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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
ファイアロッドの大迷宮編
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キラキラの推測

 


 あれから数日、私のメンタルは平常運転に戻った気がする。

 若干荒んでいるけれど、誤差の範囲だ。

 実家からステラ邸に戻って来てゆっくりしていたら、ユウコが旅行から帰ってきた。


「ただいまーはいこれお土産。ん? 誰?」

「ありがとうございます。私の母です」

「いつも娘がお世話になっております。アズです」


「どうもユウコです……えっ、若いよね?」

「いえいえ、今年で26です」


「歳近くてこんなでかい娘……うわ、なんか辛い」

「ユウコさんモテるじゃないですか」


「はっ、おっさんにはね」

「ただいまー……あっ、アズさんっ!」

「イシュラちゃんやっほー。あっ……ルクナ、そこのめっちゃイケメン誰?」

「あー、昨日話したクレイル兄さんだよ」


 母が来たいと言うので、一緒に帰った訳だが……早速ステラちゃんの幼女本体が飛んできて母に抱き付き、返り討ちに遭っていた。ステラちゃんは今そこで転がっている。


「クレイル君、ちょっと来て」

「は、はい。初めまして、えーっと……」

「お母さん、どう?」


「合格」

「おめでとうクレイル兄さん」

「なにが?」


「んー? イシュラちゃんとそっくりね。親戚なの?」

「旅先でも兄弟に見られました。男装するとそっくりで……ねぇ?」

「なんかね。でも私はお姉ちゃんが増えて嬉しい」


 イシュラとローザが並んで、母が鼻血を出していた。

 良いよね。目の保養になるから。

 なんかローザの治療を私がやったせいなのか、ローザもキラキラが発生し始めた。

 このキラキラ効果まじでエグいよ。道往く女子をホイホイ釣ってしまう。

 キラキラを解析したらキラキラとしか出ないから困るのよほんと。

 母はイケメン二人を撮影し始めたので放っておこう。


「みんな、私はそろそろファイアロッド攻略を再開しようと思う。毎日暇な人は挙手!」


 ……ローザだけ手を挙げた。

 予想通りか。

 別に良いもん。毎日暇人なんて居ないよね、みんな正直者だから許すよ。


「あっ、私は時々かなーごめん依頼の予約多くて」

「ユウコさんが忙しいのは知っていますよ。美人で上級探索者で男性女性問わず大人気ですもんねっ」


「ルクナ、私は毎日は無理かなー」

「お母さんこそ忙しいじゃん」


「わっちは分体で我慢しての」

「あ、はい」


「ごめん……私は編入早まってさ……」

「イシュラは許さん」


 あっ、イシュラさんが泣きそうだ。

 どうせ編入したらモテモテになって私よりもどこぞの友達の予定を優先するんだ。どうせ私の知らない友達いっぱい作るんでしょ? 良いもん良いもん、イシュラに頼らないもん。

 私抜きで行った旅行はさぞ楽しかったみたいねー。派手な観光客しか着ないようなシャツ着てしっかり観光満喫したアピールされてもねっ、ふんっ!

