記念品ゲットだぜっ
あともう少し…
幸い廊下には誰も居ない……でもじろじろ見ていたら不審だよなぁ。
あっ、セイランと目が合った。じー……ウインク一発。
おっ、口元がにやけている。
「はい、すみません職員室で込み入った話をしていました。では…」
「先生! お話がありますっ!」
リベッカが手を上げた。
まぁ何を言うかは予想は出来る。セイランがため息を隠さないくらいだから。
「はい、なんでしょうか」
「ルナード・エリスタがグニアを虐めています。私達はもう、我慢なりません」
「ほう、そうですか。グニアさんは、救護室ですね……虐めている現場を見た方は居ますか?」
「セイランが見ている筈です。今この場で言って貰いましょう。何があったのか」
「うーむ…お願い出来ますか?」
みんなが注目する中、セイランが薄く笑って立ち上がった。
何を言うのかしら。
「グニアは虐められていません。あの涙は、嬉し涙です。以上です」
「「えっ……」」
「はい、ありがとうございます。では社会の教科書の…」
「納得いきません! どういう事ですか? セイラン、ちゃんと説明してっ!」
「リベッカ、あなたはエリスタの何を知っているのかしら?」
「何を? 何も無い辺境に興味なんて無いわ」
まぁそうだよね。迷宮以外何も無いよ。綺麗な名所とかは爺ちゃんがぶっ壊したし、北に行くにつれて道も舗装されていないせいか強めの討伐者しかエリスタの町に来られない。一応あるよ、町……というか、うん。
あっ、幼女本体が歩いてきた……尻触んな。おっ、大人になったじゃないか。大人のステラちゃんが私の尻を触ると犯罪感出るからやめなさい。
でも白髪で流石は妖精族というような綺麗な顔立ち……じゅるりだね。
「そう。では先生、お願いがあるのですが…」
「良いですよ。エリスタについて、理解を深めるのですね……おや? 学院長」
「ヘクトル、わっちがエリスタについて皆に教えてやろうぞ」
「ふふっ、ありがとうございます。では、お願いしますね」
大人幼女……ステラちゃんが教壇の前に立ち、先生は近くに椅子を出して座り始めた。
ステラちゃんが私を見ている……なに?
「クルル、来るのじゃ」
「えー……」
「クルル?」「あっ、あの人……」
ほらーざわざわしたじゃん。
「わっちの授業だけ、参加しての」
「はいはい……どうも、零組のクルルです」
「零組?」「噂の……」「セイラン様、彼ですよね?」
セイランがニコニコして私を見詰めている……ざわざわしてんな。こらー静かにしろー。
とりあえずマスクをしていて良かったよ。
なんか変な感じだな……ルナードの時とはえらい違いだ。
まぁルナードは呪われていた訳だし……
「じゃあ後ろの席が空いているで、そこに座ってくれの」
「あぁ……ルナードの席ですね」
ルナードの名前を出してみる……静かになったな。
眼鏡をしていない状態で、みんなの前に出るなんて変な感じ……眼鏡無しのルナードの席からの眺め、か。
悪戯心が踊り狂っているので、机の上に乗っている石の板を外してみよう……一組の誰かと他の組の人が書いたであろう悪口の数々……おぉ、良い感じにクルルが虐められているみたいで新鮮だ。
「「「……」」」
なんか、シーンとしているな。
この薄い石の板が積み重なった机、一年分積み重なっているからめちゃくちゃ重いんだよなぁ……よくもまぁ私はこんなに積み上げたものだ。積んで圧縮してを繰り返して、脚が脆くなったから補強して、多分王都で一番頑丈な机になったと思う。
一枚一枚見返していく……それにしても、もうちょっと芸術的な悪口は無いものかね?
……なに、みんなして見てどうした?
