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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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正拳突きじゃあ足りないのだよ

 

 討伐者ギルドには、セリアはもう居なかったからそのまま王都を出て、エリスタへと一直線。

 逃げるように帰っているから速い速い。

 風が気持ち良いね。

 それにしても結構シルフィードの被害者は居そうだ……セイランであの状態だから、他に何人居るか……はぁ……困った事態だ。

 セイランだけ治った事が広まったら、迷惑掛かるかな……私に治してっていう人も沢山出て来そうだし……時期が来たらシルフィードに全員治してちょって言えば良いかな。

 考えよう……うーむ……


 ……家に帰って来た。

 昨日は居なかったけれど、父が家に居る。

 なんか緊張するな。


「ただいま」

「おかえり、話は聞いたよ。考え直す事は出来ないか? 父さんを恨んでいるのは、解っているんだが……」


「はっ今更だよ、学院初日から恨みは晴れないからね」

「いやぁ、本当に忘れていてさ……ごめんな?」


「お蔭で、初日に嫌われちゃったんだから……」

「ルクナ……ごはっ!」


 父の腹に正拳突きを叩き込み、部屋に入って迷宮に行く準備を整える。父は私の状況を軽く見ている……いつもそうだ。父の言う事は聞かんよっ。

 セリアに会うのは一週間に一回だから、それ以外はファイアロッドの大迷宮に籠るつもり。

 準備していると、なんか遠足に行くみたいで楽しくなってきた。

 遠足なんて行った事は無いがなっ!

 遠足の日に教室に行ったら誰も居ないんだぞっ!

 集合場所知らなかったんだからなっ!


 ――コンコン。

「今、良いか? お客さんだ」

「誰?」


「オレイドスの、坊っちゃん」

「ん? 追い掛けて来たのか……今行くって言って。あっ、お父さんは出てこないでね」


「えっ……わ、わかった。アズ、坊っちゃんに、毒……間違えた、魔力回復薬でも飲ませてあげて」

「ふふっ、はいはい」


 カサンドラが追い掛けて来たのか。

 一日で来られるなんてやるねぇ。流石は天才。

 スカートを履いて……あっ、男じゃないと駄目か。

 ズボンを履いて、男っぽくしてリビングへ行くと、ぼろ雑巾みたいに倒れこんでいる少年を発見。

 魔力を使いきったみたいで、ぜはぜはして苦しそうだ。

 エルフィさんが途中で倒れていたカサンドラを拾って来たらしい。


「カサンドラさん、ようこそエリスタ家へ。来るなら来るって行ってくださいよ」

「ぜひゅ、ぜひゅ、ちょっと、遠すぎ、だぞ」


「もしかして飛行魔法で王都から来たんです? 途中で魔力が切れたら山に墜落ですよ?」

「もう、二回、墜落した。おかしいだろ、この距離」


「よく来られたわねー。カサンドラ君? 部屋はあるから今日は泊まって行く?」

「いや、帰らない、と。セイランが、待っている、から」

「セイランの声は戻ったんですよね? 何か問題があったんですか?」


 治った筈だけれど、また声が出なくなったとか?

 カサンドラが魔力回復薬を飲んで少し落ち付き、正座して私に頭を下げた。


「ちゃんと治ったよ。ルナード、本当にありがとう! で、さ…セイランが、クルルに会いたいって、ずっと言っているんだ。会ってやってくれねえか?」

「えー……」


「露骨に嫌がんなよ……あいつが初めて俺にわがまま言ったんだ。なんか、兄貴として頑張らなきゃって、思って、ここまで来たら遠いのなんの……」

「私の心の傷は癒えていないんですよ。出来れば会いたくないです」


 やだやだー。

 治ったなら良いじゃん。別にお礼なんていらないし。私がセイランを治したかっただけだし。


「ほんと頼むよ……なんでもするから」

「私はカサンドラさんに求めるものはありませんよ」


「それ、めっちゃショックなんだけど……俺達、と、友達じゃねえか」

「それは無いでしょ」


「ぐっ……なんだ、セイランに見下された時みたいに胸が苦しい……」

「あーすみません、セイランに言われた事をカサンドラさんに試したくなっただけですので」


 はぁ……カサンドラと友達になったら、セイランと友達になれる確率がぐんと下がるじゃん。いやもう絶望的だけれど、一摘みの希望に縋りたい気持ちはあるじゃん。かといって声を治したから友達になってなんて言うのは違うと思う、対等じゃないから……なんていう屁理屈を並べて会わない理由を探しているのさ!


「ほんと、良い性格してるよな……本当は会いたいんだろ?」

「もちろん会いたいですよ。セイランの事好きですし」


「それなら会わないと後悔するぞ。このままで良いのか?」

「……良くないのはわかっています。私からは……」


 ──ウーッ! ウーッ! ウーッ!

「なっ、なんだっ……警報?」

「迷宮から魔物が出て来たみたいですね。えーっと、場所は東。中位なら余裕か……お父さーん、行くよー」

「了解。そうだ、オレイドスの坊ちゃん……折角だから来るか?」


「えっ……魔物って、氾濫? や、やばいんじゃ、ないですか?」

「あー大丈夫大丈夫、中位迷宮だから。アズ、お留守番よろしく」

「気を付けてねー」


 家を出ると、隣の家の窓からエルリンちゃんが恨めしそうにカサンドラを見ている……自分も行きたいのにっていう嫉妬が凄いね。

 投げキッスをすると、くねくねしてハートが飛び交い、見えなくなった。


「……エルリン・マクガレフと、お隣さんだったんだな」

「可愛いからって口説いたら駄目ですよ。私のお嫁さんになるんですから」


「……そうなの? セイランは?」

「ん? セイランとはお友達になりたいですが、色々考えていると道のりは遠いような気がしてきました」


「なんでだ……俺は、何か大変な思い違いをしている気がする……えっ、セイランが不憫だ……ど、どうしよう……」

「なにブツブツ言っているんですか? 行きますよ」


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