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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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それぞれ秘密を抱えているのね

 

 ――チュォンチュォン。

 小鳥…いやドラちゃんの小鳥の真似が朝を告げている。エリスタに小鳥なんて可愛い生き物は居ない。

 ふむ……右にセイラン、左にエルリンちゃん。二人とも起きていて、私の顔を凝視していた。朝から怖いぞっ。


「お、おはよう」

「ルクナ、おはよう。寝顔が可愛いわね」

「ルクナ様、尊いですぅ……」


「う、うん。あのさ、私のパンツ知らない? ズボンは履いているのにパンツを履いていないんだ」

「知りません」

「犯人はエルリンよ。夜中に自分のパンツの中にルクナのパンツを隠しているのを見たわ」


「エルリンちゃん返して。ウサギさんパンツはお気に入りなんだから泣いても駄目」

「ふぐぅ……じゃあ明日脱ぎたてほやほやパンティを下さい」


「何に使うのさ」

「もぅっ、わかっている癖にぃっ。恥ずかしいですぅ」


 こんな調子で朝の挨拶も終わり、パンツを返して貰って隣の部屋を覗くと、母とエルフィさんが仲良く朝ごはんを作っていた。

 相変わらず距離感が近い……エルフィさんが母にあーんをして幸せそうだ。


「お母さーん、エルフィさーん、おはよー」

「おはようございますっ!」「おはようございます」

「みんなおはよう。もう少しで朝ごはん出来るから顔洗ってきなさーい」


「はーい。みんな行こっかー」

「セイランちゃん、狭いけれど我慢してねー」

「我慢なんてそんな、とても楽しいで……す。お、お母さま、凄く、素敵です」


 母がぐるぐる眼鏡を外して、セイランの頭を撫でた。セイランの目がキラキラと輝いたね……ふっ、自慢の母さ。


 みんなで顔を洗って、歯磨き……あれ? 父が居ないな。


「ねーねーお母さーん。お父さんはー?」

「んー? そういえばまだ帰っていないわね。どうせ朝まで飲んだくれて今頃寝ているわよ」


「じゃあ王都に居るのかな? まぁお父さんと王都は回りたくないから別に良いけれど」

「じゃあお父様もかな……今日お城でお仕事だから早い筈、大丈夫かな」

「精霊に聞いてみましょうか?」


 エルリンちゃん、ここからでも聞こえるの?

 聞こえるなら私にプライベートが無さそうだぞ……内緒話が丸聞こえという事か……まぁエルリンちゃんなら良いか。

 なんか難しい顔をしている……


「お父さん起きている?」

「んー……そうですねぇ、ナニがおっきして……げふんっ、まだ寝ているみたいです」


「そっか、昼まで寝てお母さんに怒られたら良いんだ。じゃあセイランパパも?」

「セイランパパさんはおっきしてお城で会議ですねぇ。ほうほうなるほど……民衆に広がる合成魔導士クルルの存在について話していますね」


「まだクルルはルナードだって解っていないのかな? 意外とみんな口固いね」

「解っていても言えない人もいるかもしれないわよ。エリスタ嫌いの貴族とか、エリスタを英雄にしたくない人もいる訳で」


「まぁどちらでも良いかな。どうせここに来られる人って一握りだから、ね」

「辺境の強みよねぇ。王都の貴族はまず来られないし、王族なら尚更来ない……あっ、でも領土視察では来なければいけないからその内来そうね」


 視察、ねぇ……クソ王子とか来ても特に話す事無いから無視してしまいそうだ。

 みんなで朝食を食べ、王都へ行く準備をしていると……


 ──ウーッ! ウーッ! ウーッ!