「……学院長、授業やらないんですか?」
「いや、その机おかしくないかの?」
「みんなからルナードへの寄せ書きを見つけたので読んでいるだけですが……百枚くらいありますよ、凄くないです?」
「百枚の石の板を重ねて圧縮するのは凄いの、流石はエリスタ一族じゃなぁ……」
……お? これは、ステラちゃんが私の話に乗ってくれている。
ほうほう……
「私もルナードみたいな(ひねくれた)才能はありませんから、これを見ると余程暇で退屈な日々だったと思いますよ。学院長が手加減しろっていうから、ルナードは毎日みんなに合わせて大変だったみたいですねー」
「まぁ、わっちも悪い事をしたとは思っておるがな……あやつ、地味過ぎるんじゃよ」
「それ関係あります? ルナードも好きで地味ではないと思いますがね。そうそう、ルナードはこれから大迷宮に挑戦するって楽しそうに話してくれました」
「聞いておるぞ、ルナードなら一年で攻略するんじゃないかの?」
みんなが私とステラちゃんを交互に見て困惑する様子が楽しいな。
セイランは頬杖付いて微笑んでいるし、王子とか喋りたそうにして、リベッカなんか眉間にシワを寄せている。
「うーん……上位の迷宮は学院に通いながら一ヶ月で攻略したらしいので、半年くらいじゃないです?」
「なにっ! それだと来年の課外授業はどうするんじゃ?」
「どうするったって、他の超位迷宮に行くんじゃないですか? まだエリスタには未攻略迷宮が百以上ありますし」
「じゃあ今度どこの迷宮に行くか聞いて来ての。クルルもルナードと一緒に大迷宮を攻略するんじゃろ?」
「えー…どうせ学院長もファイアロッドに来るんですよね? その時に聞いて下さい」
「そうじゃな。じゃあ、始めるかの」
私とステラちゃんの会話が終わり、誰かがゆっくりと手を上げていたけれど、私は面白い悪口が無いか石板を見返すので忙しい。
「あの……学院長、発言宜しいですか?」
「良いぞえ」
「ルナード・エリスタが、手加減している…というのは…」
「あやつ、手加減というものを知らぬからな。この学院で手加減を学ばせる意味もあったのじゃが……最初の魔力測定の数値、いくらじゃったと思う?」
「えっ、百…とかですか?」
「一生懸命手加減して、六千じゃったぞ」
「ろくっ……嘘、ですよね?」
「本当ですよ。ルナード君に失敗したから百にしてってお願いされたので、書き換えました」
ヘクトル先生が援護してくれる。
なんか悪いね。
「くくっ、お主達残念じゃったな。エリスタ一族が居る組は黄金世代になると思ったが、ルナードはこの組を見限ったみたいじゃな。のうクルル」
「まぁ、この机を見る限り…ルナード・エリスタは一組で仲間外れでしたからね。ふふっ、この学院に必要ない、退学しろと書かれています」
「「「……」」」
何も言えないよね。これでよくルナードがグニアを虐めていると言えたもんだ。
ご丁寧に登校したらボロ布が被せてあったから、知らなかった人も居るんだけれどね。セイランみたいに。
それにしても毎回ボロ布を用意するなんて、よく飽きないよね。もう誰がやったとかどうでも良いけれど。
「この机は、国が行ったエリスタへの扱いの縮図だと思いますね。もうルナードは来ない事ですし…記念に、これは私が貰っても良いですか?」
「良いぞえ。誰も持てんしの。何に使うんじゃ?」
「私の親友ルナードを魔法学校ではなく王都学院に通わせたリード・エリスタへの、復讐です」
「……きっと泣くぞえ」
泣けば良いんだ。
元はと言えば、父がルナードを王都学院に通わせるからだよ。魔法学校なら友達が沢山出来た筈なのにさ、エルリンちゃんも居たのに……みんなに別れの寄せ書き貰ったって笑顔で渡してやらぁ。はっはっはー!
「それが目的ですね。すみませんが、この机をエリスタまで運ぶので後はお願いします」
「またの」
セイランがこの世の終わりみたいな顔で私を見ていた……いや、また週末ね。
さてさて、一組はどうなるかね。
まっ、どうでも良いか…ルナードは一組に居場所は無かったのだから、関係無いね。
「くくっ、じゃあ…質問なら今の内に受けるぞえ」




