし、帰るかね。

 帰還石は魔力を通して……通して……通して……


 ──ゴゴゴゴゴゴゴ……


「……あれ?」

「……帰れないの? あっ、なんか地震が凄い」


「えっ……」

「ど、どうしたの?」


「真下に……居る」

「……」


 なんだこの心臓を抉られるような感覚……

 まずいまずいまずいまずい!


「来るっ! イシュラ掴まって!」

「う、うんっ!」


 逃げろ逃げろ逃げろ!

 こんなのワームちゃんの比じゃないっ!

 私でも勝てないぞこれっ!


 ──ゴゴゴゴゴゴ!

 砂丘から……巨大な黒い剣のような、黒い山……いや、これは、黒い牙。

 それが私達を囲み、天井で重なるように閉じていく。

 最初から、私達が狙いか。

 身体強化を最大に。

 最大にしているのに。

 届かない。

 黒い牙が頂点で合わされば、私達は逃げられない。

 足場もぐちゃぐちゃで、上手く走れない……

 くそっ、くそぉ……ここで、死ぬのか。

 そんなの、嫌だ。


「イシュラ、私から離れたら死ぬから」

「そんなの、わかってるよ。折角、魔法覚えたのにな……」


「大丈夫。私が死なせない。生き延びる方法を探す」

「生き延びるったって……ルクナ?」


 立ち止まって、深呼吸。

 もう、外に逃げるのは無理だ。逃げても追われたら終わりだ。

 攻撃は通用するなんて思えない。規模が違う。密閉空間で魔法合成なんてしたらイシュラが死ぬ。


「下に、潜ってみる」

「えっ!? 下に行ったら食べられちゃうよっ!」


「ここに居たら牙に擂り潰されて死ぬよ。それなら賭けに出た方が良い」

「賭けって……まぁ、ルクナと一緒なら、魔物の中でも寂しくないかなー」


「ははっ、流石イシュラっ。メンタル強いねっ!」

「女は度胸、だよ」


「じゃあ、行くよ。大丈夫、絶対大丈夫。絶対、大丈夫! アースホール!」


 土魔法で地面に深い穴を開け、いざっ!


「あっ、やっぱ怖い」

「うん、私も。せーのっ」


「「──きゃぁぁあああ!!」」


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