 警報が鳴り、警報機から場所を示した紙が出てきた。


「えっ……警報? ルクナ、魔物の氾濫……?」

「あー、いつもの事だから大丈夫だよ。場所は……おっ、南だ。帰り道だからセイランも行くよー」

「じゃあみんなで行かない? お見送りしたいし」

「良いですね。行きましょうっ♪」


 困惑しているセイランをおんぶして、みんなで南に走り出した。

 今回私の出番は無さそうだな……母とエルフィさんが居るから……


「ルクナ……なんか、凄いね」

「まぁ、王都に居たら出来ない経験ではある、かな。エルフィさんと母が組んだら凄いんだよ。良い経験になると思う」


「なんか自信無くしそうよ」

「そう? 私が教えているんだから大丈夫。セイランもあと三年ガチでやればエリスタに日帰りできると思うし」


「私は王都を一周するだけで数日掛かるから無理ね。あっ、なんか……黒い、雲?」

「あぁ厄介な飛行タイプの魔物かぁ」


 空に蠢く黒い雲に見える魔物の軍勢……あれは、鳥型や虫に竜までいる。

 翼を持つ虎やキマイラ、余裕で上位の迷宮だな……

 母が氷のお立ち台を作成し、魔物達と同じ高さまで上がっていく。

 エルフィさんは空を飛んで、妖精みたいで素敵だな。


「ルクナ、お母さん達がやるわね。エルフィ、一緒にやるわよ」

「うんっ、嬉しいな。アズりんと……共同作業……」


「……ねえエルリンちゃん、エルフィさんってお母さんの事好きだよね?」

「はい、超ラブですね。私がルクナ様を愛しているのは、お母さんに似たのかもしれませんね」


「……そっか。あのさ……エルリンちゃんって、エルフィさんと誰の子なの?」

「あぁそれは秘密です。母から口止めされているので言えません。でも、ルクナ様が私を抱いてくれるのなら……教えて、あげますよ?」


「い、いや、まだ、いいかな」


 なんか、深入りしたら危険な気がする。

 可能性が色々あって、真実を聞くのが怖いというか……聞かない方がお互いの為になると思う。

 結婚したら聞かせてもらおう、うん。それだと遅いか。


「みんな、張り切っていくわよ! 精霊召喚・炎王アグニ、水王エリクス、風王アネモス、土王アース」

「エルフィ、魔物を固めるわね。空間結界魔法・ディメンションコフィン」


 あー……張り切ってんな。

 エルフィさんが精霊王を四人召喚。

 豪華な服を着て炎の身体を持つ有翼の大男の炎王アグニ。

 青い綺麗なドレスを着た青く長い髪のお姉さんの水王エリクス。

 若草色の着物を着て、煙草を咥えながらやる気なさそうにしているのはシルフィードのお父さん風王アネモス。

 土王アースは何故かいつも下着姿の美少女……私はこの子によく口説かれる……エルリンちゃんのライバルだ。今も私に投げキッスをしてエルリンちゃんが飛んできたハートをペシっと叩き落とした。


『ようエル『あら『俺いらんだろ』フィ『ルクたんっ!』何事』か?』


 一気に喋んなよ。

 何言っているかわかんねえ。

 その間母が結界魔法で魔物をぎゅーっと固めている。

 普通はあそこまで結界魔法は届かないけれど、空間魔法という卑怯な属性を使うとあら不思議、かなり遠くまで届く。だから長さキロ単位の結界を張れるというぶっ壊れ魔法なのだ。


「エルフィ、準備出来たわよー」

「んもうっ、アズりん素敵っ。みんなーアズりんが固めてくれたからよろしくねー」


『まか『あらあらエルフィご機嫌ね』でも『アグニのおっさんだけで『ルクたんラブっ!』だろ』なっ!』


 ……息がピッタリ合わない。

 あっ、バラバラに攻撃を放った……炎と岩が合わさり溶岩へと変化、水と風が合わさり嵐に変化、その二つが合わさり、見事に相殺……相殺した魔力の衝撃波だけで魔物達を粉々にしていった。

 それぞれの良さを見事に潰し合う無駄な連携技だ。


「……ルクナ様、この規模を魔法合成したら大変な事態になるので気を付けて下さいね」

「うん、四属性合成はまだ出来ないから……心に留めておくよ」

「これがマクガレフ……精霊王って、凄いのね……」


「因みに、光の精霊王グリンさんと闇の精霊王チムノーちゃんが居たら私達も逃げる事態になります」

「大精霊を一柱従えるだけでも何十年も掛かるといわれているのに……」

「流石だよねー。あっ、この前王都でチムニーちゃん見たよ」


「あぁ……チムニーちゃんはママの……げふんっ。これは秘密でした」

「えーなになにー、声掛けたら慌てて逃げちゃったんだよね」

「えっ、精霊王も王都に居るの?」


 エルリンちゃんがお口チャックの仕草をしてプイッとした。

 私にそのピンッと立ったお耳を向けるとは……ふーっ。


「ひゃんっ! ルクナさまぁ…こんな所で…もぅ、仕方ないですねっ。私は見られながらでも、大丈夫ですよ」

「ごめん、私が悪かった。脱ぐのはおよし。教えてっ、きゅるんっ」


「ぐはぁっ! きゅるんっだとっ! な、なんという破壊力……私の中の私がルクナ様を襲いたくて暴れておるわっ!」

「チムニーちゃんに冷たくされて、私の心は傷付いたの……理由があるなら教えて?」


「だっ、駄目です! ルクナさま、乙女には、秘密は付き物ですっ。なのですなのですっ」


 ふむ、気になったけれど別になんとしてでも聞きたい訳ではないし。

 きゅるんでセイランもやられている……ふっ、私は罪な女さ。

 さてさて、精霊王の見事な連携で殲滅した魔物達を眺める。

 南に氾濫があるのは珍しいな。王都寄りの方は氾濫前に迷宮を潰している筈だけれど……ファイアロッドの大迷宮も南だし、関連とかあるかな?


「流石はルクナのお母様とマクガレフ様……想像を超してびっくりです」

「セイランちゃんもその内なれると思うわー」

「そうね、ヴォルトが付いているし」


「いや、私なんて足元にも及びません……」

「じゃあルクナのお友達として、私が少し教えようか?」

「アズりんが教えるなら私もっ」


「えっ、それは、贅沢というか……」

「じゃあさっ、私とセイランとエルリンちゃんの勉強会だねっ」

「確かにルクナ様と訓練した方が辛くても嬉しいが勝ちますね」


「で、では……よ、よろしくお願いいたします」


 ふふっ、セイランも私達の仲間入り……セイランなら、大丈夫だよ。多分。




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