まぁ、猫派ですよ
四階に上がって、学院長室の隣の扉の鍵を開けて中に入る。
中は小部屋になっていて、対面のソファーと机や移動した零組の棚やらあって執務室みたいになっているから教室っぽくない。
一応直接学院長室に行ける扉はある。
「そこに座って」
「……わかった。零組は、クルルだけなの?」
一応紹介しておくか。
零組の棚を開けて、亡くなった子の名前の書かれた札達を見せると、なんとも言えない表情で私を見た。
反応に困るよね。
「これが零組のみんな。彼は今年六年生で卒業で、彼女は私達と同級生だよ」
「……アンナ」
「知り合い?」
「……えぇ、何回か話した事がある。じゃあ、クルルも……」
「私は生きている。学院長の計らいで、零組に入れてもらっただけ……じゃあ、今日はもう遅いから宿題を出そう」
手の平から魔力を出して、球体に圧縮。ぎゅーっとしたらあら不思議、ふよふよの柔らかい玉が出来た。
これをセイランの手の平に乗せると、目を丸くしてツンツンしていた。
「なに、これ……魔力の、塊……でも触れる」
「魔力玉と呼ばれる物で、食べたら魔力が回復するし、魔法の威力を高めたり出来る」
「凄い……どうやって、作るの?」
「簡単には出来ない、順序があるから。まずは手の平に魔力を維持……こう」
手の平の中心に魔力を出して、維持。集中力を使うから、結構疲れるんだよね。
セイランも魔力を手の平から出して……バチッと放電。
そういや雷属性だったか。
「……難しい」
「手の平から出せるだけでも上出来。手貸して」
手を取って、手の平の中心に私が魔力を通して道を作ってあげる。
「んっ…ぅっ、んっ……」
これやると、あれな声出ちゃうんだよね……セイランの顔が赤くなってきた。なんかごめんね。
「もう一度やってみて」
「……ぅん」
手の平から魔力を出すと、放電は無くなったからこれを練習で良いかな。
「そう、よく出来たね。時間がある時に、この訓練をやってみて」
「わかった。ありがとうっ」
「じゃあまたね」
「えっ……う、うん」
ばいばーい。
なに? 帰ってよ。私は図書館に行きたいんだから。
「……今日の宿題は出したから、帰って良いよ」
「言ったじゃない。出来るだけ、一緒にいるからって」
「私は迷惑と言った」
「それでも、私はクルルの事が知りたいの」
頑固者だなぁ。
まぁ、私も頑固者だから気持ちは解る…か。
立ち上がってみると、セイランも立ち上がった。
横の扉から幼女が覗いている……しっし。
「付いて来ても、詰まらないと思うよ」
「それは私が決める事」
「そう、なら好きにして。あっ……」
「……どうしたの?」
「君の名前を訊いても良いかい?」
「……ごめんなさい。セイラン・オレイドスよ」
「いや、謝らなくても良いよ。知っていたんだけれど、直接訊いた事が無かったから」
「いえ、名乗らなかった私が悪いわ」
その後は、一緒に図書館で本を読んだ。
特に喋る事も無く、夕陽が差した時……
「時間、か。連絡待っているから」
「わかった。じゃあね、セイラン」
「……じゃあ」
セイランが立ち上がって、本を戻しに行った。
私も、帰るかな。
私と一緒にいても仕方が無いのだけれど……いつまで続くかね。
……なんだ? 結構まだ人が居る。
それに、セイランの仲間らしき女子が私を見ていた。あいつは陰口女…
あっ、こっちに来た。
「あのっ、セイラン様とお友達なのですか?」
「いや、友達じゃない」
「ま、まさか……彼氏……」
「そんな訳無いでしょ。知り合い程度の仲だよ」
「じゃ、じゃあ私とお友達になって貰えませんか?」
……何言ってんの? 嫌だよ。
いつもゴブリンを見るような視線で私を見る癖にさ。
なんか注目されているし……ここ図書館だよ? 空気読みなよ。
「ごめんね。友達になっても、一緒には居られないから」
「っ……ぅぅ……」
……いや、泣かないでよ。嘘泣きなのバレバレだよ。
君は友達沢山居るじゃん。二組にも三組にも居るじゃん。
嘘泣きする子はちょっと無理かも。
セイランが陰口女に気が付いて、近付いて来ようとして陰口女が泣いているっぽいのに気が付いて……止まった。何故止まる、駆け寄って慰めろし。セイランの友達だろ?
なんか言えみたいな顔すんなよ……
「君は、友達が多いから私が居なくても良いと思ったんだ」
「……セイラン様だって、お友達は多いです」
「多いね。でもセイランには私が必要だ。そして私もセイランが必要だ。だから一緒に居るだけ」
「そんなの……恋人じゃないですか……」
「……」
そうか? またセイランちゃんは泣いちゃうからね。
「そんな関係じゃない。それに君には私の友ルナード・エリスタがお世話になっているからね。君が地味変態遅刻眼鏡野郎と広めているのは知っている」
「……それは」
「グニア、それは本当?」
グニアっていう名前なんだね。初めて知りました。
セイランが後ろから問い掛けると、ビクッと肩が跳ね……気まずそうに下唇を噛んで走り去って行った。
はっはっはー! ルナードは私だよ!
それよりもどうすんだこの空気。
私が騒いだみたいじゃないか。あのなんだっけ名前忘れた、えっとグニアンのせいだよっ。
「みなさん、お騒がせしました。これはお詫びの品です。魔法合成・天猫参り」
白い魔法陣と黄色の魔法陣を合わせ、手の平サイズの光る石の猫を人数分作成。光る猫はそれぞれの元へ走って行き、思い思いにポーズを取って固まった。
「わぁっ、可愛い!」「猫さんだぁ!」「あ、ありがとうございますっ!」
「ではみなさん、ごきげんよう」
「「「きゃー!!」」」
キラッと笑うとみんな嬉しそうにして、猫さんが好きなんだね。私も好きだよっ。
図書館を出ると、小走りでセイランが回り込み、少し睨むように対峙した。
なに、猫欲しかったの?
「ルナード・エリスタと友達なの?」
「答える義理は無いよ。君も交友関係を喋るタイプでは無い筈だから」
「……そうね。さっきの、私が、必要ってなによ」
「そのままの意味だよ。じゃあまた来週」
「……」
セイランの横を通り過ぎると、下を向いて動かない。
あっ、そうだった。
「セイラン」
あざといにゃんにゃんポーズの猫を渡すと、チラリと私を見て受け取った。
やっぱりこれが欲しかったんだね。
よしよし、じゃあまたねー。




