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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編
57/336

うむぅ……

 

「おかえりなさいませお嬢様。クルル様、お待ちしていました」

「こんにちはー……」

「アルセイア様は庭園よ」


 メイドさんに案内され、庭園を歩いていく……良いなぁそのメイド服。可愛いなぁ……着たいなぁ……


「セイラン、メイド服着てみたい」

「……着ているの見たい」


「今度借りてきて」

「……うん」


 よしっ、着てみたかったんだよ。

 セイランとメイドさんが花の壁の向こうに行き、私は残された。来たよって連絡かな……いきなりどうもどうもなんて出来ないよね。


「クルル、来て」

 セイランが直ぐに戻ってきたので、ついて行くと……庭園に大きなテーブルがあり、椅子に座る面々……カサンドラ、知らん女子、なんか眩しいくらいのオーラを持った知らん女子とその横に立つ片目を隠した見た事のある女子。

 なんだよこの空気、これから始まるのは楽しいお茶会か? 私はこれから尋問されるのか? 怖えよ。


「みなさんごきげんよう、クルルです……ねえセイラン、私はこの輪に入りたくない」

「さっきまでの余裕はどこにいったのよ。あなたの席はこっちね」


「だって私が挨拶してもみんな無言なんだよ? 見ているだけなんだよ?」

「何言っているのよっ、座ってから話すのよっ。お茶会のルールは習ったでしょ……放課後の実習も、したし……」


「……私と一緒にやってくれる人なんて居なかったから……遠くで見ているだけだったよ」

「……ごめんなさい」


 セイランの方が泣きそうじゃん。

 お茶会の実習は、みんな座っていて楽しそうに談笑していたよね。私は指を咥えて見ているだけだった……

 みんなで順番に座ってマナーの練習をしてさ、私もやらないといけないと思って近付いた時に……終わったんだ。

 もうみんなやったよなっ! ……というクソ王子の号令でさ。

 悲しかったよ。


「セイラン……私が座ろうとしていたの見ていたからあいつはもうみんなやったよなって言ったんだろうね、当時は切なさが勝っていたから考えていなかったけれどさ、今思うと狙っていたよね、直接言わないでねちねちと陰で笑ってよ、あいつらグニアよりタチ悪いよね」

「く、クルル……あのさ、マナーとか気にしなくていいから座って、くれないか?」


「あぁ……カサンドラさん、お気遣いありがとうございます……気にしなくて良いなら私はここに座ります。マナーも知らない平民なのでここが良いです。セイランは椅子に座って……私は、ここがお似合いだ」


 悲しい気持ちを思い出して、私はもう駄目だ。

 芝生に座ろう。正座でよっこいしょ……

 はぁ……駄目だ。呼び出しておいでまだ一言も喋らない王女っぽい人なんてどうでも良いや。

 リリって奴も私に同情の目を向けるんじゃねえよ……気持ちなんて微塵も解らない癖にさ。

 そうだよ、私の気持ちが解る人なんてこの場に居ないじゃないか……セイランだってあっち側の人間だ、上流階級様ってやつだ、こいつら友達なんて三桁いるんだろ? 私は片手でも埋まらないぞ……友達は数じゃない事は解っているんだけれど、さぁ……はぁ……駄目だ。


「はぁ……こうなったらもう無理ね。兄さん、どうしてそんな酷い事言うの?」

「えぇ……俺何も言ってないじゃん……えっ、なんでみんなして俺を見るの? いやクルルまじでここ座って?」

「カサンドラ、彼はそこで良いなら良いんじゃない? 初めまして、私はアルセイアよ」


「……はい、初めまして……」

「……目を、合わせてくれない? しっかり挨拶、したいから」


「……はい、失礼しました」


 ゆっくりと視線を合わせる。

 長い金髪をまとめ、整った……年齢の割に整いすぎた顔立ち、美人という枠から頭二つ抜け出したような……確かにカサンドラが一目惚れするのも解るなぁ……なんというか、私とは対極な、全てを照らす太陽のような暖かさを持つ人。

 正直、女としての劣等感を渾身の力で顔面に投げ付けられた気分で、更に落ち込むくらい……選ばれし者って、奴だな、なんて思った。

 それと、それよりも感じたのは……重なる。なんでだ? なんで彼女と重なる? あの目は……駄目だ、落ち着け。


「この前の活躍は各方面から聞いているわ。お礼をしたいと……っ」

「……お礼? なんのお礼ですか?」


 ……お礼? 危ない、これは罠か。ここでお礼を受け取れば、何が起こるか解らない。どんな罠を張っているか解らない。

 気を、引き締めよう。雑念よーあっちいけー。

 こいつは、爺ちゃんを嘘吐き呼ばわりした王族だ。

 そう、考えると、心が途端に冷えてくる……よし、落ち着いた。


「魔物から、軍を守ってくれたわよね?」

「守る? 私は何もしていません」


「……攻撃的にならないで。私はあなたと仲良くしたいの。リリから、話は聞いているわ」

「聞いていたのなら、よく会おうなんて思いましたね。あと二年、楽しみですね」


「……二年後、あなたはもう、居ないの?」

「はい」


 ふんっ、そんな顔をしても都合の良い駒にはならぬよ。

 そんな顔で動いてくれるのはカサンドラくらいじゃないかい?

 紅茶を持ってきたメイドさんが困惑している……地面に正座しているからね。

 せっかくだからオレイドス家の紅茶を飲みたいな……両手を広げて欲しいアピールをすると、そのままくれた。お礼を言って、紅茶を飲む……香りが良いな……はぁ、セイランは毎日こんな美味しい紅茶を飲んでいるのか……はぁ、身分の差が激しくて切ないよ。


「アルセイア様、少し離れます」

「……リリ?」

 リリが私に向かって歩き、無言で隣に座った。なに? なんか言ってくれないとほとんど顔見えないから怖いんだよ。

 なんか、花の香り……香水みたいな、凄く良い匂いだな。ちょっと半尻くらい近付こう……その隠している片目は、魔力を感じる……魔眼か? じー……髪でほとんど顔が隠れているから、顔が見たい……あっ、なんか、既視感……至近距離で見詰め合うと……重なる。まさか、こんな所で……出逢うのか。いや、まだ確定した訳じゃない。

 とりあえずもう一度話してみよう。あの時は机が重かったからチラ見しかしていなかった……少し、顔が見え……おぉ、凄え美人。


「……ぅゎぁ、凄く綺麗」

「……」


 あっ、ついついぼそっと言った独り言を聞かれてしまって下を向いて完全に顔が隠れてしまった。いやだってアルセイアと違うタイプの美人さんだよ……今は可愛いが勝っているけれど将来かなり美人さんでモテモテだぞ。

 ……なんかしーんとしてしまった。

 わ、話題を変えよう。なんか注目されているから恥ずかしくなってきた。


「……これ、飲みたいんですか? どうぞ」

「……違う。アルセイア様はここに座りたくても座れないから、私が代わりに座っているだけよ」


「服に草の汁付きますもんね」

「……違う。そんな事は気にしない」


「じゃあその目で、私を視るのですか?」

「っ、違う。視る気は無いわ……アルセイア様の為」


「そうですか……てっきり、私に対しての優しさだと勘違いしてしまいました」

「……」


 私と同じ目線に居てくれるのかなって思ったのになぁ……やっぱり違うのかな……アルセイアを見ると、私をジーッと眺めている……なに? とりあえず見詰め合ってみよう……ふむ、実際に会ってみると嫌な感じはしない。というより、やっぱり懐かしいような感覚……うむぅ……むぅ……認めたくは、ないけれど……


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