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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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33/363

家族で王都を回りたいけれど、叶わないような気がしてならない

 


 でも、何処に行こうかな。

 王都に行って誰かに会ったらサボりってバレちゃうし……いや知り合いなんてほとんど居ないから良いか。

 よし、学院に行きたくないだけだから王都をぶらぶらしよう。

 そう思ったら、身体が軽い。

 いつもより、速く走れる。

 毎日こんな気持ちなら、遅刻もしないかもね。



「いらっしゃーい、いらっしゃーい!」

 王都の商店街へとやって来た。

 わいわいガヤガヤと通行人が多く、活気のあるお店が並んで道行く人に声を掛けて……エリスタとは違うなぁ。


「そこの格好良い坊やー、お使いかい?」

「いえ、観光です」


「そうかい、ようこそヴァン王都へ。迷子にならないように気を付けてね」

「ははは、ありがとうございます。これ下さい」


「まいど」

 おばちゃんから赤い果物を買い、頬張りながら商店街を見ていく。

 一年も通って、初めて王都の観光をして……真面目に家の往復をしていたんだなぁって感慨深い。

 王都には、色々な生活が溢れていて……みんな生き生きしているように見える。

 違う景色も良いものだ。


「可愛い坊や、お茶して行かない?」

「いえ、お気持ちだけで満足です」


「ふふっ、良い坊やね」

 やたらお姉さんに話し掛けられるな……眼鏡をしていないとこうも違うのか。

 確か商店街を真っ直ぐ行くと、職人街。

 鍛冶屋や服職人、靴職人や鑑定屋など専門的な店も多い。

 迷宮に籠る事も多いから、良い武器とか無いかな……あっ、大きな武器屋だぁ。

 三階建てで屋敷みたいに大きい……入ってみよう。


「いらっしゃいませ」

 うおっ、いきなり店員さんが居た。

 大きい所は案内役も居るのかな?


「えっと、こんにちわ。短剣を見たくて……」

「左手奥にございます」


「どうも……」

 ズラリと並んだ武器の数々……値段は、高いな。

 素材と値段と作者が書いてあって、エリスタよりも高い。ファイアドラゴンの爪で作られた剣が一千万ゴルド。エリスタで買えば三百万ゴルドだ。


 短剣コーナーに到着。

 うーん、やっぱり高い。

 魔法金属の短剣が百万ゴルド……エリスタで買えば二十万……エリスタ基準じゃ駄目なのかね。

 そりゃそうか、月に一、二回の魔物の氾濫で素材だけは豊富だから。


「何かお探しですか?」

「いえ、見に来ただけです」


「それではごゆっくり、剣等をお持ちでしたら研ぎもやっていますよ」

「研ぎは自分でやるので……砥石ってあります?」


「砥石はこちらです」

 砥石ならお手頃な値段な筈……って高いわ。

 万超えるなんてどんな高級砥石だよ。私の砥石は千ゴルドだぞ。

 確かに荒さが細かい物もあるから値段相応なのは解るんだけれど……あっ、仕上げ用の砥石お洒落なのあるー。欲しいー。


「この砥石触って良いですか?」

「ええ、試し研ぎも出来ますよ」


「じゃ、じゃあ試しても?」


 やった、砥石を試せるのは嬉しいよ。

 早速私の短剣を出して、刃を確認……刃こぼれは無いけれど、仕上げ研ぎはしておきたい。

 店員のお姉さんが私の短剣をジーッと見ている。初めて上位魔物を倒した記念なんだからあげないよ。


「あの……その短剣、素材は何でしょうか?」

「魔物の素材ですよ」


「見せて戴いても宜しいですか?」

「はい、どうぞ」


 短剣を見せると、小さく唸ってずっと見ている。

 ……ずっと見ている。

 ……返してよ。


「あっ、失礼しました。綺麗な素材だな……と思いまして。上位の魔物素材でしょうか?」

「はい、上位の魔物を初めて倒した記念に、父が特注で頼んでくれたんです」


「上位を、倒した? 本当ですか?」

「あぁ、まぁ、とどめだけですがねー。はははは……」


 エリスタの基準で話したら駄目か。

 店員さんも疑いの目を向けていたし……返してもらった短剣を、お洒落な砥石で研いでみる……しゅこしゅこ……まぁ、なんというか、普通の仕上げ砥石だね。荒さは良いけれど、研いだ後の粉にムラがあるし、私の短剣が硬いせいか全然研げなかったし……

 店員さんにお礼を言って、店を出た。

 やっぱり王都は物価が高い。これに尽きるね。


 ……あっ親子連れ。

 ……良いなぁ。

 ……父と母と歩きたい。でも、母は犯罪者……それに死んだ人だ。この国の貴族のせいで、私を見守る事しか出来なくて……家族で、王都を回りたい。



 あれから色々回ったけれど、特に面白い物は無く……気が付いたら学院の前に居た。

 やっぱり罪悪感は拭えなかったという事か……中に入るのは、もう授業なんて終わっている時間だし良いか。

 図書館に行こう。


 うおっ!

 ……なんか、沢山女子が居て凄い注目された……視線が怖い。

 ちょっと戻ろう。

 うーむ、母の記事を探したい……ちょっと嫌だけれど、眼鏡をかけるか。


「「「……」」」

 うん、凄いがっかりな視線を浴びたよ。


 えー…っと…

 私が生まれる前だから、八年以上前の記事……事件関係……あった、これかな?

