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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編

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女子として生きた時、ダサかったら嫌なのよ

 

 それから零組で勉強をしていると、扉をノックする音が響いた。

「私、セイラン」

「どうぞー」

 カチャリと扉が開いてセイランが入ってきた。その後ろからグニアも入ってきて、私に一礼。とりあえず座ってと椅子に手を向けて座らせた。


「やあ変わりないかい?」

「あなたが居ないから寂しいわ」

「……同じく、寂しいです」


「君達には仲の良い友人が沢山居るじゃないか」

「好きな人が同じ空間に居ないとか無理」

「セイラン様笑わないからみんな心配しています……」


「グニア、ここでは様なんて付けないで。セイランと呼んで」

「ぅっ、いきなりは無理です」

「ふふっ、セイランとグニアって仲良くなったよね」


 ……なにさ、微妙な顔して。

 仲良しじゃん。


「それで? あなたは落ち込んでいるみたいだけれど……言ったの?」

「う……よくわかったね」


「……どうだった?」

「……振られたよ」


「……そっか。慰めないわよ、そこに付け入る女になりたくないから」

「……その方が助かるよ。まだ、諦めていないから……さ」

「あの……振られたって……」


 グニアには、話した方が良いかな。ルナードはクルルだって知っているし……

 ……やっぱりセイランはわかっていたか、私はセリアの事が好きだって……


「私には、ルナードには好きな人が居るんだ。その人に告白したら、振られちゃったってだけ」

「好きな人……」


「……彼女が居たから、私は孤独に耐えられた……学院に通う勇気を貰えた。お互いに事情があって、ずっと一緒に居られない事がわかっていたから……私が平民になるまでの間だけ、一緒に居たいって伝えたんだ……」

「……そぅ、だったん、ですか」

「はぁ……グニア、おいで」


 グニアの目から涙が溢れ、セイランがグニアを抱き締めて慰めている……本当は私も慰めて欲しいけれど、違う女の為に落ち込んでいる私を慰めるなんてしない、か。

 ごめんね、君達が私を好きなのは知っているけれど、好きな人がいるってちゃんと言わないと。

 それと、マグリット家の事とか言わないといけない。


「グニア、君に話がある。落ち着いてからで良いから聞いて欲しい」

「……ぇぐっ、は、はぃ……なんで、しょうか……大丈夫、です、言って下さい」


「私は、君の家を潰す事になるかもしれない」

「クルル様が、ですか?」


「うん、私の母はアズライナと呼ばれていた」

「アズライ……っ! ま、まさか……」


「そう、死神。私は母の無実を証明する……もし証明出来たら、君の家は潰れる可能性が高い」

「……無実……詳しく、聞かせて下さい」


 真っ直ぐに私を見る眼は、将来を覚悟していたみたいで……

 ふふっ、肝が据わっている。

 覚悟を持った眼は、好きな眼だ。

 グニアは強くなるだろうな。


「もちろん。母はあの事件で誰一人殺していないんだ」

「……殺していない……慰霊碑には何百人と名前が……」


「生きていたら?」

「えっ?」


「名前を変えて、生きていたら?」

「そんな事……」


「有り得る事だと思わないかい?」

「思います……けれど」

「本当ならね。どう探すのよ」


 どうって、精霊達に頑張ってもらう。

 でも過程を言わない方が良いかな……色々犯罪行為だから。だってセイラン様の目が怖いもの。


「それは秘密。じゃあ何の為に母は犯罪者となったのか……当時マグリット家は母を手に入れようとして失敗して家が半壊、それでもまだ諦めきれなかったから親交の深かった者達を利用し死神アズライナとして貶め追い込んだけれど、あと一歩の所でエリスタに逃げてしまった。その後エリスタ領主によって死亡が確認され、死神の話に乗っかったのが……いや、乗っかってしまったのが現国王の関係者って所だね」


 関係者ってのが側近なのだけれど、それはまだ言わない。不確定だから、ね。もしかしたら国王本人かもしれないし。

 マグリット家の誤算は国王が死神を大犯罪者に仕立て上げてしまった事……これはまだ推測の段階だけれど、マグリット家はアズライナがアズリーナだと知っていた可能性がある。今は喋れない状態だから母が王都に襲来しても安心だけれど、ね。無実を証明しても国はマグリット家に責任を全て背負わせて終わり……なんてさせねえからなっ!

