なんとなくだけれど、彼女とは、長い付き合いになるような気がした
「……お待たせ」
「お疲れ様。とりあえず芋食べる?」
その後少ししたらイシュラがやって来たので、テーブルで少し話をする事にした。作業着のままなので、討伐者ギルドに居てもあまり違和感は無いな。
「あの、本当に今日は助かった。目眩が酷くて、日当貰えないかと思った」
「どういたしまして。こちらこそありがとね、話合わせてくれて」
「うん、ちょっとビックリしちゃった。それ凄いね」
「秘密だよ。まぁ色々あってね」
少し話してみると、イシュラは王都の孤児院で暮らしているらしく、日雇いで清掃等をして生活しているみたい。
孤児院か……エリスタにはあるのかな?
「貴族って怖いイメージだけど、ルナードみたいな貴族もいるんだね」
「あぁ、私は辺境の貧乏貴族だから平民寄りだよ」
「平民でも、私を気持ち悪いって言うから…さっきの貴族にも言われたし……」
「どこが気持ち悪いのさ。一生懸命生きている人は、輝いて見えるものだよ」
「……へへっ、嬉しいな」
イシュラが初めて笑った。私も自然と笑顔になるよ。
「もっと話したいんだけれど、まだ時間ある?」
「うん、今日は帰るだけだから」
私の中のおせっかいが暴れ狂っているので、イシュラと一緒に王都を出る。討伐者ギルドを出る時におっさんから男と浮気かー? と、からかわれたけれどハハハと笑ってスルーした。女子同士だぞ馬鹿野郎。
街道から逸れた芝生に座って、遮音結界を張る。精霊は見当たらないけれど、念の為にね。
「こうやって話すのも何かの縁だから、君の事を知りたいなって思ったんだ」
「……この火傷痕の事?」
「うん、そうだね。魔眼持ちでしょ? 解るんだ、私もあるから」
「ほんとっ!? ルナードも魔眼なの!?」
「イシュラみたいに強力じゃないけれどね。見ても良い?」
「……う、うん」
包帯を外して貰った。
これは……ただの火傷じゃない。完全に右目は目蓋がくっついている。火の火傷じゃなくて、薬品で爛れたみたいな……
呪いも付与されて……人為的なものだ。
酷い……こんな薬、余程恨みがあったのか……普通じゃ買えない。五百万ゴルドでも買えるかどうか……
「誰が、やったの?」
「……親。魔眼のせいで、私は捨てられたの」
「……親」
「この目は嘘が、解るの。親は私の目を怖がった。どんな嘘でも解るから……昔、親の嘘を見破っちゃってさ……絶対にバレちゃいけない事だったらしくて……怒り狂った父親が私の目に何かを掛けて……痛くて、痛くて、少し痛みに馴れた時には、知らない場所に居た」
なんとか王都に来て、宛もなくさ迷っている所を孤児院の院長に拾われたらしい。
イシュラは、凄いな。私だったら、野垂れ死んでいそうだ。
その親は、許せないな……呪いの薬を買えるくらいだからきっと貴族か何かだと思う。
イシュラは五年前に捨てられ、故郷が何処かも解らない。いつか顔を治せる時がくるようにと、身を削って働いている……か。
尊敬しちゃうなぁ。
よし、決めた。
「イシュラ、私は君の目を、顔を元通りにしたい。治させて欲しい」
「……今日、会ったばかりなのに、そこまでして貰うのは出来ない」
「出会った時間なんて関係無い。私は君の目が見たい。これは私のわがままだ、だからわがままに付き合って欲しいんだ。友達として」
「……友達」
「もうこれだけ話したんだから友達だ。私はしつこいから、イシュラが嫌だと言っても無駄だよ」
「私は、何も無いから……何もしてあげれない」
「それなら、私に君の目を見せて欲しい。それで充分だよ」
火傷の痕に手を当てると、熱を持って今も痛みがあるように感じた。回復魔法はあまり効果が無い……
先に呪いを解かないと目が開かない、か。がんじがらめに術式が組まれているような……封印式に近いような……
「触らないで……移っちゃうから」
「移らないから安心して。もし治ったら、私は君に嘘が言えないね」
「……全部、解っちゃうから……怖いと思う」
「全部言ってしまえば良い。私の秘密を言ってしまえば、イシュラは安心する?」
言えば良いだけ。女である事を。
魔法合成の回復魔法は、強すぎるからイシュラが耐え切れないし……呪いを解く方法を考えよう。
「そりゃ、安心するけど……ルナードって……やっぱり優しいね。こんな私と友達になってくれる」
「嘘が解るのは怖いかも知れないけれど、裁判官とかになれたら凄く有名になれるし、必ず国が欲しがる人材になる。イシュラは凄い人になれるんだ。私が保証する」
「……私、勉強出来ないよ?」
「これからでも間に合うよ。私が図書館から本とか借りて来るから一緒に勉強しよ?」
イシュラが迷いながら頷き、憧れていた一緒に勉強出来る友達が出来た。
呪いを解く方法を探しながら、週末に孤児院で一緒に勉強していく事になったよ。
とりあえず来週あたりに行ってみる事にした。
王都に来るのが、少し楽しみになったかな。
「なんか、こんなに楽しみなの……久し振りかも」
「それは良かった。あっそうそう、嘘だとバレる前に言うけれど、私は女だから」
「……えっ……おんなぁぁっ!?」
「にひひっ、秘密にしてねー」
何故か、初めて信用出来る人に出逢ったみたいな、そんな不思議な出逢いだった。




