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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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家から学院まで遠いのよ

 今日は入学式。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 今居る場所は閉じた学院の正門前。

 時刻は十一時。

 入学式は十時から。

 つまり私は遅刻した。

 遠いよちくしょぉぉぉ……いや、迷っただけなんだけれど。

 地図を渡せば着く訳ねぇだろ父よ。私を一人で行かせるな母よ。

 私は七歳だからなぁ!

 一度は誘拐された七歳の女子を一人で王都に向かわせる親に呪詛を吐きながら、正門前をうろうろうろうろ。

 おじさんが立っているけれど、私から話し掛けるのは難易度が高い。


「……学生証を見せてくれ」

「はぃ…えっと…これ、です…」

 おっさんに話し掛けられ、びくびくしながら学生証を渡した。


「お? ルナード・エリスタ……あいつに息子が居たのか。はははっ、通って良いぞ」

「は、はい。あの…何処に行けば…」


「真っ直ぐ行けば看板がある。字は読めるか?」

「…はい。ありがとう、ございました」


 ……怖かった。

 父以外の男の人って苦手で、五歳の記憶が甦ってしまう。

 とぼとぼと歩く私を、おじさんはジーッと見ていたから、逃げるように早歩きで大きな看板まで到着。看板の奥には大きな建物があった。

 色々予定が書いてあるな……


【王都学院入学式】

 十時から入学式……もう手遅れ。

 十一時から移動して組毎に案内……何組か知らん。

 十二時からお昼休憩……お弁当は持ってきた。

 十三時から今後の予定や学院案内……終わり次第解散。


 ……学院の中を覗くと、私と同じ年頃の子達が大人の後ろを列になって歩いていた。楽しそうにお喋りして…今は入学式が終わって移動か。

 綺麗な建物だなぁ……白い壁に高そうな照明。エリスタと全然違うなぁ……エリスタは魔物の襲撃があるから簡単な建物が多いし。家はそんなにお金持ちじゃないから、住む世界が違いそうで不安……


 そろそろと入り口から中に入ると、一人の女性と目が合った。

 教師かな? 他の大人より高そうな服だから偉い人かな?

 ペコリと一礼してみると、ニコニコと笑いながら近寄って来て腰を落とし、私と視線を合わせて首を傾げた。


「どの家かしら? 学生証はある?」

「はい。ど、これです」


「エリスタ……ルナード、組は解る?」

「いえ、さっき王都に着いて…何も解らなくて…」


「あら、長旅お疲れ様。案内の冊子はお父様から貰ったかしら?」

「いえ、昨日まで父は学院の事を忘れていて家でバタバタしていて……学生証しかありません」


 父を殴った後、本当にバタバタしていた。

 母も知らなかったらしく、父は母にも殴られ、ピクピクしていた。その後母は私の服やら鞄やらを用意したり、お弁当の食材を買いに行ったり忙しく、父は私に殴られたショックでいじけ……大変だった。


「ふふっ相変わらずね……昨日? ルナードは…昨日…何処に居たのかしら?」

「昨日は家に居ました」


「貴族街に家なんてあった? でもさっき王都に来たのよね?」

「はい、あっ、家はエリスタにあるんです。あの、組って……」


「組は私が案内するわ。一つ聞かせて、家からどうやって来たの?」

「どうって…走って来ましたよ?」


 なんか、深いため息を吐いて悩むような仕草をしていた。

 綺麗な人だなぁ……赤い髪がサラサラで、柔らかい雰囲気。

 母以外のまともな女性と話す事も中々無かったから、少しドキドキする。

 小さな声でやっぱりあいつ馬鹿なの? と、言っていた。父と知り合いなのかな?


「ルナード、ちょっとこっちに来なさい」

「は、はい」


 女性は生徒が歩く方向とは違う方向へ歩いていったので、そのまま付いて行く。階段を上がって、上がって、上がっていくと、高そうな床の階に到着した。


「あぁごめんなさい。私は副学院長のクベリアよ」

「副学院長…よっ、よろしくお願いします」


「よろしくね。今から学院長に会って貰うわ」

「が、学院長……」


 学院長……なんか、凄く怖い。

 遅刻したから怒られるのかな……

 大きな両開きの扉に到着し、クベリアさんがノックした。

「誰じゃ?」

「クベリアです。リードの息子が来ました」


「……入って良いぞえ」

「失礼します」

「し、失礼します」


 扉を開けて、入った先……豪華な部屋の奥に黒い机があり、椅子に座って私を見据える…白髪の私よりも小さな女の子。小さな女の子?


「わっちが学院長のステラじゃ」

「る、ルナードです」


 クベリアさんが学院長に近付き、学院長がふむふむと聞いて口を尖らせた。


「ルナードや、少し触って良いかの?」

「は、はい」


 小さな手で、私の手を取り魔力を通して…首を傾げて私の眼鏡に視線が行った。


「その眼鏡、魔導具じゃの。効果はなんぞえ?」

「えっと……その……」


「出来れば外してくれんかの? 悪いようにはせん。わっちはルナードの味方じゃ」

「で、でも……」


「アズぴょんの子じゃろ? 会った事はあるで、安心せい」

「母を知っているのなら……わかりました。秘密に、して下さいね」


 眼鏡を取って素顔になると、学院長の目がキラキラと輝いた気がした。クベリアさんも唸って驚いている。眼鏡の私と素顔の私は結構差があるからね。


「おぉー! イケメンじゃの! ほぅほぅ、ルナードや…」

「な、なんです?」


「わっちの彼氏にならんかの!」

「へ?」

「学院長…アホなんですか? あっ、失礼しました。ルナード、今のは気にしなくて良いわよ」


 キラキラとした瞳の幼女が、私に抱き付こうとしてクベリアさんにヒョイッと掴まれてジタバタしている……可愛い。


「少しくらい味見しても……睨むでない。では本題じゃ……ルナードは一組に入る訳じゃが……お願いがあっての」

「お願い?」


「戦闘や魔法等の実技は良い評価をやるで、手を抜いて欲しいのじゃ」

「……? どういう事、ですか?」


「リード……お主の父親のせいで偏差値というものが大きく変わってしまってな……色々あったんじゃ。お願いじゃから最下位辺りを目指して欲しいのじゃ。お主、きっと自分の強さを解っていないからの」

「最下位……じゃ、じゃあ最下位になれば一番良い成績になるんですか?」


「まぁ、そう捉えてくれて良いの。それ以外は友達に魔法を教えたり剣を教えたり好きにして良いからの。やってくれるか?」

「はぁ、まぁ、別に一番になりたい訳じゃないんで……また、詳しい説明をお願いします」


 よくわからないけれど、みんなに合わせろって事かな?

 きっと、偉い子も居るからだと思う。偉い子は私よりも凄い特訓をしていそうだし。

 これで話は終わりらしい……怒られなくて良かった。


「失礼しました」

「いつでも遊びに来ての」


 クベリアさんと一緒に学院長室を出て、階段を下りる最中……他の教師ともすれ違ったけれど、あまり強さを感じなかった。きっと魔力制御が凄いんだろう……熟練すると魔力を感じさせないっていうし。

 なんか楽しみだけれど、不安の方が強い。

 何かあったら全部父のせいにしよう。そもそも、王都の学院に通わなくても……いや、今更か。



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