 プイーっとしてそっぽ向いてやるんだ。


「なぁにルクナとイシュラちゃんは喧嘩中?」

「ぷーん」

「……ルクナは、いつも気付いたら一人で出掛けてるし……好きな人と一緒に居たいのかなって思ったら……声掛けれなくて」


 みんな楽しそうに予定を決めていたから。

 私には無理なんだ、楽しそうな会話の輪に入るのが怖い。

 怖い、か。

 はぁ……私の学院生活の傷は、思っているよりも深いみたいだな。


「わかっているよ。気を使ってくれてありがとね」

「……ごめんね」


「ううん、私は私で良い事あったし」

「ちゃんと、埋め合わせするから」


「いんや、良いんだ。勝手に自分の予定を決めちゃう私も悪い。イシュラ、おーいで」

「るくなぁ……」


 イシュラを抱き締めるけれど、観光地で貰ったらしき造花の首飾りがカサカサと私の首に突き刺さってやっぱりなんか腹立つ。


「学院の話、聞かせてね。楽しみにしているから」

「ぅん」


「そうだ、みんなで記念写真撮ろ。ステラちゃん、撮って下さい」

「えっ……わっちも入りたい」


「私のならタイマーあるわよ。ステラにも焼き増ししてあげる」

「アズぴょん……」


「一応子供たちの事を見てくれているみたいだし……その、ありがとね」

「ぅぅ……好きになっちゃうじゃろ」


「嫌よ。あっ、ルクナもダメよ」

「なっ……」


 母からダメと言われたステラちゃんは、しくしく嘘泣きを始めた。いつもの事なのでタイマーをセットしてみんなでポーズ。

 カシャ。

 ……イシュラとローザとユウコはそれぞれ違う色のド派手なシャツ、私部屋着、母他所行きのおしゃれ着、ステラちゃん派手なドレス。


「……なんかみんなの服装バラバラ過ぎて気持ち悪い」

「なんかね……また今度撮りましょ」


「じゃあ、解散っ」


 解散の号令をするとそれぞれ行動を始めたので、ソファーに座って幼女ステラちゃんを眺めてみた。

 女王とライズの娘なんだよなぁ。

 私の視線にステラちゃんが隣に座ってきたので、ほっぺをつんつん。

 にへらと笑う幼女は可愛い。


「……今日、一緒に寝るかえ?」

「母に殺されますよ。抱っこしたいです」


「ふへへ」

 大人の身体から子供の身体になるって、どんな原理なんだろうなぁ。

 ぷにぷにの身体が気持ちいい。

 どこか懐かしい匂いで眠くなる。

 ライズの記憶があるからなのか、ライズの娘だと意識しているからなのか、ステラちゃんがすっごく可愛い。


「ステラちゃんは、妖精国に帰ったら何かするのですか?」

「分体飛ばしてゴロゴロ食っちゃ寝旅行するで忙しいかの」


「じゃあ、遊びに行ったらいつでも居るのですね」

「そうじゃのー。友達もおらんし、母殿の任期まで百年あるでの……本当ならルクナと居たいが、邪魔なエルフのせいでわっちの恋が進まぬ」


「分体でも良いので、一緒に居て下さいね」

「……くぅっ、ずっと一緒に居たいのぅ」


 ぷにぷに。

 母は撮影会が終わり、満足そうに帰っていった。

 それから私は、みんながそれぞれ動いている様子を幼女を抱っこしながらリビングで眺めていた。

 そこにお風呂上がりのユウコが隣に座って、お酒を飲み始めた。


「ルクナがぼーっとしてるなんて珍しいね」

「あぁ、ここは平和だなぁって思っていました」


「ふふっ、安心してるね。家で何かあったの?」

「いえ……そうだ、明日アルセイアと会うのですが、どんな服にしようか悩んでいました」


「みんなで可愛いの選ぼっか?」

「あぁ……実はまだ女と告白していなくて……」


 困っている事は、もしアルセイアがこの家に来たらみんな私とルクナとして接しているから女とバレる。

 バレても良いのだが、心の準備無しに唐突に告白しなければならない状況下が嫌なのだ。


「じゃあ格好良い感じね。可愛いのに、なんであんな眼鏡でしかも男で学院に?」

「母が有名人なので、父の無駄なお節介からこうなりました。もしルクナとして学院に行っていたら、友達も多かったのかなって思います」


「私だったら可愛すぎて声掛けれないかも。でもさ、ルクナだったらあの王子に迫られていたんじゃない?」

「あっ……そうですね。想像したら寒気が凄いです」


「案外お節介も良い仕事したのかもねー。ぷはーっ、美味い」

「ははは……そう思いたいですがね」


 嫌がらせを受けるのと、求婚されるのと、どっちが良いかと聞かれたら求婚の方がまだ好意を受けるからましか。

 そもそもなぁ……王都学院に入らなければ良かった訳で……はぁ。

 ……きっと私は、イシュラが羨ましいのかな。

 ……はぁ。

 ……

 ……

 ……あっ!