 グニアは思考の海へ飛び込もうとしていたので、セイランにアイコンタクト。

 じー……


「私は、言った方が良いと思うわ」

「やっぱり? ねえグニア、私は君に頼みたい事があるんだ」

「頼み、ですか?」


「君みたいに可愛いお洒落がしたい」

「えっ、可愛い……? 格好良く、ではなく?」


「うん、私には秘密があるんだけれど、聞きたい?」

「は、はぃ……」


「私は女だ」

「……………………は?」


 目を見開いて硬直しているグニアの目の前に行き、そっと抱き締める。

 耳元で、伝えてあげよう。


「ルナードとクルルは偽名なんだ。本当はルクナという名前だから、ここ以外でルクナって呼ばないでね」

「えっ、いや、ど、どどどどどどどういう事ですかっ!」


「男として生きているだけだよ。戸籍上は男で本当は女ってだけだから」

「……私の中の何かが……音を立てて崩れていきます……でも、どうしてでしょう……凄くドキドキしています」


「男として生きてきたからさ、女の子らしい格好とかしたいのだよ。セイランに頼むと悩み抜いた末に迷走しそうだから、グニアが適任だと思ったんだけれど……どうかな?」

「迷走なんてしないわよ。考える時間が長いだけ」

「……すみません、ちょっと心が痛くて、落ち着くまで、待って下さい」


「わかった、待っているね」

「いやあの、抱き締められたままだと、心が安まりません……いやぎゅってしないで、下さい」


 やーだ。答えを聞くまで離さないよ。

 私のお洒落チャンスを逃したく無いのでね。

 まぁ確かにグニアのドキドキがすごい。全身が心臓になったみたいに鼓動が激しくて、熱い……こういう時、ついつい耳ふーをしてしまいたくなる……駄目だ駄目だ、耳ふーは我慢だ。耳はむはむは……もっと駄目……


「グニア、了承しない限りルクナは離さないわよ」

「せっ、セイランさまっ、後ろからギュってしないで下さいっ」

「みんなでくっ付こー」


 ぎゅー。

 女子と打ち明けたので、お友達のスキンシップとしてみんなでぎゅっぎゅ。

 セイラン、脇こちょこちょしないで。


「ルクナ、ちゅーしてあげたら?」

「っ…ちゅぅ……ぅぅ」

「なんでさ。私がちゅーするのは好きな人だけだよ」


「ねぇ知っている? 最近ちまたで友ちゅーというものが流行っているらしいわ」

「なにそれ」


「凄く仲良しの女の子同士でちゅーするの。ちゅー出来る程仲良しという友達のステータスなの」

「凄く仲良しの……友達」


「そうよね、グニア? (グニア、あと一息よ)」

「へ? あっ、そっ、そうですっ! 友ちゅー出来るお友達はまだ居ないのでこれを機にっ!」


 友ちゅーねぇ……そんな事が流行っているのか。女の子同士だけ? 男同士は無いの? 男と女がちゅーしたら問題だから、かな? でも同性でも結婚出来るし……なんかよくわからん。

 でもどの程度のチューなんだ?


「お手本見せて」

「えっ?」


「セイランとグニアって仲良しじゃん、だから友ちゅー出来るかなって」

「お手本なんていらないわ。ちゅーさせなさい」


「それが魂胆かっ。だーめっ」

「グニア、今を逃したらチャンスは来週よ」

「っ、ル、ルクナ、さま……」


 やめなさいっ、くっ、抱き締めているのが仇になったっ。

 がっちり掴まれて逃げられんっ。

 今は私とセイランでグニアを挟んで抱き締められている状態……セイランが顔の位置をずらして目の前にっ。

 少し無表情だけれどわかる……獲物を狙う目だっ。

 ふっ、下を向けば良いのだよ下を向けばっ!

 グニアの肩でお口をガード。

 これでちゅー出来まいっ!


「グニア、耳を攻めて」

「はっ、はいっ! 耳……ルクナ様の、みみ……」

「ひゃんっ! グニアやめてっ……っ!」


 グニアが耳をはむっとしたから逃れようと顔を逸らした先……セイランの顔……

 あー……ちゅーされちった。

 セイランさん……せめてさ、目閉じてよ。ガン見しないでよ。ちゅーされてんのにビクッとなるじゃん。


「……ふふっ、グニアも友ちゅーしましょ」

「ふぁいっ!」


 はいはいちゅーすれば良いんでしょ。

 はぁ……私はセリアとちゅーしたいんだからさ……

 セリアと……あっ、友ちゅーすれば良いのかっ。

 セイランから聞いたって言えば何かあったらセイランのせいになるし。でもその場合私が女だと言わないといけない……まぁ勘付いていると思うから良いか。

 でもなぁ……振られたばっかりで会うのが気不味いのだよ……振られたと言ってもあんた嫌いとか言われていないから微妙な感じなのだけれど……

 …………また会えたら、諦めずに告白してみよう……かな。



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