心を抉る攻撃が一番効くねっ
イシュラの準備は既に完了していて、事務室でイシュラが私の依頼の承諾サインをするだけ。
皆にはまた更新の時に来ると伝えて事務室に行くと、職員さんと院長が居た。
「イシュラを宜しくお願いしますね」
「はい、ではまた更新の時に。行こっか」
院長は、まぁ普通のお爺ちゃんというか……官職を引退した人が経営している感じかな。天下りってやつ?
「……なんか、軍の人が居るみたい」
「誰かが軍に通報したのかな?」
外に出ると、軍服の人がちらほら。
男子達が一生懸命説明して何かを書いている。
カサンドラは……居た、悪ガキリーダーと……おっ、魔法士団長のフエゴさんと一緒に居るな。それに入り口にはセイランがひょこっと顔を出して様子を伺っていた。気になったんだね。
「どうもフエゴさん、国営の孤児院だとこんな子供の喧嘩でも出動するんですね」
「まぁ色々あるんですよ。丁度私が担当だったので良かったです。調書は適当に書いておきますね」
「ははっ、お手柔らかに。そうだ、これお礼に娘さんにどうぞ」
「これは……良いのですか?」
「はい、自作なので貰って下さい」
「いやぁ見事……流石ですね……妻がいつでも来て良いと言っていたので、王都に来た時は是非寄って下さい」
住所は聞いているので今度行ってみよう。ごますりに自作の可愛い髪飾りを何個かプレゼント。癒しの効果があるから普通に買ったら数十万ゴルドの代物だぞー。
カサンドラは話したそうにしていたけれど、目も合わせてやんねっ。私はこいつらに味方するからぷんぷんなんだ。
「じゃあお言葉に甘えて時間があれば会いに行きますね。では失礼します」
「えっ、ちょっと待ってくれよ魔法士団長! こいつが荒らしやがったんだ!」
「何も荒らされていませんので、また君達の悪ふざけと書いておきますね」
「なんでだよ! おかしいだろ!」
「おかしくありませんよ。近隣からの苦情が増えています。更に今回は私の恩人にまで迷惑を掛けているので……どうしましょうねぇ」
やっぱり周りに迷惑を掛けていたのだね。
この場合どうなるのかね。孤児院の子供が行く更生施設なんて無いし。
懲罰なんて外聞が悪い……孤児院は国が世論を集める道具だろうからね。
だからこそ、勘違いした奴が増長する。
「兄ちゃんも、なんか言ってくれよ……俺このままじゃ……」
「フエゴさん、お互いにすれ違いとかあると思います。仲直りして欲しいから、話し合いの場を設けて欲しいです」
「だそうですが……クルル君の意見を尊重しましょう」
私に振られてもねぇ。
顔合わすだけでもストレスだから、無しだね。
無表情で小さく顔を横に振った。
「嫌ですよ。あっセイラン」
セイランが私よりも無表情でやって来た。すると同世代の男子達が近付いて来ている……人気者だねっ。
セイランは眉間に皺が寄らないように頑張っている……がんばー。
「何かあったの? あら貴女がイシュラ? ……えぇ……凄く綺麗、というか格好良いわね」
「あ、ありがとうございます……」
セイランがイシュラをジーッと見詰め、私をチラ見した。
えっへん、私が美人にしている途中なのだ。ノーメイクだからイケメンだぞっ。
というかよくここに来ていた癖に知り合いじゃないのだね。初対面なのは、どうしてだろう。
「……ねえ、その荷物は?」
「あっ、これから長期で依頼が……」
イシュラが困ったように私を見て、セイランが何かに気が付いたように私を見た。
少しドヤ顔を決めてみると、睨まれた。なんでさ。
「長期? 聞いていないわ」
「今決めたもん」
「……じぇらしー」
「ごめんねっ」
……怒っていらっしゃる。
仕方がないので耳元で経緯を説明……抱き付いちゃ駄目よ。
「「なっ!」」
ほらぁざわざわするじゃん。
「……なるほどね」
「あそこの親分はクソガキ達の味方だってさ。だからイシュラが言われたあの言葉を肯定しているという訳さ。ぷんぷんなんだよ」
「そう……残念ね」
よし、セイラン様が仲間に加わったぞっ。
セイランがカサンドラに向き合った。フエゴさんは少し面白そうに二人を見ている。
頭が高い、控えおろー。セイラン様だぞー。
私はセイランシールドを会得したから無敵だぞー。はっはっはー。
「セイラン……話し合うように言ってくれないか?」
「は? なんで? どんなに謝っても許せない事だってあるわ。私はそいつに言いたい事がある。どいて」
セイランの圧に、カサンドラが立ち竦み、後ろに居た男子達を見下すように腕を組み、悪ガキリーダーを見据えた。
「セイラン様、俺達は……何も悪くないんだ」
「最低」
「──っ!」
「もう二度と、話し掛けないで」
「あ、あの……」
「……」
最低戴きましたー!
全体攻撃だからカサンドラにも被弾している。もちろん私も胸が痛いよっ。
悪ガキリーダーさん悲壮感漂っておりますねっ。
解るよ解るよその泣きそうな気持ち。
最低被害者第一号のルクナちゃんが身をもって体験しているからねっ。
「セイランさまっ、流石ですっ」
「……何よ。あなたに言った事…まだ後悔しているんだから」
「もう気にしていないよ。じゃあ行こっか」
「えぇ、あのカフェに行きましょ? さっきグニアを見たわ」
悲壮感漂う男子達を背景に、セイランが悪い顔で私の腕を組む……これ以上心を抉ったら駄目よ。
次来た時の恨み憎しみが凄いじゃん。
ここで……『やぁやぁ諸君、男は顔なんだよ……はっはっはー!』なんて言ったら一生恨まれるぞ。流石に言わないよ。言いたいけれど……
……セイランが立ち止まった。どうしたの?
「セイラン?」
「あいつら謝ったの?」
「いや、謝る訳無いじゃん」
「……そう。行きましょ」
顔が怖いわ。
何か企んでいそうな雰囲気ね。
でも……これでカサンドラとの仲が悪く……いや、元々仲悪いか。