 そうか……

 私も編入すれば良いのかっ。

 ノースギアの学校にっ。

 王都の学校じゃなくても良い。

 どこか地方の学校なら、入れるかな……お母さんに聞いてみよう。


「学校かぁ……卒業したかったなぁ……」

「……彼氏とか居ました?」


「ぅん? 告白されて、良いよって言った次の日にこの世界に来たんだ。どうしてるかなぁ……」

「きっと泣いていますね。誘拐されたとか殺されたとか思っていそうです」


「そうだねー。そんな事件も多いから……そういえばさ、オヒトリサンマってどんな意味のある魚なの? 私知らなくて……」

「あぁ、一人で食べると味が薄い不思議な魚ですね。誰かと食べたら脂の旨味が良くて美味しいらしいですよ。でも干物にすると味が変わらないみたいです」


 独り者に渡すと嫌味になるから、注意が必要なのだが。

 ユウコは一言謝り、二階に上がっていった。

 その後入れ代わるようにお風呂上がりのローザが座った。

 ふんわりと香る香料が良い匂いで、ステラちゃんの鼻息が荒い……


「この家には慣れましたか?」

「お陰様でね。でも帝国のみんなはどうしているかなって思っちゃう」


「書き置きだけで出て行った家出娘ですもんね」

「手続きはしたわよ。一人で来たからモモが心配だわ」


「モモさんも心配していそうですがね。にしても大胆ですねー、モモさんをクィフォンスさんの専属侍女にしてしまうなんて」

「まぁねー、一年もあれば一発くらいヤッているわよ」


「良い尻ですもんね。屈んだ時の尻の色気は随一ですよ」

「わかる? あれ卑怯よねぇ……ねぇルクナ、今日一緒に寝ない? なんだか寂しくて」


 幼女に夜中ペロペロされる覚悟があるのなら良いけれど。

 寂しいのはアレかな? 治療に使った道具が恋しいのかしら?

 でもウトウトしているステラちゃんが活発になってしまう。


「アレは二人きりの時ですよ?」

「ちっ、違うわよ。アレはあれで嬉しいけれど……そうじゃなくて、今日ルクナを身近に感じて」


「ん? 身近に?」

「お母様と居るルクナが初めて年相応に見えたの。いつも年上みたいだったから、嬉しくて」


「外では常に気を張っていますから」

「珍しいくらい警戒心が強いよね。人に心を開かせるくせに、自分は開かないんだもん」


「それは耳が痛いですね。確かに……心の扉は半開きですね」

「隠し事、しているでしょ? みんな心配しているよ」


 あぁ、だからユウコが来たり、イシュラが視界に映るようにチラチラ見えるのか。

 やっぱり、見抜かれているもんだね。

 仕方がない……少しだけ、伝えておくか。


「家に帰ったら父親も居まして、普通の娘を演じるのに心がゴリゴリゴキュゴキュ削れて疲れてしまったのですよ」

「あー、仲悪いの? なにか嫌な事でもされたの?」


「他の女と浮気しているのですよ」

「ぅ……それは……ヴァン王国って、法律的には?」


「ヴァン王国は正妻の了解があれば出来ますが、母は他国の出身です。その国では浮気、不倫は御法度です」

「それは……お母様は……?」


「さぁ、知らないと思います。だから良い娘でいるって、大変だなぁって……」

「……私も、良い皇女でいるのが大変でさ……って参考にならないか」


「……参考になりますよ。聞かせてください……もう寝ましょうか」

「貴女の事をもっと知りたいし、私の事も知って欲しいな」



 私の勝手な推測だが……生まれながらに魅了能力を持っている人は、中々自分の能力に気が付かない。

 そして、遺伝するものだと思う。

 このキラキラは、魅了能力が可視化されたもの……私のキラキラとは質が違う。きっと魔力が高い人が訓練すれば見られると思う。

 やっぱり、イシュラとローザは血の繋がった姉妹なのかと思ってしまう。


「ところで、クレイル兄さんはあの皇后の実の娘で良いのです?」

「ううん、違うよ。皇后は正妻がなれるだけ。皇帝の子供は全て皇后を母と呼ぶ事になっているわ」


「へぇー……じゃあ、クレイル兄さんを産んだ人は?」

「こういう時はローザって呼んで……まぁ良いか。確か後宮で過ごしている筈よ、会った事が無いからわからないけれど……皇族も複雑なのよねぇ」


「じゃあその人の子供は他に居るのですか?」

「さぁ? そういうのはあまり知らされないから。あっ、でも後宮で産まれた子の何人かは亡くなったみたいよ」


 亡くなった……というのが嘘だとしたら、例えば適性検査でふるいから落ちた子供は皇族になれないだとしたら……

 イシュラは私に出会う前は魔法なんて使えなくて、ザンガード家でも落ちこぼれのような扱いだったと聞く。

ライズの記憶の中で、能力の無い貴族とか皇族の子供を預ける施設があったんだよなぁ。


 うーん……イシュラに聞けば魔眼の能力でわかる話なのかもしれないけれど、別にイシュラはそれがわかった所でふーんで終わらせるだろうね。


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