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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
エリスタ一族は、最後に大きな嘘を吐く
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魔物と言っても良い魔物だって居る

 


 王都を出て、疎らになった馬車を横目に眼鏡を外し、身体強化魔法で身体を強化して、暗視の魔法で視界を確保し北へと向かう。

 魔法は便利なものだ、魔力を操作して様々な魔法が使える。使うには訓練が必要だけれど、慣れてしまえば魔力を練って魔法名を言うだけでも使える。

 実家と王都の往復は慣れたものだ、入学当初は時間の配分が難しくてよく遅刻していたっけ。

 田舎者だから時計なんて読めないとか学院に必要ないとか馬鹿にされて……こうやって学院の事を思い出すのは、未練があるのかな。


「うわっ、寒いなぁ……走れば温かくなるか」


 初等部は六年制で、私は四年生で退学した。きっと、もうすぐ平民になるだろうから。

 平民になっても学院に通えたけれど……ブルース家の話を聞かされたら、学院に通うなんてどうでも良かった。まぁ、一年くらいしかまともに通っていなかったけれど……退学もする必要無かったけれど、とある事情で反抗しておかないと。

 もう王都での最低目標は達していたからね。あまり友達は出来なかったけれど……良いんだ。


「おっ、珍しい。ナイトホースだ」

『ぶるるる…』


 しばらく走っていると、ナイトホースを発見。大人しい部類の下位の魔物だ。

 黒い馬と並走しながら、鞄から干し芋を取り出して食べさせてみると、むっちゃむっちゃ食べて可愛い。

 私との力の差を感じているから、反抗もしないし……撫でてみると走る速度をゆっくりとさせて、立ち止まった。

 つぶらな瞳で私を見詰め、撫でて撫でてと顔を擦り付けてきた。

 よーしよーし。


「可愛いなぁ。ふふっ、くすぐったいよ」

『ぶるるっ、ぶるるっ』


 魔物とは、魔石が身体にある動植物や、炎みたいに自然と結びついた魔物など多種多様。凶暴な魔物や、ナイトホースのように大人しい魔物も居て、見た事の無い魔物はワクワクする。

