悲しいとか嫌だとかっていう気持ちは無いんだよね。きっと生きる世界が違うからだと思うけれど
「……」
「クスクス……」「見てあれ」
おー、机に悪口が書かれている。
ご丁寧にボロ布が机に敷いてあって、それを捲ったら悪口が書かれている仕様だ……きっとセイランとか無駄な正義感を持つ奴にバレないようにだろうけれど……
試しに字から魔力を辿ってみるか……おっ、流石は初等部だ。魔力を隠す術を持たない。良いね良いね、席順の名簿を見ながら……悪口に名前を書いておこうかな。でも一組というよりほとんど違う組か……とりあえず一組の名前を、かきかき……
「お、おいルナード……それ」
「ねえジェジェ君見て見て、魔力を辿れば誰が書いたか解るんだよー。私って凄くない?」
「いや、凄いとか……こんな事されてよく言えんな……あー……もし本当だとしても濡れ衣とか言い掛かり付けられて酷くなるぞ」
「そう? なら消そうかな。魔力は覚えたし」
土属性の魔法を使用、薄い石で蓋をするように机の文字を隠した。
「おっ、凄いな。土属性使えるんだ」
「うん、最近練習していてさ。また書かれるだろうから悪口を溜めてみるよ。楽しみだなぁ……復讐」
「なんか、逞しいな……俺ならショックで寝込むよ」
「ふふっ、将来エリスタを継いだら私はこんな仕打ちを受けるんだろうね」
ジェジェが気の毒そうにしているけれど、嫌われている自覚はあるし、嫌われたらこんな事をされるって本で読んだ事あるからね。
ちゃんと仕返しはするよ。
私は遅刻しているだけなんだから、誰も傷付けていないのだから、だから……
「きゃっ! 何⁉︎」
「ど、どうしたの⁉︎」
「文字が、浮かび上がって……っ!」
「なに、これ」
ハンネという名前だったから、仕返しに一言……『ハンネたんの机だおっ☆』と机に刻んであげた。
はっはっは、恥ずかしいだろう!
消してもまた書いてやるからこれでしばらく過ごすが良い!
騒ぎに気が付いたセイラン含め女子達は騒いで、私は我関せずと本を読む。
……ふむ。
よく思うけれど、私、こんな事されてさ……頑張って学院に通う意味ある?
「どうしたんだ?」
「ハンネの机に文字が浮かんだらしいの、魔法かしらね」
おっ、王子がセイランに話し掛けた。
王族と公爵家だから幼馴染ってやつかね。
「なんだろう、な。悪意があるのか無いのか……あっ、もしかしたら精霊がいるのかも」
「精霊? 確かに悪戯とかするらしいけれど……どうかしらね」
「また起きるなら調べないと行けないが……ハンネ、他に害は無いか?」
「はっ、はいっ! この通り元気ですよ! お気遣いありがとうございます」
「みんなで調べてみましょう。他に悪戯された人も居るかもしれないし」
「「「はいっ」」」
セイランの一声で、一組が団結している……いやいやいやいや、私の悪口の落書きは?
朝誰かが書いていて見て見ぬ振りした人って居るよね?
おかしくね?
あれか?
セイランが私を嫌いだからか?
それに私の机誰も見にこねえぞ。私は一組から見たら部外者か?
「他に異常は無いようね……」
今チラ見したよね。
はっ、覚えてやるからな。
「他の組にも聞いてみようか。みんな、何かあったら俺に言ってくれ。必ず解決するから」
「「ディクシムさま……」」
笑えるよね。
ルナードが陰口言われているのを知っていても、みんな無関心だ。
みんな集まって話し合い、私が一人で椅子に座っていても気にしない。
そうか……私は、一組じゃないんだな。
この後は挿話を挿し込んで、ぴかぴか……? の一年生は終わります(゜ω゜)