いざ迷宮へ
ファイアロッドの大迷宮……おさらいすると、第一層以外は難易度超位のエリスタで有名な観光地。火属性推奨で、魔法使いが居ないと第一層すら突破出来ないとされていたが、魔法使い以外も入れるようにファイアロッドという魔導具で力押しした結果、魔法使い無しで第一層を突破した。それ以来、ファイアロッドの大迷宮と呼ばれるようになった……って歴史の教科書に載っているくらい有名な迷宮だ。
「いらっしゃい、いらっしゃーい!」
『ルクたんっ、早く脱ぎたいな……』
「本当に脱がないで下さいよ。脱いだら帰って貰いますから」
現在ファイアロッドの前にある街に来ていた。
名前はそのままファイアロッドの街。素材等の売買や武器防具屋など様々な店が並び、観光用のエリアもあるエリスタで一番有名な街。観光用エリアには観光用の迷宮入り口もあり、観光客はそこに行く。
アースと二人でそんな街並みを眺めながら、迷宮の入り口へと向かっていた。
もちろんアースは服を着ている。露出狂だから目を離したら脱いでいそうでハラハラしてしまう……
『帰るのやーや』
「じゃあ脱がないで下さいね」
『格好良く言ってくれたら良いよ』
「……アースの肌は、誰にも見せたくないんだ」
『きゃーっ、脱がない脱がないっ! ルクたんラブーっ!』
脱がない代わりにベタベタされて、周りの視線が凄いね。
アースは美少女だから、普通は探索者の男達がこぞって話し掛けて来る筈だけれど、エルフィさんから変な首飾りを貰って付けている。変な奴に見えるから話し掛けられないみたい……元々変な……いや、よそう。
「……探索者証を」
「はーい」『はいはーい』
「っ!」
ファイアロッドの大迷宮と書かれた門……迷宮の入り口に到着し、門番さんに探索者証を提示した。一応探索者証と討伐者証にはランクがあって、初心者の下位は白カード。一人前の中位は赤カード。ベテランの上位は黒カード。更に上位以上の迷宮攻略者の一部や特別な人がなれる超位は金カード。
私とアースが提示したのは金カード。一応攻略者だからねっ、というかエルフィさんがドヤ顔で作って来たカードを渡されただけなんだけれど……私の名前がクルル・マクガレフになっている不思議。きっとエルリンちゃんを学校に通わす為に取引した結果だろう……
「通っても良いです?」
「あ、あぁ……いやギルド長に面会して貰う」
「嫌ですよ。どうせ素材の依頼とかするんですよね?」
「面会して貰わないと困る。今すぐ来て欲しい」
これは断れない雰囲気だな……あっ、アースが前に出て見下ろすように門番さんを見た。すると門番さんの肩がビクッと跳ねて脂汗が凄くなってきた……何したの?
『私は、精霊王よ。面会したいのならお前が来いと伝えて』
「精霊王、様……かっ、かしこまりました!」
『早く通して』
「はっ、はいっ!」
おー、流石は精霊王。格が違うから人間なら言いなりだね。
周囲の視線なんてお構い無しで威圧したから、周りも畏縮しているな……周りを見渡すと、様々な年齢の探索者。私くらいの歳から老人まで…みんな赤い杖を持って入り口に立っている……入らない所をみると、仲間の勧誘や利益になりそうな人の品定めかね。
アースの威圧で話し掛けて来る人は居なさそう……
『ルクたん、行くよー』
「はーい」
ご機嫌にお尻をプリプリしたアースを先頭に、大きな横穴へと入った。
横穴を入っていくと、一、二、三、四、五と書いた看板が刺さる広い部屋に到着。ここには更に探索者達が居て、勧誘合戦が凄い。
「俺は第二層を攻略したぞ!」「馬鹿言えお前は攻略してないだろっ! 俺は第三層に行ったぞ!」「前衛は任せてくれ!」「儂の魔法は凄いぞい!」「爺さんまた来たのか? 帰れ帰れ!」
基本は五人くらいで一つのパーティーとして活動していく。二層以降は難易度が上がるので死亡や脱落でパーティーメンバーが欠けることは日常茶飯事。だからこの入口で勧誘をして新しいメンバーを募集したりする訳だ。
もちろん探索者ギルドでメンバーの斡旋等はしているけれど、ここの方が良いと言う人も多いらしいからね。
「おう坊主と嬢ちゃんは二人で攻略かい?」「おい変な奴に話し掛けんなよ。仲間だと思われるぞ」「一層に向かうからルーキーだろ、話し掛けるだけ無駄だ」
一と書いた看板の前に到着。
看板の奥には魔法陣が淡く輝いていて、ここに魔力を通すと第一層に移動出来る。
この魔法陣は転送魔法陣で、高ランクの迷宮にはよくある機能。この場合は行った事のある階層の魔法陣しか使えないのだ。
五まであるという事は、五層までが攻略されているという事で、もうすぐ完全攻略されるのではないかと噂はある。
「第一層はサクッと攻略しましょうか」
『うんっ、案内は任せてー』
案内……あっ、そういえば幼女妖精はどこ行った?
セイランがお泊まりした時は居たような気がするけれど……可能性があるのは、エルフィさんに潰されたかな?
「アースさんは何層まで行ったのですか?」
『五層だよ。あの五の魔法陣はエルフィが帰還した時に出来た魔法陣だからねっ』
「へぇー、完全攻略はしなかったのです?」
『うん、五層のボスが精霊と相性悪くてね。諦めたの』
一の魔法陣に魔力を通すと、一瞬で景色が変わり目の前には森が広がっていた。
第一層は森林地帯。
この迷宮は自然型で、一層は木の魔物や植物系統が多く、火属性がかなり効果的な魔物しか出ない。
魔法陣を使用したら一層の何処かにランダムで転送されるから、先ずは現在位置の確認から始まる。と言っても視界に広がるのは森だから、慣れた人しか最初の現在位置は解らない。
「二層へ行くには階段か何かがあるんですか?」
『ファイアロッドは魔法陣よー。あっ、ここか』
アースの後ろをついて行く……ぷりぷりしたお尻に目を奪われ、植物の蔓が足に絡まっている事に気が付いた時には宙吊りになっていた。
ぶらーんぶらーん……アースが涎を垂らして私を見ている……魔物より危険な気がするな。
アースに食べられる前にナイフで蔓を切って着地。
蔓の出ていた方向にファイアランスをポイっと放ってみた。
炎の槍が辺りを燃やし、きしょい声が上がったので近付いて観察すると、蔓の本体っぽい蔓の塊が出てきた。
おー勢い良く燃えるなー。植物の中でも炎に弱いタイプか。
「さすがは火属性推奨ですね。一発で倒せます」
『一応私も溶岩くらいなら出せるから期待しておいてねー』
「頼もしいですね。今日はどこまで行きます?」
『二層に行ったら帰りましょ。四層まではサクサク行けるからね』
「他の階層も森ですか?」
『いや、二層と三層が砂漠だよ。四層が洞窟型で地底湖が多くて、五層はお楽しみに』
エルフィさんが五層で諦めたというくらいだから、難易度が高そう。
楽しみにしておこう。