 いつか、大きな鳥の魔物と仲良くなって背中に乗せて貰いたいな。

 強さに応じてランクがあって、下位、中位、上位、超位、神位とある。私は上位くらいなら余裕で倒せるよ。親に鍛えられたからね。

 普通は私の年代で下位も倒せない人がほとんど。中位を倒せたら色々な所からスカウトされる。


 因みに魔物や懸賞首を討伐して報酬を得る仕事が討伐者。迷宮や秘境を探索して報酬を得る仕事が探索者だ。


「なに? 乗せてくれるの?」

『ぶるっ、ぶるるっ!』


 まだ帰る時間では無いし、ちょっと遊んで行こう。

 ナイトホースに飛び乗って、膝を入れて走って良いよと合図すると、パカラッパカラッと軽快に走り始めた。

 暗闇の中、ナイトホースに跨って走る……ちょっと怖いけれど心地よい風が良いね。

 あっ、前方に二足歩行の豚……下位のオークを発見。

 凶暴な性格なので討伐推奨、という事で収納鞄から小弓を出して狙いを定めて引き絞り……撃つ。


『ぎゃっ!』

 喉元に命中。頭を狙ったけれど馬に乗りながらだとズレるか……オークは少しもがいて、動かなくなった。

 ナイトホースにオークの場所まで行ってもらい、矢を回収して魔力を通す。

 魔物は不思議で、死んだ後は魔力を通せば、身体は土に還って魔石だけになる。

 一般的には素材も売れるから身体を掻っ捌いて魔石を取り出すけれど、私は基本的に魔力を通して土に還してから魔石を回収する。

 だって、汚いもん。


「ん? 魔力の乱れ……もしかして」


 周囲に違和感を感じた。

 ナイトホースに乗って違和感の方へ行ってみると、やっぱりあった。

 地面に空いた穴の中に、階段が見える。

 これは迷宮の入り口。

 うーん、周囲に人の気配が無いから、多分これ出来たばかりの未発見迷宮だ。

 どうしようかな……場所は王都から馬車で半月の距離だから、他の人に知られるまで時間はある。いや、もう知られていてこれから調査か調査中か……

 うん、入ってみるか。

 迷宮攻略出来たらしておきたいし。



「私はこの中に入るから、ここでお別れね」

『ぶるっ、ぶるる……』


「ここには怖い人間が来るから、お前は食べられてしまうよ」

『ぶるんっ!』


「じゃあ、元気でね」

 少し寂しいけれど、連れては行けない。

 ナイトホースを撫で、別れの挨拶……たまにこうやって魔物と仲良くなるけれど、一度限りの出逢いだ。ほとんどはもう出逢う事は無い。討伐者に殺されるか、他の魔物に喰われるかだね。

 さて、穴の中にある階段を降りてみよう。

 穴の周囲や壁は土で、階段は石。灯りは無さそうなので、暗視の魔法頼りに探索開始。

 階段を降りながら土壁を触って嗅ぐと少しキノコの匂いがする……まだ地表の土か。少し降りると土の地面でトンネルみたいな内装……恐らく洞窟型の迷宮だ。


「魔物は、居るな。下位ばっかり」


 迷宮には色々なタイプがある。

 今回みたいな洞窟型、石壁が続く迷路型、城型、館型、森型、海型、山型、砂漠型などなど沢山ある。

 洞窟型は大体が若い迷宮だから難易度は下位…たまに複合迷宮もあるけれど。エリスタには下位から超位まで迷宮が多数あり、腕に自信のある者が国内外からやってきて成功する者は一握り。


『ぶぎゃっ、グギュ』

「オークか」


 小弓で狙って頭を撃ち抜く。

 剣は持っているけれど、オークには使わない。臭いし脂で斬れ味悪くなるから。

 魔力の流れを調べて、奥へと続く場所へと進む。


「……うーん、周辺にお宝は無いか」


 一本道からたまに枝分かれして、初心者でもあまり迷わないような……あった、扉。

 迷宮の最深部には核があり、その核を護っている者が居る。

 その迷宮に応じて強さは変わるけれど…

 扉を開けた先、円形の広場に鎧を着たオークが私を待ち構えていた。


『ぶるぅっ!』


 中位の、オークナイト。

 鎧を着ているから弓は弾かれる。

 接近戦をする相手でも無い。

 と言う事で、魔力を練る。

 右手に黒い魔法陣、左手に赤い魔法陣を展開し…


「魔法合成・黒炎」


 黒い炎をオークナイトにぶん投げる。

 鎧を着ているから動きは鈍いし、ボンッっと命中。

『──ぶぎゃぁぁぁ!』


 まぁ、出来たばかりの迷宮なんてこんなもんか。

 黒焦げのオークナイトに魔力を通して、魔石を回収して部屋の奥にある扉を開けると、小部屋の中心に浮かぶ七色に煌めく石…迷宮の核を発見した。


「ふふっ、簡単に手に入って得した気分」


 核に魔力を通すと、私の能力が上がる感覚…これで何度目だろう。忘れちゃったな。


 私が学院に行かなかった主な理由は迷宮攻略だ。

 あまり知られていないけれど、迷宮の核に魔力を通すと能力が上がる。時には新しい魔法や力を手に出来る。

 魔法合成も迷宮の核から手に入れた力で、他にも色々。

 今回は…魔力が上がった、かな。


 このまま行けばエリスタ家が定めた迷宮のルールや税金が、ブルース家の定めたルールに変わる。これが結構問題で、最悪の場合探索者が迷宮で手に入れた珍しいお宝等は搾取されてしまう。

 つまり、エリスタ領の内に出来るだけ迷宮攻略をしなければならない。領地の価値を減らしてやるんだ。

 そしてラストスパートで…最難関の迷宮に挑戦するつもりだ。間に合うかな。間に合わなくても攻略はするけれど。


 やっぱりなんか悔しいじゃん、故郷を取られるの。


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