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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編
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雨の日って、軟体の何かが這い出てくるから嫌なのよ

 

「はぁ……雨か」


 雨の日ってさ、困るんだよね。

 頭にシールドを張っていても転んだらビチャビチャになってパンツ貫通するし、道が悪くて帰るの遅くなるし、カタツムリ多いし……足で踏んだ時の絶望感ったら……

 学院が終わって、出入口で空を見上げていると……一組のセイランと仲の良い女子が、馬鹿にしたような視線で傘を広げた。


「傘も買えない貧乏人なのかしら? あっ、地味が移るから帰らないと。ふふふっ」

「地味が移っても私は付いていきますわ」


「ふふふっありがとう。やっぱり持つべきは友達ね」

「……」


 私を遅刻変態地味眼鏡と陰口を広めている女子……名前は忘れた。

 こいつのせいで他の組の人から一切話し掛けられない。反論しても更なる悪評が広まるから何も言えず、言われるがまま……いつか復讐してやろうと思っている。

 セイランが私を嫌っているから標的にしているだけなんだろうけれど……陰口女子が友人らしき人と去って行った。


「あっ、雨か」

 遅れてセイランが出て来た。空を見上げ、少しため息を吐いた所で私に気が付き、眉間に皺が寄った。そんなに露骨に嫌がらなくても良いじゃん。なんかムカつくじゃん。

 嫌がらせに話し掛けてやろう。


「ねえセイラン、法律には詳しい?」

「……あなたよりは詳しい自信はあるわ」


「そう、オレイドス家が法律を変えようと思ったら、何年掛かる?」

「早くて二年、かしらね」


「そりゃ良い事を聞いた、あーそうだ知っているかい? オレイドス家とエリスタ家は元々仲が悪いんだ」

「それは初耳ね。それでなくとも、私はルナード・エリスタと仲良くしないけれど」


「そうだね。それで良いさ。その方がお互いの為だ。敢えて言っておくけれど、私はこの国の王とオレイドス家を憎んでいる」

「……」


 もう話す事は無いね。

 一歩踏み出して、頭に傘のようなシールドを展開。

 今日は、何時に帰れるかな。

 セイランを見ると、私の頭に視線が行っていた。傘無いのか?


「傘、無いの?」

「あるわ」


「そう、じゃあね。あっそうだ、オレイドス家は嫌いだけれど、セイランは何故か嫌いじゃない……どうしてだろうね」

「……」


 挨拶くらいしろよなんて思いながら、王都を出る為に歩き出す。

 ボーッと歩いていると、門の前に傘を差したおっさんがいた。入学式で会ったおっさんだ。


「よおルナード、その魔法凄いな」

「どうも。少し練習したら誰でも出来ますよ」


「エリスタの基準だと簡単だがな、普通は出来ないぞ。相変わらず魔物の氾濫は起きているのか?」

「いえ、魔物の氾濫なんて爺ちゃんの代から起きていませんよ。エリスタは平和そのものです」


「……ははっ、こりゃ参ったな。あの法律知ってんのか」

「どなたかは存じませんが、あの法律でエリスタは苦労しました。今度は、国があの法律で苦労する番です」


「そう、だな。俺はあんな法律反対だったんだがな……騎士団のギーラだ、よろしく」

「どうも、ルナード・エリスタです」


 騎士団の人だったのか。

 爺ちゃんの事、知っていそうな年齢だ。


「今度、騎士団と魔法士団の合同訓練があるんだが、見に来ないか?」

「いえ、行きません」


「そうか、それは残念だ。気が変わったら言ってくれ」

「気は変わりませんよ。エリスタは騎士団の予算拡張の被害者ですから。では、失礼します」


 さっ、帰るか。

 ……後ろに気配。

 振り返るとセイランがいた。


「ギーラさん、お久し振りです」

「お、おうセイランちゃん元気かい?」


「はい、雨の中ご苦労様です」

「別に何もしてないよ。そういやルナードと同じ組だったな、ルナードとセイランちゃんの親父も同じ組でさ、一年の頃はいつも喧嘩していたんだぜ」


「そう、だったんですね」


 それは知っている。父はオレイドスを嫌いにならないでくれと言っていたけれど、爺ちゃんの墓参りに来ない癖に嫌いになるなというのは無理だ。私の中で父より爺ちゃんだよ。

 帰ろっと。

 ペコリと一礼して、駆け足で王都の出口を目指す。

 さいならー。



「……ルナードとは、仲良いのか?」

「いえ、嫌いです」


「はははっ、親父さんそっくりだな。ルナードは家から通っているんだから、遅刻は大目に見てやりなよ」

「貴族街なんてすぐそこですよね? どんな理由があろうと、遅刻は遅刻です」


「はははっ、そうか。あいつらも仲悪かったが、四年の頃に急に仲良くなってな…クベリア嬢ちゃんと三人でいつも一緒に居たんだ」

「副学院長も、ですか…」


「まぁ、とある法律が出来てから、疎遠になってな……あっ、悪いな引き留めて。この話はまた今度だ」

「……はい」




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