 死神アズライナ……禁術即死系魔法を使いこなし近付く者には容赦しない残忍な性格。保護しようとした貴族…マグリット家に抵抗して貴族街で大暴れし、逃亡。後にエリスタで死亡を確認……か。世間の情報はこんなもんか。

 他にも無いかな……


「ちょっとあんた、来なさい」

「……」


「ルナード・エリスタ。来なさいと言っているの」

「ん? 私?」


 後ろから話し掛けられ、振り返ると先日クルルに友達になりたいと言っていた同じクラスの女子……名前なんだっけ。グニアンだったな。


「ちょっと話があるわ、来なさい」

「……わかった」


 正直行きたくは無いけれど、今はルナードだから下手に逃げると後が面倒かな。

 何か用事があるみたいだし……嫌な用事な気がするよ。

 図書館を出て図書館裏に付いて行くと、グニアンは十人くらいの女子の集団に声を掛け……私は女子達に囲まれた。

 同じクラスの女子はあまりいない……二組とか三組かな。


「あんたのせいで、あの人に嫌われたじゃない……どうしてくれるのよ」

「あの人?」


「とぼけないで! あんたがあの人に私の事告げ口したんでしょ! お蔭で恥をかいたわ!」

 あぁ……なるほど。

 クルルに嫌われたのはルナードがチクったからという事か。

 完全に逆恨みだよなぁ……仲間達も凄い睨んで、私を責めるのを今か今かと待っているみたいな……女子の団結力を見せ付けられた感じだな。


「そうは言っても、君が悪評を流すのが原因じゃない?」

「……あんた、本気で言ってる? 私がいつ悪評を流したと? 証拠はあるの? 無いわよね?」


「みんな知っているでしょ。君が私の事を遅刻地味変態眼鏡とか言っているの」

「グニア様はそんな酷い事を言わないわ!」「そうよ! あんたがグニア様を嵌めたのよ!」「今すぐ跪きなさい!」

「みんな、私の為にありがとう。ルナード・エリスタ……もう学院に来ないのなら、許してあげるわ」


 私の悪評を流したのを無かった事にする気か……グニアはつまらない物を見る眼で私を見て、何を言っても無駄と思わせるような状況だ。

 囲まれている状況下で、手荒な事をしたら、学院に通えなくなる程の悪評を流す気がする。

 どうしたら良いんだろうね……


「私が告げ口したというなら、この状況も告げ口されるけれど、良いの?」

「はっ、自分の立場を解っていないようね! 私の言う事を聞かないとあんたの家を潰すわよ!」


「そう、出来るものならやってみて」

「ははははっ! おめでたいわね! 知らないようだから教えてあげる、エリスタ領は年々減っているの。あと数年もすればあなたは平民……ふふふっ、私が動かなくても家は潰れるの。傑作ね」


「エリスタは野蛮人しか居ないと聞いたわ」「田舎者は消えて欲しいわね」「私は嘘つきと聞いたわ」

 嘲笑されるのは我慢していたけれど、家を笑うのは……違うよな。

 周りも馬鹿にするように笑って、もう、こいつらは……


「……知っている」

「ふふっ、ふふふふ……知っているのに、学院に来るなんて……ぷぷっ、あはははは! 人生無駄にしているわ! 今すぐ学院を辞めた方があんたの為よ! 私は優しさで言ってあげているのよ?」

「流石グニア様、こんな奴に気を使うなんて」「そうよ、今すぐ辞めなさい!」


 ……なんなんだよ。

 私が何したってんだ。

 言いたい放題言いやがって……もう、こいつら潰して、エリスタに帰ろう。帰って、大迷宮に挑戦しよう。

 眼鏡に手を掛け、魔法陣を出そうとした時……


「おい、何してんだ?」

「っ! カサンドラ様!」


 黒髪の男子……カサンドラ・オレイドスが空から割って入った。

 女子に囲まれる私を見て、何かを悟ったのか……直ぐにリーダー格のグニアンに向き合った。


「これは、虐めか? 虐めなら、許さねえぞ」

「い、いえ虐めなんてありませんよ! 話し合いです!」


「……話し合い? 一人を囲んで今すぐ学院を辞めろと言うのが話し合い? 馬鹿言ってんじゃねえ!」

「くっ…こいつが私を嵌めたんです! 私の悪評を流したんです!」


「何の為に?」

「えっ?」


「こいつは陰口なんて言わねえ。言いたい事があるなら面と向かってハッキリ言う奴だ。もしこいつが学院を辞めるなら、俺も学院辞めてやる。お前らのせいで辞めたって言うからな!」

「「「……」」」


 ……なんだ? これは助けてくれようとしているのか?

 いや恐らく私がこいつらを潰そうとしたのを阻止したのだろう。

危うく力で解決する所だったな……感謝しておこう。


「今すぐ去れ、今すぐ去るなら見なかった事にしてやる」

「……わかりました。ですが、これだけは言っておきます。私達に非はありません」


「はぁ……そうかい」


 グニアン達が去って行き、去り際に……

「あんたはこの学院に必要無い」

 必要無い……この言葉が、何故か心に刺さった。

 ……図書館裏は、もう私とカサンドラだけになり、なんか気不味い感じだ。


「あの、ありがとうございました」

「あぁ、まぁ、虐めは駄目だから……あのさ、質問良いか?」


「はい」

「なんで、そんな眼鏡しているんだ? クルル」


 ……あっ、バレていらっしゃる。

 もっと気不味いじゃねえか。



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